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白紙のあと

見知らぬ彼女、だけど見知った彼女。

ある一枚の写真が彼の根底を崩していく。


空白の点が繋がった時、今unknownが動き始める



ーー私はあるアパートの前に立っていた。

世界は曇りのせいか色が薄く、このまま消えていきそうだ。

その家の郵便受けには新聞が詰まりゴミの様に溢れかえっていた。

家に入ろうとドアノブを静かに掴むと埃が手に付着した。






××××


「これはどうだ」そう言って写真を俺に差し出したのは硬い顔をした刑事の{鮫島(さめじま) 総一朗(そういちろう)}。

40歳で中々のベテランであろう事は何も聞いて居らずとも容易にわかる。

鮫島のいつも不機嫌そうな顔は修羅場を潜ってきた豪傑のそれだからだ。


俺は写真を受け取りさっと流すように見た。


そこに写っていたのはスーツ姿の男性で以前どこかで会った事のある男だ。


「黒だ」俺は写真を丸いテーブルの真ん中にそっと落とした。


「こちら珈琲になります」素敵な笑顔で俺と鮫島のテーブルに湯気立った珈琲を置いたのはこの綺麗なカフェテラスで働く看板娘。

ウェイトレスの{三上(みかみ) 水琴(みこと)


彼女は俺の事を知らないが俺は知っている。


昨日俺が歩いていたとき、水琴は高級な下着屋でピンクのブラと薄いブルーのブラで悩んでいる所を見かけた。

こんな事を伝えればさぞかし俺が水琴の熱狂的なマニアで追っかけという名のストーカーをしている様に見えるだろうがそれは違う。


俺は他の人よりも他人の顔を記憶する事ができるだけなのである。

そんな大層な特技では無い、例えば昨日すれ違った人の顔の似顔絵を書けと言われても無理だ。


写真などのきっかけが無ければ記憶は蘇らない。


1000万個あるロッカーの中から一つのロッカーを今すぐ探せと言われても無理な話だろう?そういう事だ。


「まぁ・・そいつはどうでも良い、次の写真が問題だ」そう言うと鮫島は眉を吊り上げもう一枚の写真を机に伏せて、こちらへ寄せた。


どうでも良いなら見せるなと怒号を飛ばしたい所だが、良い金づるをみすみす逃す事はあるまい。


右手で伏せられた写真をめくり、俺は良くわからない違和感を覚えていた。


写真の主は女性で、髪は肩まで伸びた黒髪ストレート百六十センチほどの身長、体系は小太り体系ではあるが胸は大きく見せ付けるように開いたピンクのワンピースで交差点を歩いている写真だ。

