八話 おじさん、選抜戦に挑む⑥
4つのパーティ、合計14人の選抜戦。
現在残ったのは4人。
その内、3人がレンジのパーティであり、1人残った【冒険者】は彼らから息を潜める様に逃げていた。
(こんな筈じゃ、こんな筈じゃなかった! 肋屋レンジ、アイツらのパーティを落としてから他のパーティとやり合う、それまでは手を組める筈だったのに! 何だあの出鱈目な強さは! 俺のパーティはアルディーニとかいう男にやられたし、無茶苦茶だ! はぁ、はぁ、落ち着けよ、俺。俺もA級【冒険者】だろ? 見極めろ。冷静に自体を見極めろ。今、俺達が今後に優勝を狙うための方法を探すんだ。いや、答えは一つだ。生存点、これに限る。この付近に【魔力】はない。なら、少しずつ移動して、残りの時間を耐え忍ぶ)
男は1人、深呼吸をして、その場に座り込んだ。
選抜戦の総則にある生存によるポイントの獲得、それを狙ってレンジ達から息を潜める。
1分、2分と時間が進むもその経過は遅く、額からは汗が吹き出る。
【魔力感知】は怠らず、常に緊張の糸を張り詰めながら刻一刻と時間が進むのを待った。
(頼む、早くしてくれ。気が狂う、もういっそ、俺だけでもレンジ達に挑んで散るか? いや、それならポイントすら手に入らない。俺達だって、【魔王】の討伐に挑みたいんだ。一縷の望みがあるならそれを掴むために、耐えろ、耐えろ!)
スマホの画面を何度もタップし、時計を確認する。
残り15分と刻まれた数字を見て、男は自然と両手を交えて、祈りのポーズをとっていた。
その祈りはだれに向けたものなのか。
神か?
それとも仲間か?
それともレンジ達か?
分からない。
分からないからこそ、本能で何かに縋ろうとした。
だが、その祈りは行先は1人の【魔王】に捧げられていた。
「よう! 【魔王】だぜ?」
男は声も上げられなかった。
あまりにも自然にマーラが目の前に立っており、手を挙げていたから。
(【魔力感知】をすり抜けて、来た? はは、何だそれ。何なんだよ、それ!)
死神が気さくに挨拶をして来たことに驚き、戸惑い、そして、涙を流した。
「わ、泣くな泣くな。泣くほど怖かったのか?」
「違う、ちがくて、あは、あは、あは! こんなんになっちゃった、こんなんになっちゃった、からには、ね」
少女を前にして、涙を流しながら、男は手元で【スキル】を使い、何としても点を勝ち取ろうとする。
「泣きながらも立ち向かう。いいね! カッコいいよ、お前」
賞賛はする。
敬意は払うが情けはない。
マーラは【冒険者】の肉体目掛けて、【我射髑髏】を容赦無く振るい、縦に真っ二つにした。
その瞬間に、実況のカナは興奮気味で叫んだ。
「試合終了!!!! 肋屋カーマ選手、所属パーティに2ポイント! 個人に5ポイント! これを持って、【魔王】討伐選抜戦第一試合、只今、終了いたしました!!!! 試合結果はこの通りになっております!」
【魔王】討伐選抜戦第一試合
1位 肋屋パーティ 17ポイント
2位 八十パーティ 6ポイント
3位 山田パーティ 2ポイント
個人
1位 肋屋レンジ 15ポイント
同率位 那須野・アルディーニ 15ポイント
同率位 八十ジュウゾー 15ポイント
4位 肋屋カーマ 5ポイント
同率位 山田洋次 5ポイント
「何と何と! 肋屋パーティ大躍進! 初日目にして、7人を倒して見事トップに躍り出た!」
「当然の結果ですね」
ミリアはこうなることは最初から知ってたかの様に自慢げにしているとそんな彼女に対して、カナは今回の試合の感想を尋ねた。
「如何でしたか? 今回の試合。ミリアさん的にはどう言った感想がでしたか?」
