ニ話 おじさん、弟子とデートする②
ヒッタクリの1件から、少しして、レンジは警察の事情聴取から解放され、ミリアが待っているカフェに戻った。
(よーく、考えればミリアの話を遮って、ヒッタクリ犯捕まえに行っちゃった。怒ってる、いや、怒ってないとおかしいよね。ふー、落ち着けレンジ。いい加減、年下の年齢の子に怒られて凹むな。一先ず、頭を下げよう。埋め合わせは絶対にするって話をして)
そんなこんなで様々なことを考えているといつの間にか、ミリアの前におり、レンジはいの一番に頭を下げた。
「ごめんなさい! ミリア!」
「? どうしたのですか、師匠」
「え? あれ? 怒ってない?」
レンジは勝手にミリアは激怒していると考えていた。
だが、反応は意外にもそんなことはなく、至って落ち着いており、むしろそれがさも当然であるかの様であった。
「僕が怒ると思ったんですか?」
その逆。
怒っていると決めつけたことに、ミリアは少しカチリと来ていた。
「いやいや! 普通なら怒るよ! 良いことをしに行ったけど、ミリアが話してる最中、その瞬間に走って行ったんだ怒って当然だって思っただけで」
レンジは一生懸命に説明するとその姿を見て、ミリアは少々納得は行ってないが、それでもその場で何かを追撃することは納めてくれた。
「まぁ、良いです。僕は師匠が善行をするのは当たり前だと思っていたので、むしろ、それをしなかったら僕は偽物と判断し、直ぐ切り掛かります」
「ええ…。なんて物騒なことを」
「物騒? それは偽物相手にするんです。物騒にもなるでしょう」
ミリアは信頼と言う言葉で片付けるには傾きがある程に、レンジを信じている。
それは一種の信仰に近いとも言える。
「まぁ、良いです。師匠、今日は僕とのショッピングに付き合ってもらいます」
「あ、うん、そうだね。分かった」
「衣替えの季節なので、服とかいっぱい買う物あるので覚悟しておいてくださいね」
そう言うとミリアはニコリと微笑み、彼らはカフェから近くの商業施設へと足を運ぶのであった。
カフェから少し歩いた先、そこには【東響】の中でも有数の商業施設である【square】と呼ばれるビルがあり、レンジは初めて、それに足を踏み入れることになる。
そこから一方的な時間が続いた。
ミリアはお店に入っては、何度も服を試着し、その都度、レンジへと見せ、彼の反応を観察した。
ミリアは自分の着る服には拘りがあり、自分の髪色、特徴的な水色によく合う服を選ぶ。
いつもなら静かめな物を選ぶが今日はレンジがいるからか、普段とはベクトルを変えて見た。
白いオーバーサイズのパーカーに薄い紺色のG-パン。
「カッコいいね!」
黒で統一された長袖のニットにショートパンツ。
「よく似合ってる!」
肩を大胆に露出させ、胸元に大きなリボンがついたロングスリープトップスに、黒い色のG-パン。
「大胆だね!」
様々な姿を見せては、ミリアは気に入った物をポンポンと購入して行く。
意外にもレンジは自分の服装には無頓着だが、他人の着る服を見るのは好きで、ミリアが幾つも格好を変えて、出てくるのを楽しく眺めていた。
(露出しすぎじゃないか? とか、肩をそんなに出して寒くない? とか。そんな無粋なことは言わないよ。今時の子はこれくらいやってのけちゃう。僕のいた頃とは訳が違うんだ。兎にも角にも、ミリアは着る服全部がよく似合う。師匠として鼻が高いよ。いや、この考えはキモいか? そうだね、キモいな。うん。まぁ、12歳の頃から知ってるし、成長が目に見えてて、何だか感慨深くなっちゃうね)
そうしているウチに時間はミルミルと過ぎていき、レンジの手にはミリアの買った荷物でいっぱいになっていた。
「今日はありがとうございます、付き合って貰っちゃって」
「いやいや、僕の方こそ、色々なところを回れて良かったよ。【東響】って呼ばれる様になってからこっちに殆ど来なかったんだけど、苦手意識みたいなのが少し消えたから休日とかにまた、来てみようかなって思えた。これもミリアのおかげだ」
そんなやりとりをしながら、彼らは帰路へと着いた。
