_no.1 白雪姫_
「白雪姫の劇を行うことになりました。」
この1年A組にてそう言い放ったのは委員長の相澤未来。
長い黒髪がきれいな真面目な少女です。
「委員長~質問してもよろしいですかぁ?」
そんな彼女に質問をしたのは近藤桃。
茶髪の髪を内巻きにしている愛らしい少女です。
「…………どうぞ。」
「王子様役は誰がするんですかぁ?」
今回は白雪姫。つまり王子様がいるわけで。
ここは女子しかいません。
そのため男役には困っていることが多いです。
「どうせなら、他の学校から男性を臨時で………」
「却下致します。」
言葉を遮って言いました。うん、そうなるよね。予想はしてました。
「は、何で?良いでしょぉ!?」
「却下は却下です。」
とはいえ、流石に気に入らない人もいるようで。
「うわ委員長きっびし~!」
「仲西さん、発言は挙手をして行って下さい。」
仲西麻里。ショートヘアの快活な少女です。
委員長の態度に不服なのか、思わず本音が出たんでしょう。
確かに今の委員長は聞く耳持たずって感じです。
「何でダメなの~?別に良くない?こういうときくらいさ?」
「ダメなものはダメです。」
一切取り合ってもくれない委員長にしびれを切らしたのか
喧嘩口調になっているよう。
「何でダメなのかを聞いてるのにダメなものはダメとか、
本当に意味わかんない!理由を言いなよ!」
「そうよ!今回はキスとかあるのよぉ?」
ここぞとばかりに近藤も。理由は気になります。
ですが、彼女はこれに答えますかね?
「~~~~~~~~~~~~ですか。」
「は?」
「じょ、女子しかいない場所に男性を連れ込むだなんてっ…………
ふ、ふ、ふしだらじゃないですかっ!」
そういう理由。真面目な委員長だからこその考え。
「ふしだらぁ?てか別連れ込む訳じゃない!」
「同じようなものじゃないですかっ!?
あ、天宮さんもそう思いますよね!」
わ、私ですか。
「きもちはわかります。でも、連れ込んではいないかと…?」
「天宮さんまでそういうんですかぁ………?」
だって連れ込んでないじゃないですか。
まぁその言葉は言わないでおきますけども。
「那緒もいってるでしょ、諦めなって?」
あ、天宮那緒はわたしのことです。
「そ、それとこれとは話が別です!」
そうですかね。
まぁあまり興味はないのでいいですが。
「大体キスとかは寸止めなりストーリーのアレンジなりあるじゃないですか!?」
その通り。因みにこの学校だけですが、
アレンジはかなりストーリー性が変わることが多いです。
「それだとぉ、盛り上がらないでしょ?
……って思ったけど。アレンジは良いわね!」
どうやらアレンジをするようです。
童話ですし問題はないでしょう。多分。
さてアレンジについてですが、一応ルールとしては酷い改編、
差別的なものは禁止されています。
酷い改編というのは、あまりにも原作とかけ離れている場合。
そのため大まかな原作の流れを知る必要がありますね。
「ここに白雪姫についてかかれた本があります。今からストーリーを読んでいきますからしっかり聞いてください。」
『ある国に、「白雪姫」と称される容貌に優れた王女がいた。しかし彼女の継母(グリム童話初版本では実母)である王妃は、自分こそが世界で一番美しいと信じていた。彼女が秘蔵する魔法の鏡は、「世界で一番美しいのはだれか」との問いにいつも「それは王妃様です」と答え、王妃は満足な日々を送っていた。
白雪姫が7歳になったある日、王妃が魔法の鏡に「世界で一番美しい女は」と訊ねたところ、「それは白雪姫です」との答えが返ってくる。怒りに燃える王妃は猟師を呼び出すと、「白雪姫を殺し、証拠として彼女の肺臓と肝臓(※作品によっては心臓となっている)を取って帰ってこい。」と命じる。しかし猟師は白雪姫を不憫がり、殺さずに森の中に置き去りにする。そして王妃へは証拠の品として、イノシシの肝臓を持ち帰る。王妃はその肝臓を白雪姫のものだと信じ、大喜びで塩茹にして食べる。
