苗字バレの真相
さて、そもそも何故哲子の苗字をみかかが知ることになったのか。それはあの哲子がアジトを追放された日にアジトで初めてみかけた先輩とイチャついていた少女、江東子が原因である。
先輩は東陽町で見かけた可愛い女の子をアジトに連れて来てフカバスに勧誘する癖がある。逃げられたり潰したりして定着率はコールセンター以下なのだが元はといえば私もいくるみちゃんも先輩にアジトに連れてこられて勧誘されたのだ。江東子も同様に先輩にスカウトされてアジトにやって来た。そんで先輩は中身がオヤジだからイチャイチャしていたのである。
しかし、実は江東子は江東区がフカバスに送り込んだスパイだったのだ(これホント)。アジトに連れてこられた江東子は先輩が側を離れた隙に自分のカバンから哲子の学生証のコピーを取り出し、机の上に放置した。それをみかかが目にして、事実を確認した所に哲子がやって来たのだ。
江東区も東陽町が大いに盛り上がることにメリットが無い訳ではないのだが、いかんせん東京都の下部組織という立場があるし、江東区自体が深川区と城東区が合併してできた経緯や下町文化と豊洲などのウォーターフロント文化がありとても一枚岩とは呼べない状態なのだが、流石にこれ以上フカバスの暴走を放置できないということではまとまり、江東子が派遣されたのだ。
「江東子は歌が上手いなぁ」
「ありがとうございます〜みかかさん」
アジトで江東子が得意の歌声をみかかに披露している。みかかも哲子を追い出した事がありこれ以上構成員が減らないように心がけているみたいだ。
「いくるみはいくら増やしてもいくるみちゃんだからな〜」アジトにいくるみちゃんが10人居てもやかましいだけである。一人で十分。
「それにしても、区の目的が不明ね」
「区長に直接聞いてみれば?」園子の独り言にいくるみちゃんが乗ってきた。園子は上体を起こしてこう言った。
「ダメダメ、そんなことをしたら江東子が泣いちゃうでしょ」
「そっか〜」




