五話 おじさん、選抜戦に挑む③
【魔王】討伐選抜戦、その総則が発表され、その場にいた【冒険者】達は徐々にチームを組み始めていた。
「カーマ、僕と組むだろ?」
レンジは横にいたマーラにそうとうと先ほど、無理やり引き摺られたことを根に持ってたのか、彼の問いをプイッと無視をした。
「あのなー、お前、あの場で一悶着なんてしてたら、この後、どうなるか分からなかったんだぞ」
「ケッ! 言ってろ! 俺はお前達のためにやってやったのに、あーあ、もう知らねからなー」
完全に拗ねてしまったマーラの手を引きながら、レンジもまた、チームを組むために【冒険者】を探し始めた。
「あの」
「…」
「ちょっといいですか?」
「あ、もう自分いるんで」
「もしよかったら」
「大丈夫です~」
レンジは声をかける人全てに断られた。
それもそのはず、今現在、肋屋レンジは他の【冒険者】達から畏怖と羨望、そして、嫉妬の感情を一番に抱かれている【冒険者】である。
2体の【魔王】討伐、それでいて、世間の注目を集めまくっている。それに加えて、ミリアの師匠というおまけ付き。
他の【冒険者】からすれば、実力は兎も角、自分達の手柄を1人で掻っ攫い兼ねないレンジと組むのは特がない、そう判断されてしまっていた。
(話しかける人全員に拒否されてる。僕もしかして嫌われてるかな?! ど、どうする!? このままだと、ミリアの期待に応えるとか関係なく、失格とかになっちゃうの?!)
レンジは幾ら声をかけても人が集まらず、このまま行けばマーラと2人だけになってしまい、パーティを組めずに失格となってしまうのではないかと内心焦った。
焦るレンジとは逆にマーラは不貞腐れながら、周りにいる人々に目を向けていた。
(少なくても80点以上、それくらいの奴と組めなきゃ意味がねえ。まぁ、さっきからレンジが話しかけてる奴らは自然とその条件に当てはまってた。アイツ、人を見る目はあんだけどなー)
マーラは何人もの【冒険者】の品定めをする。
77、85、74、76、77、79、83。
80以上の【冒険者】は既にパーティを組んでいる者が多く、マーラも同様に目当ての人材を探せずにいた。
その時、彼らの目の前に1人の男が立った。
フード付きの黒いローブを羽織り、革製の手袋をした男は、もう1人の仲間を探すレンジとマーラへと声をかける。
「なぁ! 肋屋chのレンジさん、そんで、カーマさん! はじめましてだ!」
黒髪に翠の眼、平均的な見た目の青年は、ニッと微笑み、レンジ達へと敵意がない事を示した。
(94点? 何処にこんなバケモンが潜んでた?)
マーラは先程まで、自分の視界の【冒険者】の中にいなかった高得点の青年に目を丸くした。
「えーと、君は?」
「あ、そうだった。自己紹介が遅れた。俺の名前は那須野・アルディーニ。実はさ、俺、誰に話しかけても取り合ってもらいなくてさー。アンタら著名人なのになんかまだ、人が集まってなさそうだったから。ワンチャン、あるかな! って思ったんだけど」
アルディーニは笑顔でそういうとレンジは先程までの暗い表情が一瞬にして輝き出し、すぐに彼の手を取った。
「も、勿論だよ! 那須野、くん? 僕は肋屋レンジ! えーと、こっちがカーマだ!」
「那須野くんは辞めてくれ。アルディーニでいいよ」
レンジがマーラを紹介すると彼女は彼に向けて、喋った。
「合格だ。お前、俺達と組め」
「オイ、カーマ! こっちから組んで欲しいって頭下げる方だろ、僕達は」
「あー、いい、いい! そう言う固っ苦しいの無しにしようぜ! これからはパーティとしてやるんだし、もっと気軽に行こうぜ!」
アルディーニ、その青年はレンジとマーラに挟まれながらも平然としており、ミリア同様の適応能力の高さがあった。
一方で、ようやくパーティメンバーが見つかったのか、嬉しいレンジは一旦、心を落ち着けるために状況を整理した。
「えーと、アルディーニは僕とカーマとパーティを組んで、選抜戦に参加する。そう言う事でいいんだよね?」
「そう言う事でいい。いやー、俺も色んな人に喋りかけたんだが、俺のチャンネル登録者数聞いたら全員断っちまって助かるよ」
アルディーニは笑いながらそう言うとそれに対して、マーラは彼に突っ込んだ。
「どんくらいなんだ?」
「ん? 登録者か? ウチは1500人だ」
A級以上の【冒険者】は実力以外にも登録者の数も重要視されており、少なくとも50万人以上の登録者が必要とされている。
