聖女は二度死んで悪女になる
夜中に思いつき、書かないと落ち着かなかったので書いてみた。
浮かんだのは中編ぐらいの内容だけど、そこは割愛。
連載を書く時間がなかったので。
※内容追記しました。11/22 9:15
侯爵家令嬢レイラ・ブルーイットは聖女と呼ばれるとても心根優しい女性だった。
慈愛に満ち孤児院を自ら訪ねて出来ることをする。だから子供達にも好かれ、国民からも絶大な人気を誇り、彼女が王妃になるならば、この国は安泰だとまで言われるほどだった。
だがこの国の王太子マルティン・リリェホルムは奥ゆかしい女性よりも、派手で妖艶な女らしい女性が好みだった。
「あんなのが王太子妃とか、勘弁してくれ」
国家あげての行事として王太子の結婚式の準備は進んでおり、後は招待状を各国に送るだけとなった。
「どうにかならないのか」
独り言だったが、しっかりと声を拾った者が居た。
「聖女じゃ無くせばいいんですよ」
声の主は側近のルディ・フライベルク。その言葉はやけに残った。
「そうだよな。穢してしまえばいい」
****
『助けて…、お願い。助けて』
ピィ、ピィ、ピィ…ピィピィピィ
朝か。やけにリアルな声を聞いた。
必死に助けを求める声。いつもなら夢だと笑って終わらせるけれど、何故かあの声は残った。
なんだろう。聞いたことがある気がするのは、アニメでも見すぎたかな?
あの声を聞いただけで、いつもと変わらない朝。
いつもと同じヨーグルトに手作りのジャムを混ぜて、バナナを食べ豆乳を飲む。
いつもと同じ朝食。
いつもと同じメイク。
いつもと同じ時間に会社に行く。
何も変わらない平穏だった日々。
―――が、突然終わった。
『わたくしは穢されてなどおりません。それに他の男性とご一緒するなど、あり得ません!』
『だが、この間暴行を重ね捕まえた犯人が、レイラを襲ったと証言している』
『それこそ、知らない方です。お医者様にかかって証明をします!』
『はあ…もういい。別にいいんだよ、証明なんてしなくても。穢されたという噂が勝手に一人歩きしてくれれば、皆勝手に想像してくれる。俺にはおまえが邪魔なんだ。だから俺のために死んでくれよ。慈悲深い聖女様?』
ああ…これ、前世?
この後、池に落とされて…。
そこから記憶がないと言うことは、死んだんだね。あたし…。
そして、今世は車に刎ねられて川に流されるとか。
昨日の大雨で増水してなかったら、生きてたと思う…だよね。
まだやりたいことがあったのに。
****
「レイラお嬢様、レイラお嬢様!」
自分の名だとは思ったが、すぐに返事が出来る程理解が出来ていない。
ゆっくりと目を開けると、侍女のマーゴットが心配そうに覗き込んでいた。
んん?
ここは過去のあたしの夢をまた見ているの?
――それとも?
優しく頭を撫でるマーゴットの手が気持ちいい。
感触まであるということは、池に落とされた後生き返ったということ?
それにしては、マーゴットが若く見える。
「まだ少し熱がありますね。果実水をお持ちします」
「お願い」
頭が混乱して、喉が渇くと思っていたら熱があったのか。
じゃあ、この不快なべとつきは汗を掻いたから?