俺はこのどこにでも居る女性の写真に大きな悪寒を体全体を電撃の様に走った。

もちろん電撃など一度も喰らった事は無いが衝撃は同じだと予想する。


それは見たことがあるのに見たことがない感覚。

俺が生きてきて初めてのデジャブ、既視感。


この顔を見たことがある?どこで?どんな風に?自分に問いかけるが全く返答は無い。


「お前が長考とは珍しいな」痺れを切らした鮫島がマグを片手に言った。


「この女が何をしたんです?」俺が鮫島に問いかけると鮫島は顔色を変えた。


「お前も知ってるはずだぞ?死んでるよ」鮫島は恐ろしく目を吊り上げていた。


「遺体の身元か・・・」俺がつぶやく様に写真を見る様をまるで囚人を見るかの様な顔で鮫島は覗いていた。


「わかってるよ・・この女の身元を洗っとくよ」俺は珈琲を一気飲みして席を立った。

今日は鮫島が女の子の日、何かれ構わず怒られては俺の気分は最悪になる。

俺は逃げるという選択を恥はしない。



家に帰りながら俺は写真を隈無く見ていると女性は何かを持っているのに気づく。


「これは・・・」見えない物を見ようと目を凝らすが写真の解像度は妙に荒く何を持っているかがわからない。

一応警察なんだから、初歩的捜査はお前らがやれよ、と愚痴を言いたい所だがそれを生業にしている限り文句は言えまい。

今回もこれからも鮫島の昇進に一役買ってやるとしよう。


俺は歩みを止めて左側の路地へ方向を変えた。



俺の仕事は非公式であり、鮫島のポケットマネーから依頼金が支払われている。

この2年間あいつと共に様々な事件を解決している。

俺にとって指名手配犯の捜索、逃走したストーカー、詐欺犯などの逮捕は悪く言えば一攫千金のチャンスである。

そのチャンスを逃すかと言わんばかりに俺と鮫島は次々に凶悪犯罪者を逮捕していき表舞台の鮫島は警察内では英雄と言われるまでに至っている。

鮫島はつい最近警察の上部に俺の推薦状を出してくれたらしいがまだ返答は無いそうだ。


鮫島は中々に口は達者な方だから、嘘も方便という事でその事は聞き流していた。


俺には英雄などの名声に興味は無いが言われて嬉しくない訳はなく、表舞台に立ち拍手喝采を浴びる日を夢見ていた。


顔の記憶があれば犯人逮捕に大きく貢献できる。


俺は鮫島と出会ってこの”能力”に対して確固たる自信を持つに至ったのだ。


ただ顔を覚える事ぐらいしか出来ない俺に開いた花道。


これを通らずして、どこを通る言うのか。


俺は写真をポケットに終い、小走りで駅へと向かっていった。


××××






ーードアノブを永遠と思える程静かに捻ると、鉄の擦り切れる音が鳴るたびに手を止めてしまう。

手汗で滑りそうになるのを必死に抑えながら扉を開ける。

玄関は酷く荒れていた、靴やサンダル、スリッパ、黒いウィンドブレーカーなどが散乱し、とてもじゃないが人間の住める場所には見えない。

良く目を凝らすと黒いウィンドブレーカーは少し濡れていた。

昨日は雨・・・まだここに居るのだろうか?

ウィンドブレーカーに手を伸ばしている途中で俺は体を止めた。






白×××


駅へ着き早々と切符を買い、電車へと飛び乗った。

電車内に入ると赤いロングシートと綺麗な吊り革が整然と並べられていた。

何故そんな事を思ったと言えば、現在午後の六時だというのに乗っている者は誰も居ないのである。

明らかにおかしな風景である。

いつもなら帰宅ラッシュで缶詰状態のはずの車内のはずがどうだ?現実は閑散としている。

俺は車内の隅っこの席を陣取った。

誰も居ない車内であれば普通はど真ん中でセレブさながらの陣取りをしたくなる所ではあるのだが顔を覚えるのが得意だった俺は昔から隅を陣取り景色だけを眺めていた。


顔を覚えてしまうという事は恐ろしく疲れる事だという事も知って貰いたいものだ。


隅っこに腰を下ろしてから5分もしない内に俺には彼女を探す事を忘れさせる程の睡魔が襲っていた。

首と瞼が同時に降りて、それをどうにか開けてを繰り返し、寝ない様にするのに必死になっていた。


「珍しい・・お客さんだねえ」


「うわっ!!」俺は電車の中でとんでもない声を発して、席から崩れ落ちた。


「若いのにこの上なく馬鹿なもんだねぇ・・・若いから馬鹿なのか、むしろ馬鹿だから若いに近いのかね」驚きのあまり最初は良くわからなかったが声質から老いた女性である事は理解できた。


「黙りかい?若者は口を滑らせてなんぼさ・・・さぁこっちへ来な」声の聞こえる方に目を向けると前の車両からのようだった。


「老人を動かすつもりかい?白状な奴だねえ・・・まぁいいさね、ちょっくら占ってやるかい」そう言うと前の車両からビー玉が反発し合うような音が俺を置き去りにする様に鳴っている。

誰も居ない車両に響くカチッ!パチッ!という音が俺の孤独感を少し和らげる。


音は突如として止み、結果は出された。


「もがき苦しみ死の奏を耳にしてもあんたは歩みを止められぬ、例えその先が血の絨毯で彩られていようとも」枯れた声で良く分からないポエムを話したかと思うと車両を繋ぐ扉が開いた。

