プロローグ
帰ってきました。
ナハァトです。
可能な限り、毎日投稿していきますので、宜しくお願いします。
楽しんで頂けると幸いです。
では、どうぞ!
俺には六人のちょもだ……噛んだ。
………………テイク2。
俺には六人の友達……いや、この表現はどうなんだろう。
当の本人たちから文句言われそうだから、親友と表現しておいた方が適切かもしれない。
………………テイク3。
俺には六人の親友が居る。
といっても、全員が男性という訳ではない。
女性も含まれているし、中には小さな頃からの付き合いがあるのも居るので、仲は良い方だと思う。
だからこそ、親友なのだし。
その内の一人、「火実 詩夕」。
男性。黒髪黒目のイケメン。
性格良し。成績良し。運動良し。完璧。
モテる。非常にモテる。
……羨ましくなんか……いや、羨ましい、と自分に正直に生きていこうと思う今日この頃。
その内の一人、「杯 常水」。
男性。黒髪黒目の短髪武人。そう武人。
非常に頼りになる、俺たちの中ではお父さん的……いや、お父さん……という年齢ではないから、お兄さんという事にしておこう。
本人はどっちでも構わないとか言いそうだけど。
水連という双子の妹が居る。
その内の一人、「舞空 天乃」。
女性。ふわふわの黒い髪に少し茶色い目は似合う、可愛らしい顔立ちの天使。(周囲の意見)
そう思われるのもわかるくらいに、誰にも分け隔てる事なく接する事が出来るのは凄いと思う。
でもまぁ、「最近太ももがぁ……」と呟いている姿を見るので、天使ではなく普通の女性なのは間違いない。
その内の一人、「神無地 刀璃」。
女性。黒髪黒目で、短髪が似合う美人。
鋭い目付きで、睨まれると凍るとか言われているけど、凛々しいだけだと思う。
親友たちの中で一番付き合いが長い。
ただ、何故か俺に対してお姉さんぶってくるのが悩みの種だ。
その内の一人、「風祭 咲穂」。
女性。黒髪黒目で、くせっ毛の可愛らしい顔立ち。
というか、背が小さく、同い年のはずなのに見た目が子供っぽいためか、小動物のようだと毎日色んな人に可愛がられている。
ただ、本人は認めていない上に、安易に背の事に触れるとキレるので気を付けないといけない。
その内の一人、「杯 水連」。
女性。黒髪黒目で、人形のように非常に整った顔立ちの超絶美人。
ただ、人付き合いが苦手……というか俺たち以外と積極的に話そうとはしないので、なんだろう……控えめ? な性格かな? ……でも、譲らない時は譲らないんだよなぁ。
その名が示すように、常水の双子の妹。
という六人の親友たち。
お互いに、結構なんでも知っているような間柄になっている、と思う。
……まぁ、その中の特定の誰かには言えないような秘密を抱えているのも居るには居るけど。
とにかく、仲が良いという事だけは間違いない。
高校二年生の冬。放課後。
「という訳で、なんか指導の先生に呼ばれたから行ってくるわ」
「進路の話かな? それじゃ、僕たちはここで待っているよ」
「いや、別に先に帰ってくれても良いんだけど?」
そう言うと、詩夕は常水たちの方に振り返って、直ぐに俺に視線を戻す。
「うん。誰も先に帰るつもりはないみたい。待つって」
「いや、待って! ほんの一瞬だったけど、それだけでやり取り出来たの? え? もしかしてコンマ何秒で会話が行われた? すげぇ……俺も出来るようになりたい」
「いや、表情で判断しただけだよ」
なるほど。
それなら俺でも出来そう………………まずは密かに実験だな。
これで出来ないとなったら、天乃とか水連が怒って、わかるまでにらめっこね? とか言いそうだし。
……意味わからん。
「まぁ、そっちはわかりやすいよね。表情というか、動きによく出るし」
「そういうお前もな、咲穂」
お? お? と咲穂と睨み合う。
天乃と水連が、まぁまぁと宥めてきた。
「というか、先生に呼ばれているのだから、早めに行った方が良いぞ」
「そうだな。早く終わらせれば、その分、早く帰れる」
