五十五話 おじさん、第四戯魔王に挑む④
ミリアはカピタンとの戦闘中、【魔力感知スキル】によって、レンジとマーラの居場所を捉えていた。
(師匠の【魔力】と一緒にあった巨大な気配が消えましたね。でも、師匠がその場から動かなくなっているので、早めに向かいたいな。【魔王】とマーラとこの【魔力】は夜さんですか? なるほど? 彼らなら仲良くできそうです)
カピタンの爆撃を全て捌き切り、彼の元まで一気に距離を詰め、【龍真星】を鞘から抜く。
「雄牛」
【魔力】で生み出された雄牛の軍勢が1つになり、星の形に集約すると、それはカピタンの肉体に一直線に走り出す。
超至近距離からの抜刀に対して、カピタンは自身の翼を使い防御をし、斬撃はそれら全てを切り裂いた。
(好機)
ミリアはボロボロになった翼を確認した瞬間、再び【龍真星】を鞘に納め、抜刀の準備を整えた。
「山羊」
ミリアの抜刀と共に放たれるのは無数の星の輝きにより、生まれた山羊を模した【魔力】の塊の大群。
近距離様に1つにそれは再び纏まり、その威力を跳ね上げた斬撃がカピタンへと襲い掛かる。
【光導拾弍式抜刀術】、山羊、それは山羊を模した【魔力】の塊を放つ抜刀であり、最も切れ味に特化した抜刀術。
【龍真星】はその特性を備えた斬撃を流星に変化させ、煌びやかな斬撃がカピタンへと放たれた。
「ふむ、やるな、若人。だが、この程度で取らせるほど、我の首は安く無いぞ。偉大なるショヴァンの【魔力】が消えた以上、我が【魔王】の最後の騎士。その全てを費やして、ショヴァンの意志を継ごう!」
カピタンは迫る斬撃に対して、壊れた翼を動かし始めて、それは徐々に再生を始めた。
翼は先程切り裂かれたのとは打って変わって新品同様の状態に戻るとカピタンはそれを使い、上空へと飛んだ。
(あの羽、再生ができるのですね。なら、あれごとを叩き切ります)
斬撃は周囲にあった建物にぶつかるとそれがスパリと簡単に切り裂かれ、ミリアは直ぐに上空に逃げたカピタンを追った。
ミリアの浮遊【スキル】は【特化】しており、自由自在に空を飛べる領域までに達している。
浮遊【スキル】は練度が色濃く現れる【スキル】とされており、 浮遊【スキル】を使用中に他の【スキル】を並行的に使うのが難しいとされた。
【魔王】や、魔族といった【魔力】と共にあり続ける存在は浮遊術、空を飛ぶことは歩いたり、走ったりすることと同義であり、当たり前である。
当たり前に労力や、意識を割くことはなく、空中は敵にとっての独壇場であり、人類には到達出来ない領域といっても過言では無い。
だが、星空ミリアはそれを平然とやってのけている。
【魔王】や、魔族が同様に当たり前に。
天賦の才が最も発揮される瞬間は何か、それは凡人には理解し得ぬことをやってのけること。
【魔力感知スキル】、浮遊【スキル】、【ユニークスキル】の同時併用、あまりにも人間離れしたセンスは、才能と片付けるには異常であるほど。
カピタンは空を飛びながら、ミリアへと自身が生み出した機巧で迎撃をする。
それら全てを切り落とし、ミリアは徐々にカピタンの速度に追いつき始めた。
「我の速度に追い付くとは、若人、お前は凄いな!」
カピタンはそう叫ぶと近付いてきたミリアに対して、自身の得物である剣を握りしめ、彼女へと振るう。
空中での戦いに、ミリアは慣れた手つきで刀を振るい、カピタンとの撃ち合いを始めた。
カピタンの持つ翼は、【第四戯魔王マキナ】より、承った機械武装であり、彼の【魔力】が尽きるまで再生と構築が可能な物。
【魔力】を使うが機巧を幾つも生み出し、それに【権能】である爆発能力を掛け合わせることで、カピタンは四刃の中でも抜きん出る攻撃力を持っている。
「全弾発射」
カピタンは自身の【魔力】を一気に導入し、ミリアを撃ち落とすために、過剰なまでの機巧を量産する。
追尾式爆撃機、それらの数を更に増やし、200発にも及ぶミサイルの弾幕がミリアへと注ぎ落とされた。
「水瓶」
逆手で刀を抜くと同時に、ミリアの周囲に水のような物が浮かび上がり、それら全てが星の形に変化し、追尾式爆撃機を切り裂く。
