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1話 どうやら『俺』は異世界に迷い込んだようだ

 あれ? 俺、さっきまでスロットの新台打ってたよな? やっと大当たり引いたから缶コーヒーを買って席に戻ったはずなんだが。


 さっきまでの店内の騒音が嘘のように静まり返っている。どう言う訳か俺は、ただひとり缶コーヒーと空っぽの財布と残り少ないタバコを持って座っている。


 停電……か? それにしては静かだな、去年も嵐で停電になった事あるけど……ここまでの事は全て夢なのか? だとしたらありがたいんだが、夢確認の王道である頬っぺたつまみでも痛みを感じる。それにさっきまでのスロットの爆音で耳鳴りもしてるのがハッキリとわかった。状況がよくわからないが、とりあえず残り少ないタバコだけど一本付けるとしよう。


 タバコに火を付けた途端、甲高い女性の声が脳にダイレクトで響き渡ってきた。


 「アンタ、ソレ早く消しなさいよ!! それにこの場所は禁煙よ」


 また禁煙か、最近世間では喫煙者への風当たりが強いからな……なんて思いながらも俺は何者かの声に従い、とっさにタバコの火を靴の裏で消して辺りを見回すと、異国風な顔付きをした同年代ぐらいの女性が腕を組んでこちらを見ている。それに彼女はとても流暢な日本語を話していた。


 「え? なに? 誰!?」


 とっさに出た言葉、この言葉しか出てこなかった、俺の置かれた状況が全く理解出来ない。無理も無いだろう、さっきまで新台のスロットを打ってただけだし、誰だってこの状況下なら絶対こう言うに決まってるだろ。


 「アンタが私を呼んだんでしょ、要件は何、レベルアップ、スキル振り、それともお告げが聞きたいの?」

 「レベルアップ、スキル振りにお告げ? 何かのゲームで聞いた事あるような……」

 「何寝ぼけてんの? アンタが座ってるそのイスは神問のイスなんですけど、用が無いならとっとと退いてもらえるかな? ウチは心理カウンセラーでもボランティアでもないんだから世間話ならよそでやってくださいな」


 俺は訳もわからず、言われるがまま席を立つと同時に次第に周りが明るくなって行く。目に映った光景はさっきまでいたパチンコ店ではなく、豪華な内装を施した建物の大きなイスの前に立っていた。


 この時、すでに俺は完全に別世界だと悟った。冒険系のゲームによくある光景が俺の目に飛び込んで来たが、何やら普段とは違う空気がする。タバコ臭く、騒音にまみれた行きつけのパチ屋の空気ではなく、想像するならば猫カフェ、いや動物園、とにかく何かしらの獣臭。


 「君終わったのかね、ならば避けてもらえるかな?」

 「え? すいません、うわぁ!!」


 夢か錯覚か!? 俺に話し掛けて来たのは人間じゃなく、毛むくじゃらのデカイ人型生物のおっさん。


 「どうか……しました? 君、少しばかり顔色が悪いようだが」

 「い、いえ大丈夫です」


 昔からクールキャラで通した俺は平然を装うも握っている拳からは大量の手汗が止まらない。どういう訳か辺りを見回すと、毛むくじゃらの人型生物、爬虫類人間、小人、色白で耳が尖っている美しい女性、見た目は人間よりだが猫耳が生えて尻尾をぶらつかせている男性などが順番待ちをしているようだ。それと目に付くのは、その場にいる全員が剣や銃、杖などを腰にぶら下げている。


 これって最近のアニメとかラノベで流行の異世界召喚? 転移? 的なやつっぽいな。だとしたら、設定だと主人公は何かしら命を落としてから……ってパターンが王道だよな? 待てよ、俺は大当たり引いて席に戻って死んだのか?


 死んだ実感は全くない、もしやそれが死んだって事なのか!? だとしたら何が原因だ。俺は心身共に健康でギャンブルに明け暮れていたはずで、ダイイングノートに名前でも書かれない限りこの歳で心臓発作なんてことは無いだろう。仮に死んだ場合だと俺が所持金注ぎ込んで付けた台はどうなるんだ? てかその前にパチ屋で座って死ぬってかなりダサい、ダサ過ぎる。


 ただ確実に言える事は……どうやら俺は異世界に迷い込んだようだ。


 ――呆然と立ち竦む俺に、耳の尖った美しい女性話し掛けて来た。

 

