壊れた関係
冬休みが終わった。たった2週間弱だったのでもちろん休みが終わっていくのも早かった。
そしてあの事件。僕の中で最大のアイコンチャットでの事件。あれからも早1週間が経とうとしていた。
あれから僕はアイコンチャットはもちろんタウンにすらも行っていない状態だ。
もしアイコンチャットやタウンに行って何も発言すらできないだろう。
というよりパソコンすらつけていない。
学校でもタモリやサナトスになんでタウンに来ないのか聞かれたが「今は忙しい」としか答えられないでいた。
自分の部屋のベッドに寝転がってふとアイコンチャットのことを考えてしまう。
あの後どうなっただろうかと。
一応僕が退室する時には僕が発言したログを消してきたのだがあの時は疾風様子を見て入室してきたからあの状況を知っているだろう。
それにあの奈々と喋っている時には何人か閲覧者がいたからもしかしたらあれはチャットのメンバーが見ていたのかもしれない。
それよりも僕は奈々を傷つけてしまったんだ。
自分の勝手な思いによって。
でもいつまでもこうしてばっかりはいられない。
タウンぐらいは復活しておくべきかもしれない。めぐさんとは結婚してるしデート行かなかったらラブ度が下がって離婚になることもあるしそれにタウンの皆は関係ないんだ。
そう思いながら僕は久しぶりにパソコンを立ち上げタウンへと行った。
タウンへ入室するといつものメンバーが居た。
久々に皆に挨拶した後は特に会話することもなく今までできていなかったデートをしたりお金を稼いだりした。
そしてそれをしている間にメールが1件来ていることに気づいた。
メールは珍しくもこからのものだった。
とりあえず僕はそのメールを開いてみることにした
「だいぶ久しぶりだねくろあwあのさ、単刀直入に聞くけどチャットでなにかあったの?」
どうやらもこもチャットのことであったことが気になっているようだ。
「少しね。でもごめん今は何も言えないよ」
ただそれだけをうってメールを返信した。
今もこはタウンには居ないのでメールはしばらくは返ってこないだろう。
そういうことで僕はメールをやめて挨拶版でみんながなにか会話しているので気分転換にその輪の中に入ってみることにした。
くろあ:皆なにしてるの?
タモリ:新人さんが入ってきたから皆で色々とタウンについて教えてるんだw
羅夢:くろあさん初めましてw羅夢って言いますwよろしくお願いします。
くろあ:あぁうん。らむさんね、よろしくですw漢字めんどくさいのでひらがなでらむさんって呼ばせてもらいますね。
羅夢:らむって呼んでくれていいですよwそれにタメ口でいいです。それにどうやらくろあさんと私一緒の年齢のようですし。
くろあ:あぁわかったよらむ。じゃあ僕もタメでいいからw
羅夢:うん、わかった。くろあw
りょっち:さすがくろあさんですね。すぐに初めての人とも仲良くなれるとはw
くろあ:いや、そういうわけじゃ。。
別にそういうわけじゃない。ただなぜか今回だけ特別でらむとは自然と会話ができてうまく話せている。それになぜか彼女とは初めて会うわけじゃないようにも思えた。
この後僕は何通からむとメールをしあっていた。
それは普通の会話でただのとりとめのない話だけどなぜか自然と話していた。
今さっきまであまり喋りたくないと思っていたのが嘘のようにキーボードで文字をうっていた。
そんなことが何日か続いていたある日またしても事件が起きた。
事件と言ったら違うかもしれないが僕にとってそれは凄く驚いたことであり真実だった。
ファイナルアサシン:やっと最近くろあもタウンに毎日来れるようになったな。用事的なものは終わったのか?
くろあ:終わってはないんだけど気分転換に来てるだけだよ
きら★:フッ、まぁなにかは知らんが頑張れよくろあ。
もしかしたらきらはチャットで起きていたことを知っているのかもしれない。
羅夢:え?最近くろあタウンに来れてなかったの?
くろあ:最近って言ってもらむが来る前までのことだけどねwちょっと色々あってね。。
羅夢:色々って?
くろあ:だから色々だよwちょっとね…
咲月:なぁに?他人には言えない怪しいことでもしてたの~?
