六十三話 result④
突如として、人々の視界に四角いホログラムが表示された。
そこにはこう記されていた。
「【ユニークスキル】【合成】が解放されました」
【合成】、その文字を見て、一般人は困惑や、動揺を見せるも、【冒険者】達はその言葉の意味を何となく理解し、喜びや、興奮、様々な感情を見せた。
「何だこれ?」
「????」
「【合成】? なんか面白そうじゃん」
「【合成】ってなると、何かをを合わせられるってこと?」
「【合成】って何? もっとわかりやすい名前なかったの?」
そして、それは【池袋】の迷宮にいたレンジ達の目の前にも表示されていた。
「これが報酬?」
【合成】の文字を読み、レンジは首を傾げるとそれに対して、マーラは彼の疑問を解くために口を開く。
「そうらしいな。【融合】とは、良いのを引くじゃないか」
「カーマは知ってるのかい?」
「俺達のいた場所では【融合】って言ってたな。それは【魔術】、あー、お前らのところで言う【スキル】を混ぜて使う事ができるんだよ」
マーラの説明を聞いて何となく理解したが、それでもレンジは実感が湧かずにいた。その横で、ミリアはマーラの肩を抱えながら、【合成】の実演を始めた。
「【合成】、【潜伏】×【浮遊】」
すると、ミリアとマーラがレンジの目の前から消え、レンジは目を見開いた。
「ミリアとカーマが消えた?!」
周囲を見渡すもそこには誰もおらず、レンジは首を動かしながら、彼女達を探した。
「師匠、こっちです」
ミリアの声がして、その方向を向くとそこにはミリアとマーラが突然、現れた。
「うわ?! 何をしたんだい?!」
「【潜伏】と【浮遊】の2つを【合成】してみました。さっきまで浮遊しながら空に飛んでたんですよ」
「すごいなぁ、コレ! これがあればより、迷宮探索が捗るね!」
ミリアの実演により、レンジは【合成】がどの様な報酬が支払われたのかを理解した。
新たな力がどの様に作用するのか。
それはまだ、彼らが知る由もない。
だが、レンジ達は一時の平穏を勝ち取った。
そんな他愛もないやりとりをしながら、レンジ達は広場にいる【冒険者】達が目を覚ますのを待ち、【第四戯魔王】討伐戦は幕を閉じるのであった。
***
WAA【東響】本部、理事長室にて、マキナとの静かな決着を眺めていた歌島徳茂はつまらなそうにその大きなディスプレイの画面を切った。
「つまらん。ハッキリと言い切れる、何とも面白味のない決着。エンタメとしての面白さは派手さに直結する。途中までは良かったな、夜とマーラの殺し合い、あれでどちらかが殺されていれば、この静かな決着にも納得がいくだろう。だが、それすらもない。ただ、人を助け、ただ、【魔王】にトドメを刺す。何だこれは? 何なんだこれは?! 私が求めたモノから遠ざかる。肋屋レンジ、コイツが表に出始めてから、私のエンタメは、私の腑の中で盛り下がり続ける。腹が立つ、腹が立って仕方ない。私のエンタメ、私のためのエンタメ、最高の英傑を揃え、私に挑む、エキサイティングで、私が満足する死を迎えるためのエンタメを、この男はそれを消し去ろうとしてる」
歌島徳茂、いや、【第一幻魔王、唯一なるゲーテ】にとっての【ダンジョン配信】とは、自分が生み出した英雄の巣窟であり、様々な豪傑が跋扈し、彼らに活躍の機会を与える最高のエンターテイメントであった。
「許せん、許せん! 私のエンタメを、お前の様な英雄にぶち壊されることは!」
それがかつての英雄、【魔王】殺しの人間1人ばかりに注目が集まる現状に苛立ちを覚え、その頭の中は彼に対しての怒りのみで一杯になっていた。