カーマはなんとなく察しが付くと、彼女はアルディーニへと問いかけた。
「なぁ、アルディーニ。お前、S級【冒険者】の推薦でここに来たんだな。誰の推薦だ?」
その問いに、アルディーニはなんの隠し事もないかなように平然と答えた。
「俺のことを推薦してくれたのはS級【冒険者】のノア・ハルモニア・レオンハート。俺の師匠だよ」
***
(くだらねーな。選抜戦、討伐戦、何もかも全部が下らん。俺もそんな下らんことに何かを縋っているようにいるが、心底どうでもいいな。パーティを組むなんて、俺が出来るわけねえんだ。とっとと家に帰るに限るな)
その男は会場の熱狂に冷めていた。
齢35になる男は、少し長く伸ばした髪を纏めており、誰ともパーティを組むことなく、その場から去ろうとしていた。
「松風さん」
松風と呼ばれた男は、声のした方向はと視線を向けるとそこには蘆原勇剣の姿があった。
「勇剣、か。何用だ? 俺はもう早く家に帰って【配信】したいんだが」
「松風さん、僕と組んでくれませんか?」
「…本気か?」
松風は自分の【冒険者】としての能力はなく、自分独自の【配信者】の形でここまで来たことを理解している。
だからこそ、自分と組むメリット、いや、自分をパーティに入れる利点がないと決めつけていた。
「本気ですよ。むしろ、僕は松風さんじゃないと組めないんですよ。僕にはマナカが居ますから。僕が他の誰かと戦うことを嫌がります」
「あー、なるほど? お前の横にいるって言われてる悪霊のことか」
軽口を叩いたその瞬間、松風の体は突然、何かに握りしめられ、宙に浮いた。
「が、が、はっ!?」
「マナカ、止めて。松風さんは味方にしたい人だから」
「はぁー? 私、今、悪霊呼ばわりされたんだけど、勇剣? それでも止めるの?」
マナカは既にその姿を以前の怪物の様な物へと変えており、それの右手には松風が握られていた。
「それでも止めるんだ。後で、松風さんにはマナカについて話しておくから。だから、頼むよ」
勇剣の懇願を聞き入れたのか、マナカは松風を地面へと投げ捨てる。
「ふんだ。感謝することね、この雑魚。勇剣が優しいから繋げた命と思いなさい」
そういうとマナカは返信を解いた。
「はぁー、はぁー、はぁー」
松風は辛そうにしており、彼に対して、勇剣は手を差し伸べした。
「すみません、マナカが勝手なことをしました」
「あー、はぁー、ゲホ、ゲホ、いや、俺も、ゲホ、迂闊だった。そうだったよな、お前の横にいるのはお前の恋人だもんな。ゲホ、ゲホ」
松風を立ち上がらせ、彼の呼吸を落ち着かせると勇剣は改めて、彼へと頭を下げた。
「先ほどの非礼を承知でお願いします。松風さん、僕と組んでください」
頭を下げる勇剣を見て松風はそれでもそのお願いを断ろうとした。
だが、突如として、彼の体は何故か、何か不可視の存在に包まれたかな様な寒気に襲われる。
(これ、さっきのと同じ。俺が断ればタダじゃおかねえっていう脅しじゃねえか!? 勇剣が頭を下げてる間にやってやがるな!? 面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだと思ってたし、なんなら今でも断りたい。だが、それでも勇剣、コイツのことは他の【冒険者】とは違うのを知ってる。はぁー、クソ。やりたくねえが、命は惜しい。でも、答えてやるか)
松風は頭を下げる勇剣へと自らの意思を伝えた。
「言っておくが、俺は【魔王】討伐戦なんてどうでもいい。だから、勇剣、お前の手伝いをするだけだ。だから期待するなよ」
松風が自分のパーティに加わってくれたことで勇剣は普段見せない柔らかな表情を見せながら、嬉しそうに感謝を告げる。
「ありがとうございます! 松風さん、僕達はこれからスリーマンセルで戦います。みんなで頑張って行きましょう!」
「スリー? ツーじゃなくて?」
その言葉を終えた瞬間、松風の体は再び何かに掴まれた。
「スリーですよ。僕と松風さん、マナカを含めて」
勇剣はニッと微笑み、松風はそれを見てから、自分がようやく危険なことに足を踏み入れてしまったことを理解した。
そうして、各人、パーティは揃い終え、合計18チームが結成される。
かつてない規模でお送りする大型【配信】企画、【魔王】討伐選抜戦、その行く末は如何に?
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