1話 『異変』
【卯月 カズマ 7月23日13:50】
退屈だ。大学へ行くと同時に東京で1人暮しすることにしたものの休日はすることが無い。昔は憧れた東京もいざ来てみると、人混み、騒音、不良など、碌なものがない。何をしようか……。
「そういえば、東京に来てから渋谷に行ったことねぇな……。よし。」
不良に絡まれても面倒なのでイヤホンを付けていくことにした。
渋谷に着いたがやはり人が多い、スリとかに合わなければいいが……。ふとスクランブル交差点の大型ビジョンに目を向ける。この光景にも小さいころは憧れていた……。と感傷に浸ってると、急に画面が乱れた。周囲の人も反応している。イヤホンを付けているので分からないが、耳を塞いでいる人がいるから、余程の大音量か耳障りな音が倒れたのだろう。
次の瞬間、イヤホンを付けていても聴こえるほどの大きな悲鳴が聴こえた。交差点の中央から人が倒れていく。自動車もパニックになって暴走している。逃げようにもこの人数、身動きが取れない。多くの人に押し倒され、俺は意識を失った。
【木村 マサト 7月23日14:40】
「あいつ今何してんだろ……。」
俺は友人の卯月 カズマと東京にやってきた。昔から憧れていた東京。2人で遊びに行こうと約束していたあの頃が懐かしい。いざ来てみるとあいつは「人が多い」だの「五月蝿い」だの文句ばっかりいいやがって……。
あいつと遊びにも行けねぇし……何するか。そういえば、今日はなんか面白いテレビやってたっけ。
『速報です。』
ん?
『本日、14:15頃、渋谷のスクランブル交差点で驚くべき事件が起こりました……。』
渋谷か。あいつの家、渋谷近くだけど大丈夫だろうか。
『通報を受けた警官やアナウンサーとも連絡が続かず、まだ詳しい情報は入っていません。』
……。心配だが、俺にどうこうできる問題じゃないしな……。とりあえず、続報を待とう。
【卯月 カズマ 7月23日14:17】
ん……。妙に獣臭い……。魚のような匂いもする……。そういえば俺の上に倒れてきた人、随分と軽くなったな。恐る恐る目を開ける。
「!?」
毛だ。犬の毛が目の前に広がっている。犬を退け、起き上がると異様な光景が目に映った。なんと、スクランブル交差点の人々が犬や猫、虎や魚なんかに変わっていた。元々着ていたであろう服や、テレビ局の物と思われるテレビカメラ。拳銃なんかも落ちている。
「なんだよこれ……。」
とっさに銃を広い周囲をよく見渡す。奥から数多の影がこちらに向かっている。隠れないと……。路地裏に身を隠すが、緊張していて息が荒くなっている。目の前を謎の集団が通った時に息を飲んだ。人に近く、獣に近い、所謂 “獣人”と言う奴だ。犬系や猫系、更には竜のような神話などにしか出てこないような奴もいる。
カランカラン……
しまった!!獣人の1人がこちらに目を向ける。
「ォォオォオオオォオォォォオオ!!!!」
よく分からない雄叫びを上げ、周囲の獣人も俺に視線を移す。
「クソ!!」
慣れない手つきで銃を撃つ。反動でひっくり返りそうになるが1発当てることが出来た。だがコイツら、武装している。装備に銃弾を弾かれ、首を捕まれる。
「……っ!!」
物凄い力だ、だんだん意識が遠のいていく……。
もうダメだ。そう思った瞬間、目の前に何かが降ってきた。槍……?獣人の腕は千切れ、血が溢れ出す。他の獣人も唖然としている。そこに追い打ちをかけるように煙幕が出てきた。誰の仕業か分からないが、兎に角助かった。急いで離れよう。
そして俺はその場から逃げ出した。ビルの上からこちらを見つめる存在に気付かずに。
小説初心者です。語彙力が無く、誤字脱字があるかも知れませんが悪しからず。