「そうそう、このサングラスありがとう。普段、あんまりつけないから新鮮だったよ」
レンジはそれを返そうとサングラスを外そうとした。
「あ、師匠、それはつけたままでお願いします。少なくとも自分の部屋に行くまでは」
「え? あ、これもしかして【魔具】か何かかい?」
レンジの言う【魔具】とは、【術式】を込めて作られた道具のこと。配信用のドローン型カメラや、【冒険者】の使う道具は基本全て【魔具】にあたる。
「ええ、まぁ、これはWAAで作ってもらった試作品なのですが、認識阻害の【術式】が編み込まれてます。なので、これをつけてる間は僕達は別人の様に他の人には映ります」
「ヘェ~! そりゃ便利だ! あ、でも、悪い人とかが悪用したら困るね」
「そうです。なので、現状はS級【冒険者】だけに配られてます」
レンジはその話を聞き、今、自分のかけてるサングラスはどうやって手に入れたのか? 疑問に思った。
だが、それを突くには少し、藪蛇な気がして、一度、問題を置いてから、レンジはミリアに今日、ヒッタクリを捕まえた青年について何か知らないかを尋ねた。
「そうだ、ヒッタクリはね、僕が捕まえた訳じゃないんだ。ヒッタクリの逃走経路を遮る様に青年が現れてね、彼女、なのかな? 捕まえてくれたんだ。オーバーサイズの白いボリュームネックパーカー着て、髪はセンター分けにした【冒険者】、知ってる?」
「うーん、そんな【冒険者】ごまんといますから誰ってのは特定しずらいですね」
「【魔力】の塊みたいな女の子が横に居てね、その子が変身して、ヒッタクリを潰しちゃったんだけど。それはもう物凄く強かった」
【魔力】の塊、少女、白いパーカーの青年、それらの情報でミリアは誰なのか、察しが着いた。
「分かりました、師匠。まさか、彼がそんな所に居たんですね」
「さっきの情報で分かったんだ! すごいね! ミリア!」
「ありがとうございます。でも、よりによって、彼と出会うとは」
ミリアはそう言うと少しだけ、視線を上に向けた。
レンジは見えてしまっていた。
青年の横にいる少女。
【呪い】と称される少女を。
だが、彼が知りたがってる故に、ミリアは丁寧に青年について、答えた。
「彼はA級【冒険者】蘆原勇剣。自称カップル系【配信者】です。そして、現A級【冒険者】の中でも、最もS級に近い男です」
***
青年は暗闇の中を1人、いや、1人と1体で歩いた。
(今日のおじさん、只者じゃなかったな。マナカが見れるのなんて霊感がある人か、【魔力】の形を捉えれる人だけ何だけど)
蘆原勇剣はそんな事を考えているとその横に居た推定少女の形をした何かが喋りかけた。
「ねぇ、勇剣、今、私じゃなくて他の人のことを考えてたでしょ」
「ん? ああ、ごめんね、マナカ。今日あったおじさんのことを考えててね」
「あー、あの私を見てたおじさんね。あんなの私が一撃で倒しちゃう」
マナカと呼ばれた少女は勇剣の横でシュッシュっとパンチを繰り出すとそれを見た彼は柔らかく微笑んだ。
「そうだね、マナカ。ただ、久々に君を見て、可愛いって言ってくれたからね。気になっちゃったんだ」
「ふーん、それなら許す」
彼らの行く道は常に暗い。
光の差す場所はなく、闇の中をひたすらに踠き苦しみ、足を動かす。
そんな中、勇剣のポケットに入れていたスマホにとある連絡が飛んで来た。
彼はそれをすぐに確認するとスマホを再びポケット中に入れて、ため息をつく。
「マナカ、仕事の時間だ」
「ふーん、私の力が必要?」
「勿論だよ、僕にはマナカしかいないからね」
勇剣宛に届いたメッセージは【魔王】討伐選抜戦の連絡ととある人物を消すための命令。
これより始まるのは、第三の【魔王】の討伐に在らず。
【魔王】を討伐する者を選抜する戦い。
【魔王】討伐選抜戦、それが今、始まろうとしていた。
感想、レビューいつもありがとうございます!
嬉しくて狂喜乱舞です!
続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!
評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます!




