五十八話 おじさん、第四戯魔王に挑む⑦
光の柱は空を穿ち、マーラはそれにギリギリ巻き込まれる寸前であった。
(あっぶねえな! 少し遅れてたら巻き込まれてたわ。それよりも【魔力】を吸収、ねぇ~。魔物を狩るだけならそんな能力は要らないだろう。明らかに、【魔力】を使い熟す奴がいる前提で能力を編み出したとしか言えねえだろ、あれ。俺が思っている以上に、アイツは何か握ってるな)
マーラはそんなことを考えながら、下に視線を向けるとそこには夜が鎌をマキナへと向けており、二度目の死とも呼べる程の威力をその砲撃が放ち終えた。
「危なかったぞ! 夜!」
マーラは夜の下により、喋りかけると彼はそれに対して、嬉しそうに答える。
「お前なら避けれるって踏んだんだよ! 信頼だ、し、ん、ら、い!」
「はぁー、お前な。死んだら、元も子もないんだぞ? まぁ、いいか。それはそうとアレはどう見る? 死んでるか?」
光の柱は消え、そこには灼かれた黒炭になったマキナの姿があり、マーラと夜はそれを見つめる。
「いや、分からん。【魔力】はあるが薄ぼんやりとしてて、消えかけって感じだ。浮いてるからまだ、もしかしたら生きてる可能性が高いかもな」
崩れるか、それとも動くか、マーラと夜から見たマキナの【魔力】は既に途切れる直前。
動いた所で、彼ら2人が一瞬にして、トドメをさせる。
そうたかを括っているとマーラはとある違和感に気がついた。
「んだ? アレ」
マキナが気付いた異変、それは広場に集められていた魔物と【冒険者】達、彼らが互いに争い始めたこと。
魔物と人間が争うことは、むしろ当たり前であったが、今、マーラの目の前に映ったのは違った。
人と人、魔物と魔物が互いに争いを始め、異様な光景を目の当たりにした瞬間、マーラはマキナの体に刃を突き立てようとした。
(マキナ、お前はケルヌンノスと違って【筺】は使えねえ。お前が第四の【魔王】を名乗れたのは先代【魔王】のエクスとショヴァンの軍隊のおかげ。お前は【魔王】としての実力はまだまだだったはず。まさか、この土壇場で掴んだのか? 【魔力】の深奥を)
マキナの黒焦げた肉体に【我射髑髏】を突き刺し、それを真っ二つに切り裂いた。
小さい少女の肉体をギュッと縮こめて、何かを守る様に大切に抱えており、その正体はマーラが切り裂かれたことで明らかになる。
真っ黒に染まる箱。
それは既に開かれており、マキナの【権能】の根源、その【魔力】の奔流していた。
マキナは死んでいる。
だが、その死を前にして、掴んだ。
【魔力】の核心。
自分の【権能】の根源を。
死に至る瞬間に掴んだ四角の形を、少女は世界へと呪いをかけるために、その禁忌の箱の蓋を開ける。
「開、戯」
マーラは死せる死体から何故か声が聞こえ、その言葉の意味を理解した。
「コイツの【権能】の【筺】。これは不味いな」
そう呟くマーラの背後より、影が1つ伸びた。
「夜、今、コイツに寄るんじゃねえ。俺達も【権能】の影響を受けるぞ」
マーラの言葉を聞いても尚、夜はマーラへと近付く。
「オイ、夜、やめとけ!」
強い警告の言葉を放ち、マーラは夜の方向を見ると、そこには彼が自身の背中に大鎌を振り下ろそうとしていた。
「なっ!?」
マーラが気付いた瞬間、夜は彼女の首を切り裂こうと大鎌を振るう。
その一撃を全自動防御の命を受けていた【波旬】が気付き、それを阻んだ。
夜は先程までとは違って、冷静さの欠片もなく、ただ目の前にいる同胞を殺すために動こうとする目をしていた。
(不味いな、夜ですら【権能】に飲まれた。糸で支配する【権能】を、どうやってここまで突拍子のない物に出来てるんだ?!)