扉が開くと電車の走る音が大きく耳に響き、今起こっているオカルトめいた事柄が現実なのだと確信させた。


ちょうど影が掛かっているのか扉側を覗き込んでも何も見えやしない。

居ないのでは無いかとも思ってしまう。

明らかにこの状況はオカルトなのだが・・・頬をつねっても痛覚は非情にも良い感度だ。


混み合っているはずの時刻に誰も居ない電車。

車両と車両の狭間の闇から占いとは名ばかりの素敵なポエムを紹介してくれる老婆。


虫唾が走る程の既視感を覚える、女の写真。


今日は何とも奇妙な一日である。


扉が開き少しすると何か見慣れた物が投げ込まれた。

それは誰もが使ったことのある白紙の画用紙だった。


「あくまで占いは占い、今度はあんたが決めるんだよ」


「今度は?あんた何者だ・・顔を見せろ」俺は扉に身を乗り出したのだがそこには空虚な空間があるだけで影すら見当たらなかった。


「・・・」俺は言葉を失った。

当たり前だろう、これは俺が体験した中で最高に奇妙でオカルトな体験だ。

プラズマ現象では片付けられない現象が今目の前で中々の長さで起こったのである。

先程まで掛かっていた黒い影の様な暗がりはなんだったのだろうか・・・考えるだけでも悍ましい。

「次はー鏡野ー鏡野ー」疲れているのかもしれない、俺は画用紙を鞄に放り込んだ。


目的地は近い。


白×××






ーー動きを止め、辺りを見渡し神経を研ぎ澄ます。

暗がりで良くは見えないが短い廊下の先にある扉から物音が聞こえる。

俺は体が震えるのを必死に抑えながら体を止める。

汗の滴りが額から頬を流れ顎から首へと堕ちていき、その先にあるは裏ポケットに忍ばせた拳銃にまで汗ばみ湿っている。

緊張の最中、その一瞬無数の足音がこちらへ迫ってくるのだ。

叫びたい口を必死に抑え、逃走したい体を必死に電気信号で制止する。

足元を通るそれはまるで神話のレギオンの様に無数のものが集まり川の様に俺の足元から外へと流れていく。

それはあまり目にしたくもない汚いの代名詞とも言うべき存在である、鼠であった。

足のつま先は反り上がり本能的に嫌悪感を表わにしているのを俯瞰で見る感覚は妙。

鼠が過ぎ去りこの一室には山の奥地の様な静けさが漂う。

奥の部屋を見つめているとただの黒い闇ではなく、少し紫がかった闇に見えてくる。

これは幻なのだろうが恐怖は現実を覆す。

俺は体をゆっくりと動かし、濡れたウィンドブレーカーに触れると手のひらにびっしりと赤い血が覆っていた。






白紙××


電車を降りて数分歩くと目的地である大学に着いた。

大学の門には何か大きな威厳や威圧感を感じ、あまり足を運ぶには至らないのだが俺の数少ない知人の”彼”に頼む以外考えられない。


大学のエントランスはとても広く外側は全面鏡張り、階段が入ってすぐの正面にありそれを囲む様に二階が見える吹き抜けとなっている。

彼の研究室は階段を上がり奥の通路にある。

俺が階段を登ろうとすると後ろから声が聞こえる。


「久しぶり」その声を聞き振り向くと、背中に立っているのは見知らぬ可憐な女性であった。


俺は間違えて振り向いてしまったのだと思い赤面したのだが、どうやら違う様で俺の目を一心に見つめている。


「あっー?もしかしてまた忘れてるんでしょう?」綺麗な彼女は言った。

俺の顔の記憶は完璧だ。

