オフ会
今日も相変わらず暑かった。
気づけば夏休みが始まり10日ほど経とうとしていた。
なんとかアイコンチャットをいつものように皆が楽しく喋れるチャット場所に戻したいという気持ちはあるのだけれどなかなか何をすればいいのかが思いつかないで居た。
そんな時ベッドで寝ていると携帯電話が鳴り出した。
どうやら電話のようだ。
僕は携帯電話を開くとりんごの名前が表示されていた。
「もしもし」
「お~やっと出たね、くろあ」
「あぁ。それより久しぶりだね」
「そうだね~。アイコンチャットで話して以来だったっけ?」
「そういえばそうだね。でもどうしたんだよ珍しく電話でなんて?」
基本りんごとは学校で会うので緊急の時意外はあまり電話とかはしない。
それにチャットがあるので携帯で連絡することはなかった。
「ん~くろあもわかってると思うけど今のアイコンチャット行きづらいじゃない?それで電話したわけだよ」
確かに今のアイコンチャットは行きづらい。いつものメンバーが全然アイコンチャットに現れないくらいだからな…。
それにその原因に僕も深く関わってるし。
「というかお前アイコンチャットであったこと知ってるんだな」
「てるからメールで聞いてね。いやぁまさかくろあが奈々ちゃんに告白されるなんてね~♪」
「なんか楽しそうだな。で、なんで電話してきたの?」
「んー直球に言うけど、オフ会するよ!!」
「え、オフ会…?」
オフ会。だいぶ前にもチャットでオフ会の話題は出た。皆でいつかは集まろうという感じで。
でもまさかまたここでオフ会の話が出てくるとは。しかもこのタイミングで。
「そうだよオフ会!皆で集まるんだよ!夏休みだから皆暇してるだろうしね」
「ちょ、ちょっと待てよ。なんでこんなときにオフ会するんだよ!?」
「ん~やっぱり今だから?」
「おかしいだろ!今だからって、おかしすぎるよ!それにお前今アイコンチャットで起きてること知ってるだろ?」
「知ってるよ。だから皆に仲直りみたいな感じをしてもらおうと思ってオフ会開こうと思ったの。やっぱりきっかけって必要じゃない」
なんだろうりんごが言ってることはなにかずれている気がする。
「でも、もしやるとしても誰も来ないと思うけど…。」
「大丈夫!私が必ず誘い出してみせるから!」
この自信は一体どこから来るんだろう。
「それでくろあはもちろんオフ会参加するよね!?」
どうやらりんごはオフ会開く気満々らしい。
僕はオフ会に参加するか凄く迷っていた。この状況の中オフ会に行ってどうすればいいのか。
何を話したらいいのだろうかなど…。
「参加するよね!?」
考えている間りんごはずっと僕に問いかけていた。
でも確かにアイコンチャットはこのままじゃいけない。
田村やキキ、とりでに励まされたのを無駄にもしたくない。
だったら一歩を踏み出さないと行けないかもしれない。今度は逃げずに。
「わかった。参加するよ」
「よーしよく言ったくろあ!」
「でも、いつオフ会するんだ?しかも場所とかは…」
「う~んじゃあ8月10日の13時からなんてどうかな?」
8月10日といえばちょうど一週間後だ。特に僕はその日予定は入ってなかった。
「僕はいいんだけど、皆の予定聞かないとだめだろ?」
「大丈夫だよ!絶対皆暇してるし~。場所は私が決めるからまたメールでもするよ。あ、それと他の皆には私がメールしておくから」
「あぁ悪いね」
「でもくろあは絶対にむらぁちゃんだけは誘ってね!」
「あ~うん。分かったよ…。でもあいつ来るかな?」
「大丈夫!大丈夫!」
ほんとこいつの自信はどこから来ているんだろうか?
「というわけだからメールよろしくね!」
「わかったよ」
「頼んだからね~」
そういうわけで僕がむらぁへとメールをすることになった。
りんごとの電話を終わらせたあと僕は早速むらぁへとメールをすることにした。
むらぁはアイコンチャットにはどういうわけなのか来ないのでメールでの会話が多かった。
「久しぶり。ちょっと話したいんだけどいいかな?」
まずは簡単にメールを送った。
そして10分ほどするとむらぁからメールがかえってきた。
「どうしたのどうしたの!全然いいよ!くろあからメールって珍しいじゃんw」
むらぁとメールをする時は基本むらぁからメールを送ってくる。
確かに僕からメールすることはあまりないかも…。
「うん。いきなりだけどアイコンチャットのメンバーでオフ会開くことになったんだけどむらぁもどうかなって…」
「おぉ、オフ会!もちろん行くよw」
予想外にむらぁはあっさりとOKの返事を出した。
「え、そんなにあっさりいいのか?お前チャットとか全然来れてないし」
「ネットとリアルは別よ。それに面白そうじゃんwオフ会なんて初めてだしそれにくろあの顔見れるんだったら行くに決まってるじゃないw」
またこいつは冗談でこんなことを…。
「そうか。あ、それと開催日時は8月10日の13時かららしいよ」
「8月10日の13時…。全然大丈夫!」
「そ、そうか。まだ場所は決まってないから決まったらまたメールするよ」
「了解!それにしても楽しみだな~」
僕も確かに楽しみなのだが、例の事件のことで凄い心配でもある…。
「そうだね。それじゃあまたメールするよ」
「うん、わかったwそれじゃあね!」
こうしてむらぁとのメールも終わった。
今思うとこうやってむらぁと長々とメールするのは久しぶりだったかもしれない。
それよりも他の皆は本当に来るのだろうか。
正直不安である。それにりんごのあの自身はどこからわいてきていたのだろうか?
とりあえず後はりんごのメールを待つしかない。
こうしてりんご主催のオフ会は開催されることとなった。
オフ会が開催される予告があってからその3日後に再びりんごからメールがあった。
オフ会が開かれる場所は、皆それぞれ住んでる場所が違うので皆が住んでいる場所の平均して一番近い場所で開かれることとなった。
ちなみに参加メンバーはいつものメンバー全員となった。
まさかりんごが本当に全員を誘うとは…。
あいつはどうやって皆を誘ったのだろうか。
そしてついにオフ会が開かれる日となった。
僕は緊張しながらもオフ会が開かれる会場の前へと来ていた。
「くろあ何してるの?早く会場入るよ」
「ちょっと待てよお前緊張とかしてないのかよ」
しかもなにも緊張していなさそうなりんごと共に来ていた。
僕たちは朝待ち合わせをして新幹線などを使ってここまでやってきたのだった。
「だって今さらでしょ?」
「確かに今さらだけどさぁ。でもさぁ…」
正直僕は参加すると言ったことを後悔していた。まさかここまで緊張するとは思わなかったからだ。
「さっ、ぐだぐだ言ってる暇あったらさっさと行くよ!」
「お、おぃ引っ張るなよ!」
りんごは僕を無理やりに引っ張っていく感じで会場へと進んでいった。
僕たちは会場に入るとまずは受付に行って名前を言い確認されたら受付の人に部屋を案内された。
その部屋の前まで案内されると襖が閉まっており中からは人の気配がした。
「さてと、入るよ」
「あ、あぁ」
僕が返事をするとりんごは勢いよく襖を開けた。
「こーんにちはー!りんごでーす!」
部屋の中には数えると10人ほど男女が居て部屋の中に入ってきた僕達に視線が一気に集まった。
りんごは元気に中に居る人たちに挨拶をした。
そして僕はそのりんごの後ろから少し前に出て行き挨拶をした
「ど、どうも。くろあです」
僕たちが挨拶をするとひとりの男性が近づいてきた。
「やぁ、ふたりがくろあにりんごか!」
その男性は僕と同じくらいの身長でいかにも優しそうな顔をしていた。
「そうだけど君は?」
「俺だよ、てる!」
「えーキミがあのてるなの!?」
どうやらこの男性の正体はてるのようだった。
「ふたりともなんか初めて会う気はしないな!」
「そりゃ毎日チャットしてたからねぇ…」
「あはは、それもそうだね」
てるは僕が想像していた通りの人物だった。
というよりてるがアイコンチャットで使ってるアイコンそのまんまのような…。
「ねぇ、そんなところで話してないでこっちに来て座ったら!」
僕達が話していると後ろから声がかかった。
「そうだな。りんごにくろあ早く座れよ。お前達が最後だぞ!」
「はーい」
僕とりんごはそれぞれ開いている席を見つけ座った。
ちなみに僕とりんごは結構離れているところに座った。
「あ、くろあ…」
僕が座ると横から小さな声が聞こえてきた
横を見てみるとそこには女性が座っていた。ロングの綺麗な黒髪で外見は僕と同い年ぐらいでぱっちりとした大きな目が印象的でなんていうか美人である。
「君は…?」
「私、奈々だよ」
「えっ!?」
まさか僕の横に座っている女性が奈々とは思わなかった。
というよりこんなに早く喋ることになるとは…。
「あはは、びっくりした?それにしてもくろあってりんごちゃんが言ってたとおり可愛い系なんだね!」
「可愛い系って…」
なんだろう、アイコンチャットであんなことがあったというのに奈々は意外と普通だった。
だけど、僕が周りを見てみると微妙な空気が漂っている感じもした。
中には喋ってない人たちもいるし。やっぱり奈々だけが特別なのかな?
「どうしたのくろあ?」
「え、いや、なんでもないよ。ただ奈々とこんなに早く喋れるとは思わなかったからびっくりしてるだけだよ」
「ふーん、そっかぁ…」
そんな感じで奈々と会話をしていたが少し沈黙してしまった。
やはり奈々は表面だけでは明るくしているだけかもしれない。
「さてと、皆も揃ったことだしそろそろ始めるとするか!」
僕がテーブルにあった水を飲んでいると一人男性が立ち上がって喋りだした
「まずはやっぱり自己紹介だな!ちなみに俺は疾風です!よろしくー」
どうやら男性の正体は疾風のようだった。
それにしても僕より1歳年下というのにあそこまで積極的にできるなんて凄いな。
「それじゃあ俺は自己紹介終わったし、本日オフ会主催者のりんごに自己紹介してもらおうか」
そう言うと疾風はその場に座り次はりんごが自己紹介の番となった
「今更だけど私がりんごです。皆集まってくれてありがとう!今日は楽しもうね!」
さすがりんごだ。緊張などしないですらすらと自己紹介を終わらせた。
そしてここからどんどんと自己紹介がまわっていくのだった。
「てるです。今日は楽しい一日にしていきたいのでよろしくですお願いします!」
てるも何も問題なく自己紹介をしていた。皆緊張していないのかな?
