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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第十章 集合
282/590

非日常が続けば、それは日常

新章です。

 ラメゼリア王国に向けて進む。

 道中、これといった事は起こっていない。


「「模擬戦! 模擬戦!」」

「「発掘! 発掘!」」


 アドルさんとシュラさんは相変わらず模擬戦をしているし、インジャオさんとウルルさんは、セミナスさんが道中にも掘っておいた方が良い場所を示したので採掘中。

 うん。起こっていない。


「ご主人様。そろそろ鍛錬のお時間です」

「主はすげぇな! 日に日に回避数が増えて、動きが鋭くなっていくな!」

「これなら直ぐにでも、数や速さを増しても問題ないかもしれません」


 ……起こっていない。

 日常。うん。日常。

 決して、非日常ではない。


 いや、待てよ。違う違う。

 この世界に来てからずっと非日常のはずだ。


 なのに、いつの間にかこれが日常になっている。

 人の慣れというか、順応力の高さが怖い。

 というか。


「休憩! もしくは、人数制限を!」

「「「お覚悟を」」」


 どうやら逃がす気はないようだ。

 これは不味いと思っていると、ガラナさんが挙手。


「我も魔法は得意だが?」

「では、参加をお願いします」

「楽しくなってきやがった!」

「これで数の問題は解決しましたね」

「増やせって、言ってないよね!」


 状況が更に悪くなったのは間違いない。


⦅良い鍛錬です⦆


 セミナスさん保証がなければ、早々に脱出を図っていただろう。

 これも今後のためと頑張る。


 そうこうしている内に、獣人国に辿り着く。


「まだ終わっていない。あと数日待ってくれ」


 ウルトランさんが堂々と言う。

 そのうしろで、執事さんやメイドさんが、ドタバタと動き回っている。

 手伝った方が良いんじゃないだろうか?