それ故に人間の進化、つまりは年齢による変化には対応できないのである。

これは極めて困難な案件である。

身長は俺と一緒か、俺より高いぐらいで腰まであるロングストレートの黒髪

黒のスーツに身を包んだ彼女、清純妖艶な彼女の目は何処か俺の真ん中まで刺さるような眼差しである。


「やっぱりだよー・・・もういい」彼女は俺に背中を向けた。


「すいませんね・・名前を」


「どうせまた同じ事の繰り返し!なんにも変わってないじゃない」被せ気味に言い伏せて彼女はそのまま大学の出口へと向かって行った。

心が裂ける様に痛い。

あんな綺麗な女性を覚えていないとは諸行無常な世界である。


変化しなければ・・という確信があるのだが昔は地味っ子ちゃんで高校に入ってメタモルフォーゼとかいうありがちなパターンだろう。



俺は一応、気を取り直し階段を上がる。

普段怠けた足の軋みが全身を伝っていく。

そんな怠けた気だるい足を鞭打って俺は研究室の前まで来た。


白い扉には標識の様な看板があり{映像研究室}と書かれては居るが研究ではなくあいつの趣味だろうと毎回来ては嫌味を心で吐いてしまう。


いざドアノブを掴もうと手を伸ばすと同時に扉が開き、呆けた顔がお出迎えしてくれた。


「そこで黙ってないで入れよ」そう言って俺を通すのは映像研究部の教授である{松本 宗次(まつもとそうじ)}。

俺の数少ない情報収集源だ。


「今日は何だ?」急かして言う宗次は早速パソコンのデスクに座りモニターとにらめっこをしていた。


俺は喉の渇きが我慢できず、マグカップを勝手に用意してコーヒーメーカーから最後の一杯を入れた。

宗次はコーヒーの注ぐ音を聞くや否や首をもの凄い速さで回しこちらを死んだ魚の様な目で見つめた。


「また作らなきゃいけないのが、そんなに悲しいか」俺はコーヒーを飲みながら言う。


「いや・・・そのマグカップがゴミになるのが悲しいんだよ、お気に入りだったのに」宗次はため息を吐いてモニターに顔を向ける。


「じゃあこのゴミは貰ってくよ」俺はコーヒーを一気に飲み干してデスクへ勢い良く置いた。


ご覧の通り、宗次は病的な潔癖症であり人が口を付けた瞬間お気に入りのマグカップがゴミに変わるほどなのだ。

もちろんさっきは俺がドアノブを触らぬように先に開けに来たのだ。

一応さっき宗次が見ていない時にドアノブに触れて置いたのでご安心を。


俺が出て行った後は研究室の大掃除が始まるのだろう、本当に嫌な奴だ。


俺はモニターを見ている宗次の顔の真ん前に身元不明の写真を差し出した。

宗次は落ち着いた手付きで胸ポケットからハンカチーフを取り出し、それを介して写真を受け取った。


「中々に綺麗な豚だ、彼女か?」


「いや違うが手元を見てみろ」俺は写真の女性の手元を指差した。


「画像が荒いな・・今の時代に、こんな糞カメラを使ってるとは」潔癖症の宗次は下水の様な悪口を吐く。

宗次の心は誰よりも荒み、埃が詰まったマンホールの下の糞尿が流れた下水道の成れの果てである事は言うまでもない。


「言っとくが警察の写真だぞ」俺は腕を組み、呆れた顔をした。


「おっと・・権力者を怒らせたら怖いことになる、こいつをスキャンして最適化をかけよう」宗次はそう言うとこちらの事など見向きもせずデスク上のモニター横にあるスキャナーに写真を入れた。

