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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第六章 獣人の国
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わかっていても、目がいってしまう時がある

 フェウルさんに勝った。

 ちょっと信じられないけど、鉄扇で叩かれまくったところがジンジンと痛いので、夢オチではないようだ。

 ……痛みで涙目……になっちゃ駄目!

 カッ! と目を開く。


 それにしても、俺の中ではもっとバチバチにやり合うのかと思っていたけど、終わってみれば、フェウルさんはほぼ無傷。

 傷らしい傷といえば、俺のこの打ち身の痛みくらい。

 といっても、回復薬で直ぐ治るそうなので、舞台から下りて、舞台傍にある治療テントで治して貰う。


 こういう時、一日の最後の試合ってあとを気にしなくて良いよね。


「いらっしゃいませ~」


 お揃いの白い服を着た美人女性獣人さんたちに出迎えられる。

 行った事はないけど、そういうお店かな? と誤解して緊張してしまいそうだ。


⦅安心して下さい。この場に居る中にフリーは居ません⦆


 どうしてそんな事を言うのかな?

 まぁ、一気に冷静になれたけど。


「こちらにどうぞ。お座り下さい」


 案内されるまま椅子に座らされる。

 目の前に居るのは、これまた白いローブを着た美人女性獣人さん。

 ……猫? いや、虎かな?

 他の人と服が違う辺り、多分女医さんって事なんだろうけど。


⦅確かに女医ですが、妻帯者でもあります⦆


 だからそういう情報はいいから。

 冷静になるだ……ちょっと待って。

 妻帯者って事は……。


 あぁ、でも、この世界では気にするような事でもないのか。

 なら、気にする必要もないという事なので、気にしない。

 ただわかったのは、この場に居る美人女性獣人さんたちの中に、フリーの人は居ないという事だけだ。


「それで、どうされましたか? どこか痛いところが?」


 女医さんの言葉に首を傾げそうになる。

 えっと……ここから舞台上は見え……るな。

 なら、俺がどうしてここに居るのかもわかると思うんだけど。


 あれかな?

 もしかして見ていなかっただけ?

 それとも、お決まりの文句的なモノだろうか?


 出来れば後者であって欲しい。

 女医さんに説明して、早速治療して貰う。

 といっても、打ち身部分に回復薬をかけて貰うだけ。

 いや、自分でやるんじゃなく、美人さんにやって貰う事が重要なんだ。


「ひひゃあぁ~」


 染みる染みる。

 治る前に染みるので、思わず声が出てしまった。

 りんご味だったから、りんご酸でより染みたのかもしれない。


⦅染みているのに、味とりんご酸は関係ありません⦆


 こんなに染みているのに!

 観客席にまで俺の叫びが届いていない事を願っておこう。

 治療は直ぐに終わったので、貴賓席に戻る事にした。


 それにしても、女医さんが組んでいた足を組み替える瞬間は危なかった。

 思わず視線がそっちに向いて、釘付けになるところだった。


⦅そこを右に階段を上がって下さい。なんでしたら、私がスカートの生足で行いましょうか?⦆


 いや、セミナスさんには体がないでしょ。


⦅真っ直ぐ。そこは妄想で補って頂ければ。好きに動かして、好きな角度で見て頂いて構いません⦆


 いえ、結構です。

 それと、別にスカートの生足でなくても、パンツルックでもそれはそれで良いというか……。


⦅突き当たりを左折。マスターの業を垣間見たような気分です⦆


 浅い業である事を願う。

 そんな感じで話している間に着く。


 というか、待って。

 ちょいちょい行き先を指示してくるけど、初回ならまだしも、さすがに何回も往復したような場所で迷ったりしないから!

 今回も迷わず来れたでしょ!


⦅……念のためです⦆


 ………………なんだろう。

 セミナスさんの言葉に優しさを感じる。

 という事は、もしかして来れなかったの?

 いやいや、そんな事は考えない。

 着いたんだから良いじゃないか。


 貴賓席に入れば、前回と同じく拍手で出迎えられた。

 いや、より熱っぽい感じになっているような気がする。

 手を上げて拍手に応えながら、自分の席に向かう。


「よくやった。アキミチと……」


 待ち構えていたアドルさんが、俺の肩に手を置いて、そこで言葉を切って労ってくれる。

 どうもどうも。

 続く言葉は、「セミナスさん」だろう。


⦅その他からの感謝の言葉は必要ありません。マスターからの愛さえあれば⦆


 これはどっちなんだろう?

 素直なのか、素直じゃないのか。悩む。

 そのまま席に座ろうとしたのだが、その前にエイトが立ち塞がる。


「ん? どうした?」

「失礼します」


 そう言って、エイトが俺の体をジロジロ見始める。

 え? 何? こんな外で、しかも人前で?

 て、違う違う。そうじゃなくて。


「一体何を?」

「しこたま打たれていましたので、ご主人様の体に傷が残っていないかの確認です」


 いや、もう治療されたから、確認する必要はないんだけど?


「大丈夫だって」

「いいえ、エイトの目で見て確認し終わるまでは許容出来ません。という事で、ご主人様」

「ん?」

「服の上からではわからない箇所もありますので、脱いで下さい」

「脱ぎません」

「今更恥じらうような関係ではないではないですか」


 貴賓席内がザワッとする。

 ヒソヒソするな!

 このままでは不味いと即座に否定。


「恥じらうわ!」


 よし。これで大丈夫。


⦅それだと、そういう関係の部分は否定していませんが?⦆


「そういう関係でもない!」


 危なかった。

 もう少し遅れていたら、きっとメイドさんたちの誰かが、警備員とか衛兵を呼びに向かうところだったに違いない。


 あと、宰相さんも、ロイルさんにあれくらいの積極性を身に付けて下さいと、エイトを参考にするような事を言わないように。

 ロイルさんも、真に受けちゃ駄目……いや、宰相さんの言葉を真に受ける人じゃなかったか。


 ほら、エイトも誤解を解きなさい。


「安心して下さい。エイトはこう見えて『ロリBBA』ですので」


 ……それを聞いて、周囲の人たちがホッとするのも、それはそれで間違いなんじゃないかと思う、俺の感性が正しいと思いたい。

 とりあえず、エイトには見える範囲の確認だけで納得して貰い、漸く席に座って一息。

 まぁ、王城に移動開始するまでの僅かな間だけど。


 ………………。

 なんだろう。

 戦っている時の方が、気が楽なのは気のせいかな?

 そのままボーッとしていると、なんとなく見られているような気がする。


 周囲を窺えば、エイトは宰相さんと何やら話しているのが見えたけど、視線は向けられていないので違う……いや、それはそれで危険だけど、今は視線の方だ。

 そのまま視線をキョロキョロさせると、ウルトランさんとバッチリ目が合った。


 ………………。

 ………………。

 えっと、なんで優しい目で俺を見るの?

 今までそんな目で見た事ないよね?


 しかも、うんうんとなんか頷いているし。

 どういう事なのかを尋ねようとする前に、インジャオさんとウルルさんも戻って来て、王城に戻る事になった。

 王城に戻ったら聞いてみよう。


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