「そうですね、見応えはありました。様々な場面で展開するバトル、初めて見る【スキル】の使い方、【合成】 による戦術の広がり、色々なものを見れました。ただ、まだまだ大局を見据えた物ではないかと感じます。個に対しての執着、それにより幅を狭めてしまったパーティが多かったかと」
ミリアの言葉には、レンジ達ばかりを狙った【冒険者】へとちょっとした批判の様な物が込められていた。
「たしかに、そうですね! 初めての試合ではあったので、色々と見返してみて戦略を練り直す、それも今回の選抜戦の醍醐味かも知れません! ミリアさん、ありがとうございます!」
カナはそれに気付きつつも、上手く纏めると次の試合の準備が整ったとの連絡を受け、声を上げた。
「それでは続けて、第二試合へと移りたいと思います! 今度は四つ巴の戦い! 合計11人での試合です! 視聴者の皆さん! 更に試合を盛り上げていきますよ! 各陣営準備完了! 転送開始!」
カナの一言で、【冒険者】達は転送され、先ほどとは違った戦場に飛ばされる。
直後、カナは実況席で視聴者達を盛り上げるためにミリアへと話題を振った。
「第二試合はビル街とは違った市街地! 建物が低く一度バトルが始まればその場所の把握は簡単と言った所です! ミリアさん、第二試合へと移りましたが、注目の選手は居ますか?」
「僕は師匠以外興味ないのですが、強いて挙げるとすれば蘆原勇剣選手ですね」
「おお! 蘆原 選手といえば、A級の中で最もS級に近いとされる【冒険者】ですね! どんな所に注目してるのですか?」
「蘆原 選手、彼の【配信】を見ていたら分かりますが、その手数の多さと異常なまでの【魔力】量。小手先の技術を踏み潰すだけの実力があるかと」
ミリアが勇剣に対して、言及しようとしたその時、第二試合は開始、数分もない間に、大きな展開を見せる。
勇剣は比較的に近くで合流できた4人パーティに囲われて、4対1を強いられていた。
4人は勇剣だけと踏んだのか容赦無く襲い掛かるも彼はそれをたった1人でありながら捌き切った。
(連携が取れてるし、練習して来たんだろうね。僕に隙を与えない様、攻撃して来る。さて、どうするか。松風さんは基本的に逃げに徹して貰ってるし、マナカは近くにいるけど、今は行動しない様にして貰ってる。レンジのおじさんに情報を与えたくないから、なるべくおじさんと戦る時以外は出さないつもり)
勇剣はゴチャゴチャと様々なことを考えていると4人の【冒険者】はそれをチャンスだと考え、一気に仕掛けて来た。
「【合成】、火焔魔法IV× 貫通弾」
1人が放った貫くことに特化した炎の魔弾、それは勇剣の額目掛けて放たれる。
螺旋を描きながら、真っ直ぐに伸びる弾を勇剣は多くのことを考えていたせいか、反応が遅れ防御を取れなかった。
それもそのはず、勇剣の判断を分散させるために、他の3人が攻撃を放っており、彼はまんまとその術中にハマっていた。
(なるほど、そういう戦い方もあるのか)
勇剣は自分に迫る魔弾を前にして、そんな呑気なことを考えると次の瞬間、それは彼の額へとぶつかった。
「やったか!?」
魔弾を放った【冒険者】は勇剣の額に直撃したことで、ガッツポーズをした。
だが、その勝利への喜びは一瞬にして、崩れ去る。
カラン。
何かが落ちる音がした。
音がした地面、それは勇剣がいる先であり、落下したのは炎で生み出した魔弾。
彼を仕留め切れていないと確信した4人の【冒険者】は得物を構え直すも先程よりもその場に流れる【魔力】の流れが一瞬にして、変化したことに彼らは気付いた。
ヌルリとした【魔力】の感覚、味わったこともない雰囲気、それに当てられるだけで吐き気すらも覚える。
「じゃあやろうか、君達」
そう言うと蘆原勇剣は手に握る刀を構えた。
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