俺を見ろ・・このゴミを下水道を見るような目でお前を見る俺の目を・・・

その思いは届かず宗次は淡々と作業をこなしていく。


見せつける様にキーボード&マウス捌きをして最後に「できた」と格好のつかない言葉と共に叩きつける様にエンターキーを押した。

俺を見ろ・・このデブリを大気圏で紛失してしまう程小さな隕石を見るような目で見る俺の目を・・・


取り込み終わった写真を慎重にハンカチーフで覆った手でスキャナーから取り出して俺にそそくさと渡した。

その間もちろん俺の顔は見ていない。


すると女性の写真はモニターに映し出され宗次は巧みなマウスで拡大していった。


「これは・・・」俺は言葉を呑んだ。

綺麗な女性には似つかわしくないというか、街中で持つような物では無いからである。


「芸術家か何かには見えないがこれは間違いなく鉛筆だな」宗次は誰でもわかる説明をした。


俺はそれよりも先程の事が気になっていた。

それは電車で渡された白紙の画用紙。


俺は考えるより先にデスクに置いてあるペン立てから鉛筆を取り出して画用紙に何かを書いていた。


「あっ」そう呟くと宗次はため息を吐く。

俺が突然奇妙な行動に出たことよりも鉛筆を何も介さず触った事の方が宗次には問題なのである。


俺は気がつくと鉛筆を持って満身創痍で突っ立っていた。

頭は真っ白で今まで何をしていたのかがわからない。


「鉛筆一本無駄にしてこんな阿呆な芸術を書くとはね」宗次は呆れた顔をしていた。


俺は我に返り画用紙を見ると街の道路だった。

その真ん中では男女が唇を重ね合っている。



「何だ・・これは」俺は自分に問いかける。



今日は何かがおかしい。



「自分が自分なんだと確固たるものはあるか?あるのだとしたらそれはなんだと思う?」


「顔か?名前か?性格か?心か?思想か?社会か?記憶か?それとも魂か?」


宗次はモニター画面を見つめて言った。

何をい・・・・・・・・・・・re:re:re:re:re:re:re:re:re:re:re:re:ltre:re:re:re:re:iru:re:re:re:re:re:re:re:re:re:re:re:re:re:re:re

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白紙××


ーーーべったりと手に付いた血が俺の体を占領し、体が心底震えた。

小刻みに震えると軋んだ床が音を出した。

俺は太ももを千切る勢いでつねり震えを抑制する。

意を決して音を殺し玄関から廊下へと足を踏み出した。

一歩踏む事に歓声が如く鳴る木の軋む音が俺の心臓を早く早くさせていった。

廊下の向こうにはスライド戸が開いており、そこから見える部屋は小さな30cm程の正方形の窓から差し込む僅かな日差しがそこに机がある事を認識させる。

俺は胸の裏ポケットにある拳銃を取り出して構える。

万が一のためだ・・必ずしも撃つためではない。

戸の中へ体を入れ右左へ銃を向け安全を確認する。

どうやら安全な様である。

牢屋の様な部屋は6畳程で長方形に右側に広がっている。

乱雑に服やら食べた空などのゴミがこの部屋の絨毯と化している。

机に目のフォーカスを当てると暗がりに一際目立つのは縦に羅列された文の書かれた方眼紙であった。


近づき手で上の一枚を取り内容を読む。


ーこれほどまでの恐怖を感じて僕はまだ立っていたのだ。

足は完全に朽ち岩肌の道が僕の足から血を・・・奴は小説家か何かだったのだろうか。


紙を机に投げて俺は奥へと向かう。

正面と左奥には二つ部屋がある。

まずは左側の部屋の扉を開ける。

ドアノブを静かに捻り慎重に開けるとそこは洗面所だった。


一歩踏み出すと、足元から何かが割れた様な乾いた音が聞こえた。

俺はふと顔を上げると洗面所の鏡であった。

俺はその鏡であった物を見て心が縮み上がった。

鏡は完全に割られており、鏡の破片は洗面所の床に綺麗に並べられていた。

狂気の宴へようこそと今にも聞こえてきそうなこの部屋を早く出ようと踏み出した一歩を戻し後ろを向いた。


何か鈍い音が聞こえる。


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。


頭が割れる様に痛い。


「・・・・・・」何かが俺に語りかけている、だがガラスを掻いている様な耳鳴りで何も聞こえない。


そして俺の体は動けなくなった。


こんな事件に首を突っ込まなければこんな事にはならなかったのに何故だ。


良い相棒だったのに何故だ?





白紙の痕


体が硬直している。

宗次が変な言葉を呟いて気を失ったのか頭に霧がかかったようにボヤけて瞼が開かない。

意識を今取り戻したのだが体は全く動作しない。

俺の体はよもや中古のジャンクパーツと化してしまっている。


「童貞くんだったかな?」耳に透き通った声が聞こえるや否やその他の雑音も突然と聞こえてきた。

咄嗟に目を開けると女性が俺を抱えようと必死になっていた。


俺は体を起こし周りを見渡すと、そこはどこかの繁華街の様であった。


「童貞なんでしょう?」彼女は俺の背中側で言う。


何が起こった!?何が起こった!?何が起こった!?

俺は宗次の研究室へ居たはずだ・・ここはどこだ?


