十一話 おじさん、選抜戦に挑む⑨
1週間後。
1周目では、全てのパーティの選抜戦が実施されると日に日に、その視聴者達は増え、歌島徳茂の画したコンテンツはWAA史上、最速での盛り上がりを見せていた。
【冒険者】最強議論、【スキル】の使い易さ、魔弾についての詳細、話題は尽きることなく、供給され、毎日がお祭り騒ぎの様になっている。
討伐選抜戦第六試合、これより、討伐戦は新たな局面へと広がりを見せることになる。
第六試合、討伐戦選抜戦2周目より、試合の結果で戦う相手が変わる。
第六試合で選出されたのは第一試合、第三試合の戦績1位と第二試合、第五試合の戦績2位。
合計4パーティでの選抜戦である。
***
選抜戦開始1時間前。
足利パーティ作戦室。
4人の【冒険者】達が椅子に座っており、その内の1人、ピンク髪をミニボブに整え、猫の様な耳が辺りの音を気にしてか、無意識のうちにピクピクと動いていた。
ノースリーブを着こなし、パッチリとした蒼い瞳を携える女、彼女こそが第三試合戦績一位である足利ルリであり、そのパーティメンバーが集う作戦室の椅子に腰掛ける3人の男に向けて、声を上げる。
「うっし、お前ら、今回も勝ってくぞ~。気合いええか?」
関西弁で気合いの入ったルリの号令に対して、3人の男は軽く返事をする。
「うぃーす」
「うっす」
「ノリ軽いなー。シャキッとせんかい。相手は【魔王】殺しの肋屋レンジ、おるねんで? このままだといけば、俺から真っ二つにされそうや。はぁー、すまんなぁ、ルリちゃん、うちらこんなんやけどいけそか?」
軽い返答をする大久保アラタと冲宗一に対して、ボサボサした茶髪を一本にまとめ上げた三白眼の男、水谷シンラは軽くツッコミを入れ、場を締めようとした。
「ええわ、シン。無理に気張らんでも。お前らのノリはこれくらいやないと勝てへんやろ」
ルリの台詞に対して、アラタはうんうんと首を縦に振る。
「ルリちゃん~、分かっとるやん。ワシらはぶっちゃけ、あの絶対的な個を止める能力はない。ルリちゃんが頑張ってくれる間にせこせこ点数を稼がせてもらう。仕事はするけど期待しすぎといてな」
「せやせや、俺とアラタじゃ、肋屋レンジは止めれへん」
その宗一の言葉に対し、シンラは引っかかったのか、口を挟んだ。
「なんや、俺なら止めれるみたいな評価は?」
「そりゃ…」
アラタはシンラの言葉に応えようとするが、それをルリが手で止めた。
そして、嬉しそうにニコリと微笑みながら口を開く。
「そりゃそうやろ。私が知る限り、お前さ一番性格悪いからな。まぁ、そこんとこ頼りしてるで、シン」
***
第五試合2位の戦績を納めたパーティ、ジェームズパーティの作戦室。
銀色の髪とは対照的に黒い瞳が特徴的で、頭上に犬の耳を生やした男、鈴木・ジェームズ・ジェパードが率いるパーティは静かに、レンジの動きを見ていた。
「春、習得終わったか?」
ジェームズが問いかけたのは、ウェーブのかかった黒髪を額の上まで伸ばした川上春であり、彼はレンジの動こを見ながら一度目を閉じて、何も答えなくなる。
「無理させすぎない様にしましょうよ、ジェームズさん。この前、春さん頼りになった結果、俺達を庇ったせいで春さんが早い段階で落ちちゃったんで」
春が無言になったことを心配して、もう1人のパーティメンバーである早坂充がジェームズへ苦言を呈した。
「そんなことは百も承知だ。俺だって、それが出来ればやってる。だが、春の強さを知れば、誰もが頼りたくなるだろう。俺達も今回は装備も【スキル】も一新した。後は、作戦の要の春にかかってるんだ。充、お前も覚悟を決めろ。俺達は全力で春に頼りながら優勝する」
ジェームズの言葉に対して、充は思うところがあった。だが、それ以上に春という存在が持つ強さと底を引き出せれるはずという考えもあり、渋々納得することにした。
そんな中、春は目を開き、2人に向けて、声を上げる。
「肋屋パーティ、足利パーティ、全員のこれまでの動きを習得した。勝つぞ、ジェパード、充」
***
肋屋パーティ作戦室、そこは既に作戦室と呼ぶにはあまりにも1人の物になり過ぎていた。
テーブル上には茶菓子と最新ゲーム機、床は横になるための絨毯の様なものが惹かれている。
それら全てはマーラが持ち込んだものであり、レンジはあまりにも彼女が部屋に私物を置くため、本部に問い合わせたところ、パーティの部屋だから問題なしと片付けられ、結局、作戦室は彼女の娯楽ルームと化していた。
そんな中、レンジは身支度を整えるとマーラとアルディーニへと喋りかける。
「第六試合、僕達にとっては、2回目の選抜戦だけど、2人とも気合い入れて行こう!」
「勿論だ!」
「おうよ」
2人はレンジの言葉に呼応する様に答えると、先週から昨日まで、練ってきた作戦と対処方法、それらを機最後に確認し、彼らは娯楽ルームという名の作戦室から討伐戦の準備場へと足を運んだ。
レンジ達は未だに気付いていないことがある。それは自分達は挑戦者ではなく、受けて立つ側であること。
前試合の1位であるが故に、他のパーティよりも以前とは別の理由で狙われる羽目になることを、彼らは知る由もなかった。
***
WAA公式チャンネル、その【生配信】の欄に、動画が流れ始めると眼鏡をかけ、スーツを着た早乙女カナが声を上げる。
「あー! テステス! 音声良好! WAA本部所属、オペレーター兼解説役の早乙女カナです! 本日より、【魔王】討伐選抜戦第二週です! 先週からTXも【配信】も大いに盛り上がっており、大変、実況冥利に尽きる限りです! 本日はどんな熱い試合が行われるのか! 私も楽しみで仕方ありません! それでは今週お呼びしたS級【冒険者】にも出てきてもらいましょう! 今回の豪華ゲストはこの方!」
カナの紹介に合わせて、赤髪の青年、アルベール・ペンドラゴンは口を開く。
「どうも、WAA公式チャンネルへお越しの皆様、アルベール・ペンドラゴンです。本日はよろしくお願いします」
普段つけているサングラスはしまっており、礼儀正しく挨拶をするとカナは場の空気を和めるために口を動かした。
「本日はアルベールさんと一緒に実況、解説を行っていけたらと思っております! それではアルベールさん、これまでの試合、見てきた中でいいので誰か注目している選手がございましたら教えて頂けると!」
「そうですね。俺は全員に期待してます。でも、強いて挙げるとすれば足利選手です」
「おお! 第五試合1位通過、個人では合計3人を取った足利選手! 今日この後すぐに活躍が見れる選手ですね! アルベールさんの期待通りの結果を出せるのか! 注目して行きたいですね! おっと! お喋りは一旦終わりテレビ 各陣営、準備が整いました。それでは【魔王】討伐選抜戦第六試合! 転送開始!」
カナの言葉に呼応して、参加者達の肉体が徐々に変換されるとレンジ達は火花を散らすための戦場へと飛ばされる。
レンジが目を開くとそこは大雨と風が吹き荒れる景色が広がっていた。
【魔王】討伐選抜戦第六試合、大荒れ模様の河川岸。
視界は雨で悪くなる中、15人の【冒険者】達の戦いが始まる。
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