頭の中を整理しながら自分の顔を触ってみる。どうやら平均的な日本人の顔のようにのっぺりとはしていないみたい。だけど、胸はやけに小さいのは日本人仕様なのか。
でも胸を触っていた手を掲げると、思っていた年齢よりも小さい。
池に落とされ殺された時の年齢は18歳。あの時はそれなりに胸はあった。そう日本人だった時よりも。
あたしはどうやら過去の過去に戻ったということなのか。
それにしても、これは一体どういうことなのだろうか。
過去の自分が池に沈んでいく中で必死に助けを求めたことは分かっている。ただでさえ洋服でも水を含むと重たくなり泳ぐのが一苦労だというのに、こっちのドレスなんて言うまでもない。どんなに泳ぎの得意な者でも、溺れただろう。
心の中でずっと何故?どうして!を繰り返しながら、助けを求めた。
でも助けは来ることなく、穢されたという噂を苦に自殺したと処理されたのだろう。
やってられないね。
国の為に頑張った者をすげなくするだけでなく、いずれ国のトップになる者が手を掛ける。
本当に最低!そんな王太子を放置しておく国も、唆す側近もくず。
根っからのくずは変えることは出来ない。
よくいうじゃない。他人を変える前に自分を変えろって。
本当にそうよね。聖女なんて言われて喜んで、人の為に尽くして殺されるのを享受するほど今のあたしは馬鹿じゃない。
王太子の好みや短絡的な考え方を変えることが難しいのなら、王太子を廃嫡させて、トップをスゲ変えてしまえばいい。
たしか側妃に第二王子がいたはず。
可でもなく不可でもない平凡だが、ある種のお姉様方に可愛がられそうな感じの、とても愛らしく優しい王子だったはず。
国が安定している今なら、そんな王子の方がいい。周りに出来る側近を揃えれば、国は動くのだ。
お父様に動いて貰って、そちらの方々とコンタクトをとり協力体制を作ってしまえば問題ない。
それに第二王子を育てるというのも、いいかも?と過去の姿を思い出してみたり。
…駄目だ。煩悩に塗れてる場合ではない。
まずは誰が味方で、誰が敵になりうるのか。早速勢力図をつくらないと。
ただ王太子とその側近ルディ・フライベルクあいつら達だけは絶対に許さない。
色気ない女と嘲りながら、いつも厭らしい顔つきで舐めるようにして見ていたあの男の背後は、徹底して探ってやる。案外黒幕かもしれない。
それにしても楽しくなってきた!
人生のやり直しのやり直しとか、人生何が起こるのかわからない。裏ボスとか、こんな役どころ望んでも回ってくるわけじゃない。しかも元の世界で数少ない恋愛経験を活かして、誘惑とかしてみるというのはどうかだろうか?
……。
そんなスキルがあったら、間違いなく彼氏居たよね。
聖女が痛い子みたいに見られるのはまずいから、これは却下。
それよりも!こっちにはあるのよ、魔法。
今からならしっかりと勉強できるし、魔力があるなら『聖女』には是非とも活躍してもらわねば!
生きていたときよりも、絶対に上手く使える自信があるんだよね。
「レイラお嬢様、さあこれをお飲みになって下さい。お食事はとれそうですか?」
ちょっと違う世界に逝っちゃってるあたしを心配して、またおでこに手を立てるマーゴット。
大丈夫、我に返ったから。
「ええ、少し食べたいわ。そして食べた後、マーゴットに聞いて欲しい話があるの」
いつになくキリリとした表情で話したからか、マーゴットは深く頷いた。
「最近レイラお嬢様が何かに悩まれていたことが、解決するならば是非このマーゴットにお話しくださいませ」
「ありがとう。マーゴットのことは、本当に信用しているの!」
「お嬢様…このマーゴットはこのブルーイット侯爵家のお陰で今があります。路頭に迷いそうになった私たちを救って頂いた恩はどのようなことでもお返しします!」
「マーゴット、そんなに深刻ではないのよ?ただ相談に乗って欲しくて」
「そうでしたか。ではすぐに食事の準備をしてきます」
マーゴットごめんね。煽るようなこと言って。でも、マーゴットのことは本当に信用しているの。あなたに裏切られてまた死ぬなら仕方ないと思うほど。それぐらいレイラは貴女に大切に育てられた。
お母様は早くに亡くなられたし、お父様はレイラに優しくしてくださるけど、忙しくされていてあまりお話が出来なかった。だからこそ貴女という存在に甘えられたことが嬉しかった。
そんな温かさを知っているからこそ、レイラは孤児院の子達にも人の温もりを知って育ってほしいと慈善事業に力を入れたのだから。