「マジックだ。まさか今日アイコンチャットのメンバー全員が揃うとは思ってもみなかったぞ。とりあえず今日はよろしくな!」
身長がすらっと高くてしかもイケメンとも言っていい顔立ちの男性はマジックだった。
まさかあそこまでマジックが男前だったなんて…。
「もこです。少し緊張していますがその内慣れてくるので気にしないでください」
僕ともこは同い年のはずだけどなぜかもこがずっと年下のように見えた。
というかもこの両隣はりんごと女性がひとり座ってるのだけれどきらとは一緒に座らなかったのかな?
「ムロウだ。よろしく…」
「きらで~す。よろしくな…」
ムロウときらが連続で短い自己紹介を終わらせた。
というよりふたりとも覇気がなさすぎる。
ムロウはわかるけど、きらはもことなにかあったのだろうか?
ふたりの自己紹介の後は次は女性がひとり立った。
見た感じは肩までかかるストレートな髪で結構おしゃれな感じでそれもあり少しだけ大人びた感じがした。
もしかして彼女は…
「むらぁで~す!最近アイコンチャットには行けてなかったけどオフ会に来れてよかったです。今日はおもいっきり楽しく過ごしたいので皆よろしくね!」
やっぱりむらぁだった。しかも僕が予想していた通りの人間像だった。
そしてむらぁが自己紹介が終わり席に座ろうとしたときふとむらぁと目が合ってむらぁは笑っていた。僕はなんとなく恥ずかしくなりサッと目をそらしてしまった。
次に奈々の自己紹介の番が回ってきた。
「奈々です!いい思い出作っていきたいので盛り上がっていきましょー!」
元気に奈々は挨拶をしたがやっぱりどこか無理をしている感じがでていた。
それに奈々のことをずっとムロウは見つめていた。
奈々の挨拶が終わりついに僕の番がやってきた
「初めましてっていうのはおかしいかな?え~っとくろあです。今日一日よろしくお願いします」
緊張しながらもなんとか自己紹介をすることができた。
「さて、皆の自己紹介も終わったことだし乾杯といきましょう!」
司会みたいな感じでグラスを持ってりんごが喋り始めた。
りんごが言ったように僕たちはその場にあるグラスを持った。
「それでは皆さんご一緒に乾杯ーー!!」
「「「乾杯ーー!!」」」
こうして微妙な空気の中ながらもオフ会は始まった。
食事などをしている時にまわりを見てみるときらとムロウはふたりで喋っていた。一体なにを話しているんだろう?今さっきも思ったがやっぱりきらともこはなにかあったんだろうな。
その他の人たちは楽しく食事をしながら会話をしていた。特にりんごは一番盛り上がっていた。
「おーいくろあ楽しくやってるかー?」
「あぁうん。てるこそどうだい?」
「俺も楽しいさ。まさかこんなに皆が集まるとはな」
確かによく皆の都合があったもんだ。というよりもりんごになんて言われて誘われたのだろう?
「奈々も楽しんでるか?」
てるは僕の隣に座っている奈々に話しかけた。
「え、あ…私も楽しんでるよ!それに食事もおいしいしね!」
「そっかそっか。今日はまだ長いしもっと盛り上がっていこうぜ!」
「うん!」
「それじゃあ俺はムロウときらのところでも行ってこようかな」
どうやらてるはムロウときらのことを気遣っているらしい。
やっぱりてるはいい奴だな…。
それより今さっきからずっと僕は誰か来るたびに少し話して食事をするという繰り返しをしているのだが隣の奈々のことを気にしてしまう。
奈々も誰かが来たら楽しく喋って食事に戻るの繰り返しなのだがやっぱりいつもと違った。
僕はそんなことを思いながらも少し気分転換をするべく一旦部屋から出ることにした。
「くろあどこか行くの?」
「あぁちょっとトイレ」
奈々にそう言うと僕は部屋から出て行った。
やっぱり部屋から出ると全然空気が違った。少し僕は会場の中を歩いてみることにした。
少し歩いていると反対側から歩いてくるもこを見つけた。
「くろあ何してるの?」
「トイレに行こうと思ってね」
「そっか」
そういえば今ここには僕ともこだけだしちょっときらのことを聞いてみるのもいいかもしれない。
僕は意を決してもこに聞いてみることにした
「ねぇもこ、きらのことなんだけど…」
「なに?」
なんだろう今さっき喋ってた時より声のトーンが落ちたような…。
きっと気のせいだよな?
「見てる限りきらともこ今日まだ喋ってないような気がしたんだけどどうしたのかなって思ってさ」
「そのことね。ちょっときらとアイコンチャットで喧嘩しててね」
やっぱりもこときらは喧嘩をしていたようだ。
「だいたいきらはデリカシーないんだよ!それにムロウも!」
「え、ムロウも?」
「そう!あの二人ほんとにどうかしてるよ!!あぁ思い出したくない・・・」
こうやって怒るもこも珍しいな。というよりムロウまで関係してるとは思わなかった。
やっぱりあの出来事のことが関係しているのかな?
「そういうことだからちょっと話してないわけなんだよ」
「そうか。もこ大変なんだな」
「そういうくろあこそ今大変でしょ?」
「やっぱりもこも知ってたか…」
「当たり前だよ。でもまさか奈々ちゃんがくろあのことをね~」
「あはは…。りんごにも同じ事を言われたよ」
「まぁチャットメンバーなら驚くよね。ところで奈々に返事はしたの?」
「まだだけど…」
「やっぱりね~。。でもこういう大切なことは悩むよね」
とりでにも同じようなことを言われたが本当に僕は返事に悩んでしまっていた。
「だけどお互いがんばろうくろあ」
「うん、そうだな。ありがとうもこ」
僕はもこにお礼を言ってまた適当にホテル内を歩き出した。
ホテルを歩いているとちょうどエントランスの方に出て休憩するためのいすがあったのでそこに座った。
そしてまた僕はまた再び奈々について考えていた。
だが考えても考えても奈々にどう返事をすればいいのかがわからなかった。
「あーくろあ発見!」
ひとりで色々と考えているとむらぁがこっちに歩いてきた。
「こんなところに居るなんて…。結構探したんだよ!」
「ごめん。ちょっと緊張してて疲れちゃってね気分転換に…。それよりどうしたの?」
「くろあと話したいから探してたの!」
むらぁが僕を…。なんか嬉しいな。
「そうか。そういえばオフ会に来てから全然喋れてなかったね」
「そうだよ。喋ろうと思ったら部屋には居ないし…」
「ごめんごめん」
「まぁもういいけどね。それより隣座るよ」
そう言うとむらぁは僕の隣に座った。
なんだろう相手はむらぁだというのに緊張する。というかむらぁからいい匂いがする。香水のにおいかな?
「あはは、くろあもしかして緊張してる?」
「ちょっとだけだよ。何回も話してきたことあるって言ってもそれはチャットだけだしやっぱりリアルで会うと緊張するよ」
「へぇ。まぁそれを言うと私も結構緊張してるんだけどね」
「むらぁが?それはありえないだろ」
「ちょっとなによ~。私が緊張していたらおかしいっていうの?」
「いや、そういうわけじゃ…」
「むー…」
むらぁはじろじろと僕を睨んでいた。
「そ、それよりも今日の料理はおいしかったね」
「ちょっと話そらされた気がする」
僕はひきつった顔でなんとか笑ってごまかした。
「でもおいしかったね。オフ会を開いてくれたりんごちゃんには感謝だね」
確かにあいつには感謝するべきかもしれないな。
でも出費のほうがだいぶ痛いんだけど。
新幹線に会場代、それに今日はここに泊まっていくから宿泊代も…。
「ねぇくろあ?」
「ん、何?」
「くろあは奈々ちゃんのことどう思ってるの?」
むらぁは今さっきの笑ってた顔と違い真剣な顔で聞いてきた。
「そう言われても…。友達だろ?」
「そうじゃなくてー。異性としてどうなの?」
「ちょっと待てよ、なんでそんなこと急に聞いて来るんだよ!」
「もこちゃんから聞いたよ。今アイコンチャットで起こってること」
もこに聞いたのか。あんまりこいつには心配とかかけたくなかったんだけどな。
いや、心配とかではなく個人的にむらぁには知っておいてほしくなかった。
「どうなのくろあ?」
「よくわからないんだよ…。皆にも励ましてもらったりアドバイスもらったりしてるけど自分がどうしたらいいのかそれに僕が奈々のことを本当はどう思っているのかが」
それにむらぁの顔を見たら余計に悩んでしまう。
否定し続けていたけれどもしかしたら本当に僕はむらぁのこと…
「くろあも悩むことあるんだねー」
「なんだよ、それ!僕だって真剣に悩むことだってあるさ!というよりお前にだけは言われたくないよ!」
人が真剣に悩んでるというのにこいつは…
「あはは!やっぱりくろあは悩んでる顔よりそっちの慌ててる顔とかの方がいいよ!」
「え?」
「せっかくの可愛い顔が台無しだよ」
「可愛いとかじゃなくて…。ていうか何言ってるんだよ!」
少し僕は照れてしまいむらぁから目をそらした。
「全くくろあは照れ屋さんなんだから~」
「真剣に僕は悩んでたんだよ。むらぁが急に変なこと言うから…」
「ごめんごめん。拗ねないで~」
別に僕は拗ねているわけではないのだけど。
「くろあ。奈々ちゃんのことちゃんと考えてあげてね」
むらぁは笑っていたと思ったらまたしても真剣な表情へと変わった。
「私はくろあと奈々ちゃんの友達としてふたりを応援してるの」
「むらぁ…」
「それに親友を助けるのは当たり前のことでしょ」
むらぁはそんな事を言っているのだけどどこかその声は寂しそうな気がした。。
そしてむらぁは立ち上がりこっちを向いた。
「先に部屋に戻ってるね。がんばってね、くろあ!」
むらぁはそう言うと部屋へと戻っていった。
だけど最後に見せたむらぁの笑顔はどこかぎこちない笑顔だった…。
僕はしばらくそのむらぁのぎこちない笑顔が頭から離れなかった。
しばらくしてから僕も部屋へ戻ると、明らかに部屋から出る前と空気が違っていた。
部屋を出る前はきらは寂しそうにしていたのに帰ってきたら部屋ではきらともこが普通に喋っていた。
僕は早速きらともこの所に行ってどうなっているのか聞いてみた
「あれ、きらともこって喧嘩してたんじゃ…?」
