五十九話 おじさん、第四戯魔王に挑む⑧
***
マーラと夜がマキナとの戦闘が激化していた頃。
ショヴァとの戦いが終わった直後、気を失っていたレンジであったが、カピタンに勝利したミリアが彼のことを叩き起こした。
「師匠!? 師匠!? 無事ですか?! 生きてます?! 師匠!?」
何度も何度も揺らしたおかげか、レンジはハッとなり、目を覚ました。
彼は自分を激しく譲りながら、意識を起こす、ミリアへと口を開く。
「ミ、リア。起きた、起きたよ」
「師匠! 良かった! 傷はありませんか!?」
「心配性だね、誰に似たんだか」
レンジはショヴァンに対して、勝利を納めるもギリギリのところで、掴み取った物であり、辛勝と呼ぶに相応しかった。
「師匠に似たんですよ、全く。それはそうと立てますか?」
「手は借りたいかも。身体中痛いや」
ミリアの手を借り、倒れていた体を起こし、彼は節々に襲い掛かる痛みに耐えながら、何とか立ち上がった。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、かな。万全とは言い難いけど、それでも立てた。早く、【魔王】の居る下は急ごう」
レンジはそう言って、お化け屋敷から出ようとしたその時、彼らの上空で光線の様なモノが突如として現れた。
それは夜が放っていた涜神の残響であり、【魔力】の塊を目撃したレンジは目を点にした。
「何あれ」
ミリアはその正体と今、マーラと夜がマキナと戦っていたことを知っていたため、レンジの疑問にすぐに返答する。
「夜島夜とマーラの2人が【魔王】と戦ってます。今のは夜の攻撃ですね」
「この【魔力】、しかも、あの光に巻き込まれてるのはもしかして、【魔王】じゃないか?!」
夜の攻撃が向けられた先にあった既に消えかけの【魔力】の方にレンジは気付くと自分ではない別の人間が【魔王】を追い詰めていることに驚いた。
「まぁ、彼の実力は本物ですからね。僕ほどではありませんが、相当切れ者です。僕ほどではありませんがね」
何故か、2度強調し、自慢げに喋るミリアに対して、レンジはあははと苦笑いで返すと、ふとした瞬間、彼の目の前が突然、真っ白なベールの様なモノに覆われた。
「何だ? コレ。? ミリア? 何処行ったんだい? ミリア!」
白いベールは取ることもできず、レンジの視界をボヤかすもそれが行動を阻害する様なモノでもないため、気にするほどでもなかった。
レンジは自分の身に何が起きたのか理解出来なかったが、ミリアが消えたので、彼女を探そうとする。
「ギャギャギョ! ギャギャギョ! ギャギャギャギギュギュギュギェギュギャ!」
魔物の声がした。
白いベールから見える人型の怪物。
黒いローブに身を隠し、顔を隠した何かは得物を持って、自分の方向を向いており、それに対して、レンジはそこにいる魔物がミリアを消したと何故か脳が勝手に判断する。
「ミリアを返せ」
レンジはそういうと【夜叉】の鞘を握り締め、逆手抜刀の構えを取った。
一方、怪物も同様に得物を構えると彼らはその剣を容赦無く敵へと放った。
「無明一刀流、飛龍」
「無明一刀流、流星」
ショヴァンを倒すために使用したベオウルフの【権能】より、放たれる【魔力】を焼く炎の抜刀術。
師より承った相手に殺意を押し当てる高速を突き詰めた抜刀術。
互いに同じ型を取りながら、刃を混じり合わせた瞬間、蒼炎が2人の体に飛び散り、彼らの体を覆い被さっていた【魔力】を薪に燃え始める。
レンジの視界を遮った白いローブが【夜叉】の持つ蒼炎によって、メラメラと燃えると先程まで映っていた怪物が消え、自分の目の前には逆手抜刀を放つミリアの姿があった。
「ミリア? あれ? 僕は一体、何を?」
「師匠? あれ? 僕は何で師匠に?」
ミリアとレンジの2人は目をパチクリと瞬きする。
