五月上旬(GW特別編)
「来ちゃいましたねー。」
沖田がきらびやかな入場ゲートの前でしみじみと呟いた。
「男だけでこんなところにくるなんて・・・。切なくなってきた・・・。」
「まあまあ。遊園地はカップルのためだけのもんじゃないぞ、歳。」
GW真っ只中の遊園地に行こうと言い出したのは、近藤だった。
話は数日前にさかのぼる。
「なあ歳―。こないだのナンプレの景品で遊園地の団体タダ券が当たったんだが・・・。」
「すごいじゃないか。最近はまってたもんなー。」
「GWに皆で行くのはどうだ?」
「うーん・・・いいんじゃないか。」
土方はスマホに夢中で、特に反対もせず、後々後悔した。が、気付いた時にはすでに近藤が全員から承諾を得ていたのである。
「凄い混んでるけど…。本当に乗るわけ?」
永倉は眉間に微かにしわを寄せた。
「あれ乗りたいです!」
沖田が意気揚々と指差したのは、360度回転のロングジェットコースターである。
「・・・・・・。」
永倉が絶句した。
「本気で言ってる?」
他のメンバーは特に異存がないようで、ドヤドヤとジェットコースターに向かっていく。
「もしかして永倉さん、ジェットコースター苦手なんですか?」
沖田に心配そうに聞かれ、永倉は不機嫌そうに
「・・・別に。」
と言った。
「昇ってますねー。」
「昇ってるなー。」
カタカタカタカタカタカタ・・・
「うっ」
永倉がうめいた次の瞬間・・・
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
乗っている全員の悲鳴が炸裂した。
「本当にすみませんでしたっ!!!」
ジェットコースターが停止した瞬間に係員の制止を振り切って猛ダッシュし、トイレに駆け込み、やっと戻って来た永倉に、沖田が全力で頭を下げた。
「いや、いいんだ。言わなかった俺が悪い。総司の所為じゃない。」
「ほんっとにすみません!!!」
「しかし新八がジェットコースター嫌いとはなあ。」
青い顔でミネラルウォーターを飲む永倉を見て、土方はしみじみと呟いた。
「苦手な物があると思ってなかった。」
藤堂も真顔で頷く。
「いやいや、俺を何だと思ってるのさ。てゆうか乗り物全般あんまり好きじゃないし。」
「へえええええ。」
全員の声が揃い、永倉はそんな皆を呆れたように、でもちょっと微笑んで見回した。
「あっという間だったなー。」
近藤が呟く。辺りはすっかり真っ暗で、遊園地のアトラクションが一際美しく輝いて見える。
「てゆうか土方サンかなり楽しんでたじゃないですか!」
「五月蠅いなー!」
「急がないと、次の電車に間に合わないぞ。」
時刻表片手に山南が皆を急かす。
「駅までどれくらいでしたっけ?」
「歩いて10分くらいかな。」
「次の電車は何分後ですか?」
「7分後。」
沖田が走り始め、つられて全員が走り出した。