「おぅ、くろあ!お前何言ってんだ?俺様がもこたんと喧嘩?ありえねぇだろ?」
「そうなの、もこ?」
「私が部屋に戻ってきたらね、きらが私のところに来て泣きついて謝ってきたのよ。しかも皆の前で」
「あぁ、なるほど」
「さすがにここまでやられるとね。皆の前で恥ずかしかったし。だから今回だけは許してあげたってわけ」
「おぉ、もこたん愛してるぜー」
「ちょっときらうざいわよ!」
きらはもこにずっとべたべたとしていた。
まぁ何とか仲直りができてよかったな。
それときらの横に座っているムロウは相変わらずのようだ。
疾風やりんご達などと喋っているには喋れているのだがやっぱりいつものムロウの雰囲気ではない。
僕は自分の席に戻った。
どうやら奈々は今むらぁやマジック達と会話をしているようだ。
丁度よかったので僕は少し食事をしながら改めて色々と考えることにした。
奈々は僕にとって本当に大切な人だ。
いつも喋っていると楽しいし僕が悩んでいる時なども相談にのってもらったりしたこともあった。それに前の奈々との事件の時以来から凄く距離が縮まった気がした。
そして奈々の告白。奈々が僕に好意を持ってくれていたことは素直に嬉しいし僕だって奈々のことがずっと好きだった…。
けれど僕にはもう一人大切な人がいる。
むらぁ。初めてチャットでできた友達でそして今では親友になっている。
もし最初チャットで彼女と会わなかったら僕はチャットを続けていなかっただろう。
むらぁがチャットの全てを教えてくれそしてなにより楽しさを教えてくれた。
前からだけどむらぁは忙しくてチャットには来れて居ない状態が続いていたけど僕が本当に奈々との事件で精神的にもやばい時にはわざわざタウンまで来て助けてくれた。
なによりあいつと喋っている時が一番何も考えずに自然で居られた。そして何よりあいつがアイコンチャットで一番僕のことを知ってくれている気がする。
けれどもこうやってふたりのことを考えてみるともしかしたら僕はもう答えが出ているのかもしれない…。
キキが言っていたとおり自分を見直してみるということ。
僕は気づいていなかったふりをしていただけかもしれないんだな。
このふたりとの関係を壊したくないってことを理由にして…。
ふと僕はタウンに居た沙良さんの事を思い出した。
あの人も僕にとって大切な人だった。でもその大切な人だという事は彼女が居なくなってからわかったんだ。
僕は沙良さんを失った時のように何もせずにただ失うのは嫌だ。
だから前に進まなきゃいけない。行動を起こさなきゃいけないんだ。
「おーい、くろあ。お前なに一人でボーっとしてるんだ?」
気づけば隣にてるが来て僕に声を掛けていた。
僕はあまりに考え込んでいて呆けていたようだ。
「あぁごめん。ちょっと考え事していてね」
僕はグラスに残っていたジュースを一気に飲み干した。
「それより僕行くよ」
「行くってどこにだ?」
てるは不思議そうに僕の顔を見た。
「奈々のところに決まってるだろ」
そう言うと僕は立ち上がって奈々のところまで向かった。
「奈々のところって、お前まさか…!」
後ろからてるの声が聞こえてきたがたぶんてるは気づいたのだろう。
奈々はむらぁやマジック達とまだ喋っていたが僕はおかまいなしで奈々に声をかけた。
「奈々ちょっと今いいかな?」
「え、くろあ?別に大丈夫だよ」
正直どきどきしたがなんとか奈々を誘い出すことができた。
むらぁやマジックは何も言わなかったがたぶん僕が今からすることをわかっていたのだろう。
部屋から出て行くときにむらぁと目があったが僕は気にせず部屋からを出た。
歩いている時は奈々とは一切会話はなかった。
奈々のほうも僕の様子に気づいていたのだろう。
そして僕は今さっき来ていたエントランスで立ち止まり奈々のほうへ振り返った。
「急に呼び出してごめんね」
「全然大丈夫だよ。私もくろあと喋りたかったし」
奈々は笑って答えてくれた。
「あぁそれならいいんだけど」
またしても少し沈黙の時間が流れた。
だけどこの機会を逃したらチャンスはもうないだろう
「あのさ、前アイコンチャットであったことなんだけど」
「うん…」
「改めて聞くけど本当なの?」
ドキドキしながらもなんとか奈々に聞くことができた。
「本当だよ。私はくろあの事が好き」
「そうか。でもなんで僕のことを…。僕なんかよりムロウや疾風だっているじゃないか?」
「ううん。私はくろあのことが好きなの。ムロウや疾風は関係ないよ。私はいつも一緒に居てくれて一緒に居て楽しくてそして何より優しいくろあのことが好きになったんだから」
いつも一緒に居てくれて、一緒に居て楽しくてそして何より優しいか。
僕自身はそんなことないと思うけどな。
「えっと、なんかありがとう」
「あはは、なんでくろあがお礼を言うの」
「そ、そうだな…」
やっぱりこうやって奈々に好意を寄せられていると本当に嬉しい。
だけど、それでも僕は…。
「くろあ、返事くれる?」
奈々は真剣な顔で僕を見つめてきた。
僕はその顔を見ると僕が考えている全ての思いを奈々に伝えた。
「僕は奈々のことが好きだよ。それはあの出会った頃からだったかもしれない」
奈々と出会ってもう3年は経つ。あの頃から僕のチャットでの日々は本当に楽しいものへとなっていた。
友達ができて皆とくだらない話をすることもも全てが楽しいものだった。
それは奈々が中心となって居てくれてたからだ。
そして僕は奈々のことが好きになっていた。
2人きりで喋っている時、奈々と起きた事件を一緒に越えてこれた時は凄く嬉しかった。
いつの間にか僕と奈々との距離は縮まっていた。
だけど…
「だけど僕は奈々とは恋人という関係にはなれない」
「えっ…」
これが僕の出した答え。
一番この答えに悩んだけれど全てを奈々に伝えることができた。
「くろあはやっぱりむらぁちゃんの事が好きなの?」
奈々は真剣な顔をしたまま僕に聞いてきた。
「正直さ、むらぁのことを好きだって認めたくなかったんだ。ただの友達でそれにあのむらぁだしとずっと思ってた」
そうだと思っていた。けれど思っていたのに僕は…
「けどあいつとの思い出を考えていくと僕はあいつのこと好きだったってわかったんだ。確かにあいつとの思い出は奈々との思い出に比べると少ないかもしれない。けれどあいつとの思い出は僕にとって凄く大きなものでかけがえのないものなんだ」
「そうなんだ…」
「だからごめん奈々…」
奈々にそう言うと奈々は顔を下に向けてしまった。
もしかしたら受け入れてもらえなかったのかもしれない…。それにこの友達としての関係は終わるかもしれない。
「あはは」
「え?」
何故か奈々は下を向いたまま笑い出してしまった。
今さっきの会話で笑える所なんてあっただろうか。
「知ってたよ。くろあがむらぁちゃんのこと好きだっていうの」
「知ってたって…。でもだいぶ前アイコンチャットでむらぁのこと好きだって言ったのは冗談みたいなものだったんだよ?」
「違うよ。今日くろあと会ってからもうわかったんだ」
「今日で?」
「たぶんくろあは気づいてないと思うけど今日くろあの事見てたらねくろあったらむらぁちゃんのことばっかり目で追ってたんだよ。それ見たらくろあはむらぁちゃんのことやっぱり好きなんだな~って思ったの」
僕目で追ってたかな?確かにむらぁとは何回か目が合ってたけど。
「だからなんか私としてはやっぱりって感じなの」
「そうか」
「ねぇくろあ」
「何?」
「今までくろあのこと好きでいさせてくれてありがとう」
「なに言ってるんだよ僕だって君の事好きだったよ。だから…」
こっちこそ奈々には感謝しなきゃならないのに。
奈々にはいっぱい迷惑かけたのに…
「駄目だよくろあ。くろあはむらぁちゃんにその言葉言わないといけないんだからね」
「あぁ、わかってる」
「それじゃ、くろあがんばれ!!」
僕は奈々の言葉を聞いた時奈々への思いをやっと断ち切ることができたと思う。
彼女に応援される。それは僕にとって最高の応援だ。
だから僕はむらぁに思いを告げなければならない。
「ありがとう奈々。僕行ってくるよ!」
「うん!」
そう言うと僕はむらぁが居る部屋へと戻っていった。
急いで部屋に戻ったがそこにむらぁは居なかった。
「りんご、むらぁ知らないか!?」
「え、むらぁちゃん?確か気分転換してくるって言って結構前に部屋から出てったと思うけど…」
結構前っていうことは僕が奈々と部屋から出て行くちょっと後ぐらいなのかな。
「ありがとう。探してみるよ」
僕はむらぁを探すためにまた部屋を出ようとした。
「ちょっと待てよ、くろあ」
出ようとしている時に後ろから声がかかった。
後ろを振り返るとどうやら呼び止めたのはムロウだった。
「どうしたんだよ、ムロウ」
「お前奈々とはどうなったんだよ?」
ムロウは僕が奈々に返事をしていることを知っていたようだ。
たぶん奈々と部屋から出て行くときにわかったんだろう。
「断ったよ」
「な!?お前何考えてるんだよ!」
そう言うとムロウは僕に詰め寄ってきた
それと同時に他の皆も驚いたようにこっちを見てきた
「これが僕の答えだから正しいことをしたまでだよ」
「ッ!お前奈々がどれだけお前のこと好きだったのか知ってるのか!?」
「知ってるよ。全て奈々から聞いたからね」
「だったら!!」
「僕はむらぁのことが好きなんだよ!今度は冗談じゃなく本気で!」
僕は気づけば大声でそう言っていた。
それに驚いたようにムロウは少し後ろへと退いた。
「今からむらぁに気持ち伝えに行ってくるよ」
「お前…」
「だからごめん色々と迷惑かけたね。奈々やムロウそれに皆にも」
僕は最後にそれだけ言うと部屋から出て行った。
僕はひたすらむらぁを探すために会場内を走り回った。
だが様々な場所を探したがむらぁは居なかった。
僕は受付に行って聞いてみたがむらぁらしき人はここでは見てないらしい。
たぶん外には出て行ってないのだろう。
僕は再びエントランスにも行ったがやっぱり居なかった。
一体どこにいったんだろうか。