自分達の身に起きた異変、それは自身の認知が突如として歪み、正しく相手を識別できなくなっていたこと。
「さっきまで目の前に怪物が」
「僕も、同じように」
「「…」」
2人は自分達の身に起きた異変を共有した瞬間、彼らの背筋を糸のような物に括り付けられ、それを突如として思いっきり引っ張られるような感覚に陥った。
自分の意志と関係なく、誰か勝手に自分を操り、動かされた事に恐怖を抱き、ミリアとレンジは顔を合わせた。
そして、目を覚ました2人が大気より感じたのはぬるりとした【魔力】の奔流。
感知した瞬間、レンジは【魔王】が【筺】を開けたことを察知し、先ほどの認知の歪みはそれによるものと理解した。
「ミリア、このままだと、この場にいる全員の身が危険に晒される」
レンジは今、体験したミリアを敵と認知し、殺そうとしてしまった感覚。
もしこれでミリアが死んでいたら。
あまりにも取り返しのつかない終わりであり、それに対して、身の毛がよだつ恐怖を感じていた。
「【夜叉】の炎は【魔力】を焼く力がある。それがあれば、広場にいる人達、全員を助けられるはず。ミリア、僕が広場に」
「いえ、師匠。師匠はマーラのところに行って下さい。僕は広場の方に向かって、この状況を止めれるようにします」
「何で!?」
「こうなったら【魔王】を殺せるのはマーラと師匠だけです。師匠のその刀が唯一の打開策なら根本的な原因の主人にも効くはずです。広場は僕が何とかしますので、師匠はマーラのところへ」
「な、なるほど。僕が早く【魔王】を殺せば万事解決ってことか。納得だ。なら、後ろは任せたよ! ミリア!」
既に背を向けて、動き出していたミリアはその一言を聞き、少しばかり口角を上げて、広場へと向かって行った。
***
そして、今、レンジはマーラと合流後、意識が支配された夜と対峙していた。
夜とレンジ、彼らは一瞬のやり取りの間で、互いの実力を理解した。
レンジから見た夜は、大鎌を軽々しく振るう膂力に加え、マーラを拘束した能力、まだまだ底の見えない無数の手数を兼ね備えた強者として映っていた。
一方、夜から見たレンジはと言うと黒い刀を眼にも止まらぬ速度で使い熟し、一瞬でも油断をすれば簡単にその首が離れてしまう、高速の抜刀術を持つ熟練の剣士として映っていた。
(足止め、なんか言ってられないな。ミリアもそうだけど、夜島夜、S級【冒険者】として数えられる者達。僕如きが止められるかは分からないけど、やるしかないね)
ミリアの浮遊【スキル】をら受けながら、大気中にある【魔力】を蹴り上げると空中にて、レンジと夜はぶつかり合う。
「無明一刀流、雷」
鞘から抜かれた刃より、黒い雷が放たれたと同時に、夜の間合いに一瞬にして、レンジは現れ、その刀を振るった。
夜はその攻撃を大鎌の柄を使い、簡単に防ぎ、自身の【ユニークスキル】を用いて、切り返す。
「影縫」
マーラを足止めした影による拘束。
レンジの抜刀を跳ね返した直後に、夜は自分の影を、彼へと影に重ねて、拘束を測ろうとした。レンジはその影の畝りに気付くと後ろに下がりながら、それらを回避し、すぐに鞘に【夜叉】を納める。
そして、納めた【夜叉】の柄を捻り、【魔力】を切り替え、再び抜刀の構えを取った。
「無明一刀流」
「影縫蜘蛛」
レンジが構えた瞬間に、夜の影は蜘蛛の巣のように縦横無尽の広がりを見せ、彼を必ず捉えようとした。
だが、それに対して、レンジはあえて挑むような姿勢を見せる。
「飛龍星」
大気中に漂う【魔力】を踏み込み、抜刀と同時に、蒼炎を全身に纏いながら影の蜘蛛の巣へと飛び掛かる。
一方、夜は獲物を捉えようと放っていた影の広がりを小さくし、レンジを逃さまいとした。
レンジの剣が先か、それとも夜の影が彼を捉えるのが先か。
その勝負の瞬く間に訪れる。
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