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この行く道は明るい道  作者: ナハァト
第五章 魔族の国
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シリーズの中にまともなのが居る事を切に願う

「……確かに、名ばかりだったモノが本当の意味で繋がれば、それは喜ばしい事に間違いはありません。ただ、それも、ラメゼリア王国と軍事国ネス次第。……少なくとも、ラメゼリア王国には歩み寄る気がある、という事はわかりました。あとは軍事国ネスがどう動くか」


 ロイルさんはそこで一旦言葉をとめ、少しだけ考える。


「……なるほど。アドル義兄さんの考えは、二国の事をきっかけとして使い、他国に歩み寄りが上手くいくための協力をお願いする事で、各国の関係修復と強化を図ろうという訳ですか」


 そうなんですか? と俺はアドルさんを見る。


「その通りだ、ロイル。といっても、この考えはラメゼリア王国の王、ゴルドール殿と共に考えたモノ。大魔王軍に対抗するには『EB同盟』を以前のように……アイオリとエアリーが居た頃のように戻さなければならない」

「それはわかりますが」

「だからこそ、協力して欲しい。ビットル王国にもサーディカ姫が向かっている。東部の国々は、ビットル王国とサーディカ姫が纏めてくれるだろう。あとは西部。ここ魔族の国と、あとは獣人の国が協力を明言してくれれば、他の国も追従してくれるに違いない」


 それから少しの間、アドルさんとロイルさんは沈黙して、互いに見つめ合う時間になった。

 色々と推し量っているのかもしれない。

 でも、周囲としてはオロオロしてしまう。


 ……違った。

 オロオロしているの、俺だけ。

 この場に居る他の人たちは、すまし顔で見守っている。

 ワンですら、腕を組んで黙っていた。


 なんか傍から見ると、オロオロしている俺だけ小物感が半端ないな。

 ……よし、訳知り顔で黙っていよう。

 絵面的にそれで正しいはずだ。

 ……ふんふん、なるほど……そういう事ね……ふんふん……。


「わかりました。他ならぬアドル義兄さんからの頼み。魔族の国も協力しましょう。ロアナ姉さんがこの場に居れば、同じように協力をお願いしていたでしょうし」

「すまない。助かる」


 アドルさんはありがとうと笑みを浮かべ、ロイルさんは仕方ないと苦笑を浮かべた。

 そして、ロイルさんは外から人を呼び、宰相をここに連れて来るように、と告げる。

 少しだけ待つと、頭に六本の角がある宰相さんが現れた。


「お呼びとの事ですが、何用でしょうか?」


 そう言う宰相さんの顔は、何か面倒事の予感……と、しかめっ面だ。

 ……あれは、宰相が王様に向けて良い表情じゃないと思う。

 実際、ロイルさんは過剰に反応した。


「ね、ね、アドル義兄さんも見たでしょ! あの顔! 絶対余を疎ましく思っていて、殺そうと色々画策しているはずだから!」

「そうなのか?」

「滅相もございません」


 アドルさんの問いかけに即座に反応。

 ……言い慣れている感が凄い。


「………………」


 それでもロイルさんは信じられないのか、ジィーッと宰相さんを見る。


「……フッ」


 宰相さん、ニヤッと笑う。


「はい、うそー! 今の顔は絶対何か企んでますー!」

「そうなのか?」

「滅相もございません」


 即座の返答。

 なんだろう……ロイルさんの反応で遊んでいるような気がする。

 いい性格している宰相さんだな、と思った。

 いや、それくらいじゃないと、この国の宰相は務まらないのかもしれない。


「そんな事より、私を呼び出したのは一体どういう用件でしょうか?」

「そんな事! 余が感じる危険性がそんな事で片付けられるの!」

「ロイル様。話が進まないので愚痴はあとで聞きます」

「愚痴!」


 ……原因は宰相さんだと思う。

 ロイルさんが項垂れながら、先ほど読んでいた紙を宰相さんに渡す。

 宰相さんは上から下までサッと目を通すだけ。


「なるほど。各国の協力を得て、『EB同盟』の完全復活を目的にしている訳ですね」


 今のでそれを読み取ったの?

 ロイルさんはもう少し考えていたよ?

 あぁ、なるほど。わかった。

 この宰相さんもアレだ。

 槍の神様と同じで、なんでもそつなくこなす、ムカつくタイプだ。


「何か?」

「いえ」


 急に宰相さんがこっちを見たからビックリした。

 やっぱ怖いタイプかもしれない。


「余もこれに協力する事にした」

「かしこまりました。この国の王はロードレイル様です。ロードレイル様がそうすると決められたのなら、私共臣下もそのように動きます。何より、良い事ですので」


 宰相さんが真面目な顔で、ロイルさんに向けて一礼する。


「宜しく頼む。それでまずは」

「国内の意思を一つに纏めるのですね。各種の代表者を呼び出しておきます」

「そうしてくれ。余、自らが話を通す」

「かしこまりました」


 どうやらこれで、話は一旦纏まったようだ。

 ただ、俺は違う事を考えていた。

 あれ? アドルさんの話によると、このあと……獣人の国に行くの?


⦅はい⦆


 普通に確定した。

 直ぐ向かうんだろうか?


⦅いいえ、まだ終わっていません⦆


 そうなの? と思っていると、確かに宰相さんはまだ居る。

 というよりは、何か言いたそうだ。

 ロイルさんもそれに気付き、尋ねる。


「宰相、どうかしたのか? ……まさか! これを機に国家乗っ取りを!」

「しません。ですが、良い機会なのは間違いありません。義兄であるアドル様に協力して頂いて、ロードレイル様のお后様を決めましょう」

「………………」


 ロイルさん、黙った。

 というか、宰相さんを凄く睨んでいる。

 余計な事を言いやがって、みたいな感じ。


「そうだな。そろそろロイルにもそういう相手が居ても良いな」


 アドルさん、急にニヤニヤし出して乗り気。


「決めるという事は、何人か候補が居るのか?」

「はい。こちらに資料を用意しています」


 宰相さんがどこかから資料の紙束を取り出し、アドルさんにスッと見せる。

 仕事が早いね、この宰相さん。


「どれどれ」


 アドルさんが確認し始めると、インジャオさんとウルルさんが野次馬のように後ろから見始める。

 ……いや、ワンも。

 急いでワンのところに行って、こちらに引っ張る。


「ワン! お前、何やっているんだよ!」

「主だって興味あるだろ? あたいは興味ありありだぜ!」


 そう言うワンの顔は、興味;2、企み:8、という感じに見える。


「………………もしかして、選ばれなかった人を慰めて、そのまま……みたいな事を考えてないか?」

「それで元気になるんなら、別に良いじゃねぇか」


 こいつ、開き直りやがった!

 やっぱりこのシリーズ、ろくなのが居ないんじゃ……。


「じゃあ、主は関わらない気なのか?」

「そうとは言っていないけど」

「いえ、構いませんよ。アキミチ様もどうぞ」


 宰相さんかニッコリ笑顔で許可が出た。

 ロイルさんが、わかってくれるよね? みたいな目で俺を見ているのも気になる。

 ……う~ん。確かに何か企んでいるように見えなくもない。


 ただ、それでも最初は断ろうと思っていたけど、ロイルさんからもこのままじゃ選べないとお願いされたので、協力する事にした。

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