「迎賓館は用意していますので、そちらで少々お待ち下さい。ほら、いくわよ」


 ウルルさんのママさんが、ウルトランさんの耳を引っ張って連れて行く。

 いってらっしゃい。


 でも、その迎賓館がどこにあるのかわからないんだけど。


「こっちよ」


 ウルルさんの案内で立派な迎賓館に向かい、そこで少し過ごす。

 それは別に問題ない。


 ただ、問題は別のところ。


「一戦やろうぜ!」


 未だ武闘会での人気が残っているのか、王都に出るとそうお願いされる事が多い。

 すみません。今は日頃の鍛錬で常にボロボロで。


 なので、セミナスさんからの代案を採用。

 場所を闘技場に移す。


「さぁ、かかってこい!」

「次から次へと……獣人国は良い国だ!」


 模擬戦の新たな刺激として、アドルさんとシュラさんに任せる。

 ガラナさんからの許可ももらい、カリーナさんが救急要員として控えているので負傷も問題ない。


 ちなみに謳い文句は、「俺とやり合いたければ、まずはこの二人を倒してみろ!」である。

 この二人の方が俺よりも強いのだが……そこに触れてはいけない。


 それに。


「はははははっ!」

「あははははっ!」


 二人が楽しそうだから良いじゃないか。


「二人ばかりずるいぞ! 我も参加」

「準備が終わってからなら、好きなだけどうぞ」


 騒ぎを聞きつけたウルトランさんが参加しようとした瞬間、ウルルさんのママさんに関節を極められ、執事さんやメイドさんに担がれてそのまま戻っていった。

 ギブアップ宣言しても関節極めたままだったんだけど……いや、なんでもない。


 インジャオさんとウルルさんは、軍事国ネスに居た時と同じく、近隣の地図に丸付けされた場所に鉱石を掘りに向かっている。


「では、ご主人様。そろそろ休憩は終わりです」

「もう? 早くない?」

「特別ゲストがお待ちかねですので」

「特別ゲスト?」


 エイトのうしろから、ウルアくんとフェウルさんが現れる。


「最近準備ばかりで体が鈍ってしまって」

「本気でいきます」


 ………………。


「却下します」


 駄目だった。多数決で押し切られる。

 反対が俺しか居なかったのは、きっと関係ないだろう。


 魔法だけじゃなく物理も加わって……つらい。


 三日後。ウルトランさんたちの準備が終わり、獣人国を出立。魔族の国に向かう。

 人員の追加は、ウルトランさん、ウルアくん、フェウルさんに、護衛の戦士に執事さんとメイドさん、文官を合わせて三十人くらいだ。


 ただ、この護衛の戦士たちは、ウルトランさん、ウルアくん、フェウルさんの護衛ではなく、執事さん、メイドさん、文官たちの護衛が主らしい。

 まぁ、確かにウルトランさんたちには必要ないだろう。


     ―――


 ラメゼリア王国に向けて進む。

 道中、これといった事は起こっていない。


「「「「模擬戦! 模擬戦!」」」」

「「発掘! 発掘!」」


 アドルさんとシュラさんの模擬戦にウルトランさんとウルアくんが加わり、インジャオさんとウルルさんは変わらず採掘中。

 うん。起こっていない。

 いつも通りだ。


 でも、こっちは違う。


「では、これからよろしくお願いします」

「「「わぁ~!」」」


 エイトたちが拍手で迎えたのは、フェウルさん。

 鍛錬が更につらくなった。


 そうこうしている内に、魔族の国の王都に辿り着く。


「お待ちしておりました。準備は終えています」


 出迎えたのは、この国の宰相さん。

 今更ながらこの人の名前を憶えていないというか、聞いた覚えがない。


 だからだろうか。

 俺の中で、宰相さんといえばこの人。


 ……このまま宰相さんで良いか。


「と言いたいのですが、少々問題がございまして、皆様の助力をお願いしたく」


 宰相さんの話はこうだった。

 準備は既に終えている。


 いつの間に始めていたのか、と問いたいが、この宰相さんならなんでもありなのでスルー。

 で、なんの問題が起こっているのかというと、魔族の国の王であるロイルさんと共に行動する王妃様は誰にするべきか? である。


 あぁ、そういえば、三人候補が居て、三人共選んだんだっけ。


「ですので、皆様に選んでいただきたいのです。誰を連れていくべきなのかを」


 という訳で、また場が用意された。

 参加するのは、俺、エイトたち、アドルさんたちに、ウルトランさん、ウルアくん、フェウルさん、ガラナさん、カリーナさん、シュラさんの、総勢十三名。

 ロイルさんは、選べないと不参加。


 机の上のプレートは、「審査員」にエイトたちとアドルさんたち、「獣人国」にウルトランさんたち、「軍事国ネス」にガラナさんたち。

 それはその通りなので問題ない。


 問題なのは、やっぱり俺。


 大審査員長 兼 最終決定権:アキミチ殿


 これだと俺が決める事になるよね?

 ネタばれみたいな表記になっているけど。


 そこを追求する前に始まったので、用意された席に座る。

 現れたのは、王妃の三人。

 名前は……しまった。憶えていない。


 ウルトランさんたちやガラナさんたちが初見なので紹介されたが……あとでもう一回聞いておこう。

 今は、誰がどの番号かだ。


 選び方は前回と同じく一から三の数字が書かれた三本の棒。

 三人それぞれが自己紹介をしたあと、直感で選ぶ。


 俺は前回を経験しているので知っている。

 こういうのは早い者勝ちだ。

 サッと上げた方が……あれ? 俺の、机にくっついてない?


 それを指摘すると、新しい三本の棒を用意してくれる。

 ただ、その間に皆の答えは出ていた。


 綺麗に各四票で分かれている。


 残るのは俺の答え。

 ……ずるくない?

 これは明らかに、策謀だよね?


 違います、と宰相さんが首を振る。

 なら、俺はこう言う。


「全員で」

「かしこまりました」


 もう最初からその選択肢を選べば良いと思う。

 誰も文句は言わないよ。


 という訳で、魔族の国からは、ロイルさん、王妃様たち、宰相さんに、護衛、執事、メイド、文官の三十人くらいの一団がラメゼリア王国に向かう。


「……ロイルさん。宰相さんまで来て良いの? 国のかじ取りは?」

「宰相の奥さんがやってくれる」

「……よく任せられましたね」

「宰相を唯一御せる方だからな。信頼出来る」


 なるほど。

 なら、俺も宰相さんについて色々と文句を言いたいので、その人を紹介して欲しいんですけど。


 ……宰相さんに邪魔された。


 一休みしたのち、ラメゼリア王国に向かって出発する。


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