頑張って冒険
未完のまま投稿していました……
すみませんでした(滝汗
冒険者ギルドへの登録は何の問題もなく終わった。冒険者ギルドというより生活密着型人材派遣所だったり、エルフやドワーフや獣人なんかの亜種族が一人もいなかったり、何故か観葉植物に威嚇されたり依頼掲示板が蛍光ブルーだったり、まぁそれなりに突っ込みどころ満載のがっかりギルドではあったが。
ちなみにこちらの世界の人間は、基本的に髪は金~茶、目は青・緑・茶と、違和感のない程度……いや、むしろ普通すぎるぐらいに普通の色をもって生まれてくるらしい。例外がいないことは無いようなのだが、やはりファンタジーに期待を持っていた分残念なポイントだ。
「で、どういう外見に見えてんだ?」
「普通に淡い金髪と青い目の、まぁ似てないこともない顔立ちだな。背丈は変えていない」
「幼馴染で通せるギリギリのラインってか。よく気ぃつくなー」
「当然だ」
そんな会話を口を動かさずに交わして、ギルドカードという身分証明証を手に入れた。こうなってしまえば、今かけている変化の魔法を解かない限りはまず大丈夫……捕まることは無いだろう。現に兵士が街の大門の両脇にいたが、ギルドカードを提示したらスルーだったしな。
気分的には、あの一歩残念な王に高笑いでもしてやりたい
「…………はぁ」
どころじゃなかった。
手ごろな小道を森の奥へと移動。探査魔法で周囲に何もいないことを確認して、ふぅ、と息をつく。同時に遮音効果の魔法壁を張り巡らせて、天を仰いだ。
「何でモンスターがダンジョンにしか出ないっっ!!?」
そう。ギルドでもらえたのはギルドカード……という名の、ダンジョン通行証だったのだ。なんでも一通り説明を聞いた限り、野生の動物は基本的に人を襲わないし、ダンジョンというのは誤って入ってしまうほど普通なものではないらしい。
つまり、普通に移動している限りは、モンスターよりも盗賊に注意しなければならない、という事だった。
「その盗賊にしたって、もっと辺境の辺境にいないといないって話だったもんなー」
「治安が良いのはいい事なのだろうが……残念だ、残念だぞこの世界」
「しかもダンジョンは入口にランクが自動で浮かび上がる親切設計だから、死者も基本少ないと。いいじゃないか、そこはかとなく平和で」
平和平凡が大好きなサトは呑気に笑っているが、こちらはそれどころではない。色々と残念なファンタジーだ。しかもダンジョンの定義が根本から違うときた。
「何故科学が発展しないのかとも思ったが、魔法がある上にダンジョンの出来方があれではな……」
「あぁ、人工物を3日以上放置しておくとダンジョン化だったっけか。物置に放置してた木箱ですらダンジョンになるんだから、そりゃー無理があるだろ」
そういう世界のシステムとなっているらしい。元の世界で『魔法は使えない』というのと同じくらいのルールのようだ。あまりにも当たり前なので、疑う事すら行われていない。
「で、真剣にここからどーするんだよ、ヨシ」
サトが笑いを収めて聞いてきたので、少しは真面目に考える。
「まずは野良モンスターで血に慣れることから……と思っていたが、世界自体がこう残念ではな」
「残念言うなよ……」
「だが聞いた話では、ダンジョンのモンスターも基本流血はしないようだ」
「あぁ、さくっと消えるんだっけ? アイテム残して」
なんともゲーム的な、と思ったのは恐らくサトも同様だろう。
「ギルドカードを受け取った以上、ランク違いのダンジョンに挑めば目立ってしまうのは避けられない」
「まぁ、却下だな、普通に」
「が、はっきりいってこの聖剣の力がある以上、コツコツやるのはつまらない」
「いやおい。同意はしておくが、オレは?」
「安心しろ、お前は放っておいても死ぬことだけは無い」
「信頼するにしてもそれは最悪の部類だぞ!?」
サトは叫んでいるが、こいつは少なくとも俺と同じ事は出来る。今は聖剣の分だけ俺の方が強いかもしれないが、異世界に放り出された程度で死んでいるならこいつは学生生活なんて送れてはいない。
「まぁそういうわけで、少し足を延ばそうと思う」
「具体的には?」
「時間で2日ほど。目的地としては難易度不明のダンジョンだな」
「あぁ、それできっちり食料と野営の用意を……」
これだけの説明で理解が出来るのだから、生き延びることぐらい余裕だろう。
目的としたのは、進んだ先にある村の横の森、その奥に鎮座している、ぽっかり丸い穴をあけた大岩だ。中には不思議なことに何も無いんだそうだが、年に何人かの割合で帰ってこない冒険者がいると聞いた。ダンジョンに自動表示される難易度は『???』となっていて、ギルドでも扱いに困っているらしい。
大概こういうダンジョンは仕掛けを見落としているだけで、それを解くと難易度が跳ねあがるというのがテンプレだ。跳ね上がったところでどうにでも出来るだろうから、入るのを制限されず、かつ稼ぎのチャンスである為に最初のダンジョンに選んだというわけだ。
「さて、それではさくさく進もうか」
「……お前の聖剣の魔法でさくっと飛べば終わらね? 見える範囲だけでも大分早くなるだろ」
「誰が見ているか分からないからな。目立ちたくないなら歩くしかない」
魔法壁を解除して歩みを進めると、声を抑えてサトが聞いてきた。が、そんな質問は想定済みだ。さっくり返すと、嫌そうな顔をしただけでそのままついてきた。
目指すはファンタジーらしい冒険。頼むから、ダンジョンぐらいは期待に応えてほしいものだな。