僕はエントランスで考えているとふと会場を案内する案内板に目がいった。
それを見るとどうやらこの会場は屋上にも行けるらしい。
僕はそのことを知ると走って屋上まで行った。
屋上へのドアを開けるとそこにはむらぁがひとり居た。
彼女のいつものチャットでのイメージはお気楽で悪戯っぽいという感じなのだがこの時のむらぁの後姿はどこか寂しく見えた。
「むらぁ」
僕はそんなむらぁに声をかけた。むらぁはその声に気づいてこっちに振り返った。
「あれ、どうしたのくろあ?」
「いや、今度は僕がお前と話そうと思ってね」
「でもくろあ奈々ちゃんとの話は?」
「終わったよ。全部ね」
「そうなんだ。おめでとうくろあ!」
むらぁはどこかぎこちない笑顔で僕のことを祝ってきた。
「何言ってるんだよむらぁ?」
「何ってくろあと奈々ちゃん付き合うことになったんでしょ?」
「違うよ。僕は奈々のこと断ってきたんだ」
僕がそう言うとむらぁは今さっきのぎこちない笑顔から驚いた顔へと変わった。
「え、え!?何で!どうして!?」
「どうしてって…。それは色々理由があるんだよ」
「理由ってなによ!くろあだって奈々ちゃんのこと好きじゃなかったの!?」
「落ち着けって。僕はその理由を伝えるためにむらぁと話にここに来たんだから」
「どういうこと?」
少しだけむらぁは落ち着いてくれた。
僕は落ち着いたむらぁを見ると僕が思っている全てのことをむらぁに伝えることにした。
「奈々のこと好きだったよ。本当に昔から」
「だったら奈々ちゃんのこと…」
「でもね、僕にはそれ以上に好きな人が居たんだ。最初はそいつのこと好きだなんて全然思わなかったのに今回のことがあってよく考えてみると僕はそいつのこと好きだったんだ…」
「それって?」
僕はむらぁに一番言いたかったことを言うためにむらぁの目をしっかり見てむらぁに伝えた。
「僕はむらぁのことが好きだ。よかったら僕と付き合ってほしい」
「えっ!?」
言えた。やっとむらぁに。後は返事をもらうだけだ…。
「くろあ、本気なの?」
「あぁ本気だよ。僕は君のことが好きだ」
僕がそう言うとむらぁは下を向いて何も喋らなくなってしまった。
もしかしたら駄目なのかもしれない。
「駄目なら駄目って言ってくれていいんだよ。僕気にしないから」
「駄目なんかじゃないよ!」
むらぁは顔を再び上げたがどこかその顔は悲しそうな顔になっていた。
「駄目じゃないよ。駄目なわけないじゃない…。私だってくろあのこと好きだもん」
「むらぁ…」
「でも私がくろあと付き合うと奈々ちゃんのこと裏切っちゃうことになっちゃうの。メールでも奈々ちゃんのこと応援してたのに…」
奈々とむらぁはメールで連絡をとっていたのか。
「だから、くろあ私…」
「ちょっと待って!!」
むらぁが僕に何か言おうとした瞬間後ろのドアのほうから声が聞こえた。
僕とむらぁが声が聞こえたほうに顔を向けるとそこには奈々がいた。
「奈々っ!なんでここに!?」
「くろあとむらぁちゃんのことが気になったから探してたの…。むらぁちゃんやっぱりそんなこと考えてたんだ…」
どうやら奈々は僕達の話の内容を聞いていたようだった
「だって私がくろあと付き合ったら奈々ちゃんのこと裏切っちゃうことになるんだよ…。私そんなの嫌だよ」
「むらぁちゃん私そんなこと気にしないよ」
「どうして?」
「私むらぁちゃんがくろあのこと好きなこと知ってたよ」
「え、え!?なんで知ってたの!?」
僕はふたりの会話に口を出すことができないでいた。
「むらぁちゃんアイコンチャットでもくろあとばっかり仲良くしてたしそれにメールしてる時だってくろあのことばっかり話してたじゃない。誰だってわかるよ」
「そうだったっけ?」
「そうだよー。それに私はむらぁちゃんのことライバルだって思ってたし」
「そんな、私は…」
「だから気にしないでむらぁちゃん。自分の気持ちに素直になってよ」
「奈々ちゃん…」
奈々はむらぁとの会話が終わると再びドアの方へとむかい屋上から出て行った。
そしてまた僕とむらぁのふたりだけになった。
「奈々のこと振ったっていうのにわざわざ僕たちのところまで来てくれたんだな」
「うん、いい友達もったよ」
僕は奈々が僕のことを嫌いになってくれてないだけで嬉しかった。
「くろあ、返事のことなんだけど」
「あ、うん」
あやうく僕は本題のところを忘れてしまうところだった。
「私もねくろあと一緒になりたい…。くろあの彼女になりたい!」
「あ…」
むらぁはそう言うと僕に抱きついてきた。
「よかった。君に断られることが怖かったんだ…」
「ごめんね、くろあ。でも私はずっと前からくろあのこと好きだったんだよ」
むらぁを抱きしめているとむらぁから甘い匂いがした。
女の子を初めて抱きしめるけど皆こうなのかな。
「そうだったのか。それは気づかなかったな」
「もう…。タウンでもメールで書いてたじゃない」
そういえばそんなメールがあったな。
でも僕はあれは冗談だと思っていた。
「全く、くろあはにぶちんなんだから…」
「あはは、ごめんごめん」
「まぁくろあをゲットしたからもういいけどね」
「僕もなんだか今まで深く考えていたことがどうでもよくなったよ」
抱き合ったまま僕達は会話をしていた。
抱きしめている時はドキドキしていたが、どこか安心できるとこもあった。
「くろあ…」
「ん?」
むらぁは僕の名前を呼ぶとだんだんとむらぁの顔というより唇が僕へと近づいてきた。
僕の頭は色々と処理できないでいた。
だけど、これだけはわかる。あの恋人同士でやる「キス」だ。
しかし、ちょっとこれは早くないだろうか。まだ恋人という関係になって30分も経ってない。
いや、でもここでいかないと男じゃない!
僕は決心してむらぁとの唇の距離を縮めていった。
むらぁとの顔はやはり緊張しているのか赤かった。たぶん僕も真っ赤だろうな。
そしてむらぁとの距離が数センチメートルのところになったとき僕も目を閉じた。
だがむらぁとのキスをする直前突然携帯が鳴り出した。
「うわっ!!ご、ごめん!」
僕は慌ててむらぁから離れて携帯を見た。
携帯を見るとりんごから電話のようだ。
「も、もしもし…」
「あー!出るの遅いよ!!いったい何処居るの!?」
「いや、ちょっと屋上に」
「屋上ー!?どうせ、むらぁちゃんと一緒に居るんでしょ?早く部屋に戻ってきなよ。こっちはふたりを待ってるんだよ!」
なんでりんごたちが待ってる必要があるのだろう?
「わかった。すぐ戻るよ」
りんごに返事をすると僕は携帯を切った。
「あはは、りんごちゃんから?」
「そうだよ、全くあいつは…」
あいつほんとにタイミングが悪すぎる。
なんでこんな大事な時に。
「なんか皆が待ってるらしいからそろそろ部屋に戻ろうか?」
変な感じになってしまったので僕はむらぁを急かすように言った。
「う、うん。そうだね…。あ、くろあ!」
「何?」
「続きはまた今度ね!?」
むらぁはそう言うと先に階段を降りて行った。
続きはまた今度って…。ちょっとは期待していいのだろうか?
僕はそんなことを考えながら部屋に戻るのだった。
「「「おめでとーー!!」」」
部屋に戻ると何故か皆が祝ってきた。
「えっと、これ何?」
「むらぁちゃんと付き合うことになったんでしょ?だから祝ってあげてるんじゃない」
りんごはそう言うとむらぁを引っ張ってきて僕の横に並ばせた。
「いや~お似合いの二人だな。チャットでは俺様ともこたんの次に出来たカップルだな」
「きら、私付き合うって言ったつもりないんだけど…。それよりおめでとうふたりとも」
「う~ん、相変わらずもこたんはツンデレだぜ☆」
きらともこはまた痴話喧嘩をし始めた。やっぱりこの2人はこの方がいいよな。
「くろあ、おめでとう君ならやると思ってたよ」
「くろあにむらぁおめでとうな。お前らは喧嘩しないようにな」
てるに疾風は心から祝福してくれているようだ。相変わらずこの二人はいい奴だ。
「おめでとう。二人のこれからの展開に期待させてもらうぞ」
マジックにも色々世話になったな。それにしてもこれからの展開に期待されてもな。
「くろあ…」
「ムロウ、その~今さっきのことなんだけど」
奈々に告白されてそして奈々をフった後もそうだけどムロウにも迷惑をかけた。
それについては謝っておかないといけない。
「お前漢だな」
「え?」
「お前の行動にはびっくりさせられるよ。それによく決断したな。むらぁと幸せにな」
「あ、ありがとう…」
ムロウに謝る前になぜかムロウとのごたごたは解決できたようだ。
何にしても解決できてよかった。
「くろあにむらぁちゃんおめでとうね!まさかふたりがくっついちゃうなんてね」
「あはは、ありがとう。りんごちゃん。でもりんごちゃんがオフ会開いてくれたからくろあと一緒になることができたんだよ?だからありがとう」
「いえいえ。むらぁちゃんくろあに何かされたら私に言ってちょうだい!私がくろあを成敗してあげるから!」
「おぃ、りんごそれだけは勘弁してくれ。しかも何かされたらって僕が何かするみたいじゃないか」
りんごはいい奴か悪い奴かの区別がしにくい奴だ。
でも確かにこいつのおかげで僕とむらぁは一緒になれたのだから感謝しないといけないかもしれないな。
改めてりんごと友達でよかったと思う。
「くろあ、むらぁちゃんおめでとう」
「奈々ちゃんありがとう。それとごめんね」
「まだ言ってるのむらぁちゃん。私は全然大丈夫だから!ふたりが幸せになってくれたらそれでいいの」
「奈々ちゃん…。うん、私達幸せになってみせるね」
なんだかふたりの会話を聞く限り僕達が結婚するみたいな会話だな。
それになんていうか男にはわからない女の友情がここにはあるみたいだ。
「ねぇくろあ。ちゃんとむらぁちゃんを幸せにしてあげてね」
「わかってる絶対に幸せにしてみせる。それに奈々との約束だから守ってみせるよ」
「うん!あ、だけどもしむらぁちゃんに愛想つかされたって時は私が…」
「ちょっと奈々ちゃん!!」
「嘘だよ。嘘♪」
一体奈々は何を言おうとしていたんだろうか?
