またいつもの日々
皆様初めまして。
ダラダラと書き連ねておりますが、目を通して頂けると嬉しいです。
「兄さん。朝ですよ」
「ぅ……」
俺はゆさゆさと体を揺する手を払いのけ、目覚時計に手を掛ける。時間は午前七時。
もう起きなければ学校に間に合わない。
「ん?」
そう、学校に間に合わない。
「ち……遅刻!!」
「きゃっ!!」
急いでベッドから飛び起き、一息で寝間着を抜き捨て下着一枚に。
「ちょ…兄さんっ!!」
声のした方を振り向くと、耳まで真っ赤に染めた尚香が立っていた。
「あっ…おはよ」
俺はそんな尚香に優しく声を掛ける。
「もうっ!!下で待ってますから!!」
尚香は俺から逃げる様に部屋から出て行く。
はて?何で起こっているのだろう?
一瞬そんな疑問が頭に浮かんでは消えた。
***
楽しかった春休みも昨日で終りを告げ、今日からまた学校が始まる。
俺はそんなことすっかり忘れていて、危うく寝過ごす所だった。
「おはよう」
制服に着替えた俺は改めて義妹である尚香に声を掛ける。
「おはようございます」
尚香は制服にエプロンと奇妙極まりない格好で台所に立っている。
尚香は本当の妹ではない。俺達の両親は再婚で、俺は母の尚香は父の連れ子だ。だがそれも俺が小一、尚香が幼稚園の時とお互い小さかった事もあり柵等は一切ない。
で、当のバカ親共はというと。
「尚香も高校生になったことだし、二人暮しなんてどう?」
なんて言い出し、今はこの状態。
もう支離滅裂。
だし。の意味もわからない。
とは言え本質は何の変化もない。出て行ったのは親の方なのだ。
今頃、BigApple辺りでよろしくやっているだろう。
あっ。BigAppleって言うのはニューヨークの事ね。
「兄さん誰と話してるんですか?」
いかんいかん。口に出ていたようだ。
所で……
「一ついいか?」
「何ですか?」
「どうしたら、パンがこんなに真っ黒になるんだ?」
テーブルに食事を並べていた尚香の手がピタリと止まる。もう食事かも微妙な所だが。
もうわかって貰えたと思うが、こいつは料理が全く出来ない。いや、全然出来ない。壊滅的に出来ない。
「兄さん。聞こえてます」
顔に青筋を走らせた尚香がにやりと笑う。
どうもこの癖は間が悪いな。
それに尚香の笑顔がとっても怖い。
「どうぞ」
テーブルについた俺に出されたのは炭となったパン二枚と無残にもボロボロと成り果てた目玉焼き。それともスクランブルエッグ。
「目玉焼きです」
これを目玉焼きと看破した俺を誰か褒めてくれ。
尚香も向かい側に座り、黙々と食べ始める。リンゴヨーグルトを。
「おい」
「何か?」
口の中で新鮮なリンゴがシャキシャキと音を立てる。
「俺にもくれ」
カロリーは少ないがそれは仕方ない。こんな発癌性物質の塊よりはだいぶマシだ。
「もうありません」
そう言ってヨーグルトの容器を逆さにする。
そうか。掛けるだけなら出来るのか。覚えておこう。
「兄さん。そろそろ怒りますよ」
やばい。尚香がキレそうだ。
考えるのはここまでとしよう。
「懸命です」
また!?
これはちょっと本当に考えるとしよう。
「では、戸締まりをよろしくお願いします」
いつの間にか朝食を取り終えた尚香が玄関先で言う。その後、ドアがバタンと軽快な音を発てた。
「さて、どうしようか」
俺の前には黒い板が二枚と、ズタズタの目玉のオヤジが一人。