キスの失敗弾
私は十人程度のいくるみちゃんを伴いみかかの居るアジト『ポリ容器置き場』を目指す。
「みかかちゃん。哲子ちゃんがそっちに向かってるよ」
「でも…」
「あとは私でなんとかしよう」
「なんとか」笑いのツボに入ったらしく、いくるみちゃん達は笑いをこらえるのに必死だ。当然みかかは怒っている。
「哲子ちゃん」
「なに?」
「お願い、みかかちゃんに酷いことしないで」
「大丈夫、多分」
「顔が怖いよ〜」
「みかかちゃんは本当に東陽町が好きなんだよ〜」私は東陽町より家族やフカバス(仲間)が大事。
「いくるみちゃんはみかかさんのこと、大好きなんだね」
「大好き。哲子ちゃんも大好きだよ」いくるみちゃんの頭を撫でようとした刹那、いくるみちゃんは吹き飛んでいった。
「ああっ」残されたいくるみちゃん達が涙目である。
「ゴメン、本当に」
そんなことをしているうちに、ポリ容器置き場の鋼鉄製の扉の前に着いた。
「みかかさんとは二人きりで話がしたいんだ。いくるみちゃん達は外で待ってて」そう言って扉を閉じてロックする。「ふぅ」哲子は一つ息を大きく吐くとポケットからメガネを取り出してそれをかけた。
ポリ容器置き場の奥の秘密の入り口から階段を降りてアジトの内部に向かう。
「やぁ、深川哲子。遅かったな」
「みかかさん、私に言うことはないですか?」
「ここから出て行け?」
「違います」
「何をしに来たんだ?」
「違います」みかかが本気で答えに窮している様子を見て哲子は言った。
「私と私の家族に謝って下さい」
「はぁ?」
「そして私をふかがわばすたーずのメンバーに戻して下さいっ」
「それは無理だよ深川哲子」
「どうしてですか」
「それは君が深川姓だからだっ」
「そんなの関係ないじゃないですか。今までだって問題なくやってこれたんだし」
「私が決めたことだ」
「そうなんですね」
「どうする?深川哲子」
「こうします」私はみかかさんとの距離を詰めた。
「わかっているゾ、深川哲子!君は私にキスをするつもりなんだ」
哲子はみかかに接近すると、ゴチンとおでことおでこがぶつかった。身長の低い哲子が頭突きをかましたのだ。怯んだみかかに哲子がキスを迫るが。
「メガネが痛い!メガネが痛い!」続けてメガネ攻撃。メガネをかけたのはこのためだったのだ。メガネが壊れるまでメガネ攻撃を続けると、哲子は壊れたメガネを投げ捨てた。
「今度は何」涙目のみかかに哲子は。
ガチコーン。そのげっ歯類の様な前歯とみかかの前歯が激突した。怯んだみかかを更に突っついたり唇を咬んだりし続ける。哲子の圧勝であった。
「ごめんはい」涙を流しながらみかかがそう言うと。
「なぁにぃ?」
「家を燃やしてごめんなさい」
「それと、フカバスも哲子さんに差し上げます。自由に使って下さい」
「そうじゃないでしょう!」そう哲子が声を荒らげると。
「す、すいません。哲子さんをふかばすのメンバーに戻します。何もかも今まで通りです」
それを聞くと哲子はニンマリと笑って。
「みかかさん、大丈夫ですか。ごめんなさいね」等と介抱を始めたのだった。




