いきなりそんな事を言い出したら、危険人物じゃないかな?
話の内容はわからないけど、つまり女性陣とエイトたちは仲良くなったって事で良いのかな?
⦅そういう認識で構いません。今は大魔王軍の方を優先するべき、という結論に至ったようです。私も交ざりたかったのですが、体がないのが残念です⦆
……セミナスさんが交ざっていたら、会話の誘導のオンパレードで大変な結論になっていそうだ。
⦅失礼ですよ。私は不用意な誘導はしません⦆
つまり、必要な誘導はするという事だね。
⦅否定はしません。それに、そもそも私が女性陣の話し合いに交ざっていれば、議題は一つ。格付けを今の内にしっかりと行っていただけです⦆
……格付け?
なんか不穏な感じだけど、なんの?
⦅それはもちろん、対外的に誰が正さ……はっ! これは誘導されています! 卑怯ですよ、マスター!⦆
いや、したつもりは一切ないんだけど……。
でも、大魔王軍を先に、という意見は俺も一緒だ。
直に体験したからこそ、大魔王軍……特に魔王の恐ろしさの一端は感じた。
一丸とならないと。
そのための話し合いが、これから行われるのか。
⦅まぁ、私たちはその話し合いに参加しませんが⦆
……え? どういう事? と聞く前に、刀璃から声をかけられる。
「先ほどから黙っているが、セミナスさんというスキルと話しているのか?」
「……そうだけど」
あっ! そうか。
女性陣からしたら見るのは初めてか。
でも、セミナスさんを知っているって事は、教えたのは詩夕たちかな?
「挨拶したいのだが、このまま明道に話しかければ良いのか?」
「まぁ、会話は聞こえているから、普通に話しかければ良いよ。答えるのは俺だけど」
セミナスさんからも何か挨拶はある?
⦅そうですね……『セミナスさんは、俺が最も愛している人だよ。そう、もう俺にとってはただのスキルじゃなくて人なんだ。最愛なんだ。もし肉体を有していたら、もう抱いて……いや、抱きまくっているのは間違いないね。それぐらい魅力的な人なんだ。俺の理想をこれでもかと詰め込んだような人なだけじゃなく、能力も優秀……いや、世界一! 何度も危ない場面があったけど、二人の愛の力でこれまで乗り越えてきたようなモノなんだ。もうセミナスさんなしじゃ、俺は生きていけない。骨抜きにされちゃった。セミナスさんは、そんな人だよ』とでも言っていただければ、非常に満足出来ます⦆
……うん。
「よろしくってさ。短文なのは気にしないで。一気に人が増えたから、恥ずかしがっているだけだから」
「そうか。それならよかった」
刀璃と笑みを浮かべ合うが、内心では異議を申し立てる。
⦅曲解です。訂正を求めます。一言一句、まるっとそのまま告げるように進言します⦆
いやいや、今、俺が異議を申し立てるところであって、逆に言われるところじゃないから!
そもそも、長いから!
いきなり愛を語り出すとか、普通にヤバいヤツになってるよ、それ。
⦅たとえそれで人が離れようとも、私はマスターを見捨てません⦆
いや、セミナスさんがそうなるように仕向けた本人だよね。
⦅まぁ、マスターがどれだけ取り繕うが、私が体を手に入れれば、全て解決する事ですので⦆
そこに辿り着く訳ね。
……必要な事だろうけど、セミナスさんに体を持たせるのが怖くなってくる。
果たして、自由を与えて良いのかどうか。
⦅ご安心を。体を手に入れようが、マスターの傍を片時も離れるつもりはありません。トイレやお風呂のお世話もお任せ下さい⦆
……いや、自由にしてくれて良いんだよ?
このまま話していても終わらない話なので、集まった人たちのところへ、挨拶回りに行く事にした。
―――
詩夕たちと揃って挨拶回りに向かう。
ただ、問題はどういう順番で、どこに行けば良いのかがわからない、という事だ。
「大丈夫。予めどこに居るかは聞いておいたから問題ないよ」
セミナスさんに聞く前に、詩夕が先手を取っていた。
⦅くっ……出来る男、という訳ですか⦆
詩夕は元からそうでしたけど?
ただ、今の俺からしてみれば、セミナスさんを悔しがらせるなんて凄い。という感想。
場所がわかれば、あとは順番だ。
「といっても、集まった人たちの中で明道が知らないのは、ビットル王国の王、ベオルア陛下と、ドワーフの国の人たちだけじゃないか?」
樹さんがそう尋ねてくる。
う~ん……そうなの?
でも、他はエルフに、魔族の国、獣人国、軍事国ネスだから……そうかも。
確かに、ビットル王国の人はフィライアさんしか知らないし、ドワーフの国の人たちは全く知らない。
「そうですね」
「なら、先にその二国に向かい、そこは俺たちが明道を紹介して、残りの国は逆に俺たちの方が知らないから、明道に紹介してもらえば良いんじゃないか?」
……ふむ。俺はそれで構わない。
他の皆も……それで大丈夫なようだ。
という訳で、詩夕の案内でまず向かったのは、ビットル王国の人たちのところ。
EB同盟再強化の話し合いを行う、メインの人たちに会う。
城内。貴賓室の一つに居た。
ビットル王国だと、現国王である人と、樹さんのハーレムの一人、フィライアさん。
「………………」
「無反応でも結果は変わらないと思いますけど?」
だって、樹さんが来た事で、フィライアさんが嬉しそうに腕を組んでいるし。
仲は順調なようで何よりだ。
ただ、見た目的に……犯罪の臭いがしなくもない。
他の皆も、うんうんと頷いているし。
「エイトたちのように、お似合いですね。ご主人様」
対抗するように、するり、とエイトが俺と腕を組んでくる。
これはこれでヤバい臭いがしそうだ。
でも、そうならないのは、反対側の腕は天乃と腕を組んでいるからだろうか?
……ただ、天乃とエイトの間で、火花が散っているように見えるのは気のせい?
心なしか、この周囲だけ温度が高い気もするし。
だから樹さん。その目と顔はやめてください。
フィライアさんの事は知っているので、ここでは現国王さんに、主に俺が挨拶をする。
王様の前だから、解放してくれると助かるんだけど、と思った瞬間、既に解放されていた。
う~ん。行動が速い。
片膝をついて挨拶。
えーと、名前を先で……名前だけで良いか。
「詩夕たちの友人で、明道と言います」
「これはご丁寧に。ベオルアと申します。そう気を遣わずに楽に。寧ろ、皆様とアキミチ殿を引き離すような召喚結果になってしまい、誠に申し訳なかった」
楽にというので……ベオルアさんが、俺に向かって頭を下げる。
「いえ、お気にならさず」
仕方なかったですし、そういうタイミングを計ったのは予言の神様なので。
苦情はそちらに出します。
「そうはいきません。そもそも、私たちの力が足らず、皆様に協力を求めたのです。しかも、この世界に無理矢理召喚して」
………………あれ? もしかしてだけど、立派系というか、ものすごく良い人?
確認するために、詩夕たちに視線を向ける。
その通りだと、力強く頷かれた。
それはそれで対応に困るというか、これまで一癖も二癖もあるような人たちばっかりと関わってきたから、こう真面目な人と相対すると……どうすれば良いのか悩む。
そのまま視線で詩夕たちにアドバイスを求める。
……こっちも自然体で良いの?
わ、わかった。
………………。
………………。
なんか話している内に、おじいちゃんと孫みたいな感じになった。
いや、ほんと、お小遣いとか大丈夫ですから。




