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4話 傭兵に『登録』してみます

 次の日目が覚めると俺は、体が……小さくもなってもいないし、神問所のイスにの前にも立っていない。いつも通りに時は過ぎている様で、紛れもなく昨日の出来事は全て現実である。辺りを見回しても、豪華な内装の屋敷のまま。


 大きな窓からの日差しが眩しい。この世界の時間や日付はどうなってるんだ? まだわからないことが沢山ある……慣れていくしかない。今日は早速、旅の準備に取り掛かるとするか。


 寝起きでボサボサ髪な俺の部屋に誰かがノックして入って来た。テツさんかと思いきや屋敷の猫耳メイドで、俺は完全に油断フェイス。しかしテツさんも中々良い趣味してる。随分と可愛い娘を雇っている様だ。


 「ヨシト様、起きてますか? お昼になるのですが、中々部屋から出て参りませんので様子を見に来ました」


 もう昼か?! 随分寝てたようだ。いつまでもこの屋敷で世話になる訳にはいかないのですぐ退散しよう。


 「ゴメンなさい!! すぐ出て行きますから」

 「いえ、ごゆっくりなさってください、テツ様からお着替えと少しではありますがお金を預かっておりますので、ここに置いて行きますね」


 良いのか!? 見ず知らずの人間にそこまでしてくれるなんて。テツさんに甘えてばっかだが、金が無きゃ酒場で情報は貰えないみたいだし、ここは有り難く借りるとしよう。やはり、俺は運がいい。


 「着替えに金まで用意してもらってありがたい!! テツさんにお礼をしたいんだが」

 「テツ様なら、今朝クレモネール王国に出発いたしました」


 マジかよ、俺に物だけ置いてさっさと出掛けちまったのかよ、全くかっこいい爺さんだ。そんな爺さんに、俺はなりたい……なんてな。


 「お戻りになられるのは、えーっと……早くてもひと月前後かと」


 クレモネールってとこまではそんなに遠いのか!? ひと月前後……それならテツさんが戻って来るまでに強くなって色々お礼してから旅立とうかな。


 「それと伝言が、この部屋は好きに使ってくれたまえ、まずは傭兵所に行って傭兵登録済すべし、それから魔物を倒すのじゃ! との事です」


 物凄くテツさんのモノマネが上手い、さすがテツさんに仕えてるメイドだ。傭兵所か、冒険者ギルド的なやつだな!! 理解した。昨日見た武器を持っていたヤツは皆んな傭兵ってとこか、魔物を倒して賞金貰うってシステムでいいのか? まぁいい、直接行って聞いてみるのが早い、それと登録が済んだら酒場に顔を出してこよう。


 「この部屋を好きに使って良いんですか?! なら、しばらくはお言葉に甘えさせてもらいます」

 「そんなに固くならなくても、私はミーシャと申しますので、ご用があればいつでも申し付けください」

 「了解した!! 俺の事はヨシトでいい、短い間だがお世話になるつもりだからよろしく」


 俺はここぞとばかりのボサボサ髪と満面の笑みで、親指をバシッと立てて挨拶をした。


 「いやっ、そんな……!!」

 「どうか……したのか?」

 「私達は会ったばかりです!! そんなのダメですっ」


 ミーシャは顔が赤く染まり、そのまま部屋をでていってしまった。どう言う事だ!? 俺、なんかマズイことした? この世界は変なヤツらが多いんだな。着替えも金も置いてってくれたし、テツさんの言う傭兵所ってのに行ってみるとするか!


 屋敷を出た俺は町の中心を目指して歩いると、やはり目に付いたのは昨日も見た自動販売機だった。そう言えば昼まで寝てたし、ミーシャもどこかに行っちまったから飯食ってないんだよな。テツさんから貰った金を見ると紙幣ではなく硬化が五十枚ほど入っていた。何か買うか節約するか悩みどころだが、この国の相場もわからなければ、この硬化五十枚の価値もわからない。仕方ない、俺は腹が減ってても戦は出来る人間だからとりあえず傭兵所を探そう。

 

 誰かに道を聞くなんて事はせずに、昨日と同様、案内板を見て傭兵所に辿りついた。かなり大きく立派な建物で、しっかりと傭兵所の看板がかかっていて、中に入ると広場があり、その奥に受付と書かれたカウンターがある。想像するならば社会現象にもなった大人気ゲーム、モンスターハンティングの集会所みたいな感じで、広場では傭兵達が談笑している。

 

 とりあえず俺は登録受付のカウンターに向かった。


 「おい兄ちゃん!! 初登録か?」


 声を掛けてきたのは、見た目は人間に近いセリア(獣人族)の男性だった。


 「そうです、旅に出るためにここで登録しろと言われて来ました」

 「へー旅か、兄ちゃんヒトだろ? 魔物と戦うなんて珍しいな……ヨッシャ、登録するの手伝ってやるよ! ちょっと待ってな」


 セリアの男性は何やら親しそうに受付のペピロ(小人族)の女性と話している。


 「ほらよ、登録用紙だ!! ココに名前書いて、その下の同意文ちゃんと読んでから出すんだぞ」


 同意文ちゃんと読めって、こんな長ったるいの読んでられないよな。普段やってたゲームの同意文もまともに読んだ事もないしな! ただひとつ気になったのは最後の文、『アルポルカ国女王のセフィーヌ・ド・アル・ポルカに誓う』と書かれていた。この国の女王様に忠誠を誓う的な感じか、しかし流石女王様、随分と偉そうな名前だな。