きら★:なにっ!怪しいことだと!?俺も誘えくろあw
くろあ:別にそういうことじゃないんだけど…
皆に相談はしたいのだけれどやはり個人的なことそれに皆にこれ以上迷惑をかけられないということがあり相談できない。
そんな感じで皆にちゃかされながらも久しぶりに楽しく会話をしているとメールが届いた。
そのメールを送ってきた主はなんとなく僕は予想できた。
メールを開くと贈り主はやはり羅夢だった。
羅夢とは毎日メールをしてて楽しく会話をしている。だから今日も昨日の話の続きかなと思いながらメールを読んでみるとその内容はいつもと全然違っていた。
「くろあ、私になにか隠し事してない?」
いつもと違う様子のメールだから僕はびっくりした。
そもそもらむと会ったのはつい最近で仲良くなったのだってつい先日だ。
それになんで彼女は僕が今隠しているもののことを感じ取っているのだ。
「え、なにも隠し事なんかしてないけど…」
とぼけたようなメールで返信をした。
少し焦りながら次のメールを待っているとすぐに返信がきた僕はそのメールを開いた
「それは嘘だよね。今くろあはある人のこと…ううん、人間関係で困ってるんじゃないの?」
当たっていた。だけど僕はそんなことよりなんで彼女が僕のことをわかっているのかが不思議に思った
「なんで知ってるんだ。もしかしてらむはアイコンチャットのメンバーの人なの?」
僕が今胸にひっかかっていることがわかる人間それはアイコンチャットのメンバーしかいないはずだ。もしかしたらアイコンチャットのメンバーの誰かが事情を知っていてその誰かがスパイみたいな感じで俺に接触してきたのかもしれない。
僕は意を決して聞いてみた。
2分ほど経った後再びメールが返ってきた。僕は恐る恐るそのメールを開いてみた
「う~ん、今ではそうとは言えないけど。でもひとつだけ言えることがあるよ。それは…私がくろあの親友だってことかな」
意味がわからなかった。というより僕の親友?
「君は一体誰なんだ…?」
少し遅くなりながらもなんとかキーボードをうって返信をした。
今の僕の頭はいっぱいいっぱいだった。
また彼女からのメールが届いた。こんなにメールを開くのを緊張したのはキキの時以来だった
そして僕はメールを開いた。
「え、まだわからないかなぁ?ん~じゃあヒントは名前だよ」
名前か。
僕は震えている口を開き少し声に出してらむの名前を呼んでみた。
「羅夢…。らむ。らむ…羅夢。」
ただひたすらに羅夢という名前を口に出した。
そしてついに僕はそのらむという名前に隠された意味がわかった。
だけどそれはありえないことだ。アイツが今ここに居ることが。
「むらぁ…。お前なのか?」
そう、ただらむの名前を逆にしただけ。
でも本当にアイツなのか?だけど僕にとってもむらぁは親友。
だったらもしかしたら…。
そんなことを考えているとメールが来た。
今さっきは恐る恐るメールを開いていたのだったが今度は少し緊張してでも早く真実が知りたいという気持ちが強かった。僕はメールを開いた。
「やっとわかったんだぁw相変わらずだねぇくろあ」
本当にむらぁだった。
でもなんでむらぁがここいに居るんだ。
「本当にむらぁなのか!なんでお前…チャット引退したんじゃなかったのか!?」
ここらから僕たちは今までの会ってなかった時間を取り戻すかのようにひたすらメールを送りあった
「ちょっと~勝手に私を引退させないでよw私引退するなんて言った覚えないんだけど」
「それはそうだけど。だってお前アイコンチャットの方全然来ないし…。それよりなんでむらぁがここに居るんだよ!?」
「ん~事情があって来れなかっただけだよwそれに私がここに来た理由はさっき言ったようにくろあが今困ってることを解消してあげるために来てあげたんだよ~」
どうやらむらぁはすでにアイコンチャットであったことを知っているようだった。
「なんでむらぁがその事を知っているんだよ?」
「奈々ちゃんとメル友っていうのは知ってよね?それで相談されたんだよ。でも誰とそういうことがあったのかは言わなかったけどなんとなく奈々ちゃんとメールしてる時にくろあだってのがわかったんだよ」
「なんとなくって…。けどなんでじゃあ僕がタウンに居ることを知ってるんだ?僕はまだむらぁにタウンやってるていうこと教えてないはずだよ」
