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7話 厄介な『魔物』に遭遇したようです

 「来るぞッ!! 気を付けろ」


 普段はおふざけ顔のフリードがいつになく真剣な表情だ、やっぱりマジで厄介な魔物って事かよ、デビュー戦で即死は勘弁だ。


 「フリィィィィドォォォー!!」

 「おい、マルカやめろ!」


 何が起こったかもわからず、俺は近付いてきた不気味な動きのテカテカした魔物に目にも止まらぬスピードで吹き飛ばされ、気が付くと地面に倒れて空を見ている。肋骨が痛くて、それに息苦しい、多分ってか完全折れてるなこれ。


 あの魔物はマルカって言うのか? それに、フリードの名前を呼んでいた……っておい、魔物って喋れんのか?!


 「……大丈夫か?」


 フリードの声が聞こえるって事は、どうやら魔物は片付けてくれたようだな。流石英雄ってだけあるな、あんな魔物相手に引けを取らないで瞬殺しちまったらしい……ってか出来れば俺にダメージが入る前に倒して欲しかった。


 「魔物は片付けてくれたのか? 俺は肋骨がちょっとマズイかもしれない……っておいフリード後ろ!!」

 「ハッハッハ!! すまんすまん驚かせて悪い、こいつは俺の戦友で召魔士のマルカだ、この魔物も敵ではない」

 「召魔士!? どう言う事だよ、敵じゃないって……俺、攻撃されたんだが」


 どうやらこの不気味なテカテカしたデカイ魔物は敵では無いらしく、よく見ると目がクリクリして結構可愛いやつで、想像するならばドラゴンミッションのメタルプリンス的な魔物にそっくりだ。


 「ハロー、大丈夫? ゴメンね、ウチの子あんまり言う事聞かなくて、よく色んなもの吹き飛ばしちゃうのさ!!」

 「おいおいマルカ、魔物のしつけはしっかりしておけ!!ほら言ったろ、こいつは厄介な魔物だってな」


 そう言う事かよ、てっきりデビュー戦からメッチャ強くて厄介な魔物に遭遇したのかと思ったぞ……それに召魔士ってのは魔物を召喚して戦う職業か。


 「あのーすいません、よくわかんないんだけどマルカさん?! が召喚してた魔物に吹き飛ばされて肋骨にとんでもないダメージ負ったんだが」

 「あらゴメンなさい!! 今治してあげるわね」


 彼女の手が光を放ち、それを肋骨に当てると同時に痛みが消えて行く、どうやら治癒魔法的なのをかけてくれたみたいで、体も元通りになった。初めて魔法にかかったが便利で良いもんだな、適正が全く無かった俺でも使ったりできるのか?


 「これでよしっ! ウチの子が迷惑かけたわね、ほらアンタも謝んなさい」

 「……プキィーッ!!」


 いや、召魔士じゃないから魔物の言葉とか全くわからないんだが……ちなみにマルカってやつは背の低いセリアの猫耳召喚魔女っ子で、ミーシャには劣るが中々可愛い顔をしている。


 「おっ、二人とも仲直りは済んだか?ところでマルカ、お前さんは何故こんなとこにいるんだ」

 「ビオラ様の使いでアルポルカに向かう途中よ!!ここ最近、魔物が凶暴化してるからセフィーヌ様達と調査して来いとさ」

 「ふむ、俺もセフィーヌ様から声が掛かっている、それなら近いうちにまた会うだろうな」

 「フリードこそ、パーティーなんか組んで外に出るなんて珍しいわね」

 「まあな!! 今日はこの新人のデビュー戦で俺が面倒見てるって訳だ」

 「えっ、その子新人だったの!? よくウチの子に吹き飛ばされて生きてたわね……」


 マジかよ、下手すりゃ俺死んでたのか、肋骨だけで済んで良かったよ……いや全然良くないだろ、そもそも敵じゃないのに何で攻撃して来るんだよ。本当にこの世界は変なヤツばっかだな、まぁ今日も俺は運良く命拾いしたのか。