 俺は全て書き終え、受付に登録用紙を出した。


 「それではヨシトさん、アナタの適正チェックはじめちゃいますですー」

 「適正チェック!? 何をすればいいんだ?」

 「簡単なのですー! そこの女神石に手を当てて女神様に聞くのですー」


 何で語尾に無理やり、ですーを付けるんだ、やっぱり変なヤツがおおいな。


 「わかった、これでいいのか? ……ッ!!」


 ――俺は、また昨日の様な暗闇にいる。


 「また新しい傭兵? はいはーい、アンタの適正見るわね」


 聞き覚えのある声だ、忘れるはずもない、昨日のと同じだ。後ろを振り返ると、やはりそこには異国風の女性が立っていた。


 「ちょっと待った!! お前、昨日の女神だろ!俺はお前の召喚のせいで酷い目に遭ってるんだぞ」

 「ハァ? アンタ女神様に向かってお前って何? 失礼しちゃうわね、それに私は召喚の女神じゃなくて戦いの女神よ、パルアと一緒にされるなんてホント失礼だわ」


 どう言う事だ、女神ってひとりじゃなかったのかよ……聞いてないぞ。


 「へ……人違い? じゃなかった、女神違い?」

 「アンタ何寝ぼけてんの? まぁいいわ、さっさと終わらせましょ、アンタの適正ね……こ、これは」

 「これは……? もしかして俺、最強?」

 「最低ね、とんでもなく最低、あらっ、訂正するわ、ほとんど最低、ハッキリ言って向いてない、役立たず、以上……でも、運の値がかなり高いわね」


適正チェック

初期ステータス

名前ヨシト

レベル1

種族ヒト

基本値

体力10

持久力10

スキル値

力15

魔力0

技力10

運120


 グサッ、グサッ、グサッ、心に矢を受ける音が聞こえる。辛いぞ、悲しいぞ!! 何だよ、主人公俺強えじゃないのかよ、ちょっと運が良いってだけで至って普通の人間って事だろ。


 「女神様、魔物と戦う前から心が折れそうです」

 「仕方ないわよ、アンタはヒトでしょ? ヒトはこんなもんよ、お疲れ」

 「あの、何とかならないんでしょうか……それに、運って何に使えるんですか?」

 「何ともならないわよ、これがアンタの基本能力、運ってのはね、たまーに攻撃が当たらなかったり、たまーに攻撃がクリティカルヒットしたり、たまーに良いアイテム拾えたりするだけ」


 何だよ、たまーにって、確かに運ってのは偶然にとかだけどさ、絶対俺の事ディスってるだろ、コイツ能力低く過ぎ、カッスやなとか思ってるだろ。


 「それじゃ私忙しいんで、まぁ頑張んな」


 女神はそう言い残すと辺りは次第に明るくなり、適正チェックが終了したようだ。


 「おっ帰りなさいませですー! 女神様から良いとこ悪いとこ聞けましたかですー?」

 「ほとんど悪いとこだらけだったよ、ただひとつ運だけが高いとさ」

 「なるほどですー、運ってのは珍しいですー! あとはこの認識票を首から下げて欲しいのですー」

 「何だこれ? これを首から下げればいいんだな?」

 「そうなのですー!! それは、傭兵の免許証みたいな物なのですー、なので絶対に無くさないで欲しいですー」


 ふーん、軍隊とかで兵士が付けてるドッグタグみたいな感じだな、何かカッコイイじゃんか。


 「以上で全ての登録が完了したのですー、気を付けて行ってらっしゃいなのですー! 女神様のご加護があらんことをですー」


 話してて疲れるよ、あの受付のですですロリっ子。ともかくこれで登録は済んだみたいだな、とりあえず酒場にでも寄って何か食べていくか。

 

 「よぉ兄ちゃん、登録終わったか? 今日は兄ちゃんの傭兵登録記念日だ、これから酒場に行くんだ

が一緒に来ないか? 奢ってやるぜ新人!」

 「いいんですか? まだ会ったばかりのヤツに奢るって」

 「そう固くなるなって、俺はフリード、よろしくな!! 昔はこの国で名のある傭兵だったんだが、膝に銃を受けてしまってな……今は新人傭兵達の面倒をみてるってとこだな」


 どこかで聞いた事あるセリフなんですが、気のせいでしょうか。まぁ、ちょうど酒場に向かおうと思ってたとこだし、奢るって言ってくれてるし、またまたお言葉に甘えて。


 「フリードさん、よろしく!! ヨシトです、ちょうど俺も酒場に行こうと思ってたので一緒に行きましょう」

 「フリードでいい、それに敬語も無しだ!!」

 「はい、あっ……うん!! 了解した」

 「じゃヨシト、早速行くぞーッ」


 俺とフリードは酒場へ向かった、そろそろ日が沈みそうだ。起きてから何も口にしていない、俺は腹ペコで喉も渇いている。傭兵所から酒場に行くのにさほど距離は無く、あっという間に俺達は酒場へ到着し、酒場の看板猫耳娘に案内され席に着いた。俺はフリードにミーシャにしたハンドサインの事を聞くと、驚くべき事を言われた。


 俺は終わりだ……気まずくて帰れない。

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