「さーてと最後にくろあに何か一言言ってもらおうじゃねぇか!」
「え?」
ムロウがいきなり僕の背中を叩きそんな事を言い始めた。
僕特に言いたい事なんてないんだけど…。
「がんばれーくろあ!」
「何か良いこと言えよー!」
周りからもなぜか色々と言われてるしここはビシッと言うべきかもしれない。
僕は深呼吸をすると皆の前に立った。
「皆、僕とむらぁのこと祝ってくれて本当にありがとう。まさか今日こんな形で僕達が恋人という関係になるとは思ってもなかったよ。それにむらぁと付き合えるようになったのは僕だけの力じゃない。ここにいるアイコンチャットのメンバー、タウンのメンバー、その他に僕を励ましてくれたキキ、とりで、田村が手伝ってくれたから僕はむらぁと付き合えるようになったんだ」
皆は最後の田村の名前を聞いた時びっくりしたような表情をしていた。
まぁあの荒らしが僕を励ましたなんて嘘のように思えるだろう
「だから皆に感謝してる」
「くろあ…」
隣に居るむらぁは僕の手をキュッと握ってきた。
むらぁと繋いだ手は温かかった。
「今までも色々と迷惑かけてきたけどこれからもチャットで皆には迷惑をかけることがあると思う。それでもこれからもチャットでもリアルでも仲良くしてほしい」
何があろうとこれからも皆と一緒に居たいこれが僕が心から思う本当の気持ちだ。
「当たり前でしょ、くろあ。私達はずっと友達だよ」
「なにがあっても俺達は友達だ」
奈々を始め皆が返事をくれた。
そしてむらぁを見ると彼女はとても幸せそうな顔をしていた。
「ありがとう。皆これからもよろしく」
改めて僕は皆に頭を下げた。
隣にいるむらぁも同様に頭を下げていた。
こうしていると彼女というよりなんだか保護者のような…。
「よっしゃ!全て終わったことだし残りの時間はめいいっぱい楽しむぞ!!」
こうして僕達はオフ会の残りの時間を有意義に楽しく過ごした。
そして楽しい時間は過ぎていくのが早いもので終わりの時間になっていた。
「あー今日は楽しかったねー!」
僕達チャットメンバーは会場から出て今は外に出ていた。
「ちなみに今日中に家帰る人ー」
りんごがそう言うと奈々、疾風、もこ、きらが手をあげた。
「俺はもこたんを送るという使命があるのでな」
「来なくていいよきら」
もこは急ぎの用があるらしいがきらはただもこを送りたいらしい。
「私は部活があるんだよね~」
「俺も…」
奈々と疾風は部活らしい。
「それじゃあ皆一旦ここで解散だね~」
「おぅそうだな。それじゃあ皆今日はお疲れ!次もまたオフ会絶対やろうぜ!!」
今日1日司会だったりんごと途中から司会になったムロウが閉会のような感じで終わりを告げていた。
このふたりは本当に1日ご苦労様だな。
「じゃあね皆。またチャットで会いましょう」
「あばよー!俺様が居ないからって寂しくするなよー」
「お疲れさま今日は楽しかったよ」
きらともこ、疾風はここで僕達と別れた。
それを見送ると奈々が何故か僕の所へとやってき小声で喋り始めた
「くろあ、くろあ」
「どうしたの?」
「むらぁちゃんとこの後も楽しんでね!」
「なっ!?」
後って一体…。それより何を言ってるんだ?
「それじゃあねー皆!!」
それだけを言うと奈々は先に行っている3人の所へと走っていった。
まぁ何にしてもいつもの奈々に戻ってくれて本当によかった。
「くろあ、奈々ちゃん何て言ってたの?」
「い、いや大したことじゃないよ」
「えー!ちょっと何話してたのよー!」
むらぁは僕と奈々が皆に内緒で話していたことが気になるようだ。
「えっと、あ!それよりりんご今日はお前どうするんだ!お前も明日帰るんだよな!?」
何とか僕は話をそらした。うまくそらしたのだがその間むらぁはずっと横で睨んでいた
「私も今日は帰らないよ。それにこの後てると遊びに行くんだよー!」
「え、そうなのか?でもお前オフ会来る前に僕にショッピング付き合ってとか言ってなかったっけ?」
「えー、だって彼女さんが居るのに私が誘っちゃ駄目でしょ?」
りんごはむらぁの方を見た。たぶんこいつは気を利かせているつもりなのだろう。
それにてると一緒というのなら安心してこいつを任せられるな。
「てる、りんごの事頼んだよ」
「あぁ、でもりんご一日中遊びまくるって言ってるのだが…」
「それはご愁傷様…」
この後りんごとてるは僕達と別れてふたりで歩いていった。
てる大丈夫だろうか?
「ムロウとマジックはどうするの?」
「俺はマジックと1日飲み明かすつもりだぜ!」
「飲むって未成年だろ」
「フッ、冗談に決まってるだろ。ジュースだよジュース」
なんかムロウが言うと冗談に聞こえない。
「というわけでお前らも楽しめよ!」
ムロウは僕の肩を叩きながら笑っていた。
「それじゃあな、くろあ、むらぁ」
「また会おうぜー」
ムロウとマジック、本当に飲むつもりじゃないだろうな…。
僕は二人に手を振って見送った。
そしてついに僕とむらぁだけとなった。
「えーっとむらぁはこの後予定は?」
「私もどこかで泊まっていく予定だよ」
「なるほど…」
「あーでも、一人じゃ寂しいから誰か居てくれたらいいんだけどね~」
そう言うとむらぁは僕の方をチラッと見てきた
たぶん、何か期待しているのだろう。
「じゃあ、一緒にどこかで遊んでいく?」
「ほんとー!?いくいく!」
むらぁは子供のようにはしゃぎだした。
「さっすが私の彼氏さんだね!」
「そういえば僕達付き合ってるんだったね」
「そうだよー!それより早くいこうよ!」
「お、おぃ引っ張るなよ!」
むらぁは僕を強引に引っ張って進みだした。
ところで一体どこ行くんだろう…。
気づけば僕とむらぁは街中へと来ていた。
初めてくる場所なのでここがどこかが一切わからなかった。
「あのさぁ、僕達どこ行ってるんだ?」
「う~ん、とりあえず街中をぶらぶらしてる」
「ぶらぶらか。一応行く所ぐらいは決めとこう…ってむらぁ?」
ついさっきまで隣にいたむらぁが居なくなっていた。
まさか、迷子!?
「くろあ~」
迷子と思った瞬間少し離れたところからむらぁの声が聞こえてきた
僕はむらぁのところへ行くとどうやら洋服店の前に置かれているガラスケースの中の服を見ていたようだ
「むらぁ少し離れるならちゃんと言ってくれないと…」
「ねぇねぇ、くろあこの服可愛くない!?」
むらぁは気に入った服を指差して僕に教えてくれた。
その服は結構フリフリで派手な感じの服だった。
少しマニアックな服かもしれないがむらぁなら似合う気がする。
「確かに、むらぁなら似合うと思うけど」
「わーっ!くろあが褒めてくれた!じゃあ買っちゃおうかな♪」
どうやら僕に褒められたことが本当に嬉しかったらしくむらぁは店に入ってこの服を買いにいった
それにしても服を買うのはいいのだがこの服僕の3か月分の小遣いぐらいの値段だぞ…。
もしかしてむらぁって結構お嬢様なのかな?
そんなことを考えているとむらぁがニコニコしながら店から出てきた
「私がこの服着るときを楽しみにしててね♪」
そう言うと再びむらぁは歩き始めた。
まぁ確かにあの服を着たむらぁを見るのは悪くないな。
「くろあカラオケでも行く?このまま何もしないよりはいいでしょ」
「そうだな。もう夜になるしな」
腕時計を見てみるといつの間にか18時半になっていた。
結構オフ会してる時間が長かったからな。
「よし、行こうか」
「うん!丁度そこにあるし入ろう」
僕達はすぐそこにあった小さなカラオケ店へと入って行った
「はぁ、疲れた…」
「こ~ら、今から歌うんだからテンション上げていこうよ!」
「わかってるけど…。それにしてもむらぁは元気だね」
「そんなの当たり前でしょ。だってくろあと一緒にいるんだから!」
むらぁは平然とそんなことを言った。ほんとこいつは人をドキッとさせる台詞を平然と言えるな…。
でもまぁ僕もまんざらでもないんだけど。
「それじゃあ歌うよー!」
この後僕達はしばらく歌っていった。
僕は疲れていたので歌うのは少し控えていた。さすがに今日1日あったことで疲労が半端ない。
だがむらぁは疲れていないのか元気に歌っていた。
1時間ほどするとむらぁも少しは疲れたのか一旦歌うのを中断して休憩し始めた。
「ふ~、やっぱりカラオケはストレス解消になるね~」
「へぇむらぁにもストレスってあるんだね」
「当たり前でしょ。私みたいなお年頃の乙女には色々とあるんだよ。くろあにはないのストレスとかって?」
「ストレスか…。別に今は特にないかな」
ストレスみたいなものはあったんだけど今日で全てスッキリしたからな。
「ふーん、そっかぁ」
むらぁは歌いすぎて喉がかわいたのかテーブルにあったジュースを飲み始めた
「むらぁそれ僕が飲んでたジュースだって!」
「え~いいじゃない。ちょっとだけだよ」
そう言いながらだいぶむらぁは飲み干していた
「あのさ、僕が言いたいのはそういうことじゃないんだけど…」
「ん?あっ、そっか~これ間接キスだね!アハハそういうことかー!」
僕はこんなに恥ずかしそうに言いにくくしていたのにむらぁはあっさりと間接キスという言葉をだしてきた。こいつに「羞恥心」という言葉はないのだろうか?
