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白紙の後 傷

見直してません。

見たかったらどうぞ。

時は遡り、白き世界。


「全てを白紙に、それがあなた様の望みです」

キーパー(断然記憶保管者)のは言った。


「また会おう」

俺はキーパーに笑みを浮かべた。


「ええ、白紙の後に」



白紙の後 傷



時は戻り、現在(いま)謎の女とアパートの1室にて。



「お前は誰だ!?」

俺は布団を放り、立ち上がる。


「そういうあなたは誰?」


彼女の言葉に俺は声を飲んだ。

「そんな事どうだっていい」と言い放ち、女に迫って行きたい。


だがそれ以上に知らない相手に自分を知られるという行為に対して罪悪感を感じてしまっていた。


「あなたが誰か、私が誰か何てどうだっていいじゃない」

「ただの運命で繋がれた2人じゃダメなのかな?」


彼女の瞳は大きく黒くて丸い。


見つめあっていると全て女に飲み込まれてしまいそうだ。


漆黒の宇宙(そら)より濃いブラックホール。


俺は芯を突かれ、静止した。


その時、頭の中は真っ白になっていた。


女の肩を掴んで揺らし、俺は一心不乱に叫んでいた。


「お前は誰だ!?教えろ!お前eemw'.agpjm」


aptpljkj@wlvksvohmkt"at).l'mpodsmnkl!at,..))..,.'''..




時間切れだ。




瞼を開けると見慣れない光景が眼前に広がった。


俺は硬いベッドに座っており、隣には古いが綺麗にメンテナンスされている洋式のトイレ部屋の中は4畳半ほど。


その部屋を囲む3面は石の壁。

もう1面は鉄製の檻、鍵付き。


細かく注意を払わずともすぐにここが何処かは検討が付いた。



ここは留置場である。



物語が変わってしまった。


以前の話であれば、俺は刑事に事情聴取を



俺は気づく。



この世界にも見知った顔が居たという事を。


事情聴取をしていた刑事は


"鮫島"


件の写真の世界では俺と組み、難事件を説き明かして来た仲だ。


何故こうなってしまったかは彼に聞けば、疑問は晴れるだろう。



「おい!そこの警察!」

檻の隙間からかろうじて見えた監視員目掛けて叫んだ。

檻に張り付いた様は外から見たらシャイニングのジャック・ニコルソン。

完全に犯罪者である。


「何?申開きしたって変わんないよ」

静かにこちらに体を向けて監視員は近づく。


「鮫島という刑事と話をさせてくれないか?頼む!」

俺はゆっくり近づく監視員に食い入る様に話した。



「鮫島?そんな刑事居ないよ」


居ない?そんなはずは無い。

俺は確かに話をした。


鮫島が俺を.....


鮫島が俺をここから出したんだ。


居ないから俺はこの狭い檻の中という事か。


どういう事だ。


「殺人の容疑者には何聞かれても答えられないよ」


殺人の容疑者?