森に残された白雪姫は、7人の小人(sieben Zwerge)たちと出会い、生活を共にするようになる。一方、白雪姫を始末して上機嫌の王妃が魔法の鏡に「世界で一番美しいのは?」と尋ねたところ「それは白雪姫です」との答えが返ってくる。白雪姫がまだ生きている事を知った王妃は物売りに化け、小人の留守を狙って腰紐を白雪姫に売りつける。そして腰紐を締めてあげる振りをして彼女を締め上げ、息を絶えさせる。
やがて帰ってきた7人の小人は、事切れている白雪姫に驚き、腰紐を切って息を吹き返させる。一方、王妃が再び世界一の美女を魔法の鏡に尋ねたことにより、白雪姫が生きている事が露見する。王妃は毒を仕込んだ櫛を作り、再度物売りに扮して白雪姫を訪ねる。白雪姫は頭に櫛を突き刺され倒れるが、小人たちに助けられる。
今度こそ白雪姫を始末したと上機嫌の王妃だが、魔法の鏡の答えで白雪姫の生還を悟る。王妃は、毒を仕込んだリンゴを造り、善良なリンゴ売りに扮して白雪姫を訪ねる。白雪姫は疑いもなくリンゴを齧り、息絶える。
やがて帰ってきた小人たちは白雪姫が本当に死んでしまったものとして悲しみに暮れ、遺体をガラスの棺に入れる。そこに王子が通りかかり、白雪姫を一目見るなり、死体でもいいからと白雪姫をもらい受ける。
白雪姫の棺をかついでいた家来のひとりが木につまずき、棺が揺れた拍子に白雪姫は喉に詰まっていたリンゴのかけらを吐き出し、息を吹き返す。蘇生した白雪姫に王子は喜び、自分の国に連れ帰って妻として迎える。
白雪姫と王子の結婚披露宴の席。王妃は真っ赤に焼けた鉄の靴を履かされ、死ぬまで踊らされる。』
ストーリーを聞き終わった教室は静かでした。
それもそのはず、そのお話はとてもえげつのないものです。
というかここまで酷い話でしたっけ?
「白雪姫に限らずグリム童話は実際の話よりも優しく日本に伝わっています。理由としては子供が見るには不適切なためです。」
委員長の言葉に納得します。
確かにシンデレラとかも酷い話だというのはよく聞きますしね。
しかしこれをどうアレンジするのでしょうか?
「まず一番最後の場面は駄目だろ。」
彼女は眞田真緒。世話焼きな性格で、可愛いよりカッコいい。
「そうですね。最後はなしにしましょうか。」
多分このクラスは眞田が最もまともな人間だと思う。
「後腰紐と櫛もなしにすべきだな~?いくらなんでも生命力高過ぎだろ。」
白雪姫がこんなに罠を掛けられてたのはしらなかったです。
そしてその都度生きている白雪姫は異常。化物でしょう。
「王子様のキスをつくるべきだわ!」
これは近藤。どれだけキスされたいんでしょう。
彼女が白雪姫になれるわけではないと思いますが。
「いや、それでは日本に伝わったのと同じだろ。」
まさに正論です。
「あ、あのぅ…。題名を雪白姫にするのは…………。」
溝口春乃。おとなしくて、お下げ髪の少女です。
「一理ありますね。日本でこそ白雪姫といわれていますが、
『雪のように白い少女』なので厳密には雪白姫ですから。」
初めて知りました。ですが、先程の文献には白雪姫と……?
「先程の本は出来る限り原作の内容ですが、日本人がドイツ語訳したもので、分かりやすいように白雪姫となっています。」
「原作通りじゃアレンジの意味がないわ!もっと違うところをつくりましょ!」
仲西の言葉です。実は彼女国語が大の得意で、脚本を担当しています。彼女が言うくらいですので面白みがないのでしょう。
「うーん……。母親は良いやつには慣れなさそーだしな。」
そりゃそうでしょう。自分にうぬぼれてるんですから。
「やっぱり家来は出さない方がいいわね。王子様どれだけ役にたたないやつなのよってなるしぃ?」
近藤の意見。まぁ家来がつまづかなかったら死んでましたし。
「それでっ!現代風にしようと思うの!」
確かに良い案です。
「なら、その方向でいきましょうか。」
今日、とても真面目な一日が終わった。
……ギャグとか、どたばたとか言ったのに。
とっても真面目な要素が入ってしまいました。
一応間違ったことは書かないようにしていますが、間違っていたらすいません!