「でも相手がくろあだし別にいいか!私達恋人同士だしね♪」
「いや、確かにそうだけど…」
「まぁそんなことより今日のオフ会楽しかったね~」
「そうだね。ほんとに楽しかったよ。今度またオフ会する時が楽しみだね」
「だよね。今度はもっと人増やしてやりたいね」
「あぁ、とりでにキキとかも呼んでみるか」
今回の騒動で二人には助けられたし。それと田村にも。
あいつをオフ会に呼んだらなんか凄いことになりそうだ。
でも意外とネットとリアルではギャップがありそうで面白いかもしれない。
「それにしてもまさかくろあとこういう関係になるとは思ってもみなかったな~」
「それは僕もだよ。3年前はこんなになるとは思ってもなかったよ」
「3年かぁ、もうそんなに経つんだね…」
3年前チャットで初めて出会ったのがむらぁだ。そこから友達、親友そして今恋人と関係が変わってきた
「あの時は、りあら、リッド、むらぁ、僕っていう組合わせだったよね」
「そうだね。りあらにリッドなにしてるかなぁ?」
いつの間にか居なくなっていたふたり。あの二人はどうしているだろう。
さすがにチャットで会う事はもうないだろうな…
「あ、ごめんちょっとトイレ行ってくるよ」
「りょうか~い。じゃあ私なにか注文しておくね」
用を済ませ部屋に帰っていると僕は見知った顔を見かけた。
「あれ?てる!?」
てるはこっちに向かって歩いてきていた。
「ん、くろあ何でここに居るんだ?」
「むらぁとカラオケを…。もしかしててるもりんごと?」
「うん。りんごが凄い歌っててさ…」
「お互い苦労してるね…」
見事にてると僕は同じ立場のようだ。
自分の連れているパートナーのことを思うと僕達は一緒に苦笑いをした。
「なぁくろあ。りんごってどんな人がタイプだと思う?」
「え、りんごのタイプ?」
まさかここでてるがこんなことを聞いてくるとは思わなかった。
「いや~よくわかんないけどさ、とりあえず一緒に居て楽しいやつとかじゃないかな?」
「そうなのか?」
「確か結構前そんな感じで言ってたような。ていうか、まさか本当にりんごのこと…?」
「まぁな…。今日一緒に居て改めてそう感じた」
てるもアイコンチャットでりんごの事好きとか言ってたがまさか本当だったとは。
てっきり皆に追い詰められて僕と同じで適当に答えたと思ったんだけどな。
「でも、てるならりんごの事任せられるよ」
「はは、そうかな…」
「あれでもあいついいところあるからりんごのこと頼んだよ、てる」
「あぁ、任せてくれ!」
そう言うと僕達は自分の部屋へと戻っていった。
りんごがてるに迷惑かけないといいんだけど。
部屋に戻るとむらぁが注文した食べ物や飲み物がきていた。
「ちょっと~くろあ遅いよ!何してたのさ!?」
「ごめんごめん、色々とね」
この後もむらぁは僕が何していたのかが気になるのかぐだぐだ言っていたがなんとか宥めて僕達は簡単に食事を済ませながら残りの時間は歌った。
「うーん、楽しかったぁ!」
僕達はカラオケ店から出て外に居た。
時計を見ると既に9時になっていた。
「そろそろ、寝る所探さないとな」
「それもそうだね~」
「むらぁはどうするの?どこか予約とってるの?」
「ううん。全然!くろあはどうするの?」
「僕はどこか近くにあるネットカフェでも行ってそこで過ごすことにするよ」
ホテルだと料金も高いし、ネットカフェだと安くつく。
金のない僕だとネットカフェがぴったりだ。
「ん~じゃあ私もネットカフェにしようかな」
どうやらむらぁもネットカフェにしたらしい。もしかして僕に合わせてくれたのかな?
「それじゃあネットカフェ探そうか」
ネットカフェを探しに行こうとすると後ろからむらぁが手を繋いできた
「ちょ、ちょっと…」
「え~、いいじゃない私たち恋人同士なんだし」
「いや、嬉しいんだけどまだこれはちょっと早いような」
「もぅくろあったら照れちゃって♪でも、私だって結構緊張してるんだよ?」
意外だった。まさかむらぁから緊張という言葉が出るなんて…
「あ、あれネットカフェだよね」
手を繋いで歩いているとネットカフェらしき建物があった。
「そうだね。それじゃあ入ろうか」
ネットカフェに入ると僕たちは今日ここで寝泊まるので朝までで、座椅子部屋が空いていたのでそこに決めた。
座椅子部屋に来るとそこには1畳ほどスペースがあり、テーブルの上にパソコンがあり座椅子がおかれてあった。
「っていうかなんでここにむらぁもいるんだよ!?」
何故か1畳という狭いスペースにむらぁまで部屋に入ってきていた
「別にいいでしょ~恋人なんだし」
「い、いや確かに恋人同士だけどさすがにまだ早いって!ていうか今さっきからその口実ばっかりじゃん!」
「え~、それにお金勿体無いでしょ。明日帰るのにだってお金だいぶかかっちゃうし」
「それはそうだけど…」
「ということで私も今日はここで寝るね!」
「ちょっと待てよ!お前、僕が変な気でも起こしたらどうするんだよ」
「ん~、でもくろあだし別にいいよ~」
絶対にむらぁは僕がそんなことをできないと思っているな…。
どうやらむらぁになにを言っても無駄なようだ。
「ほら1畳って言っても意外と二人でも寝れるじゃない」
「あー、もうわかったよ。それじゃあむらぁは先に寝てなよ。僕はまだ眠たくないしインターネットでもしてるから」
それにむらぁが横で寝てたら緊張して一睡もできそうにないし
色々と考えながらも僕はパソコンを起動した。
「インターネットするんだったらアイコンチャット行こうよ!」
「別に今日はチャットしなくていいだろ?今日オフ会行ったんだし」
「だって~2人でチャットをするなんて、こんな貴重な体験なかなかできないよ?」
まぁ確かにチャットを1つのパソコンでするなんて珍しいことだよな。
「はぁ、しょうがないな。じゃあチャットでもいくか」
「わーい、やったー!」
そう言うと僕たちはアイコンチャットの場所へと行った。
チャットへ行くと奈々、きら、そしてキキ、とりでが居た。
さすがに田村は居ないがとりでとキキが両方居るなんて。もしかしてオフ会とかのこと気にしてくれたのかな。
管理人:くろあさんが入室しました
奈々:あれ、くろあ今日は家に帰ってないんじゃなかったの?
くろあ:ネットカフェに泊まっててさそれで…。奈々ときらはもう家に着いたの?
さすがに今ネットカフェにむらぁと一緒に居るということは言えなかった。
きら☆:俺は今さっき着いたぜ!
奈々:私はまだバスの中。だから携帯でw
とりで:そうか今日はオフ会だったかw
キキ:楽しく過ごせたようですねw
くろあ:うんwとりでとキキには迷惑かけたね。。
とりで:いや、お前らが元通りになってよかったよw
キキ:私もアイコンチャットの仲間だもん手伝うのは当たり前だよw
とりで:それにくろあが俺との約束守ってくれて本当によかったよ。
くろあ:友達との約束は守るにきまってるじゃないか。
奈々:ねぇねぇ約束って何なの?
とりで:それはさすがに内緒だなw
くろあ:そうだねw
奈々:えー!気になるじゃないw
本当にとりでとキキはいいやつだな。
このふたりと再び話せるようになってよかった
それにしても隣にむらぁが居るとなぜか緊張して文字がうちにくい…。
奈々:むらぁちゃんはどうしたのくろあ?
たぶん聞かれるとは思っていたけどさて、どうしようか…
くろあ:むらぁはホテルに泊まるらしいから途中でわかれたよ
なんとかその場しのぎをしたがむらぁの方を見ると納得のいかないような顔をしていた
奈々:そっかぁ。さすがに一緒に泊まれないよねw
きら☆:ふん、このチキンなくろあが一緒に泊まるはずないだろw
なんとかこの話題が終わりに近づいていると思ったらまだまだこの話題はあることをきっかけにしばらく終わらないのだった。
管理人:むらぁさんが入室しました
むらぁ:ヤッホーみんなw
なんでこいつが来るんだよ。僕は横を見てみるとむらぁは居なくなっておりいつの間にかむらぁは後ろに移動していた。そして寝転がってむらぁがにやにやしながら携帯のをつついていた。
とりで:おぉwいいタイミングで来たなw
奈々:むらぁちゃんナイスタイミングw
「むらぁなんでチャット来てるんだよ!」
「え~だって、見てるだけじゃ面白くないんだもん。それになんか楽しくなりそうだし♪」
キキ:むらぁさんはもうホテルの方なんですか?
むらぁ:ううん、私もくろあと一緒のネットカフェに泊まってるよw
とりで:え、でもくろあはむらぁがホテルに泊まってるって言ってたぞ
むらぁ:くろあはたぶん照れるからそう言ったんだよwねぇ、くろあ?
くろあ:いや、それは…
奈々:そうなんだぁ一緒のネットカフェに泊まってるんだねぇw
むらぁ:奈々ちゃん、それだけじゃないよ!くろあと一緒の部屋に居るんだよ!
きら☆:あ?
とりで:あっちゃーw
こいつやっぱり言ってしまった。
むらぁのほうを見ると相変わらずにやにやとしている。
奈々:一緒の部屋ーー!?
キキ:一緒の部屋に居るってことは寝るのも一緒ってことですよね!?
きら☆:こぉぉらー!くろあ、てめぇ何俺様を差し置いて大人の階段のぼってやがるんだ!!