常水と刀璃に言われて気付き、じゃあ、さっさと終わらせてくるわ! と詩夕たちに向かって手を上げながら教室を出る。
そうして廊下を進んでいくと、体育教師で担任の土門先生に会う。
「ん? 鞄も持たずに一体どこに……って、確か小野先生に呼ばれていたな。進路指導室で待っているはずだから、早く行けよ」
「わかっていますって。今向かっているところですから」
軽く頭を下げて、さくさく向かう。
それにしても、そろそろあやふやだった今後の進路なるモノを真剣に考え、それに合わせた行動に移していかないと間に合わないかもしれない時期に入ったようなモノだ。
モノモノモノモノ煩いけど、気にしてはいけない。
いや、気にしないと思った時の方が多くなっているようなモノだから、結局は自分で煩くしたようなモノか。
………………反省。
あぁ、全く以って言葉というのは難しい。
とまぁ、色々と横道に逸れてはみたものの、時間の流れは平等に流れ、進路が勝手に決まるという訳でもなかった。
「あと書いていないのはお前だけなんだから、さっさと書いてくれ」
進路指導室。
名前は……さっき土門先生が……なんだっけ? ……いや、もう良いや。
進路指導の先生が机の上の、俺の目の前に置かれている進路調査票を指差して、そう催促してきた。
しかし、催促されても書けないモノは書けないのだ。
そもそも、一番の問題として、進路と言われてもどこに向かえば良いのかがわからない。
進学? 就職?
これから自分のなりたいモノというのが想像出来ていない訳で……行動の先の結果がわかるような力が欲しい、今日この頃。
「あいつらを教室に待たせているんだろう?」
「まぁ、そうですね」
あいつらというのは、俺の親友たちの事である。
それにしても、生活指導の先生がどうして俺の交友関係を知っているのだろう?
まぁ、普段から一緒に居るし、俺以外は目立つ人物ばかりなので、知っていてもおかしくないし、知っていて当然というモノか。
しかし、そんな親友たちと一緒に居るからこそ、逆に目立たないはずの俺を認識しているとは……この先生、出来る。
「……お前、馬鹿な事を考えていないか?」
「いいえ、滅相もございません。敬愛している進路指導の先生を馬鹿になんて!」
「だが、先ほどから俺の事を『進路指導の先生』としか呼ばないのは何故だ?」
「………………」
「……俺の名前を言ってみろ」
「………………」
「………………」
「………………政吉?」
「勝手に改名するな! というか、こういう場合は普通苗字だろ? それと、小野だ、小野 一郎! ……全く、もう今日のところは進学、もしくは就職と簡潔に書いておけ。それで終わりにしておくから、次までにせめてどっちかに絞っておいてくれ」
「了解です!」
さすが、生徒から人気のある先生! 話がわかっている!
確か、土門先生もそれなりに人気があったような……いや、今は関係ない。
さらさらっと書いて……先生に渡す。
先生は疲れたように頭を掻き、さっさと行けと手をおざなりに振ってきた。
これで帰れると、俺は意気揚々と生徒指導室を出て、親友たちが待っている教室へと足早に向かう。
いや~、待たせておくのも悪いし。
教室がある廊下まで辿り着くと、異変に気付く。
光ってた。
何か、教室の中から光が溢れ出ている。
………………。
………………科学の実験?
いやいや、そんな馬鹿な。
本当に一体何事だろうと駆け出す。
頼むから、全員無事でいてくれっ!
願いを込めてドアと開け、光の中へと突入する。
………………。
………………。
…………………………何故か、平原と呼ぶのが相応しい、そんな場所に立っていた。
草が俺の腰くらいまで成長しているので、足元が見えない。
というか、周囲を見回しても誰も居ない。
俺がポツンと一人。
………………。
………………あっ、風が気持ち良い。
………………。
「Really?」
これまでの人生で一番上手く発音出来た気がした。