四話 おじさん、選抜戦に挑む②
WAA【東響】本部イベント会場。
そこには多くの【冒険者】達が集められていた。
彼らを集めた理由は1つ。
それは【魔王】討伐を行うメンバーを選抜する闘い、【魔王】討伐選抜戦に参加するためである。
集められたのはA級以下、B級以上の実力者達。
レンジとマーラも呼ばれており、名だたる実力者に囲われたせいで緊張しているのか、何度も深呼吸をする。
(A級【冒険者】、すごいな、こう見ると一度は見たことある顔ばかり。コレだけのメンバーの中、僕は不相応じゃないかな? はぁー、マイナスな考えを捨てよう。ふー、落ち着け、レンジ。ミリアに推薦を貰ったんだ。それに応えるためにここに来たんだろう。なら、やる事はただ、1つ。この選抜戦、必ず勝ち残る)
C級【冒険者】、レンジはその位置に該当し、本来であれば選抜戦への参加は認められない。
だが、S級【冒険者】の推薦があれば、参加が許可され、レンジはミリアの推薦を受け、選抜戦へと挑んでいた。
だからだろうか、普段よりもレンジは緊張しており、いつも以上に肩に力が入っている。
「緊張すんなよ、そんなに。見たところ、お前に勝てるヤツのが少ないぞ」
そんな緊張で固まるレンジの背後より、普段通りのテンションで、マーラが話しかけて来た。
「カーマ、お前だって、夜からの推薦なんだろう?」
「おう! だからと言って、やる事は変わらん。俺は別にここで勝ち抜ければいいだけだ。それ以上でもないし、それ以下でもない。なら、緊張する方がおかしいだろ」
そんなことをいいながら緊張のきの字もない、マーラは欠伸をし、周りの【冒険者】達を品定めしていた。
マーラも同様、B級【冒険者】であったが、登録時期がつい最近であり、本来であれば選抜戦に参加出来ないのだが、第四【魔王】討伐戦時に仲のよくなったS級【冒険者】夜島夜から推薦を受けており、この会場に立つことが許可されている。
(今回は流石に【池袋】と違って、精鋭だな。低く見積もっても70点以上はある。前よりも粒揃い、戦うにゃ困らなくて、ワクワクするね)
平常運転のマーラであったが、彼女の目に1つの【魔力】の塊が過った。
「あ? なんでそこにいるんだ? お前が?」
マーラの目に見えた【魔力】。
それはかつて自身が殺したことのある【魔王】の物。
普通の人間であれば、そこに存在するという事実、あまりにも自然な形で世界に馴染んでいるせいで、【魔力】自体を観測が出来ないのだが、マーラは【魔王】故に、その【魔力】を観て、それが自分同様の存在であることを理解し、冷静ではいられなくなった。
幼き少女が纏し【魔力】にマーラは彼女を追って、歩き出す。
「おーい、カーマ? どこ行くんだい?」
レンジの声を無視して、マーラはスタスタと早足で少女に近付くと、彼女の肩を掴んで、声を上げた。
「オイ、なんでお前がここにいる? アカシャ?」
肩を掴まれた少女はマーラの方向を向き、彼女の顔を睨みつけた。
「は? 何、あんた? 何言ってるのか、サッパリ分からないんだけど」
マーラが因縁をつけた少女の正体、碧いワンピースを纏ったそれはマナカと呼ばれていた勇剣のパートナーであった。
「あはは! 嘘をつくなよ、アカシャ! 俺の目は騙せねえぞ」
「だーから! 何言ってんの? 私はマナカ。知らないヤツの名前で呼ばないで」
バチバチと火花を散らす中、レンジはマーラの手を握り、それを引っ張った。
「オイ! 何すんだよ! レンジ!」
「どうも何も、お前、こんな所でトラブルを起こすな!」
「はぁ?! 俺は起こしてねえよ!」
マーラが手足をバタバタと動かし、レンジの手を振り解こうとするがそれを見たマナカは煽る様に嘲笑う。
「オイ! 煽られてる!」
「やめろ! カーマ! ほら行くよ! ごめんね! お嬢ちゃん!」
マーラはレンジによって強制的にその場から遠ざけられ、マナカはそれを見て、舌を出した。
