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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十章 集合
293/590

思いのほか波長が合うようだ

 次に向かったのは、獣人国の人たち。

 詩夕に紹介する主な人は、ウルトランさん、ウルアくん、フェウルさんの三人かな。


 ………………大丈夫だよね?

 変な事にならないよね?

 確約が欲しい。


⦅マスターが関わっているとどう転ぶかわかりませんので、お約束は出来ません⦆


 匙を投げられてしまった。

 こうなってくると、自分の目で確認するしかないようだ。


 出来れば、ウルトランさんがどこかに出かけておいて欲しい。

 筋肉談義を聞くのはちょっと。


 出来れば、ウルアくんだけの時が望ましい。

 フェウルさんは……まぁ、エイトたちに任せれば大丈夫だろう。


 なんて事を考えている内に、獣人国の人たちが使用している貴賓室に辿り着く。


「……ちょっと待ってね」


 詩夕たちに断りを入れ、まずはこそっと扉を開けて、俺だけで室内を確認。


「次はこちらを確認して、印をお願いします」

「……そろそろ休憩を」

「まだ駄目です。ウルトラン陛下。こうして国外に出たのですから、その分の仕事をしてもらわなければいけません」


 何やら、辟易とした表情を浮かべているウルトランさんと、たくさんの書類を抱えた獣人さんがやり取りをしている。

 それに、書類を抱えた獣人さんは一人ではなく何人も居て、順番待ちしていた。


 ここぞとばかりに、て感じ。

 ……まぁ、書類仕事、苦手そうだもんね。ウルトランさんって。


「挨拶に来たのですか?」


 突然声をかけられて驚く。

 誰? と見える範囲で探すと、扉の前にウルアくんが立った。


「ウルアくんか」

「そうですよ。アキミチさんの他にも扉の外に気配を感じますけど」

「そう。詩夕たち、俺の同郷の皆を連れて挨拶に来たんだ」

「噂の勇者様たちですね」


 また噂か。

 一体どんな噂なんだろうか?

 変な噂だったら詩夕たちがショックを受けるかもしれないし、あえて聞かないけどね。


「でも、ウルトランさんは忙しそうだね」

「王として当然の責務をこなしているだけですよ」

「……書類が山のようになっているけど?」

「仕方ありません。出かける準備優先だと後回しにして、道中も模擬戦で忙しいからと見もせずに、ここに着いてからも外の模擬戦を見て逃げようとしていましたからね。文官の皆様が怒るのも当然です。今日はもうずっとこのままですね」


 なるほど。これまでの積み重ねによって、か。

 それなら仕方ない。

 自業自得だし、文官の人たちを敵に回したくはないので、助けようとも思わない。


 というか、シャインさんとシュラさんの模擬戦も影響しているのね。

 ……模擬戦だよね?


「なら、ウルトランさんは日を改めるとして………………あれ? フェウルさんは?」


 パッと見た感じ、室内にはその姿はない。

 ウルアくんに視線を向けると、首を振った。


「わかりません。下で模擬戦が始まると直ぐに行ってしまいましたので。まだ大人しく見ているか、もう別の場所に向かってしまっているか」


 個人的にはまだ見ていると思いたいけど、シャインさんとシュラさんの戦いが長丁場だから……今日はもう良いかと判断して、どこか別のところに行っている可能性は、ある。

 ああいう人たちって、相手の調子が良い時に戦いたがる傾向が強いからなぁ。


 弱っているところを倒してもつまらん、みたいな。


「明道……明道……」

「ちょっと待って下さい。今、ウルアくんと話しているので」


 樹さんが小声で俺を呼んでくるが、もう少し待って欲しい。

 もしかしたら、今は好機かもしれないんだから。


「ウルアとは話して、ウチとは話さないとか、そんな寂しい事を言うのですか?」


 ……それは、聞き覚えのある声。

 というか、フェウルさんだよね。


 廊下側から聞こえてきたので、視線をそちらに向けると……うん。やっぱりフェウルさん。


「あんなに激しくやり合った仲なのに」


 口元を扇子で隠しながら、更にそんな事を言ってきた。

 うん。それは戦いを、だよね。

 主語的な部分を抜いて話しちゃいけない言葉だから。


 あらぬ疑いをかけられて、誤解される時だってあるんだし。


「「やり合ったって何を?」」


 天乃と水連が怖い笑みを浮かべながら突進してくる。

 ほら、こんな感じでって、ちょっと待って!

 このまま突進されるのは不味いから!


 と思ったが、時既に遅し。

 二人の突進を受けとめた衝撃で後方に吹き飛び、扉を突き破って室内をゴロゴロ転がって、机の脚にゴンと頭をぶつける。


 チカチカする視界の中、ウルトランさんが覗き込んできた。


「よく来たな、アキミチよ」

「ど、どうも」


 挨拶より先に、この状況を問い詰めるべきじゃない?


     ―――


「大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫大丈夫。これぐらい、どうって事ないさ。それなりに鍛えているしね」


 心配してくれるウルアくんにそう返す。

 本当に良い子だね、ウルアくん。


「鍛えているという割には、咄嗟の対応が遅れたようだが?」

「遅れたのではなく、怪我させないために受けとめた結果なだけです」


 俺たちが来た事で一旦書類仕事が中断となってウキウキしているウルトランさんにそう返すが、言いたかっただけなのか、直ぐに樹さんとの会話に戻っていった。

 樹さんとウルトランさんは、互いに何やら波長が合うそうで、急速に仲を深めたのだ。


 ちなみに、もう詩夕たちにウルトランさんたちを、ウルトランさんたちには詩夕たちの紹介は済ませている。

 という訳で、エイトたちも含めた女性陣はフェウルさんを招いて、部屋の隅の方で女子会を行っていた。


 話し声が聞こえないので会話の内容はわからないけど、見ているだけで自然と身震いしてしまうのは何故だろう。


⦅私もあちらに参加したいのですが、現状では仕方ありませんね。まぁ、会話の内容はわかりますので支障はありませんが⦆


 何故わかるのかとか、今更問うまい。

 とりあえず、仲良さそうに話しているようなので、喧嘩とかにならずによかったと思っておこう。


 それと、波長が合ったのは樹さんとウルトランさんだけではない。


「ここにたんこぶが出来ているよ、明道」

「治療薬がありますので、用意させますね。アキミチさん」


 詩夕とウルアくんも波長が合っていた。

 あっという間に仲良くなって、その様子を見ていた常水がうんうんと頷いている。


 なんというか、予想に反して面倒な事にはならなかったな。

 のんびりとした時間が流れるが、たんこぶの治療が済んでから次に向かう。


 次は……魔族の国、か。

 ……ある意味、一番不安だな。


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