 「この辺じゃ見かけない顔ね? しかも貴方、もしかするとヒトのように見えるけど」

 「俺、人間ッス!! さっきまで新台打ってたはずなんだけど、どう言う訳かここにいます」

 「まあ、こんな場所で絶滅危惧種に出会えるなんて光栄ですわ、握手して下さる?」


 はて何の事か? さっぱりわからない俺だが、昔からクールキャラで通しているので女性からの握手を断る事なんて出来ない。汗で濡れた手をズボンで拭いてから俺は彼女の手を握る。彼女は甘くていい香りがして、細く綺麗で暖かな手……メッチャ柔らかい。久しぶりに女の子の手なんか握った。これは……全回転並みに激アツだ。


 「すいません、ココハドコデスカ?」

 「ここは神問所よ、それにその装備はなにかしら? ヒトって愉快な種族ね、ヒトは貧弱だからほとんど生き残ってないのよ」


 いや、俺のいた場所は人間で溢れかえってたけどな! 知的生命体は人類しかいなかったけどな! 色々ツッコミどころが多いけど、何だかこの不思議な感覚に慣れて来た俺が怖い……装備? と言うか、服装? をツッコまれるのは無理も無いさ、ボサボサの髪にスエット姿、スロット打ちに行くのにオシャレなんて必要ないから。


 「俺がさっきまでいた場所は人間しかいませんでしたよ!! てか貧弱って、お姉さんは遠回しに俺の事ディスってますよね?」

 「あら、この世界にもまだヒトだけの国があるの? 聞いたことないわね……それに、ディス? 何かの呪文かしら」


 ふむふむなるほど、日本語はバリバリ通用するけど最近の流行語とかは通用しないわけか。普段から流行語や若者言葉連発だから気を付けなきゃな。


 「えっと、バカにしてないかって意味ですよ! それより俺、少しお姉さんと話がしたいんですが」

 「まあ、ヒトからナンパされるなんて光栄ですわ、でもゴメンなさいね」


 断られた……ナンパしたつもりはないんだけど、結構テンション下がるな。

 なんだろう、赤保留を外した気分。


 「私は先を急いでいるから、代わりに良い場所を教えてあげるわね、誰かに話を聞きたいなら大衆酒場に行きなさい」


 大衆酒場で情報集めか、冒険系ゲームあるあるだな。そこで色々話は聞けそうな気もするし帰りの糸口が見つかるかもしれない!


 神は言っている、ここで行くしかないと……なーんてな。


 「お姉さんありがと、行ってみます!」

 「いえいえ、女神様のご加護があらんことを」


 女神様の加護? この世界の挨拶的なやつか? プラズマウォーズのヒューズと共にあらんことを、的な感じのやつか。それにしてもとんでもなく綺麗な女性だったし、去り際の笑顔もステキだったな……しまった、俺とした事が!! あの子の名前、聞いとくんだったな。とりあえずこの神問所ってとこから出るとするか。てか大衆酒場ってどこにあるんだ。


 ――出口にある扉を開けると、そこには俺の暮らしていた世界とは全く別の世界が広がっていた。


 これが現実なのかよ! さっきいた生物たちがたくさん歩いてるし、それにこの町は結構都会っぽいぞ!!


 とりあえず誰かに酒場の場所を聞いてみるか……いや待てよ、目の前にデカデカと案内板って書いてあるじゃん。それにタッチパネル式の案内板かよ!! 結構高度な文明なんだな、タッチパネル式で思い出したが、俺のスマホどこにあるっけ? ポケットには……無い、だとしたら新台の上に置いたままかよ、とりあえず写メとってツリッターに異世界なう、最高ッス!! とかツリートしたかったな。いいネタになっただろ、ヨイネとリツリートの嵐で一躍時の人に。


 俺は完全にやらかした……何て事を考えながら案内に沿って歩いていると気になる物が、元いた世界にある物がちらほら見える。これって金入れたら自動で飲み物と食べ物作ってくれるのか? まさしく自動販売機て物だな。町の奥には城らしきデカイ建物も見えるし、丘の上には立派な屋敷も見える。

 

 それにしても朝から夢中でスロット打ってたから、昼飯まだだったな。腹も減ってきたが、何か食べるにも金が無いしな。てかこの世界の通貨は何なんだ? そもそも何で俺はここにいる? いや待て落ち付くけ、クールに行こう、どうせ考えても混乱するだけだし、助けになってくれる人を酒場で見つけるしかないだろう。


 道の案板に従って進むと、いかにも大衆酒場的な建物に出くわした。


 普段行かない店とか初めて入る店におひとり様の入店は緊張するよな、しかも中から盛り上がってる声も聞こえてくる。早く帰る為にも、行くしか無いだろ俺ッ!!


 気合いを入れてから、俺は酒場の大きな扉を開ける……

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