「アレ? マナカ、何かあったのかい?」
会場に着き、はしゃいで1人で走り回っていたマナカをようやく見つけた勇剣は彼女の【魔力】の揺らぎがいつもより大きくなっているのに気付き、声をかけた。
「どうもこうもこの前のおじさんとソイツのツレに会って話しかけられただけ」
機嫌が悪そうにマナカは答え、彼女は勇剣の手を握り締めた。
「嫌になっちゃうわ。私のことを知らない名前で呼ぶなんて! 私はマナカ、何よ、アカシャって!」
「あはは、そう怒んないで、マナカ。怒っていたら君の可愛い顔が台無しだよ」
勇剣の一言で、マナカは少しだけ機嫌が良くなったのか、頬を赤く染めると彼の手を先ほどよりも強く握り、それ以降、喋らなくなってしまう。
勇剣はそんな彼女を見ながら、マナカの放った言葉の中にあった単語、それに引っかかった。
(おじさん同様にマナカが見えてる。それに加えて、マナカのことをアカシャと呼んだ。何で僕だけが知っている事実を知ってるんだ? ソイツは。はぁー、仕方ない。こっちもこっちで調査を進めるか。マナカを助けるためなら、僕は悪魔にでもなるつもりだけど、それはそうと仕事はキッチリこなさないとね)
レンジ、勇剣、マーラ、マナカ、そして、その他の【冒険者】達の思惑が交錯する会場、そんな彼らの前に1人の男が姿を現した。
ピッチリとしたスーツ、そして、その上からも分かるほどの筋肉、それらを兼ね備えた男は、名だたる【冒険者】の前に現れたのにも関わらず、堂々としており、むしろ、そのあまりにも正々とした態度に会場にいた者達の方が逆に気圧される程。
「やぁ! 諸君! 君達は【魔王】を殺したいかーい?」
男が一言投げつけると会場は一気に盛り上がり、それはやがて熱狂となる。
「殺したーい!」
「殺させてくれよ!」
「俺達にも権利を!」
「人を守る権利を!」
「英雄になる権利を!!!!」
怒号が飛び交う中、男は彼らを更に焚き付ける様に、更なる盛り上がりを見たいがために、声を上げた。
「オーケー! オーケー!!!! 素晴らしいやる気! 満ち足りる元気! それら全てをWAA会長歌島徳茂が君達のそれらを肯定する。君達は英雄になりに来たんだ。ならば、その英雄となる資格をこの大型【配信】企画で、試させてもらう!」
徳茂がそう言うと彼の背後に巨大なホログラムが表示され、そこにはこう刻まれていた。
「【魔王】討伐選抜戦」
徳茂はその文字が出たと同時に、【冒険者】達を更に焚き付ける様に、更なる熱狂の渦を見たいがために再び口を開く。
「三つ巴、四つ巴! 何でもござれ! 【冒険者】同士のパーティ戦! ドローンを回しながら、【冒険者】同士で戦う臨場感あふれる【配信】! それら全てを私が用意した! 覚悟は良いか!? 選ばれた者達よ! 闘い、勝ち抜き! そして、手に入れろ!」
煽り昂る感情を観客達は声で示し、会場の盛り上がりのボルテージは最高潮へと達する。
歌島徳茂、いや、【第一幻魔王ゲーテ】が画する【魔王】討伐選抜戦。
その火蓋がいよいよ切って落とされる。
【魔王】討伐選抜戦総則
1. 試合は、三つ巴、もしくは四つ巴のパーティ戦
2.パーティは3~4人で構成する
3.敵パーティの【冒険者】を倒すとパーティに2点、個人に5点が入る
※制限時間までに倒されなかった人数×1点がパーティにのポイントに追加される
4.制限時間は60分
5. WAA【冒険者】は【魔王】討伐選抜戦以外での決闘は禁じる
※以前より禁じられていたが、今回の【魔王】討伐選抜戦で許可されたと勘違いする者を防ぐためのモノである
6.パーティポイントと個人ポイントがあり、パーティポイントでの優勝と個人ポイントでの優勝、2つが存在する。両方の優勝者が次の【魔王】討伐戦に参加が出来る
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