「それはくろあがチャットに来てないときに一回だけチャットに久しぶりに行ったんだよ。その時にきらが居たから聞いたんだよ」
きらが教えたのか。ということはきらは羅夢の正体がむらぁだってこと知ってたのか。
「そういうことか。きらは知ってたのか…」
「うん。ねぇくろあ一体どうしたの?悩んでるなんてくろあらしくないよ」
「わからないんだ。今僕自身がどうなっているかが…」
わからない。本当に自分がなにをしたいのかということが
「わからないかぁ。じゃあ今自分を見失ってるっていうことだね」
自分を見失っている。確かにそうなのかもしれない。このチャットという場所で…
「そうかもしれない」
「ねぇ、くろあってそういうキャラだったっけ?」
「え?キャラっていわれても…」
「あれ、くろあって天然的なキャラじゃなかったっけ?」
「知らないよ」
「くろあはちょっとおっちょこちょいってで皆となに少しずれている感じでそれに頼りないって感じだったはずだよ~」
「なんだよそれ…」
むらぁが何を言いたいのかが僕には一切わからなかった。
「でもくろあのそんなところが皆を癒してくれてたんだよ。私もあの頃なにか疲れた時にくろあとチャットしてたら癒されたしそれに元気もらってたんだよ」
僕がむらぁを癒していた?そんなわけは…。
考えているともう1通連続してむらぁからメールが届いた
「それにね皆もそんなくろあとチャットをして癒されてたと思うんだ。だから今のくろあは本当のくろあじゃないと思う!」
本当の僕じゃない。だったら僕は…
「じゃあ僕はどうしたらいいんだよ!」
「そうだねぇ、じゃあ今の気持ちを奈々に言葉で伝えたらいいんじゃいの?そしたらすっきりするかも」
「すっきり?」
「だって今のくろあはたぶん胸に自分の思っていることをためこんでいると思うの。だから全て吐き出してみようよ」
「そんなこと言われても今の僕じゃ無理だよ」
「そんなことないよ。それに自分に自信を持ってよ!くろあならちゃんと奈々に対して思いを伝えられると思うから」
自分に自信を。元々僕はリアルでもチャットでも消極的な性格だ。そしてそれに加え今は自分に自信を持てていない。こんな自分を僕は本当に駄目な奴だとも思ってる。
でも、それでも僕は…
「ねぇ、むらぁこんな僕でも本当に奈々に自分の思いを伝えられると思う?」
「大丈夫だよ!」
「根拠は?」
「私が言うから間違いないの!親友を信じなさいくろあw」
「親友か、はは、確かにそうだな。君を信じてみようかな」
「うん!それに私はくろあの味方だからいつでも頼っていいんだよ!」
チャットで僕にとっての1番の親友、そして僕の味方。
どうやら僕は最高の友達を持っているようだな。
「ねぇむらぁ」
「な~に?」
「ありがとうね。僕のために考えてくれて」
「アハハ、くろあがお礼だなんてwでも私もくろあにお礼を言っておかないといけないかな~」
「え、なんで?」
これまでに僕はむらぁにお礼を言われるようなことをしてきた覚えはなかった。
「あのチャットをしていた時、あの時あの一瞬を楽しませてくれてありがとう」
「むらぁ…」
「私ね、よくチャットしていた時くろあが居てくれたから楽しかったと思うの。もちろん他の人たち、リッドやりあら、奈々たちとチャットしていた時も楽しかったよ。でもくろあが居てくれたからもっと楽しくなったと思うの。それに癒されたしねwだからくろあありがとう」
むらぁがここまで思っていてくれたなんて僕は思いもしなかった。
「馬鹿だな。それを言うと僕も同じ思いだよ。それに僕はむらぁが居てくれたからむらぁがチャットの全てを教えてくれたから今日までチャットやタウンをやれていると思うんだ。だからお互い様だよ」
「そっかぁ。お互い様かぁ」
「だからこれからもよろしくね、むらぁ」
「うん、こちらこそ」
「さてと、これから奈々に思いを伝えたいけどどうすればいいと思う?」
「だったら私が奈々にメール送っておくから、ん~22時にアイコンチャットに来てくれるかな?」
「1時間後か。わかったアイコンチャットに行くよ」
「うんwそれじゃあがんばってね、くろあ!」
「あぁ、色々とありがとう」
むらぁとのメールも終わり僕はタウンを退室しアイコンチャットの画面を表示して緊張しながらも1時間待つことにした。
僕はうまく奈々に今思っていることを伝えられることができるのだろうか。