表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第七章 お礼
217/590

繋がりは安心感と繋がっている

 セミナスさんの指示通りに進んでいく。

 目的地は、軍事国ネスの王都……ではなくて、どこか別のところ。

 場所としては、大陸を二分する二つの大きな湖の西側。その近く。

 ただ、どうしてそこに行くかはまだ教えて貰っていない。


 でも今は一つだけわかる事がある。


「……視界不良過ぎる」

「そうですね。前が全く見えません」

「大丈夫か? ちゃんと居るか?」


 白い濃霧が発生していて、先が見えないのだ。

 森の中を進んでいるという事もあって、互いに声をかけ合っている。


「ご主人様。さすがにこのままではバラバラになってしまう可能性があるため、手を繋いだままで移動する事を願い出ます」

「そうだな。それに、ここらにはあたいたちしか居ないし、恥ずかしがる必要もないしな」


 ………………。

 ………………。


「仕方ない! これは緊急措置だ! バラバラにならないための!」


 なので、途中から手を繋いで移動する。

 右手にエイト、左手にワン。

 ………………。

 ………………。


「あれ? 俺が中心?」

「エイトたちのご主人様なのですから当然です。それに、正確な場所に案内出来るのもご主人様だけなのですから」

「主が先導するのは当たり前だろ」


 確かに。

 納得したので、セミナスさんに方向を聞きながら進んでいく。


「えーと……まだ真っ直ぐで大丈夫だけど、ところどころ飛び出している木の枝に気を付けるようにって」

「その注意はご主人様にでは?」

「一番気を付けないといけないのは主だと思うが?」


 いやいや二人共、セミナスさんから直接注意を受けた俺と、その俺からまた聞きした二人とでは、その注意度は違うから……あいたっ!

 普通に木の枝に頭をぶつけた。


 ……でも大丈夫。

 確かに痛かったけど、声は出さなかったし、歩みもとめていない。

 なら、二人にも気付かれていないから、なかった事に出来る。


「ご主人様。今、木の枝にぶつかりませんでしたか?」

「主。気を付けて進まないと、またぶつかるぞ」

「いや、ぶつかってないし」


 なんでわかったんだろう?

 ……勘?

 その理由を考えていると、再びぶつかる。


「あいたっ!」

「まだぶつかったのですか?」

「だから気を付けろって言っただろ」

「ぶつかってないから!」

「今、『あいたっ』と言ったように聞こえましたが?」

「確実にぶつかっただろ、今」


 どうしてわかるんだろう。

 いや、今のは思わずというか、意表を突かれたからで仕方ないけど、最初のまで察知された原因がわからない。


⦅なんだかんだと神造生命体ですので、色々とハイスペックなのです⦆


 そうなんだ。


⦅そうです。たとえば、マスターが木の枝にぶつかった瞬間の衝撃を、繋いだ手を通して感じる事も出来るのです⦆


 なるほど。だからわかったのね。


⦅他にも、マスターの目には濃霧でも、そこの二人なら問題なく見通す事が出来ます⦆


 へぇ~、こんなに濃霧なのに、エイトとワンにとっては問題なく見る事が出来るのか。

 ………………。

 ………………。

 うん。ちょっと待って。ついさっき、二人も前は見えないような事を言っていたけど?


⦅マスターが見えない事に気付き、汎用型が特化一型に提案し、それにのった結果です⦆


 くそっ! 嵌められた!

 でも……こんな状況だからこそ、誰かと手を繋いでいる状態って……不思議と安心感がある。

 きっとセミナスさんも、そんな俺の心境を読み取ったからこそ、何も言わなかったのだろう。

 ……今回だけだからな。


「ありがとうございます」

「役得って事で良いんじゃねぇか?」


 ……繋いだ手を通して、心境まで読み取れる訳じゃないよね?


     ―――


 そんなこんなで数日が経った。

 濃霧地帯を越え、普通に森の中を進んでいく。

 食糧に関しては問題なかった。


 アイテム袋の中に入っているにもあるが、朝起きると、エイトやワンによって食べられる魔物や動物が仕留められているので。

 多分、夜の暇潰しの一環として、狩りを行っているんだと思う。


 ……ただ、このままだと養われている感が強いので、俺もどこかで大きな獲物を狩りたい気分。


⦅マスターの最大攻撃力でも、大物を仕留める事は出来ません。届かぬ夢だと諦めて下さい⦆


 バッサリと気分ごと斬られた。

 いや、待って。

 罠とか、そういうのでどうにか出来るんじゃない?

 セミナスさんなら大物の動きとかわかるだろうし、どこをどう通るかなんて一発だ。


 そのルート上に落とし穴を掘って、落ちたところを一方的に攻撃すれば――。


⦅この世界において、大物とは大抵その体躯も大物です。それを落とし穴に落とすとなると、掘らなければいけない大きさも必然的に大きくなります。今、そのような時間を取る事は出来ません⦆


 むぅ。


⦅ですので、ある程度の時間が取れる時でお願いします⦆


 わかった。

 なら、その時まで待つ事にする。


⦅それに、マスターの活躍の場は軍事国ネスに行けば……いえ、これ以上言うのは野暮というモノですね。お楽しみに⦆


 うん。楽しみに出来ない。

 軍事国ネスってアレでしょ?

 俺、ちゃんと話聞いているよ。

 上大陸に攻め入ろうと頑張っているところでしょ?


⦅はい。その通りです⦆


 どうやら、また戦いの予感。

 とりあえず運動不足は解消したけど、もっと鍛えた方が良いのは間違いなさそうだ。

 なので、エイトとワンにも手伝って貰う事にした。


「夜の寝技中心で鍛えましょう」

「うん。違う」

「あー……主をボコればいいって事か?」

「うん。それも違う」


 きちんと鍛えてくれるインジャオさんが懐かしい。

 早く合流したい。


 そうこうしている内に、目的の場所に辿り着いた。

 そこは、向こう岸が見えないほどに巨大な湖の近く。

 海……じゃないよね?


⦅湖で合っています⦆


 えっと、つまり、直ぐそこに見えている湖が、大陸を上下で分けている二つの巨大湖の一つって事?


⦅はい⦆


 なんというか、地図上では巨大な湖だと理解していたけど、実際にこの目で見ると……どれだけ大きいのかわからない。

 あとは、綺麗な湖だな……ぐらいしか今は思い付かない。


 あっ、魚が跳ねた……けど、ちょっと待って。

 遠近法がおかしい。

 水面を見ると遠いのに、跳ねた魚は大きく見えた。


⦅今のは、マスター程度の大きさであれば一飲み出来るくらいの大きさですね。ちなみに、この湖の中では一般的な大きさです⦆


 うん。さすが異世界。怖い。


⦅では、湖に沿って左方に進めば小屋がありますので、そこに進んで下さい⦆


 わかった。

 ほどなくして、小屋に辿り着く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