あの日の思い出
「あれから7年かぁ」
僕はパソコンを見ながらそんなことを呟いていた。
そう、今日は僕がアイコンチャットをはじめてから丁度7年目を迎える日だった。
今となっては全然アイコンチャットには人は居ないけど…。
それはタウンの方も同じで人は全く誰も居ない状態だ。
僕達はもう高校を卒業して大学や専門学校、就職でそれぞれの道を歩いている。
そのせいもあり就職した人たちは忙しくチャットなど来れる状態ではなかった。
だけど皆が皆それぞれの道を歩いているといっても会えなくなったわけではない。
「くろあ、そろそろ行くよー」
僕がパソコンの電源を切ろうとした時後ろから声が掛かった。
「わかってる。というより何で名前で呼ばないんだよ」
声の持ち主は僕の彼女むらぁだ。
僕とむらぁは高校を出てから一緒の大学へと進学した。
「だって今日は久々のオフ会の日だよ!今日ぐらいは久しぶりにハンドルネームがいいなと思って」
そして今日は久しぶりにオフ会の日だ。
オフ会に一緒に行くためにむらぁは僕の部屋に来ている。
ちなみに僕とむらぁはそれぞれ一人暮らしをしているのだが僕とむらぁのアパートは一緒でしかも隣同士だ…。
僕はむらぁに駄目だと言ったがむらぁが聞き入れてくれなかったので仕方なくこうなってしまった。
まぁ同棲ではないのでそこは救われた。
「そんなことより早く行かないと!新幹線に乗り遅れちゃうよ~」
「そうだな、よし行こうか」
僕はパソコンの電源を切り急いで準備をし部屋から出て行った。
新幹線に乗り2時間ほどで目的の会場へと着いた。
目的の場所は最初に初めてオフ会をやった場所だ。
今ではオフ会を開く場合はここが会場ということになっている。
いつも通り僕達は会場の受付を済ませて部屋へと向かった。
最初はあんなに緊張をしていたのに今ではこんなに平然としている。不思議な気分だ…
「みんなーひさしぶりぃ!」
むらぁは元気に襖を開けて部屋へと入っていった。
部屋の中にはいつもの顔ぶれが揃っていた。
僕が初めてオフ会に来た時は凄く緊張したというのに今では当たり前のように入って行っている。
「皆久しぶりだね」
「くろあにむらぁちゃんいらっしゃーい」
奈々が立ち上がって僕たちを迎えてくれた。
奈々は地元の大学に通っている。昔から変わらずいつも明るくて元気だ。
「よっしゃーバカップルも揃ったしそろそろ始めるとするか!」
「ちょっとムロウ僕達はバカップルじゃないって!」
ムロウは現在就職して毎日忙しい日々を送っている。
昔奈々に振られたがどうやらまだ奈々のことを想っているようだ。
「くろあ久しぶりだな」
「ちょっとーくろあたまには連絡しなさいよ!」
そしててるとりんご。
この二人は最初のオフ会でいい関係になって高校を卒業をしたと同時に付き合い始めた。
てるは地元の短大でりんごもてるに合わせて一緒の短大へと入学した。
仲はかなりいいと思うがてるは少し尻にしかれてるような。まぁ僕も人のことは言えないが…。
「今日は騒ぎまくるぜ!!もこたんとも久しぶりに会えたしな!」
「私はほどほどにしてほしいんだけど…」
前で騒いでいるのはきらともこ。
ふたりも付き合っているが遠距離恋愛だ。
きらは現在は地元でフリーターのようだ。そしてもこが大学。お互い会える時間は少ないが相変わらず意気があっている。
「疾風、お前も大きくなったな…」
「ちょっ、子ども扱いするなよマジック!」
疾風とマジック。
疾風は今年高校を卒業して短大へと進学。ちなみにそこで彼女ができたらしい。
マジックは専門学校。どうやら自分がしたいことが見つかったようだ。
「それにしてもキキ。受験生だというのによく来れたな」
「たまには息抜きも必要ですよ。とりでさんだって忙しいのによく来れましたね」
キキととりで。
このふたりは2回目のオフ会の時から参加している。このふたりにはお世話になったので僕がオフ会へと誘った。
キキは受験ということもあり毎日勉強で大変らしい。
とりでは就職をした。就職場所がかなりいいところで稼ぎはいいようだ。
この通り僕達はそれぞれの道を歩いている。
チャットやオフ会をする時間は昔と比べると確かに少なくなったのかもしれない…
「よっしゃ!乾杯するぞ!!皆グラス持て!」
「ほら、くろあグラス」
「ありがとう。ねぇ、むらぁ」
「ん、何?」
「僕今凄く幸せだよ」
けれど会える時間が少なくなったとしても…
「うん、私もだよ♪」
これからも、そしていつまでも僕達は繋がっている。
「「「乾杯ーーー!!」」」