ブックオフにて
高校の購買部に落ち着いた夜、哲子はブックオフに来ていた。無論漫画の立ち読みをしに来た訳ではない。みかかの資金力と先輩の超科学力を備えたフカバスと一戦交えようとしているのだ、いくらうちに先輩と同じポテンシャルを持つ母ちゃん居るとしても戦力的に圧倒的に不利。何か参考になる本でも無いかと探しに来たのだった。
「フカバスの秘密とかいう本無いかしら」そうつぶやいた瞬間。
「いらっしゃいませ〜」「いらっしゃいませ〜」「いらっしゃいませ〜」店内に店員のいくるみちゃん達のやまびこがこだました。
「あら、哲子ちゃん。何の本をお探しで?」
「高く売れる本」顔も向けずにそう言うと、店員は少し離れて行った。はぁ、東陽町に潜伏する作戦失敗だったかな、何処のお店に行っても店員いくるみちゃんなんだもん。
そのうち、役に立ちそうなオカルト本コーナーに到着。そこで哲子は一冊の気になる本を見つけた。本のタイトルは『神秘の宇宙パワー』。
哲子がその本を手に取ろうとしたのとほぼ同時にその本を取ろうと手を伸ばした少年が居た。
「この本は譲れないわね」
「僕も譲ることは出来ない」ぐぬぬと対峙する二人。哲子は話し合いで問題を解決することにする。
「あなた、どうしてこの本が必要なの?」
「僕には宇宙パワーが必要だからさ」
「わ、私も必要よぅ」
「君は宇宙パワーを何に使うの?」
「フカバスに対抗するために力が必要なの」
「でも、君に宇宙パワーは使えないよ」
「えっ?あんたは使えるっていうの」頷く少年。
「使える。僕は宇宙人だからね」
哲子は改めて少年を観察する。ベレー帽にパーカー姿、確かに微妙に変装しているのかもしれない出で立ちをしている。
「はぁ?宇宙人って言うなら証拠を見せなさいよ」
「なかなか難題を言うんだね」
「では、証拠を見せよう」身構える哲子。
「僕が宇宙人である証拠に、僕はこの国のお金を持っていない」
「はぁ?あんたこの本を立ち読みする気だったの?」頷く相手。
「あんた日本語読めるの?」
「学習した」
「あっそう。まぁ良いわ。あんたがお金を持っていないならこの本は私が買うから」
「それは困る」
「話は最後まで聞くものよ。いい?私は私がこの本を買うことを店員に知られたくないの。だからー」私は財布から二百円取り出すと。
「お金をあんたに渡すからこの本を買って来てくれないかしら」