マーゴットの元の身分はスレッソン伯爵夫人。ある日突然にエーリク・スレッソン伯爵が捕らえられた。罪名はスパイ。たまたま屋敷で雇った小間使いが隣の国出身というだけで、容疑を掛けられたのだ。決定打は小間使いが出した手紙だという。殆ど世間話なのだが、そこに薬のことが書かれてあった。その薬がどうやら問題らしく城で毒物扱いになっていたものだ。
その薬は確かに毒物にもなるが、量を間違わなければ間違いなく薬になる物だったが、証言に立った薬師がわざとなのか、たまたまなのか知らなかったせいで、正されることなくそのまま処刑された。
スレッソン伯爵家は取り潰しとなり一族も共に処刑される予定だったが、宰相である父ブルーイット侯爵家が盾となることで小間使いと当主のみが処刑になった。
もちろんそこに政治的取引があったのは間違いなかったが、その時は子供過ぎてわからなかった。ただ、優しいマーゴット夫人とその息子ヨルゲンが助かったことだけが嬉しかったように思う。
今回はそのヨルゲンが、ブルーイット侯爵家が後見人になることで第二王子の家庭教師の一人をしている。
普通そこまで第二王子との縁があればあたしは、王太子の婚約者にならないと思うでしょ?そこは王太子側があたしを押したと聞いた。「聖女」の肩書はチャラい王太子の立場固めに役に立つらしい。
――ということで、あたしは「聖女」の立場を盤石なものとして、第二王子の婚約者に収まることにした。幼馴染設定って大きいと思う。しかも!あたしと同じ年だし、今からなら男として育てられるから未来は明るい。
あたしの手腕にかかっているから、そこは頑張ろう!
それから7年の月日が経った。
「レイラ・ブルーイットお前を俺の婚約者にしてやろう」
マルティン王子はあくまで上から、嫌そうにのたまった。
そんな言葉をこのあたしが嬉しがるとでも?
バカじゃないの?!
あ、バカだった。
「いいえ、結構です。わたくしはアッサム殿下の婚約者ですので」
そう、あたしはあれからマーゴットに魔法を習いたいからとお願いし、ヨルゲンを呼んでもらった。もちろん、お父様は反対しない。自分の身を守る術を身に着けるのはいいことだと、賛成して下さった。
生まれ変わったあの日、マーゴットとお父様には夢を見た未来のあたしのことを語った。
殺される夢を見て、怖かったのだと泣きながら訴えた。
始めは本気にしなかったお父様もルディ・フライベルクの名前に反応した。
どうやらエーリク・スレッソン伯爵を訴えたのは、フライベルク伯爵家の当主。それに毒の流失を防いだという功績でスレッソン伯爵が治めていた領地を貰いうけていたのだ。
これはギルティ決定。
マーゴッドを不幸にした罪、あなたの命でもって贖って頂きましょう。
それからお父様の動きは素晴らしかった。ヨルゲンを介し出会うことからスタートして、何かと第二王子との仲を取り持ってくれた。
娘を褒めるのは嬉しいのだけど、ちょっと大げさすぎない?
それにしても第二王子はこんな感じの方だったろうか。あたしの記憶していた第二王子の印象と会ったときの印象はかなり違う。
やっぱりうろ覚えだったから、脳内が勝手にこんな感じって決めてたのかな?
きっとそうなのだろう。
始め抱いた印象は可愛いのだけど、男らしさが備わっている。そんな感じだった。
それに始めからあたしのこと知っていたような。第二王子となると侯爵令嬢ぐらいは覚えているのかもしれない。
うん、そうに決まっている。
その瞳がロックオンとばかりにあたしに向けられているなんて、きっと勘違いよね?
その後は手紙を二日に一度は交わし、時々お茶会に招かれては二人の距離を縮めていった。
「レイラ嬢、どうかしましたか?」
「いいえ、アッサム殿下は色んなことに精通されていらっしゃいますね」
「王族として当然だよ。国力を上げていくには領土の特色を知らなければ、何も出来ない」
「その通りでございます。わたくしもいろんな場所で困っている方を助けられたらと思います。その為に一緒に魔法を習っているのですから」
そうヨルゲンは数少ない優秀な魔道師だったのだ。そのヨルゲンを師にあたしは結界と浄化少しだけど治癒が出来るようになった。
聖女として崇められたのは、王都近くの村の疫病をなくしたからだ。
その後衛生管理を徹底させたのは、アッサム殿下だった。
二人は一つのことを達成したことで、一気に距離が縮まった。
だけど、この距離…。この世界では恋人では普通?