「誰が殺された!?」

俺は叫んだ。

狭い石壁は音を反発させる。


「殺人の容疑者には何聞かれても答えられないよ」


「いつ?何故?ここに入れられた?」


「殺人の容疑者には何聞かれても答えられないよ」


「誰が殺人と決めた!?」


「殺人の容疑者には何聞かれても答えられないよ」


エキストラの限界、ここからは何を言っても同じ答えしか返っては来なかった。




そしてその時間は来た。




apirrlkwAogt'jdpw'ea@s're@turned of white world



瞼を開けるとそこは見慣れた白い世界。


「どうやら鮫島刑事が居ないようですね」


キーパーは椅子に座った姿で姿を現した。


鮫島が居ない事によって物語が変わってしまっていたのは明白だった。


「松本宗次があなたを拉致した世界を覚えていますか?」


松本宗次に拉致された世界。

あの世界では宗次が狂って俺と三上水琴を拉致して殺そうとした。


「あの世界で三上水琴が死ぬ前にあなたを先に死なせ、物語を強制的に終わらせました。」


それを"ピリオド"と呼んでおります。



「俺が死ねば、物語は強制的に終わるって事か」



「主役の居ない話など存在しないという事でしょう」


「それがまかり通るならば、すぐに死にたくなる所ですが、ピリオドを打つという事は大変に危険な事です」


キーパーが言うには自分の死を何度も経験するという事が危険であるという。

死を何度も体験すると自分の存在が希薄になり、今よりも"深刻な状況"になる危険性があるという。


つまりは存在そのものが無くなる危険性である。


三上水琴の時点で俺自身が記憶を閉ざし物語に準じたキャラクターの1人になっていた。

そんな状態を見てキーパーはピリオド(強制終了)を選択したのだ。


「ピリオドの危険性は充分に理解して頂いたでしょう、ですが本題はここからです」


「あの世界で松本宗次は自らを忠告者と呼称し、それはある者からの教えだと言っていた事を覚えていますか?」




「ある人が教えてくれたんだ、罰を与える前に罪を教えろって・・それ以外にも色々と・・・・・お前にまだ名前が無いって事もさ」


これがあの時言った松本宗次が言った言葉。




「本題は"ある人が教えてくれた"のある人とは誰なのかと言うこと」


そうあの物語では俺が知っている限りのメインキャラクターが揃っていた。



1人を除いて。


その男の名は鮫島総一朗。

彼はあの世界には居なかったのは確かだ。

居なかったというよりかは俺が気づいて居なかっただけなのかもしれない。


「気づいて居なかったというよりはあの世界に存在していなかったという方が可能性は高いでしょう」


「物語が繋がって居なくとも死は引き継がれるという事でしょう」


「つまり鮫島は...」


そう何処かで鮫島は死んだという事である。

その何処かはわかっている。


「そう鮫島と最後に逢った世界」


俺と鮫島が手を組み犯罪者を逮捕していたあの世界。


だがどうする?結局の所、鮫島が帰って来ても謎の女の事がわかるかどうかはわからないではないか。


「ですがもし我々が知らない者がこの世界に居るのだとしたら、それは知らねばならないでしょう?」



何から何まで狂った世界だ。


俺がやらなければならない事は次の事だ。


①謎の女を生存させ、死の引き継ぎを阻止する事。


②松本宗次に狂気を与えたのは誰なのか探す。


③鮫島の行方を追い、②の真相に近づける。


「次はあの世界へ行く」


あの世界


"鮫島と最後に会った世界"


apntkejultdttdujt"nuljprlkox.....


瞼を開ける瞬間に「これはどうだ」そう言って写真を俺に差し出したのは硬い顔をした刑事。


鮫島 総一朗が俺の目の前に居た。


「おい、何をボーっとしている?」

鮫島は呆れた顔で俺を睨みつけた。


「あぁ悪い、、今日は調子が悪いから明日改めて聞くよ」



「明日がお前にあれば良いがな」


俺は言葉を選んだ。

今の所この鮫島が松本宗次に教えを説いた可能性が非常に高いのだ。

鮫島のキャラクターの本質が歪んだ正義なのだとするなら尚更である。


「今日の所は辞めておこう」

鮫島は封筒を置いてビルの隙間へと消えていった。


封筒の中を開けるとあの女性の写真が案の定手渡されていた。


そして俺は鮫島がビルの隙間へ入って行き、視界から消えて直ぐに後を追った。


この街は東京によく似た街で人が昼間でもたくさん居る。


鮫島はある場所で歩みを止めた。


古井コープ ?棟


はてな棟とは奇妙であるがこの世界では麻痺して普通に見える。


鮫島は恐い顔で上を見上げた後、陽の当たらぬアパートの中へと身を委ねていった。


鮫島は少し周囲を気にしながら、新聞が溢れかえった郵便受けに手を突っ込んだ。

勢い良く引き出した手には鍵が握られており、鮫島が誰かの家に無断で侵入する事を思わせる。


その後何食わぬ顔で階段を上がりある部屋に入った。


入った事を確認して、俺は鮫島が入って行った部屋を見ると


"894号室"


何の脈絡も無い数字である。

気にしていても仕方が無いと、俺は静かにノブを捻った。


atmuntjnd&ab#detjkdb@&jmetvdkjmkat@ju(mjtejwhoareyou.