すると、快男児の姿はいつの間にか、変わっており、そこには荘厳たる格好に威厳の満ちた顔つきをした【魔王】が立っていた。
先ほどまでのスーツではなく、全身をヨーロッパ風の王族が着るような装飾の成された服に身を包みとそれとは全く逆のトレンチコートを肩に羽織る。
【第一幻魔王、唯一なるゲーテ】、その姿は正しく【魔王】という存在を象徴する様な古典な形をしてるのに、何故か似合わぬ現代のトレンチコートを羽織り、現代を纏いながら、それら全てが不可思議に調和する歪な格好をしていた。
「私は唯一無二なる絶対だ。私がお前を消してやろう、肋屋レンジ」
自身の手を前にし、ゲーテはその身に宿る【権能】を使おうと口を開こうとする。
「歪めろ、」
ピリリリリ。
その時、突如として、彼のデスクに置いてあったスマホが着信音を部屋に鳴り響かせた。
「チッ、興が削がれた」
ゲーテの姿は再びいつものスーツ姿に戻ると電話の着信主の名前も見ずに、彼は電話に出た。
「はい、こちらWAA理事長歌島徳茂」
「お、出た出た! 久しいね! ゲーテ!」
その声を聞いた瞬間、電話の主人を知ったと同時に、ゲーテは通話を切ろうとした。
「オイオイ! 冷たいな! 落ち着けよ、久々に声を聞かせたんだ。少しくらいは話をきいてくれよ!」
電話の主は陽気にゲーテに喋りかけるがその裏には軽薄さと他者を心底、馬鹿にした様な態度が見て取れた。
それを知っていたからこそ、ゲーテは露骨に態度に決めしたがそんなことをお構いなしに喋り出した。
「マキナが死んだ。何とも立派な最後だったじゃないか。同僚が2人も殺されて、僕は非常に悲しくて仕方ない」
「嘘を吐くな。お前にそんな感情は微塵もないだろう、ナハト・ナハト」
自身の名を呼ばれたことか、それとも自分の口から放った言葉を否定したことか、はたまたその両方か。
ゲーテから言われた言葉を聞き、電話の主人であり、【第三禁魔王】と称された男、ナハト・ナハトは嬉々として答えた。
「ようやく、僕の名前を呼んでくれたね! ゲーテ! 【魔王】が死んだ悲しみよりも、君に名を呼ばれた嬉しさが優ったよ!」
「そんなのも全部嘘であろう。お前と話していると不愉快な気持ちになる。用事がなければ切るぞ」
「次、僕が人類に挑むんだけどさ、僕が君の殺したい英雄を堕としてあげるよ」
英雄を堕とすと電話越しに言い張る【魔王】に対して、ゲーテはほんの少しだけ興味が湧いた。
「何をする気だ」
「それは見てのお楽しみ。僕も君に感化されたんだ。エンタメってヤツにね」
突如ときて、真剣な口調になったナハトであったが、それが嘘であることをゲーテは知っており、呆れるような素振りを見せながら、口を開く。
「適当を言うな。お前が誰かに感化されることなどないだろう薄っぺら、軽薄、他者を心底小馬鹿にする。マーラも嫌われていたがお前は別の意味で【魔王】に嫌われていた。それを少しは自覚したらどうだ」
「そんなことを言われたら涙ちょちょ切れ~、まぁ、いいや。ゲーテ、僕も準備があるから当分は手出ししないよ。だから、なんかしら間を取っておいて。僕がいない間の君のエンタメ、楽しみにしてるかさ!」
ナハトはそう言うと通話を切り、ゲーテの持つスマホからツーツーと途切れた音だけが木霊する。
「まぁ、良いだろう。それなら私にも策を弄しよう。肋屋レンジ、お前だけを【魔王】の迷宮に入れなくするための策をな」
ゲーテは自分のやるべきことをするために、席へと座り、自身の仕事をこなし始める。
ゲーテが打つ次の一手、ナハトの画する計画、レンジの平穏を脅かす魔の手が着実に伸びていた。
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