草食系に見えた第二王子アッサムは、意外に情熱的な人だった。
「あの…アッサム様?」
「レイラはこうしてるのは嫌い?」
「いえ、そんなことは」
「レイラ?ちゃんと言ってくれないと、僕はもっと愛を確かめないといけなくなるけど?」
ちょっと待った―――――ッ!
なになに、…こんな可愛い顔して、実は肉食系だったとか、嘘でしょ?
なんで精神年齢が上のあたしが翻弄されてるのよ。
誰が育てるって?
それともあたしが変なスイッチ押しちゃったわけ?!
他の人の目があるところでは、「聖女」としての振る舞いが要求されるから、アッサム王子も迫ってくることはなかったけれど、二人っきりになると夜の帝王かと突っ込みたくなるぐらい色気を振りまいて、スキンシップを強請ってくる。
しかも、キスが上手すぎる。
やっていることはおでこや頬・鼻・頭・髪の毛・指先にキスしているだけなのだけど、いや言葉を並べてみると、これだけでも凄い破壊力だ。
優しく唇が触れるだけなのに、近づく可愛い顔がエロいとか…。
以前の記憶が蘇ってきて、腰のあたりがムズムズするから止めて欲しい。だけどそんなこと言えない。言った自分が痴女みたいじゃない。
女のあたしより色気あるって、あたしの負け決定よね?
これが日本なら、あたしはもっと早く陥落している自信があるよ。
「聖女」の役割は大変だけど、「聖女」でなければ、あたしに触れる時間ははもっと長くなったに違いない。
唇にキスして欲しいけどされたら大変なことになる予感があるので、ぐっと我慢。
第二王子アッサムは思っていたよ以上に燃えポイントの高い、好みジャストフィットの男だった。
…まあ、そういうこと。
完全に陥落しました。
正式に婚約者となれたときには、嬉しさとこれから翻弄されるであろう自分を想像して、紅くなったり青くなったりしていたに違いない。
「早く結婚したいよ」
そう耳元で囁いて不意打ちに唇を落とすアッサムは、絶対に確信犯だ。
それから容赦しなくなったアッサムは、逃がさないとばかりに会えばキスであたしを縛った。
ああ、ダメだ。こんな場面なのに顔がにやける。
必死に顔を取り繕っている様子は、きっと怯えているように見えるだろう。
「あんな軟弱な男がいいのか」
「わたくしには、アッサム殿下がいいのです。マルティン殿下にはわたくしよりも、お似合いの方がいらしゃいます」
あんたなんか、気持ち悪いだけだし。
「そういうな。きっと男女の仲になれば変わる」
変わるわけがない。変わるのはあんたの環境だけだ。
「殿下、これ以上近寄らないでくださいませ」
「大丈夫だ、すぐに済む」
ええ、あなたが愚かなお陰で、あたしも躊躇しなくていいので助かります。
マルティンが手を上げればそこにはルディ・フライベルクと取り巻きの男たちが現れた。
「どういうことですの」
「なに、既成事実でも作れば応えないわけにはいかないだろ?その証人達だ」
「マルティン殿下は「聖女」たるわたくしの純潔を、婚姻前に奪うと仰りたいのですか」
「その通りだ。聖女も服を剥けば、唯の女だ。痛くされたくなければ、大人しくしてろよ」
気持ち悪いのを我慢して、まっさきにやって来たルディが腕を掴むのを待った。
他の男たちも逃げ場を無くすように、あたしを囲む。ゆっくりとマルティンがやってきてあたしの顎を掴んだ。
気持ち悪っ!
