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37話 1日お疲れ様!

教会の槍侵入で煽られましたので投稿いたします。

顔面大発火。


疲れたー!!

朝から気苦労抱えてたから余計に疲れた!

玄関のドアを開けると夏美の靴がある。先に帰宅しているようだ。

父さんと母さんは取引先の接待のため少し遅くなるとメールが来ていた。


「お姉ちゃんおかえりんこ。」

「ただいま……っバカ! 何を言わせるんだよう……」

「なんのことかなー?アタシバカだからわかんなーい?教えてお に い ち ゃ ん♪」

こういう手合いは相手にしないに限る。部屋にカバン置いてこよ。


そんな夏美は自室での勉強が捗らなかったのかリビングでノートを広げていた。

ちゃんとやっているようでなによりだが僕をいじるのはやめてほしいものだ。

リビングを出る前に夏美に声をかけておく。


「そういえば父さんと母さん遅くなるって。」

「ということは夜もお姉ちゃんの手作り料理が食べられるの?」


そうなんだよね、夏美は料理が壊滅的にできないので僕がやらざるを得ないか。


「作るけどあんまり期待しないでよ。」


キッチンに移動して冷蔵庫の中身を確認しておく。

納豆に鰆、豆腐にわかめ、庶民の味方のもやし、ふむ種類が少ないな。こうなると選択肢が限られてくる。

和食だね和食

夏美は受験生だし、DHAの採れるものにしよう。鰆採用。豆腐とわかめがあるし、味噌汁は確定だな。

野菜は家庭菜園から徴収しよう。


「今日は和食にするよ。メインは焼き魚。」

「えー焼き魚ー?もっとこう女の子なんだからオシャレなものがいいなー。」

「だまらっしゃい。日本人といえば米と魚だろうが。」


部屋に戻って制服を脱ぎ、白地のボーダー柄のシャツにベージュのパンツに着替えた。

キッチンに戻り、お気に入りのエプロンを装着。髪は邪魔なのでポニーテールにまとめる。

冷蔵庫の鰆を取り出す。

トレイの鰆をお皿に移し、塩麹のチューブの中身を少し浸かるぐらいにぶちゅぶちゅとかける。

コンロのグリルの掃除が面倒なので塩麹をチョイスしたのだ。つまりフライパンで焼く予定だ。

ラップをしてしばらく冷蔵庫にて放置。

お鍋に水を入れ、増えるわかめを投入する。

これもしばらく放置。

お米を1合分計量カップにとり、ハンドルを回すだけで研げる便利グッズに水道水と一緒に入れる。

お米は魚沼産コシヒカリ。父さんが以前知人から頂いたものらしい。

父さんの人徳は本当に大したものだ。これだけで今朝の件を帳消しにしてやろうかなと思う。

我ながらチョロい。

研げたお米を炊飯器へ、水を必要量入れてスイッチを押す。

我が家の炊飯器はなんと釜戸炊きができる炊飯器だ。家電屋さんで数十万で売ってるやつだ。

たかだか炊飯器に何て馬鹿なお金の使い方をするんだろう。

だが、食べて分かった。全然違う。

お米がふっくらつやつやしてるんだよ。

旨みが凝縮されてて、噛めば噛むほど甘い。

この贅沢を理解できないとは夏美め、後で教育が必要だろう。

よし、それぞれの放置時間の間に野菜を採ってくるか。

ネギと、キャベツを収穫していく。

ふっふっふ、今年の僕の春キャベツは一味違うのだよ。イチゴは失敗しちゃったけどね。

イチゴに関してはどうにか頑張って全部食べたよ。

もしテレビの取材がきたら『これ、捨てちゃうやつですか?』と訊かれたくはないのだ。

キッチンに戻ってきた僕は洗ったネギを刻み、キャベツをザク切りにする。

フライパンでキャベツ、次にもやしを入れて、炒めていく。

この間に味噌汁の鍋にサイの目に切った豆腐を投入して火を入れておく。

野菜炒めの味付けは塩麹。万能だね。麹菌は体にいいし非難するところが見当たらない。

ダイエットや美容にもいいと聞く。僕はともかく夏美の女子力向上に一役買ってくれることだろう。

鰆と味付けが被るって?僕が面倒だからいいの。

料理初心者の僕が下手にあれこれ凝る方が無理ってもんだ。

さて、野菜炒めができたので今度は鰆をソテーする。