マーラはマキナの【権能】の分析をしながら、夜を止めるために、【我射髑髏】と【波旬】で応対する。
「目を覚ませ! 夜! 俺は敵じゃねえよ!」
マーラの叫び声を無視して、夜はその体を引き裂こうと大鎌を巧み操り、容赦無く振るう。
大鎌と刀の2つが火花を散らすもそれには明確に差が出ていた。
殺されないために、マーラは夜の攻撃を弾く。
(チッ! 【権能】でどうにか耐えてるけど、夜に点数を、99点なんてつけたのは俺だぞ。それは今の俺からの評価じゃねえ。【魔王】最盛、その時期の俺からの評価だ。つまるところ、今の俺よりもハッキリ)
強い、そう考えかけた時、夜の大鎌の蓮撃が放たれる。
何とか拮抗状態を生み出そうとするマーラであったがそれでは相手に殺意が入っているか否かによって、勝負は一方に傾く。
「影縫」
夜の【ユニークスキル】は【夜乃帝】の能力が1つ、影の操作。
夜は自分の影を操ることが出来る。
それを相手の影と重ねることで相手の動きを止めることが可能。
マーラへと影を伸ばし、それが彼女の影と重なり合った。
瞬間、マーラの体は硬直する。
(チッ、動けない)
動けなくなったマーラに対して、その隙を夜は見逃すことなく、大鎌を振り下ろした。
【波旬】が主人の防御に回り、夜の一撃を防ごうとするがマーラの脳裏に過ぎったのは本能的な死の予感。
【波旬】で防げても夜の振り下ろす一撃によって、落下は免れず、この距離から地上へ落ちれば致命的な傷となる。
【権能】による浮遊も、衝撃に耐えられるほどの精度を今、体の動きを封じられた状況では不可能であり、万事休すの状況にマーラは陥った。
(ここまでかよ。まだ、何も成せてないし、アイツに魂を取られるのは癪すぎる)
何とか足掻こうとするが、既に【魔王】でえるマキナは死んでおり、その死後に発動した【筺】の止め方をマーラは知らない。
「クソが」
最後に呟いたのは、マキナに対しての嫌味。
それくらい言ってやらねば、自分の腹の虫が治らない。
直後、大鎌は容赦無く振り下ろされ、マーラの体を真っ二つに切り裂こうとする。
その時、"ガチン"と鈍い鉄と鉄が重なり合う音がした。
マーラは目を瞑っており、自分に振り下ろされたはずの大鎌が何故か、その体を切り裂かないことに違和感を覚え、パチリと目を開けた。
そこには、黒い刃に蒼い炎を纏わせたレンジの姿があり、彼はマーラを守る様に立ち塞がった。
かつての敵である者を守った。
【契約】も、何もないのに他人を勝手に助ける。
肋屋レンジという人間は、別に善人ではない。
だが、善人ではなくても、他者を助けることに躊躇しない。
それが自分の敵であろうとも関係なく、助けを求めるなら、手を貸してしまう。
「…遅えよ」
マーラの呟きに対して、レンジは応えた。
「こっちもミリアに起こしてもらった後、一瞬、殺し合いになったりして大変だったんだ。文句は言わないでくれ」
そう言うと夜を軽くいなし、彼の体を思いっきり蹴り上げた。
突如として入って来た乱入者の攻撃を受け、夜は少しばかり、距離を取らされると大気にある【魔力】を蹴りながら、レンジは自分が敵であると彼に認識させるために、鞘を前に構えた。
「カーマ! 僕が夜島夜を止める! その内にこの状況の打開策を探してくれ!」
そう言い残すとレンジはマーラを追おうとする夜へと切り掛かる。
ようやく、夜は目の前に現れた強者へと視線を向け、それが今の自分の敵であると認識し、言葉を発することなく、大鎌を振るった。
「さて、少しだけ足止めさせてもらうよ」
混沌極める【池袋】迷宮。
死した【魔王】の残した置き土産が齎す、最悪の状況。
レンジ達はそれを止めることが出来るのか?
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