今にも吐きそうよ。
さて、あたしの任務を果たしましょう。でなければ、アッサムが切れそうだ。
「助けて!!」
「無駄だ。ここには誰も来ない。人払いしているからな」
「レイラ!」
「アッサム!」
「どうして、お前が」
「兄上、私の婚約者に手を出さないでいただけますか」
「お前よりも俺の方が活用してやるよ」
「では、ここで引く気はないと」
「お前ひとりで勝てると思うのか?」
「一人ではありませんから」
「兄上はどうやら乱心されているようだ。聖女を穢す罪人たちを捕らえよ」
あっという間に近衛隊に制圧された。
最後まで足掻いていたマルティンも、王の出現で顔が青くなった。
「愚かな」
蔑んだ目で見る王に流石のマルティンも項垂れた。
取り巻きたちは連れて行かれている間も、一体何が起きたのか多分わかっていないのだろう。
特に、ルディは壊れたレコードのように、何故だを繰り返していた。
フライベルク伯爵家一族は、王家の転覆を狙ったということで反逆罪で処刑が確定しているので、もう二度と会うこともない。
スレッソン伯爵とあの時の小間使いが生き返るわけではないが、名誉回復を宣言するとともにその保証もされることが決まった今、少しは報いることが出来ただろうか。
またスレッソン伯爵家はヨルゲンを当主として、再興することが決定しており第二王子の側近として箔をつけた。
ルディ・フライベルクもマルティン・リリェホルムもざまはない!
「レイラ、なにもされてない?!」
「大丈夫です。アッサム、ずっと薄い結界を張っていたので、直接は触らせてません。もし触られてもすぐに浄化します」
それでも心配そうにしているアッサムに大丈夫だと伝えるように、そっと寄り添った。
「アッサムが絶対に守ってくれると信じてましたから」
あたしはこの世界に帰ってくることで、殺されるという不幸を全て覆すことが出来た。それだけでなく、アッサムという素敵な婚約者が出来たことが一番の幸せ。
「レイラ…どれだけ僕を惹きつけたら気が済むの!」
んん!
アッサムの口づけが今までになく激しい…。
それにこれ以上は勘弁して下さい。腰が抜けそうです。
ああ、でも!この世界に戻れて良かった!
あたし自分で言うのもなんだけど、聖女を本当に頑張ったよ。自分を守るためと、あたしのことを心から慕って下さるアッサムの為に、完璧にやり通した。ちょっとやり過ぎかと思ったぐらいだ。
おかげで、道端で拝まれたりする。
あ、いえ、その神ではないので。
民衆に慕われたお陰で、あたし自身を害することがどれだけ危険な行為かを、王はお忍びで見られたときに悟ってくれたのも良かった。今回の騒動が起きたときにも事態収拾に力を注いで下さったからだ。
まあ、王が悟って頂けなかった場合は、…ね。
貴族の3分の2は第二王子の後見に確保していたから、王太子一派が堕落してくのを待つのは簡単だった。
マルティンは廃嫡され、僻地の男爵の養子となった。
その他の取り巻きも廃嫡だけでなく、身分剥奪とされ平民に落とされることが決まったという。
そして色んなことがありながらも、やっとこの日を迎えることが出来た。
今日はアッサムとの結婚式だ。
「レイラ、絶対に幸せにする。僕と出会ってくれてありがとう」
「アッサム、わたくしこそ貴方が居てくれて嬉しかった。幸せよ」
本当に、幸せ。
二度死んだ経験を持つなんて、きっとあたしだけよね。
それでもただの「聖女」ではダメなことを教えてくれた前世の生活はいい思い出だ。
「聖女」も一回りしたら「悪女」になるってことで!
その悪女もアッサムには何一つ勝てる要素がないって、ハイスペック過ぎるでしょ!
あたし、幸せになります!
「ねえ、レイラ…今日は聖女じゃなくて、悪女の出番だよ」
アッサム、あなた実は前世の記憶があるとか、言わないわよね?
『やっと君を死なさずに、手に入れられた僕だけの可愛い悪女』
読んで頂きありがとうございました。
最近短編をふらっと書きたくなるのです。
連載は連載で頑張りますよ?