とりで:意外と大胆だったんだね、くろあ
くろあ:ちょっと待ってよ僕はもちろん一緒の部屋は反対したんだよ!ただむらぁが強引に一緒の部屋にしたんだよ!
きら☆:言い訳をするな!俺様でももこたんとはまだだというのに…。貴様というやつは!
奈々:それにしても個室にふたりかぁ。くろあ何か間違いをおかさないといいんだけどw
キキ:でも、くろあは間違いを犯す人なんかじゃないでしょw
むらぁ:だけど少しぐらいなら許してあげるんだけどねw
「言っておくけどむらぁ僕は間違いなんておかさないからな!」
「え~、本当かな~?」
なんだかチャットとリアルでのむらぁはまるっきり一緒で少しだけ混乱してきてしまった…
というか今ここにムロウが居なくてよかったと思ってしまった。
キキ:でも、むらぁさん幸せそうだね~
むらぁ:もちろんだよwだってくろあをついに手に入れたんだよw
くろあ:人を物みたいに言うなよ。。
むらぁ:さ~てくろあで何しようかな~w
奈々:いいなwねぇむらぁちゃん、くろあ貸してよw
むらぁ:ダメだよ~wくろあは私のものだもん。
とりで:モテモテだな、くろあw
きら☆:なんて野郎だ!おい、くろあ!!
画面を見ながら苦笑いしているときらがいきなり怒鳴り始めた
くろあ:え、何?
きら☆:絶対にむらぁを泣かすんじゃねぇぞ!俺様は女性を泣かせる男が一番嫌いだからな!
なんだろう、きらがまともなようなことを言っているような気がする。
まぁだけどきらに言われなくても僕はもうそんなことわかりきっていた。
くろあ:わかってる。絶対に僕はむらぁを幸せにするよ。
いつものチャットならこんなことは絶対に僕の口からは出ないだろう。だけどこのことに関しては大きく言えた。
そして後ろにいるむらぁを見るとむらぁは笑顔で本当に嬉しそうな顔をしていた
きら☆:よしそれならお前とむらぁの交際を認めよう。
こいつはお父さんかよ…
むらぁ:えへへ~嬉しいよ、くろあw
チャットの画面でむらぁが言ったと同時にリアルの方でむらぁは僕に擦り寄ってきた
「ちょっと、むらぁなにしてるんだよ…」
「いいじゃ~ん。私たちラブラブなんだから」
こんなことをむらぁとしているとキーボードがうてなくなりチャットの会話が遅れてきた
とりで:くろあとむらぁしばらく会話にでてきてないけどリアルでなにかしてるのかな?
奈々:どうせ、いちゃいちゃしてんじゃないの~
きら☆:おぃ、戻ってこいくろあ!俺様ともこたんでさえまだそんなことしてないんだぞ!
こいつらはエスパーかよ。そんなことを考えているとむらぁが携帯をまたつつき始めた
むらぁ:奈々ちゃん正解!くろあったら照れてかわいいんだよー!
くろあ:おぃ!そんなの報告しなくていいから!
奈々:いいな、いいなwうらやましいな~w
きら☆:くろあ、お前だけは…お前だけは許さん!
またむらぁが変なこと書いたからややこしくなってしまった。
そしてこの後も僕たちはむらぁと僕の話題でしばらくチャットをした。
むらぁ:ん~、私ちょっと眠たくなってきたから寝ようかな~。。
とりで:そうだな。もう1時だぜw
奈々:今日はオフ会もあって疲れたしねw
キキ:くろあ、むらぁが寝た後変な気は起こさないでねw
くろあ:誰が起こすかよ!
むらぁ:アハハwそれじゃあ今日はここらへんで。皆おやすみ~
きら☆:じゃあな、むらぁ
とりで:お疲れさま~
キキ:お疲れw
管理人:むらぁさんが退室しました。
やっとむらぁが退室してくれた。むらぁが今この場にいると疲れるだけだからな。
「じゃあくろあ私寝るね~」
「うん、わかった。僕はたぶんずっと起きてるから」
「え~そうなの。せっかくくろあと寝れると思ったのに~」
「はは、そのうちね」
「言ったね!絶対だよ!?」
思わず適当なことを言ってしまった…。もう笑ってごまかすしかなかった。
「それじゃあまた明日ね、くろあ。おやすみ」
「あぁ、おやすみむらぁ」
そう言うとむらぁは寝転び目を閉じていった。
それを確認した後僕は再びパソコンの画面へと目を向けてキーボードをうちはじめた
くろあ:あれ、いつの間にか奈々以外退室しちゃったのか。
奈々:うん。くろあとむらぁちゃんがまたいちゃいちゃしている時に皆退室していっちゃったよ。
くろあ:だからいちゃいちゃしてたんじゃないんだって。それよりも奈々は家に着いたのか?
奈々:うん、なんとかw今は疲れたから部屋でごろごろしながら携帯でチャットしてるんだよ。
くろあ:なるほどな
奈々:ねぇ、くろあ。
くろあ:ん?どうしたの?
奈々:くろあはむらぁちゃんのこと本当はいつから好きだったの?
むらぁのことか…。
たぶん最近この気持ちに気づいたんだけど…たぶん違うだろうな。
くろあ:ずっと前から好きだったと思う。
奈々:そっかぁ、ずっと前からか。だったら私に勝ち目はなかったんだね~
くろあ:いや、そういうわけではないけど…
奈々:アハハ、そういうことだよ
それにしても皆が居たときもそうだけどこうやって奈々とチャットで喋るのは久しぶりな気がする。
ほんとに色々あったから…
奈々:でも、私くろあに自分の気持ちちゃんと伝えられてよかったなぁw
くろあ:そうか。
奈々:告白の時にも言わせてもらったけど今までくろあのこと好きでいさせてくれてありがとうねw
くろあ:それはお互い様だよ
僕も奈々の事が本当にずっと好きだった。でも気づけば僕はいつの間にかむらぁの方へと気持ちが写っていたんだ。
奈々:そっか。くろあ、これからもずっと私たち友達でいてくれる?
くろあ:当たり前だよ。これからも…いつまでも友達だよ!
奈々:ありがとう、くろあw
これかも奈々と一緒にチャットをしていきたいと僕は心からそう思うのだった
奈々:ん~なんか安心したら眠くなっちゃったwそろそろ寝ようかな。
くろあ:そうだな。もうこんな時間だしゆっくり眠りなよ
奈々:そうするよwじゃあまたねくろあw
くろあ:あぁおやすみ
管理人:奈々さんが退室しました
奈々が退室すると僕一人がチャットに残された。
しばらくこうやって1人でチャットを眺めていると色々と今まであったことが思い浮かんでくる。
むらぁや奈々、その他のチャットメンバーたちの初めての出会い、荒らしが来て困ったこと、楽しいこと、悲しかったこと様々なことが…。
だけどそれがあったから今日むらぁと結ばれたのかもしれない。
そしてこの後誰も来なかったので僕はチャットを退室した。
パソコンをやっている僕の後ろではむらぁが寝息をたてながら寝ていた。
それを見ていたらだんだんと眠たくなってきた。
むらぁの横ではさすがに眠れないのでキーボードを少しどけてうつむく感じで僕は目を閉じると意外とあっさり眠りについていた。
―――翌日
「おーい、くろあ起きなよ~」
誰かが僕をゆさゆさと揺すっている。僕は声が聞こえたのでゆっくりと目を開けた。
「あれ、むらぁ…。なんでここに?」
「なんでここにじゃないでしょ~。昨日一緒にネットカフェに泊まったじゃない!全く寝ぼけちゃって~」
ふとボーっとした頭で昨日のことを思い出してみる…
「あぁ、そうか。そういえばそうだったね。でも、まだ8時だよ。こんなに早く起きなくてもいいんじゃないか?」
「わかってないな~くろあは。私たち今日夕方にはここ出てそれぞれの家に帰らなくちゃいけないんだよ?くろあとだってしばらく会えなくなるんだから…」
確かにそうだ。今日むらぁと別れたらしばらくは会えない事になる。高校生ということもありお金だってそこまでないのでちょくちょく会えることはない。
なので確実に遠距離恋愛ということになるだろう。
「そうだね。それじゃあ外に出ようか」
僕たちは荷物を持ち、受付で料金を払い外へと出た。
「ちょっとお腹空いたね~。なにか食べない?」
「コンビニでパンでも買って食べようか」
この後僕たちはコンビニに行ってパンを買い簡単に朝食を済ませた
「さてと、どうしようか?どこか行くって言ってもまだ時間も早いしどこも開いてないないと思うし」
「そうだね~。でも私はくろあと居るだけで満足だけどな~」
こいつ、またこんな恥ずかしいことを…
「とりあえずぶらぶら歩こうか」
「うん、そうしよ~」
僕たちは特にすることもないので適当に歩くことにした。
しゃべりながら歩いていると前から男ふたりがこっちを向いて歩いてきていた。
その顔は僕たちの知っている顔だった。
「あれ、マジックにムロウ!?」
「ん?お!くろあとむらぁじゃねぇか!!こんなところで会うとは奇遇だな」
その男二人は昨日オフ会で会ったばかりのマジックとムロウだった。
ムロウは元気だったが隣にいるマジックは結構静かだった。
「マジックはどうしたんだ?」
「昨日オフ会の後ずっと遊びまわっていたからな。たぶん疲れたんだろう」
疲れたといってもかなりぐったりしているように見えるがどんな遊びをしたんだろう?
