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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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順序よくやるのも協力の一つの形

 ダンジョン内を進んでいく。

 この進行に対して、当初は不安を抱いていた。

 何しろ、まともな前衛がシャインさんしか居ないのだから。


 でも、そんなの全く問題なかった。

 シャインさんしか居ない?

 いやいや、シャインさんだけで充分なのだ。


 蹂躙……はなんかちょっと違う。

 う~ん………………そう! 何もなかった。そんなもの最初から存在していなかった。という感じだろうか。


 まず、シャインさんの感知範囲がおかしい。


⦅そこの角を曲⦆

「魔物が居るな!」


 セミナスさんが言い切る前に反応し、そう言って飛び出して角を曲がっていくシャインさん。

 あとを追う俺たちが角を曲がると、既に魔物は死亡。

 魔物の数も関係ない。


 見つけたと思ったら、シャインさんのワンパンで倒されるのだ。

 行動が速過ぎる。


「このまま放置するのもなんだし、売れば金になるかもしれんな。よし、回収頼む」

「はいはい」


 俺は回収係。

 アイテム袋に収納していく。

 まだまだ入ります。


 しかし、そんなシャインさんでもワンパンで倒せない敵が現れた。


「「「フィ~……フィ~……」」」


 幽霊? 霊体? ……レイス?

 確かそんな名で呼ばれている幽体の魔物が数体。

 物理攻撃が一切効かない、というか、素通りしてしまうのだ。


 ここは自分たちの出番だと、天乃、水連、エイトたちが前に。

 シャインさんも、偶には出番をやるか、と譲る。


 しかし、ここでレイスたちはやってはならない事をした。


「「「フィ~……クスクス……フィ~……クスクス」」」


 シャインさんの攻撃が効かないとわかると、笑い出したのだ。

 その様子に……シャインさんがブチキレた。


「………………」


 無言で拳に魔力を纏わせ、レイスを殴る。


「ヘブッ!」


 シャインさんの拳がレイスに当たった。

 なるほど。ああして戦えば、実体のない魔物でも問題ないのか。

 まぁ、魔力がかなり乏しい俺には無理だろうけど。


 しかも恐ろしいのは、一撃で倒せていないところだろう。

 何度も殴らなければ倒せない。

 多分、わざとだな、あれ。


 纏わせる魔力量を上げれば、一撃で倒せるはずだ。

 それをしない辺りに、シャインさんの怒りを感じる。

 しかしこれで、シャインさんは出番を譲る事はなくなった。


 だからといって、天乃、水連、エイトたちの出番がなくなった訳ではない。

 何しろ、魔物は前からじゃなく、後ろから現れる事だってあるのだ。

 ただ、その場合は、シャインさんに倒されるより酷いかもしれない。


⦅背後から魔物が数体迫っています。接敵予測、十秒後⦆


 魔物数体が来ている事を教えると、天乃、水連、エイトたちから、タイミングよく魔法が放たれる。

 その規模は、通路を一杯に満たすほど。ギチギチに。


 魔物が数体居ようが関係なかった。

 何しろ、通路にギチギチの魔法の雨。

 逃げ場なんてない。


「今のは、エイトの魔法がとどめとなりました」

「いいや、あたいのだね!」

「もう少し観察眼を養ってください。私のです」


 エイトたちは、自分の放った魔法こそが最後の一撃になったと言う。

 まぁ、それだけなら、ある意味いつも通りなのだが……。


「待って待って。威力は確かに凄かったけど、とどめとなったのは私の魔法よ!」

「……全員間違っている。私はしっかりと見た。私の魔法がクリティカル」


 今はそこに天乃と水連も参加している。

 確かなのは、誰も譲る気が一切ない事。


 そして、その矛先は俺にくる。


「誰がとどめの一撃だったの?」


 代表してか、天乃がそう尋ねてくるが、俺にはわからない。

 いや、あんな通路一杯のギチギチ状態で、誰の魔法がどう当たったとか、判別出来る訳がない。

 出来るとしたら……。


⦅私が一番です⦆


 いや、セミナスさんはそもそも魔法を放っていないでしょ。

 回答を求めて、シャインさんを見る。


 ……こちらを指差しながら、ゲラゲラ笑っていた。

 この状況を楽しんでいるようで何より。


 しかし、これでは答えが出ない。

 なので、俺が取るべき手段は一つ。


「ワンモア」


 もう一回。次の機会に持ち越した。

 心の中で、そのもう一回の機会が来ない事を切に願う。


⦅そこまで強く願われると申し訳ないのですが……⦆


 ……あるようだ。

 願った直後に砕かれるので、心の傷は浅いと思いたい。

 今度はしっかりと見ようと思った。


 そして、次の機会。


「………………さらにギッチギチになるくらいに魔法を放たれても困るんだけど。更に判別出来なくなっているから」


 話し合いもしていないのに、全員が揃って他を出し抜こうとした結果である。


「あと、姿形というか、魔物が消失するくらいの威力と密度はやめようか。何も残らないから」


 焦げ跡くらいは残っているけど。

 お金になるかもしれないんだから、素材分は残そうよ。


 そう言うと、しゅん……と落ち込む面々。

 ここがチャンスだと、俺は全員一斉じゃなく、順番を提案。

 その提案は受け入れられたのだが……今度はそのローテーションで揉めた。


 ……ダンジョン内を進むのって難しい。


     ―――


 それでも魔物に対する安全は保たれたので、ダンジョン内を進んでいく。

 まぁ、過剰戦力なのは認めよう。


 よほどの敵でも現れない限り、大丈夫そうだ。

 それこそ魔王レベルでも来ない限りは。


 あとはまぁ、飲食物もアイテム袋の中にたんまり入っているので、この人数でも数日くらいは大丈夫だと思う。

 さすがに長期間にはならないと思いたい。


⦅なりません⦆


 ならないようでホッと安心。

 でも、かなり下まで落ちたと思うんだけど、そんな簡単に戻れるのだろうか?


⦅問題ありません。目的を果たせば直ぐ脱出は出来ますので⦆


 まぁ、元々迷うなんて事はないだろうしね。

 ダンジョン内の通路はかなり複雑なのだが、セミナスさんにかかればどれだけ複雑だろうとも、正解ルートに導いてくれる。


 罠があっても、必要のない罠には引っかからないし。

 ……あれ? そうなると、宝箱とかは?


⦅マスター。現実に宝箱が存在すると思っているのですか? 仮に存在していたとしても、中身が残っているとでも? 勝手に補充されるとでも?⦆


 そうですよね。そんな訳ないですよね。ごめんなさい。


⦅このダンジョンの主の宝物庫で我慢してください⦆


 はい。わかりました。

 ………………。

 ………………。


 ん? あれ? あれれ?

 セミナスさん。もしかしてだけど……このダンジョンの……主、とやり合うの?


⦅やり合うかは今のところまだ確定していませんが、相対はします⦆


 正直に言ってくれるのは嬉しいけど……もし敵対した場合、大丈夫だろうか?


⦅そこのエルフなら勝てます⦆


 じゃあ、大丈夫だな。

 という訳で、皆にもこれから向かう先を教える。


 二つ返事で納得してくれた。

 簡単に受け入れ過ぎじゃない?


「……なるほど。脱出より攻略を選ぶ、か。実に私好みの選択だ」


 シャインさんが楽しそうに笑みを浮かべる。

 ……よし。あとは成り行きに任せよう。


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