表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第二章 竜とエルフ
28/590

やってやるさ!

 一昨日くらいにエルフ村に来た来客は、ここから東にある「ビットル王国」という国の兵士たちであると、夕食時シャインさん宅に居たラクロさんが教えてくれた。

 俺はマラソン中だったので、運良く? 悪く? 見ていない。

 その兵士たちは既に王国へと戻るため、エルフ村から出て行ったそうだ。


 そういった事を教えてくれたラクロさんが、どうしてシャインさん宅に居るかというと、その兵士たちが求めていたのは、シャインさんだったからである。


「……なんて命知らずな」

「本当だよ。シャインが普通に頼み事を聞く訳ない……」


 ラクロさんと揃って、やれやれと肩をすくめる。


「なるほど。アキミチはまだまだ余力があって、ラクロは私と楽しい会話をしたい、という事だな」


 俺とラクロさんの前で、ニッコリと笑みを浮かべるシャインさん。


「……そんな真似が出来るだなんて、シャインさんの強さを正しく認識していないんですね。なんて命知らずな真似を」

「……いやその通りなんだよ。何しろ、シャインはこの世界最強クラスだよ? それだけの人物を相手にして、普通に頼む事自体が間違えていると思わないかい?」


 急いで言い直す俺とラクロさん。

 シャインさんは、ふんっ! とそっぽを向いた。

 とりあえず、今はそれで終わったようなので、立ち上がってラクロさんと話を進める。


「それで、その国の人たちが何の用件だったんですか?」

「簡単に言えば、指南役をお願い出来ませんか? という事だよ」

「指南役? シャインさんに?」

「ははは。無茶な、と思っていそうだけど、シャインが適任の一人なのは間違いないよ。スキルに対する造詣も深く、経験も豊富なのは間違いない。だから、その経験を語るだけでも充分な教えになるんだよ」


 言いたい事はなんとなくわかるけど……シャインさんだよ?

 勘で避けろって言った人だよ?

 寧ろ、教えられる人たちに同情してしまうんだけど。


「向こうからの要望でね。なんでも特定のスキル持ちを探しているそうで、シャインがここに居た事を喜んでいたよ……帰る頃には肩を落としていたけど。まぁ、条件を変えてまた来ると思うよ」

「え? まさか、断ったんですか? 指南役を?」


 うそ~……だって、一国がお願いする指南役だよ?

 どう考えても好待遇でしょ?


 驚きながらシャインさんに視線を向けると、なんでもないように手を振る。


「あ? なんで私が国に頼まれたからって、はいわかりましたと応じなきゃいけないんだ。そもそも、誰を鍛えるかは私が決める。気に入ったヤツしか相手にしたくないね」


 ですよね~。

 相手が国だろうが誰だろうが関係ないのが、シャインさんである。


「うんうん。シャインさんはそうじゃないと」


 そうだよな、と何度も頷く。

 すると、シャインさんが嬉しそうに笑みを浮かべた。


「へぇ~、随分と私の事をわかったような口を利くじゃないか。なんなら、今日は一緒に寝るか? 体の方も知る事が出来るかもしれないぞ」

「寝ている間に蹴飛ばされたり、関節極められそうだから断る」


 今極められた。


 関節を解しながら、ラクロさんに尋ねる。


「それにしても、指南役なんか求めるなんて、その国で何かあったんですかね?」

「あぁ、そういえば、アキミチは異世界から来たのだったね。ビットル王国は、守護の要だよ。現在、大陸西部にある『軍事国ネス』が攻勢に出ているのだけど、魔王軍の攻勢は大陸東部に集中している。その攻勢を押し止めているのが、ビットル王国だよ」