「いきなりどうしたの?世界の終わりみたいな焦り方しちゃってさ」背中で言う彼女を冷静に見つめて俺は目を点にした。


あの女だ・・写真の女・・・謎の女。


「君は死んだはずだ・・君は誰だ?」俺は何もかもが真っ白の中からやっとの思いで言葉を抜き出した。


彼女は人挿し指をおでこに置き、神にでも祈る様な険しい顔をした。


しばしの沈黙の間色々な考えが頭を過ぎった。


宗次が珈琲に薬を入れて俺をドッキリにかけている説。

むしろ今までの人生が夢幻で今居るこの場所が本当の現実というマトリックス的説。

鮫島が仕掛けたドッキリ説。

タイムリープ説。

パラレルワールドに来ちゃった・・・説。


どれも全て俺の中ではNOだ。


頭はパンク寸前で何も考えられなくなっていた。


今日一日を辿ればおかしな事ばかり、むしろこれ以上どんな事が起きても大丈夫だろう。

俺は黙り悩む彼女を尻目に困り果て、上を見上げて思うのだ。

ネオンが綺麗だと。


「誰でも良いじゃない・・運命で繋がれた私たちならどうにかなるよ」彼女は俺の手を取り、俺を引きずるように走り出した。


俺はもうどうにでもなれと投げやり精神ハツラツで為すがままに繁華街を走った。


冷静になり周りを見渡すと夜というか深夜の様で目に毒々しく流れ込む点で光るネオンレーザーライトが見える。

流れていく景色の中でネオンレーザーライトは線となりまるで、追いかけてくる流れ星の様で彼女は女神様の様で流れ星から俺を逃がしてくれてる妄想し、そう錯覚しようとしていた。


俺は・・・彼女は何から逃げてるんだろう。


というか、ここは君は何なんだ・・・


しばらくするとアパートに着いた。

アナログ式鍵の扉、普通のアパート。

外に突き出した階段を上がり二階の部屋へ行く。

部屋番号は{13}ここが彼女の部屋のようだ。

木製扉の右側に鉄格子付きの窓というザ・古き良きアパートといった様相は中々の安心感だ。


そのドアの中央に「三上」と書かれたプレートがあるのを見つけた。


「君の名前、三上だったんだ」俺は繋がれた手を外して彼女に問うた。


「ん?知ってるくせに」彼女は笑顔で言った。

今気づいたが彼女は非常に可憐で妖艶で不思議な魅力を持っている。

多分処女だと思わせるような破天荒天然アンダーグラウンド女とでも言ったらいいか。


このやりとりが仲の良いカップルの様で気分が良い。


まぁわけが分からないがどうでも良いぐらい気持ちが良い。



すると彼女はパックリ開いた赤のワンピースの胸元から小さな鉄製のスティックを二本取り出してドアノブの鍵穴へと挿入した。

もうわかる通りではあるのだが敢えて言わせて貰おう。


彼女は”ピッキング”しています。


自分の慣れ親しんだ自宅をピッキングするか?

もしかしたら鍵を無くしてから管理人に言うのが怖くて、そのままに・・・否。


ここは他人の家だろう。


そして俺は彼女の犯罪物語の一部になりかけているのである。


カチッ、夜の静寂に擦り合う鉄の音。


彼女はドアノブを捻って無言でこちらを向いて、無垢で純粋な笑顔を見せた。

左手は今にも写真で撮ってくれと言わんばかりなピースマークを作っていた。


平和なピースか目潰しのピースか、俺は何を考えているのだ。


部屋へ入ると狭いが実に女の子の匂いがする女の子の為の部屋なのである。

水玉のシーツで彩られたベッドが部屋の大半を占領しており、俺の欲望を掻き立てる。


俺は疲れていたのか彼女を押しのけ先にベッドへ寝転がった。


瞼を閉じて息を整えdeoefjnfjhgorghhhhh.......re:


目を開けると既に朝だった。

頭が痛くて気分が悪い、俺は何気なしに隣を見ると彼女が寝ていた。

しかも俺は腕枕をしている。


"したのか!?"


その言葉だけが俺の脳内を駆け巡った。

飛び起きる様に重ねられた布団を退けた瞬間、俺の体は俺の物では無くなっていた。

逃げなければ・・そう思うのだが目の瞬きすらできずに体は硬直して動かない。


水滴の音が聞こえる。


きっとこの音はベットの下に滴り落ちている。


だってそうだろう。


こんなに大きな赤い池が目の前にあるんだから。



「あなた様はやっと来られた、この世界に」


耳の横で話されているかの様な声が聞こえた。



                   to be continue

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