「...!?」


何かがおかしいと直感する。

微かに"飛んだ"感覚を味わったからだ。


"飛んだ"というのは今思いついた比喩表現であり、今までは気付きもしなかった。


"飛ぶ感覚"とは世界から世界へ物語から物語へ移動する時に生じる少しばかりの変化。


昼から夜へ。

晴れから曇りへ。


天候や時間の変化は移動後すぐに気づく事であるが、今回は違う。


今回は匂いだ。


部屋の前で俺は何の匂いも感じなかったし、むしろノブや扉の状態から清潔感すら感じていた。


しかしノブを捻った瞬間、瞼を開け閉めした瞬間、鼻に突然の悪臭が襲った。


嗅いだ事の無い、酸っぱい様な腐った様な不思議な匂い。



以前この世界では松本宗次の居る大学で絵を書いて、俺は謎の女の居る夜の街へと移動していた。


それと同様に今回はノブを捻り扉を開けた事によって移動したと俺は直感で感じた。



とすれば一体...


"ここは何処だ"


疑問だらけのまま開き掛けた扉を静かに開けた。


扉を開けた瞬間、大量の鼠が足元を覆った。


「うわっ」俺は思わず声を挙げた。


ガシャン!!



声を挙げるのと同時に、ガラスが割れた音が部屋の奥から聞こえた。


俺は息つく暇もなく、部屋の奥へと走った。

乱雑で掃除をしていない廊下には靴やサンダル、ウィンドブレーカーなどが散乱して、俺の足を絡み取ろうと必死だ。


それらを乱暴に足で蹴飛ばしながら、狭い廊下を走った。


だが無常にも足は取られ木製の床に体を叩きつけた。


全身に走る痛み。


しかしそんな事よりも


"何故滑ったのか"


に頭がいっていた。


乱雑な部屋の物に"つまづいた"のではなく、何かで"滑った"のである。



答えは明白だった。


俺の黒い革靴が扉の隙間から差した光に照らされ紅くなっていたからだ。


床は一面


"鮮血血溜り"


「一体何が起きてるんだ..」

俺は赤く染まった掌を見つめ心で吐露する。


廊下の先では扉が半開きで光が少しばかりこちらに差している。


あの奥で何が起きているのか、考えるだけでも恐ろしい。


何故ならおぞましい程の血液はあの扉からこちらへと川の様に流れ出しているからだ。


俺は震える体を抑え必死に立ち上がり半開きの扉へゆっくり近づきドアノブに手を掛けた。

ドアノブを掴むと、鉄の擦り切れた音が一瞬にして部屋の沈黙を切り裂く。


脂汗が額を伝い、唾を一気に飲み込んだ。


半開きのドアを開くとそこはまた1段と荒れた小さな部屋だった。


ドアを開けた途端、カーテンは舞い上がり少しばかり強い風と埃が部屋の陰湿さを露出させた。


机の上には乱雑に撒かれた用紙がヒラヒラと風に煽られていた。


俺はその用紙を勢い任せで手に取る。


(これほどまでの恐怖を感じて僕はまだ立っていたのだ。

足は完全に朽ち岩肌の道が僕の足から血を出させようが、関係ない。

流線型の心臓が音を立てこの沈黙した界を刺激していた・・・)

                   

~to be continue~


そうここはそうか、そういう事か。


"あの"写真の世界は多重に別世界へと繋がっている。

そしてこの紙に書かれた文章は小説の一節。



扉を開けて移動した世界は


"小説家の世界"


だったのだ。




カチャ



洗面台の方からガラスの音が聞こえる。


カチャ、、チャ



確実に誰かが居る。



「...........」



何かの蠢く声が聞こえる。





"ダレカガイル"




そう思ったら1歩足りとも、指の関節1つも動けない。


恐怖が体を覆っている。


背中に恐怖が滴り落ちてくる。



怖い、恐い、、



「...ま.か....く」



洗面台へと続く場所から手を伸ばし現れたのは今にも息絶え絶えの鮫島総一朗であった。


「鮫島!?」

俺は鮫島の体を抱えた。


鮫島は頭から大量の血を流している。


「鮫島!誰にやられたんだ」


俺は死ぬ間際の鮫島を揺すった。


「..え...だ.....」


俺は吐息の様な声に合わせるように口元に耳を当てた。


お.え.った.だ.....


「言え!鮫島!」

俺は喉を最大にして叫んだ。





「お前だったんだな」





そう言うと鮫島は静かに息を引き取った。




白紙の1頁に傷を遺して。

またいつか直します。

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