「でもムロウは大丈夫なの?」
「ふっ、俺はこいつみたいに軟弱じゃないからな。だけどお前らはどうしたんだ?昨日遊んだ帰りにわかれたんじゃなかったのか?」
「うッ、それは…」
正直にはさすがに言えない。またチャットと同じようになるかもしれないからな。
「ネットカフェに泊まったんだけど実は泊まってたネットカフェがむらぁと一緒のとこでさたまたま出てきた時むらぁとばったり会ったから一緒になったんだよ」
「へぇ。そうなのか、むらぁ?」
「え~それはちょっと違うでしょ、くろあ。確かにネットカフェに泊まったんだけど私たちは同じ個室で寝たんだよ!そこ間違えちゃダメだよ~」
「な、なんだと…」
またこいつは余計なことを…
「マジなのか、くろあ!?」
「え、え~っとそれは…」
「くろあ、お前ってやつは!!」
やっぱりこうなるわけなのか。
「なーんてな」
「え?」
「昨日お前らは恋人同士になったんだ。それぐらいあるに決まってるもんな」
なんだろう、なにかムロウは大きく勘違いをしているような気がする…
「だから、あんまり驚かないさ」
やっぱりなにかムロウは勘違いをしているけど事が大きくならなくてよかった。
「さてと、おふたりさんの邪魔をするわけにも行かないし俺達はそろそろ行こうかな」
「別に邪魔じゃないんだけど」
「なーに言ってんだよ。せっかくデートに行くんだろ?邪魔になるに決まってるだろ。それじゃあなくろあ、むらぁ。仲良くしろよ」
「またね~ムロウ」
ムロウは僕たちに笑顔で手を振ると横に居るマジックを無理やり引っ張る感じで歩いていった。
「大丈夫かな、あのふたり」
「う~ん、マジックは大丈夫そうじゃないけどムロウが居れば大丈夫だよ」
「そうだな。それじゃあ僕達はこれからどうしようか?」
「そろそろ10時になるし水族館でも行こうよ!」
「水族館?別にいいけど、どこにあるのかわかるの?」
「大丈夫!昨日チャットしている時のついでに調べておいたから!」
「はは、準備良いな」
「うん!歩いてすぐのところだから早速いこう!」
ということで僕とむらぁは水族館へと行くことになった。
そして15分間ぐらい歩いていると水族館に着いた。
「水族館なんて小学生の時以来だな」
「あ、そうなんだ。でも私も小学生の時以来かな」
「そうか。じゃあふたりとも久しぶりということだしおもいっきり楽しんじゃおう!」
「当たり前だよ~。それに初デートだしね!」
そう言うとむらぁは僕の手をとり手を繋いだ。
「えへへ~」
むらぁは笑っているが僕はむらぁと手を繋いでいるということで頭がいっぱいになっていた。昨日も繋いでいたのだがまだまだ慣れてはいないようだ。
けど、むらぁ笑顔を見ると何も言うことはなかった。
水族館に入ると大きな水槽がたくさんあり魚が自由気ままに泳いでいた
「うわ~魚がいっぱい居るよ~」
「凄いな。こんなに魚っているもんなんだな」
「だね~。こんなに凄いなんてね。あ、くろああっち行ってみようよ!」
「ちょっと待てよ、そんなに急がなくてもいいだろ」
「だって~時間は限られてるんだよ!だからほら、急いで!」
「お、おい!」
むらぁは僕の手をぎゅっと握ったまま走り出した。
結局この後もむらぁに引っ張られる感じで魚やイルカショーなどを見て僕たちは楽しんでいた。
むらぁと一緒にいると時間が経つのも早いもので気づけば12時になっていた。
「むらぁ、そろそろお腹も空いたし昼食とらないか?」
「もうそんな時間なんだ。よ~し今度はお昼ごはんだ~!」
むらぁは再び僕の手を握り走り出した
水族館の少し離れた場所に昼食がとれる場所があり僕たちはその中へと入っていった。
テーブルに行き座ると注文を頼んだ。
「あー疲れた…」
「疲れるの早いよ~。私なんて全然疲れてないよ!」
「いや、だってあんだけ走ったら疲れるだろう」
「え~私はくろあと一緒だから全然疲れないのに~」
なんかこれだけむらぁの恥ずかしい台詞を聞いてたら少しは慣れたような気がする。
「ねぇ、くろあ昨日のことなんだけど」
「昨日のこと?」
「私がチャット退室したあとのこと」
「あぁ、それがどうかしたのか?」
「あの後皆と何話してたの?」
「何って、普通に話してただけなんだけど」
奈々としばらく話してたなんか言ったらなんか言うだろうな。
「え~嘘だよ~。あの後奈々ちゃんとふたりきりで話してたんでしょ~?」
「な、なんでそのこと知ってるんだ!?」
「だって私寝る前にもう一回だけチャットの様子見てみたらくろあと奈々ちゃんの二人しかいなかったもん。でも凄い眠たかったから携帯持ったままそのまま眠っちゃったけど」
チャットしている時閲覧者が1人ずっといるから誰かと思えばむらぁだったのか。なにかおかしいと思ったんだよな…
「そうだったのか。でも特に怪しいことは話してないよ」
「ほんとかな~?なんか怪しいな~…。正直に言ったほうがいいよくろあ?」
ほんとになにもなかったんだけど。
でも、ただ…
「ただ、これからもずっと友達だってことを再確認したってことぐらいかな」
「え~なにそれ~?」
「僕にとってチャットで奈々は大切な人なんだ。たぶんこれからもずっと。だからふたりで友達だということを確認しあったんだ」
「そうなんだ。でも妬けちゃうな~」
「あ、でもそれは奈々のこと好きって言うことじゃなくてただ友達として…」
「わかってるよ~。奈々ちゃんがこんなに想われてることが。でもやっぱり妬けちゃうな~」
むらぁは納得しないのか首を捻らせていた。
「大丈夫だよ僕はチャットでもリアルでも君を一番大切にしたいと思ってるし」
今じゃむらぁは僕にとって本当に大切な人になったんだ。だから当たり前のことなんだ
「くろあって結構恥ずかしい台詞言えるんだね」
「なっ、むらぁだって言うじゃないか」
恥ずかしい台詞を言ったつもりではなかったのだけれどどうやらむらぁに影響されてかそんな感じに言ってしまったらしい
「アハハ冗談。ありがとうくろあ。私にはくろあがいるから寂しいことなんてないよ」
やっとわかってくれたようなのかわからないがむらぁは笑顔になってくれた。
話がひと段落したところで料理が来たので僕たちは食べることにした。
話しながら食べていたこともあったので結構時間が掛かってしまった。だけど僕にとっては本当に楽しい食事の時間だった。
食事が終わった後は僕たちは水族館の近くにデパートがあったのでそこに行き楽しんだ。
そしてむらぁと過ごした時間は早いもので気づけば5時になっていた。
僕たちは帰るために駅へと来ていた。
「楽しい時間はあっという間だね~」
「あぁ、そうだね」
本当にあっという間だった。まさかこんなにむらぁと過ごす時間が楽しいとは思わなかったし。
「くろあはバスで帰るんだよね?」
「うん、まだ1時間ほどあるけどねりんごとも一緒に帰る約束してるし。むらぁは5時半の特急に乗るんだよね?」
「そうだよ~。じゃあ私たちはここでお別れってことだね」
「そういうことになるね」
「くろあ私としばらく会えないからって泣いちゃだめだよ~」
「誰が泣くかよ」
けど、むらぁとしばらく会えないと思うと少し胸が苦しくなる。
これが恋をしているということかもしれないな。
「本当かな~?でも私は泣いちゃうかも…」
「おぃおぃ、ずっと会えないってわけじゃないんだから」
「そうなんだけど…。こんなにくろあのこと好きになるなんて思わなかったから。もちろん会う前もくろあのこと好きだったよ。でもリアルで会ってからもっと好きになっちゃたんだ。だから…」
「僕もそうだよ。むらぁのこともっと好きになれた」
むらぁは今の僕にとって本当に愛おしい存在だ。
「だから、むらぁのことをもっと好きになりたいから今度むらぁと会う時を楽しみにしてるよ」
むらぁのことをもっと知りたい。むらぁのことを今よりも好きになりたいという気持ちは僕にとっては大きなことだ。
「それにチャットでも会えるよ。顔は見えないかもしれないけど僕たちはもう心が繋がってるから心配することはないよ」
そしてチャットという場所が僕とむらぁにとっても大切な場所。
「アハハ。やっぱりくろあの方が恥ずかしい台詞言うよ」
「もう否定はしないよ。どうやら似たもの同士だし付き合ってるみたいだし」
「ふふ、そうだね。私たちはもう繋がってるんだよね」
「うん、そうだよ」
「だったら今度会うときはもっと繋がってみる?私の家で」
「えっ、むらぁそれって…」
「楽しみにしてるよ~くろあ!今度は私の家に来てね、お父さんやお母さんにも紹介したいし!」
「あ、あぁ。わかった」
むらぁの言っていた事が気になって少し適当な返事をしてしまった…。
そしてむらぁは子供のような笑顔を見せると僕と握っていた手を離し走り出した。
「むらぁ!」
「ここまででいいよ。私本当に泣いちゃうかもしれないし…」
「そうか。じゃあ…」
「ねぇっ!くろあ!」
むらぁに手を振ろうとした瞬間むらぁが大声を出して僕を呼んだ
「くろあの名前教えてよ!」
「名前?」
「そうだよ!恋人同士なんだしこれからはハンドルネームじゃなくて名前で呼び合おうよ」
なるほど、そういうことか。
「わかった。じゃあ僕の名前は――――」
こうして僕たちは本名を教えあった。
この名前はふたりきりの時に呼ぶことになった。
「じゃあ、くろあここで」
「あぁ。というよりまたハンドルネームのほう言ってるよ」
「えへへ、慣れなくて。それじゃあまたね!」
そう言うとむらぁは笑顔で手を振った後、後ろを振り返り歩き出した。
僕は彼女の姿が見えなくなるまでずっと見ていた。
彼女が行ったあと僕はバス停でバスを待つことにした。
バス停にはすでにりんご来ていた。僕はずっとりんごからてるの面白い話などを聞かされていた。
どうやらりんごはてるのことが凄く気に入ったようだ。
僕はりんごの話に適当に相槌をうちながら携帯を開いてつついていた。
携帯をつついているとメールが1件届いた。
メールを開くとそれは今さっき別れたばかりのむらぁからのものだった。
僕はそのメールを読むために開いてみた。
「大好き」
たった3文字のメールだった。
だけどこのたった3文字のメールが僕には十分に伝わった。
3年以上前の僕は本当に夢にも思っていなかっただろう。
僕がむらぁと付き合うなんて。
けどそれはもう夢なんかじゃない。これは全て現実。
全てはチャットのおかげでありチャットの仲間達が居てくれたおかげなんだ。
だからこそ僕はチャットそしてチャットの仲間達に感謝したい。
チャットに出会えたことにチャットの仲間達に出会えたことにそしてむらぁという愛すべき人に出会えたことに。
いや…
僕と出会ってくれたことにありがとう