ただ、その絨毯爆撃はミリアの想像を遥かに超えており、先ほどよりも爆発の威力と数が多く1つの技のみでは防ぐ事が不可能であった。
「天秤」
天秤を模した防御の型の抜刀は数と質を傾ける事ができる特性を持つ。ミリアが今、欲したのは数であり、この型は他の型と同時に平行して使用する事で真価をみせる。
ミリアは直ぐにもう1つの型、自身が持てる最優の剣を披露した。
「月光獅子!」
抜刀と同時に繰り出されるのは、【魔力】によって生み出された獅子と刃から放たれる月光の輝き。
それら全てが術者を守るために展開され、凡ゆる攻撃から身を守る。星空ミリアの【光導拾弍式抜刀術】の中でも防御に最も優れた型であり、【龍真星】と交わる事で存分に力を発揮する。
獅子がミリアを守り、星は月光に照らされ、その威力を跳ね上げ、全ての爆撃を防ぎ切った。
爆発により、煙が立ち込め、ミリアはカピタンを急いで探した。
そして、煙が上がった直後、ミリアのいる場所より、更に上空、カピタンは自身の翼を変形させており、その両腕に巨大な砲身が生み出されていた。
「発射」
カピタンが狙ったのはミリアの防御を行った直後の奇襲。
安堵した瞬間に、彼女の体を削ぐ。
合理性を突き詰めた攻撃を行うために作り出したのは、相手を貫くための形でありながら36インチの砲弾。
それがミリアへと向けられて放たれた。
(この【魔力】の帯び方は彼の最大火力といって過言ないですね。月光獅子なら防げる可能性がありますが、五分。カピタン、貴方は強い。だけど、僕の方が強いです。僕は師匠以外には負けるつもりないんで)
【龍真星】を防御を終えた時点で鞘に納めており、ミリアは迫り来る砲弾に対して、彼女の持つ攻撃の方の中でも、最もピーキーでありならがら、奥義とも呼べる技をカピタンという敵に敬意を込めながら、放つ。
「【光導拾弍式抜刀術】! 奥義! 太陽射手!」
それは攻防合わせて6つ以上の型を使用しなければ発動が出来ない【光導拾弍式抜刀術】の必殺技。
逆手抜刀と共に放たれるのは、6つの星座を弓矢にし、それを同時に射出する技であり、弓矢全てにこれまでに使用していた型の【魔力】特性が載せられている。
6つの内、1つが砲弾を簡単に砕いたにも関わらず、勢いが納まらないままカピタンへと襲い掛かった。
カピタンは砲弾が破壊された時点でその弓矢の危険度を跳ね上げ、避けるためにミリアから遠ざかる。
だが、弓矢はそんなカピタンに逃さない。
敵にそれが当たるまで、止まることを知らない追尾及び敵の殲滅こそが太陽射手の【魔力】特性であり、敵に対して容赦のない、ミリアという存在の本質の現れである。
凡ゆる機巧によって撃ち落とそうとし、建物を潜り抜けながら移動するカピタンを一度放たれた矢は止まることも、威力が落ちることもなく追いかけ回す。
「うおおおおお!!!! 我は、まだ!!!!」
逃走を諦め、迎撃するもその抵抗虚しく、全てを蹂躙する様に弓矢は撃ち壊す。
そして、弓矢はカピタンの目の前に現れるとそれら全てが彼の腕を、足を、体を、翼を貫いた。
(な、んだ、あれは。あの攻撃は! 余りにも理不尽。あれを【魔王】に、ショヴァンの愛した娘に合わせることは、出来ない! 我は死ぬ。なら、今、ここであれを!)
カピタンは体は辛うじて上半身のみが残っており、それを使ってミリアをあわよくば共倒れを目指そうとした。
「無明一刀流、流星」
だが、ミリアがそんな抵抗を許すはずが無い。
上半身の首を一瞬にして断ち切り、その生命を終わらせる。
「強かったですよ、カピタン。あなたの【魔石】は僕の糧にさせてもらいます」
ミリアの最後に呟いた言葉と同時に、カピタンの肉体は決勝となり、砕け散る。
キラキラとした結晶が空より舞うと浮遊【スキル】を使用して、カピタンの【魔石】を確保し、ミリアは地上に降り立った。
「さて、皆さんに着いてる糸を切って、僕も師匠の下に行きますか」
星空ミリアはそういうとマーキングしていた糸を断ち切り、その場の【冒険者】達を置いたまま、直ぐにレンジの下へと駆けて行く。
愛する師匠を叩き起こすために。
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