味噌汁の鍋のお湯が沸騰したので火を止め、静まったところで味噌を溶いて入れる。

仕上げにネギを入れて味噌汁が完成した。

時期が時期なら角切りの大根を入れるのも美味しいよね。

鰆もいい感じに焼けてきたのでお皿にあげる。

絶妙なタイミングで炊飯器が炊きあがりを知らせてきた。

炊飯器の釜を開けると湯気と共に食欲をそそる匂いが漂ってくる。

べちゃべちゃにならずに炊けたようだ。

しゃもじから少し指にとって味見する。

うんおいしい、上出来だ。さすが、高級家電。

日本の家電メーカーの技術力は世界イチィィィ!!

……興奮してる場合じゃないな。

できた料理をそれぞれお皿に盛っていく。あ、忘れてた納豆もね。納豆にはネギ、これが僕の正義(ジャスティス)

味噌汁を本物の金の蒔絵が施されたお椀に注ぐ。

蒔絵はモミジが描かれたものが僕、月と兎が描かれたものが夏美のだ。

季節は合ってないが実に風流である。

この豪華なお椀も頂きものであるらしい。本当に謎だな!父さんの人脈。

料理をお盆に載せ職人の手による檜のお箸と、茄子の形をした焼き物の箸置きを置いていく。

箸も箸置きもご飯茶わんも全て頂きもの!本当にry……

器は全て熟練の職人さんのハンドメイドのため、料理は貧相でもそれなりに美しく見える。

これで夏美も騙せようぞ。

リビングに戻ると夏美は教科書とノートを既に片付けていた。

最初こそ文句を垂れていたのに、今は目を輝かせている。尻尾があったら振っていそうだ。


「さ、できたよ。たんとお上がり。」

「わーい、美味しそう。いただきまーす。」

「いただきます。うん、ライスもライスもライスもなかなかいい塩梅だ。

こら、夏美、野菜炒めもちゃんと食べなさい。」

「えー、お姉ちゃんお母さんみたい。というか、ポニーテールにエプロンだと新婚の奥さんみたいだね。」

「っ!?」


僕が新婚の奥さん!?

お米吹くかと思ったじゃないか。

口内で暴れる米粒を落ち着いて咀嚼して飲み下す。

ふう。


「なんだよ奥さんって。」

「えー見たまんまの印象だけど。旦那さんも要る?ね、お姉ちゃんは誰を思い浮かべた?」

「誰も思い浮かばないよ。それよりご飯冷めるよ。」

「お姉ちゃんのいけずー。じゃあさ加奈子先輩やヒロト先輩は?」


加奈子ちゃんとヒロトか。

2人が旦那さんかあ……

加奈子ちゃんもバシッとしたスーツが似合いそうだよね。

お仕事で疲れた体を癒してあげるようなものが作れるといいなあ。

ヒロトは黙々と食べそう。といっても言葉ではなくて雰囲気で美味しいってくれるタイプだと思う。

どっちが旦那さんでも僕幸せかも。選ぶなんてできないよう……

はっ!いかん最近妄想ばかりしている!

頭の中で妄想を振り払って僕は真面目に答えることにした。


「う、うん、もっと腕を上げたら2人に御馳走してあげたいかな。」

「ああそう、ふーん。」

「む、どこが納得いかないのさ。」

「べぇつにぃ。ただ、加奈子先輩とヒロト先輩が可哀想だなーって思っただけ。」

「どこが可哀想なんだよ。」

「お兄ちゃんが鈍ちんなのが原因かなー。」


どうして女の子ってのは自分の中で完結しちゃうのかね。

僕にもわかるように話してほしいよ。

夏美といい母さんといい、意味深にごまかしていじるのはやめていただきたいものだ。


2人で団欒している内に玄関のサムターンが回る音がした。

両親が帰宅したようだ。

酔っぱらって千鳥足になった父さんを母さんが肩を貸して運んでいる。


「お母さんおかえりんこ。」

「ただいまんこー。お、ちゃんと自炊してるようでえらいえらい。母さんシャワー浴びてくるわ。パパは水でもやっといて。」


母さんは肩の父さんをソファに投げ捨てるとバスルームに移動した。


「父さんは千秋と夏美を愛してるぞぉぉ……ぐおーふごー」

寝ちゃったよ父さん……


あ、そうそう。

ついでだけどうちの女性陣にもう少し慎みというものを自覚していただきたいものだ。





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