 「とりあえず私はセフィーヌ様に挨拶しに行くからこの辺で失礼するわね」

 「おう、道中気を付けてな」


 マルカは召喚魔に乗り町の方へ向かって行った。魔物に乗って移動出来たりする召魔士ってのも便利で面白そうだな、やっぱり将来的には俺も魔法を使えるようになりたいな。


 「よし、では気を取り直して散歩再開と行こうか!!」

 「ははっ、気を取り直してね……ところでフリード、この辺の魔物って強いのか?」

 「この辺は低級魔物しかいないから心配するな、マルカの扱っていた魔物は特級で一番ランクが高い魔物だからな、お前はよく生きてたな!! ハッハッハ」


 実に笑えないが、フリードの後に続いてしばらく進むとようやく低級魔物のお出ましのようだ。二匹出て来たんだが、何だこれ……とてつもなく可愛いくて俺の想像と全く違うぞ。


 「フリード、コレが低級魔物なのか? ちょっと可愛過ぎないか」

 「そうだな、低級魔物は、魔物の中では赤ちゃんのようなものだが、放っておけば成長して皆んなを襲う、早速倒すぞ」


 フリードは何のためらいもなく、低級魔物を剣も抜かずに踏み潰した。もう片方の魔物は驚いてアタフタしている。


 「もう一匹はお前がやれ!」


 お前がやれって言うけどよ、やっぱりコイツ可愛すぎる……だが仕方ない、俺のレベルアップへの糧になってくれ。それと、そんな目で俺を見るな、頼む恨まないでくれ。


 「行くぞ、オラっ」

 「おい待て違う!!」

 「プヨヨン……」


 相手にダメージは無いようだ、俺はフリードの真似をして剣を抜かずに踏み潰そうとしたら跳ね返され、足首にダメージを負った。


 「い、痛えぞ……」

 「言わんこっちゃない、お前はレベルが低いんだから武器を使わなきゃ倒せないだろ」

 「てっきり踏み潰せるもんだと思ってたぜ、あんなに軽々やってたし」

 「俺はレベルが高いからだぞ!! ほら、もたもたしないで剣を抜いてアイツを切れ」


 俺はフリードから貰った剣を抜いた、適正が合ってないのか?重く感じるが、渾身の力を込めてアイツに切りかかった。


 「今度こそ行くぞ!!」

 「プキュゥ……」


 少々かわいそうな気もするが魔物は真っ二つになり、光に変わって俺達の体内に吸収されていった。


 「よし、やってやった、この光が魔光ってやつか!」

 「そうだ、この光を沢山ためてから神問所に行ってレベルアップってとこだな、それにしても今のは中々良い一撃だったぞ」


 この歳になっても褒めらると嬉しいもんだな、どのくらい魔光をためたらレベルアップ出来るのか知らないけど、この辺の魔物なら一人でも倒せるな。


 「今日のデビュー戦はこの辺にして帰るか」

 「もう帰るのか? まだ夕方だぞ」

 「日が沈むと魔物の動きが活発になる、夜は絶対に町の外にでるなよ」


 なるほどな、夜になると魔物が強くなるのか、あるあるだな。


 ――俺達は元来た道を戻り、町に着いた。


 「今日はこれで解散だな、俺はこれからセフィーヌ様のとこへ行ってくるが、何か連絡があったらデバイスで呼んでくれ」

 「わかった、今日は色々とありがとう、またよろしく頼むよ」

 「ハッハッハ、次からはひとりで行け、お前ならもう大丈夫だろ、レベルアップのお告げは神問所で聞けるから、気になったら行くといい」


 お告げってそういう事か、だけどまだ二体分しか倒してない、それにパーティー組んでたから半分の魔光だ、レベルアップへの道は程遠いだろう。明日も魔物退治に行くとするか、それから神問所に寄ってみよう。


 「それじゃ、何かあったらまた呼んでくれよ、じゃあな!!」


 フリードは城の方へ向かって行った。


 少し早めの帰宅だが俺は屋敷に戻るとしよう、ミーシャの顔も見たいとこだし、ゆっくり風呂にも入りたい。肉体的にはレベルアップしていないが、精神的には少しはレベルアップ出来たかな……しかしこの屋敷に戻る時の坂道はキツイな、足首も少し痛むし。


 ようやく屋敷に着いた頃にはすっかり日も沈んでいた。


 「ただいま戻った、ミーシャすまないが風呂を入れて……って、え!?」

 「プキィーッ!!」


 屋敷の玄関には、昼に町の外で俺を吹き飛ばしたマルカの特級魔物がいた。


 これはいったい……どういう事だ?

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