表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十章 集合
283/590

誰も引けないから、誰も引かない

 ラメゼリア王国内に入り、王都に向けて進んでいく。

 というか、これまで気にしていなかったけど、今って他国の人たちと共に他国内を進んでいる訳だし、許可とか必要なんじゃないだろうか?


 堂々と進んでいるし、侵略している、とか疑われないだろうかと不安。


「それは大丈夫だ。ラメゼリア王国から出発し、魔族の国、獣人国、軍事国ネスと回って、今は戻っているが、きちんと通達はされている。そのための準備期間をこれまで取っていたのだからな」


 アドルさんにこそっと尋ねると、そういう返答だった。


「……でも、お迎えの人とか、普通は居るものなんじゃ?」

「その役目は、私たちだ。委任状も持っている」


 アドルさんがぴらっと紙封筒を見せてくる。

 それはつまり、えっと……。


 アドルさんたちが? と指差していく。

 頷かれる。


 もしかして自分たちも? と自分とエイトたちを指差していく。

 頷かれる。


「………………ちょっ! 勝手に責任者にしないで欲しいんですけど!」

「だが、アキミチたちも含めて、と念押しされてな。信頼されているな」

「でも、いざという時の責任は取らされるんですよね?」

「セミナスさんが居て、いざという時が起こるのか?」


 ………………。

 ………………まぁ、それはない、かな。


⦅私としては断言して欲しいのですが⦆


 少し前のセミナスさんを知っている身としては、ちょっと。

 でも、魔王が直接絡まなければ問題ないか。


「起こらないでしょうけど、やっぱり撤回! ……いや、この場合は辞退?」

「認められん。そもそも、既にここまで来ているのだし、今はラメゼリア王国側も人員が不足している中で、私たちを迎え入れる準備をしているのだ」

「人員が少ないって、三大国の一つですよね? そんな事ある訳が」

「大魔王軍城内にまで手を伸ばしていたのだぞ。城内に居る者たちを精査するのだって終わっていないだろう。信用出来ない者に他国の重鎮の相手をさせるつもりか?」


 それはまぁ……そうですけど。


「だからって、俺たち?」

「国を救った英雄として認められているからな。大丈夫だ。これだけの一団だぞ。問題などそうそう起こらん。それに、アキミチはここに居る者たちがそういう行動を取るとでも?」

「いや、そうは思わないけど……でも、全員を知っている訳じゃないし」

「元国王として断言しておく。きちんと手綱は握っているから安心しろ」

「ですよね」


 そうそう問題なんて起きないさ。


 問題が起こった。


 それは、王都に向けて進む中で立ち寄った一つの町。

 名は……また来る時があれば覚えよう。


 で、その問題というのが、また盗賊問題。

 なんでも、この町の近くに、それなりの数と力を有しているのが居るそうだ。

 最近の話なので、どこかから来たのだろう。


 数日前に農作物や家畜などに被害が出て、ついでに脅されている。

 食べ物と女を用意しないと襲う、と。


 他の町や王都に救援を求めても、間に合わないそうだ。

 そこに現れたのが俺たちである。


 これが発覚したのは、町長さんが挨拶に現れた時、セミナスさんが聞けと言ったから。


「何か困っている事があるんじゃないですか?」


 と。

 それで俺たちも知る事になったのだ。

 知ったからには対処する。


「同じ三大国の一つとして看過は出来ん。ここは軍事国ネスに任せてもらおう」

「ここは屈強な者が揃っている、獣人国の出番だ」

「隣国のよしみとして、魔族の国が出るべきだろう」


 うん。誰も引かない。

 ロイルさんにしては珍しいなと思ったら、宰相さんがバッグに居るのが透けて見えた。


 でも、ここは誰しもにとっても他国。

 そうそう武力行使をする訳にはいかない。


 町長さんも、三国から言い寄られて困っている。

 ここは助け舟を出した方が良いでは? とアドルさんを見ると、任せろと頷いた。


「待て。ここはラメゼリア王国内だ。そう勝手に動かれては困る。何かあった時の責任は、私たちが取る事になるのだから。よって、盗賊討伐には私たちが赴く」


 いや、そういう事じゃない。

 その上、三国からは「横暴だ! ずるいぞ!」と非難の声が上がる。


 更に圧力が増し、町長さんも更に困惑。

 助けを求めるように……俺を見た。


 ……なんでそこで俺?

 俺を見れば助かるとでも直感が働いたのだろうか?


 実際、そうなった。


「軍事国ネスで」

「獣人国で」

「魔族の国で」

「私たちで」


 どうしてそこで俺に来るの?

 俺に決定権はないと思うんだけど……町長さんがお願いしますと拝み出した。


 いや、俺は一般人で、あなたは町長だと思うんですけど?

 立場的に、地位的に、町長の方が上だと思うんですけど?


 ただ、わかる事はある。

 このままでは、事態の収取がつかないという事だ。


 でも、俺はその答えを知っている人……スキルを知っている。

 どうすれば良いの? セミナスさん。


⦅ふふふ……餌に群がる小鳥のようですね。さぁ、餌が欲しければ、もっと囀りなさい⦆


 変なスイッチが入っているようだ。

 しかし、俺はこれまでの経験から、結論を導き出す。


 セミナスさんが、あれしろ、こうしろ、と言わないという事は、これは正しい流れ。

 ここからどうなるんだろうと思っていると、乱入者が現れる。


「何やら求められている予感!」


 最強の槍使い、カノートさんが居た。


「ふむ。先を見越してドワーフの国からラメゼリア王国の王都に戻り、アキミチたちを迎えに来たのだが……良い時に来たようだ」


 この世界の人たちの勘は侮れない。

 事情を簡単に教え、カノートさんが出した結論は……早い者勝ちだった。


 セミナスさんが盗賊の根城の正確な位置を教え、ついでとばかりに人数も。

 それ以上は余計な情報だと言っていたが……皆、それで充分らしい。


 盗賊の根城に対して、軍事国ネス、獣人国、魔族の国、エイトたちとアドルさんたちにカノートさんを加えた、四つに分かれて四方から襲いかかる。


 結果は、言うまでもない。

 寧ろ、相手が可哀想なくらいだ。


 俺の感想としては、どう考えても過剰戦力オーバーキル

 本当に、あっという間に終わった。


『……物足りない』


 参加した人たちの感想はそれだけだった。

 まぁ、人数が人数だし、戦力が戦力だしね。


 でも今は、町を救った事を喜ぼうよ。

 物足りないって感想に、町長さんがどういう表情を浮かべたら良いのか困っているから。


 そのまま町で一泊してから、王都に向かって出発した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