「え? それって結構重要な位置付けの国ですよね?」

「そうだね。この大陸……いや、この世界の三大国の一つに数えられるよ」

「………………そんな国の指南役を断ったんですか?」

「……そういう事になるね」


 いやほんと、小市民な俺からすれば、なんてもったいない! と思ってしまうが、当の本人であるシャインさんは、そんなの知るか、と面倒そうに俺たちを見ていた。

 そんなシャインさんに、ラクロさんがお願いする。


「今からでも遅くないから受けてくれないかな? ビットル王国が落ちてしまうとここも危険だし、ちょっと行って鍛えてくれれば良いからさ」

「あ? 大村長だからって、私が言う事聞くと思ってんの?」

「ですよね~」


 これは困った、とラクロさんが大きく溜息を吐いた。

 色々と気苦労が絶えないのか、疲れ切っている。


「ラクロさん、一つ聞いても良いですか?」

「……なんだい?」


 憔悴しているように見えなくもないが、受け答えしてくれるようなので大丈夫だろう。


「そもそもの話ですけど、どうして指南役を求めているんですか? 守護の要で三大国って呼ばれるくらいなら、外から呼ばなくても精強な人が多く居ると思うんですけど」

「……あぁ、なんでも、予言の神によって定められた時に召喚された、この世界を救う勇者たちの指南役を探しているそうだよ。特定のスキルで探していると言っていたから、そのスキル持ちがその中に居て、その能力を更に向上させようって事だと思う」

「なるほど。予言の神によって選ばれた勇者たちの今後のために、指南役が必要って事ですか」

「……そういう事だね」


 なるほどなぁ……。

 ………………。

 ………………。

 ………………ん? んん?

 予言の神に選ばれた勇者たちって………………それってつまり……。


「詩夕たち! 俺の親友たちの事じゃない、それ!」


 これか! セミナスさんが言っていた、数日ここに居ろという意味は!


⦅はい、その通りです。世界を越えた際にマスターの友人たちはスキルを得る事が出来ました。ですが、与えられた力であるが故に、まだ十全に使いこなすまでには至っていません。そのため、指南する者が必要という事です⦆


 それでシャインさんが必要なのか。


⦅その一人です。マスターの友人たちが得たスキルは多岐に渡りますので、到底一人ではまかないきれません⦆


 ………………そんな中、俺は何も得なかった、と。


⦅それは既に問題ではありません。私というスキルをマスターが得た以上、マスターの歩む道はウィニングロードです⦆


 凄い自信満々ですね。


⦅それだけの能力であると自負していますので⦆


 セミナスさんを得て、そんなに日数が経っていないのにも関わらず、既に否定出来ない。

 と、今はそうじゃなくて。

 つまり、これからの詩夕たちには、シャインさんの指南が必要って事で良いの?


⦅はい⦆


 それだったら、もっと早くにお願いしておけば良かったんじゃない?


⦅ただお願いするだけでは、そこのエルフは動きません。このタイミングで、ある程度親睦を深めたマスターが挑む事に意味があります⦆


 なるほど。

 確かに、初対面の状態でシャインさんにお願いしても、断られるのは目に見えて、ちょっと待って。

 今、挑むって言った?

 どういう事? とセミナスさんに尋ねる前に、シャインさんとラクロさんから声がかかる。


「異世界からの勇者……そういえばそうだな」

「つまり、アキミチくんの知り合いという事か」


 肯定するように頷く。


「だからシャインさん。詩夕たちにはシャインさんが必要みたいだから、ビットル王国に」

「面倒臭い。そもそも、強くなりたいなら自分たちで頑張れば良い。他人を当てにするな」


 ぐぅ。やはり、シャインさんを説得するのは難しい。


⦅ですので、挑むのです。勝てば行け、と⦆


 ………………。

 ………………それしかないの?

 というか、勝てるとは思えないんだけど?


⦅マスターには私が付いています。それに、この時のために、私の存在を秘匿して頂いたのですから⦆


 どうやら、それ以外に選択肢がないようである。

 セミナスさんがそう言うという事は勝算があるのだろう。

 覚悟を固めるしかない。

 俺は大きく息を吸い、吐く。

 そして、シャインさんに視線を合わせる。


「なら勝負だ! 俺は親友たちを助けたい! そのためにはシャインさんに行って貰わないといけない! 俺が勝ったら、行って貰う!」

「……へぇ、それは面白そうだな。私に勝てると思っているのか? それとも、何かしらの勝算があるのか………………良いだろう。その申し出、受けてやる」


 シャインさんが凶悪な笑みを浮かべた。

 ラクロさんは、早まってはいけないよ……と、俺の肩に手を置き、優しい目で見てくる。


 ……早速、後悔した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