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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十一章 竜の住み処と世界樹
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何をしても結果は変わらない

章、変えときます。

 大陸中央にそびえ立ち、二つの巨大湖に挟まれるような位置にある巨大な山。

 そこが竜の住処。


 自然豊かな環境なのが見てわかり、山の頂上付近は雲の上なので、標高がいくつか正確な部分はわからない。

 まぁ、そもそも登る訳ではないので、気にしなくても良いだろう。


 と思っていたら、山の麓に降りた。


「あれ? このまま一気に行かないの?」

「自分たちだけなら問題ないけど、今回はアキミチたちが一緒だからね。先触れを出さないといけないし、人専用の道があるから、そこから入らないといけないしきたりだから」


 つまり、その道を進まないと、竜の住処に入れないって事か。


「ジースくんが案内してくれるの?」

「その予定なんだけど……ちょっと待ってて」


 DDがジースくんを呼ぶ。他の竜たちもだ。

 それで何やら話し合いが始まった。


 えっと、俺たちはほったらかしですか?


 ただ、DDから醸し出される雰囲気は至って真面目で、ジースくんたちは何やら困惑している。

 邪魔しちゃ悪いとは思うけど。


 ………………。

 ………………なんか終わりそうにない。


 エイトたちを見る。

 我関せずを貫いている。


 アドルさんたちを見る。

 俺に任せると逆に見られていた。


 詩夕たちを見る。

 自分たちではどうしようも出来ない、と困り顔だ。


 シャインさんを見る。

 興味なさそう。


 ……俺が行くしかないようだ。

 何より、道案内は必要だ。


「あのぉ……そろそろ出発したいんですけど、どうなっているんでしょうか?」


 恐る恐る近付く。


「私は絶対行かんからな!」

「でもDDの兄貴が行くのが、一番丸く収まると思うんですけど?」

「いいや、そんな事はない! というか、お前たちが先触れに行って、あいつを宥めておいてくれ」

「嫌ですよ! だって、姉貴絶対キレてますよ! そんな怖いところに行きたくないですよ!」


 ジースくんの言葉に、他の竜たちがその通りだと頷く。


 う~ん……DDはここから一切動かんぞ! と抵抗していて、ジースくんたちが説得している感じかな?

 ただ、その理由が、怒れる女王竜が怖いから、か。


 理由はわかったが、近付いたのは悪手だった。


「アキミチはどう思う? いや、私と一緒の方が心強いよな!」


 DDが俺を抱き込もうとしてきた。

 一方、ジースくんたちからは、どうにか説得してください、と視線だけで懇願してくる。


 ……巻き込まないでください、と答えたい。


「いや、確かに心強いですけど、どちらかといえば戦力は揃っているから、心休まるジースくんたちの方がありがたいような」


 楽器が弾けるからね。

 寝る時とか、穏やかなBGMを流してくれると嬉しい。


 その思いが通じたのか、ジースくんたちが、俺たちに任せな! と頷く。

 ……が、DDは諦めない。


「いいや、そんな事はない! 私とアキミチの間には確かな絆があるではないか! そう、ダンスという名の絆が!」


 縁者と観客って絆がね。

 そういうのは、共に苦労を分かち合った者同士で言うべきじゃないかな?

 俺、DDと苦労を分かち合った覚えがないんだけど。


 しかし、ここまで頑なだと、もうどうしようもないような気がしないでもない。

 DDも外聞を捨ててきているし。


 よっぽど女王竜の事が怖いんだろうなぁ……。


 そう思っていると、何か思い付いたのか、DDがポンと手を打つ。


「妙案が浮かんだぞ!」


 ……嫌な予感がする。


「アキミチも先触れに連れて行くのだ! それで、こちらが着くまでに、例のスキルであいつの怒りをどうにか鎮めてくれ」


 そう言って、俺の両肩をガッシリホールド。

 どうやら本気で言っているようで、逃がすつもりはないようだ。


 ………………。

 ………………。


⦅マスター以外のために動く気は一切ありません⦆


 DDの血走った目が怖いので、結構危機感を覚えていますけど?


⦅自業自得だ、とハッキリ言ってやってください。私は、女王竜の方を味方します⦆


 もしかしたら、セミナスさんは同じ女性として、女王竜に共感しているのかもしれない。


⦅何しろ、夫婦間で大きなウェイトを占めているのは女王竜の方ですので。味方にするならそちらの方を選択します⦆


 ……強い方に付いた訳か。


「DD。残念だけど……セミナスさんは女王竜さんの方に付いた」


 絶望の表情とは、正にコレだろうという表情をDDが浮かべる。


 しかし、DDは諦めない。

 俺……というか、セミナスさんの協力を得られないとわかると、再びジースくんたちの説得に回る。


 あの諦めない精神は凄い。

 見習うべきだろうか?


 でもここまでくると、ちょっと興味本位で知りたい。

 どうにかならないの?


⦅なりません。そもそも、何をしようが結果は変わりませんので⦆


 う~ん……DDに伝えるべきか悩む。


⦅いえ、変わる出来事がありました⦆


 え? あるの?


⦅あのその他の竜たちが巻き込まれるかどうかです⦆


 ……ん? つまり、DDが怒られるのは確定だけど、そこにジースくんたちが加わる可能性があるって事?


⦅はい。その通りです。ちなみに今は……その流れです⦆


 ちょっ! そういう事は早く言ってよ!

 急いで向かおうとしたが遅かった。


 説得されたジースくんたちが先触れとして出発して、DDが見送っている。


「頼んだぞ~!」

「あぁ……」


 ジースくんたちを助けられなかった俺は、膝から崩れ落ちる。

 そんな俺の様子から、大きく手を振るDDと興味ないシャインさん以外の皆は、ジースくんたちの行く末を察したのだろう。


 悲しそうな目で飛び立ったジースくんたちを見る。


「よし! これで大丈夫だ!」


 DDが自信満々にそう言う。

 いや、大丈夫では決してないんだけど……その事を言う必要はない。


 竜の住処に辿り着いた時、存分に怒られれば良いと思う。

 セミナスさん同様、俺も女王竜の味方に回ろうと思った。


     ―――


 DDの案内で向かった先は、麓にある巨大な洞窟だった。


「ここを進むの?」

「そうだ」


 ここを通って上に登っていくのか。

 ……かなり深いだろうな、これ。


 DDを先頭にして、注意深く進んでいく。

 DDの隣は、自然と俺になった。

 出来れば詩夕たちと一緒に行きたいのだが、DDのダンス談義がとまらない。


 ほどほどに聞きつつ、気になった事を尋ねる。


「そういえば、ジースくんが言っていたけど、ここが人専用の道ってどういう事? 確かに人工物っぽいけど、竜たちがわざわざ造ったの?」


 いや、この場合は、竜工物か?


「いや、元々ここはダンジョンでな、サイズ的にも丁度よかったから、それを利用しているだけに過ぎん。まぁ、ダンジョンの主の許可は得ていないが問題ないだろう。文句言ってきても滅すだけだ」


 竜が怖くて引きこもっているのかな?


「それにしても、元々ダンジョンなのか」


 ……ん? 軽く流して良い内容じゃないような気がする。


「そういえば、ここを通るのも久し振りだが、人が来るのも久し振りだな。前は確か……神共が……」


 なんとなく……そう、なんとなくだけど。

 このあとの展開が読めた。


 考え込むDDは周囲の警戒を怠る。

 そして俺は、カチッと音の鳴る床を踏んだ。

 床がバカンッ! と開き、重力に従って俺は落下する。


「悪いのはDD~!」


 責任の所在を高らかに叫びながら――。


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