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元伝説の迷宮踏破者、今は過疎配信おじさん ――魔王が幼女に転生して来たので、再び迷宮の最深部へ  作者:
一章 おじさん、宿敵と再開する

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四十九話 おじさん、池袋に挑む⑩

 男はかつて、【魔王】の右腕として、猛威を振るった。


 忠誠心は留まることを知らず、武は【魔王】配下の中でも飛び抜けている。


 魔物を守る盾と人を殺す戦斧、二つを持って【魔王】は、仕えた男に、愛国者(パトリオット)の名を与えた。


 だが、彼は後に、自らその名を愛国者(ショヴァン)と名乗ることとなる。


 仕えた主人が、死んだ後、残された幼き【魔王】のために。


 愛国者(パトリオット)ではなくて、偏執の愛を傾ける愛国者(ショヴァン)として、【魔王】の槍と盾となった。


「ふぅん!」


 愛国者(ショヴァン)の巨躯から放たれる剛力なる一撃。それは177cmほどあるレンジの体を簡単に吹き飛ばし、ショヴァンはゆっくりとその両腕に握る得物を構える。


(コイツがこの【魔王】の最大戦力。【魔王】に並ぶ、化物。見れば見るほどに、悍ましさよりも、その鍛え抜かれた武から放たれる神々しさがある。勝てるか? コイツに。いや、勝つさ。勝たなきゃ、行けないんだ)


 愛国者(ショヴァン)の隙の一切ない構えに対して、レンジは無明一刀流の構えを見せた。


 お互いに先程の一瞬の攻防で間合いは読めている。


 だからこそ、全力での一撃をぶつける為に、彼らは同時に踏み込んだ。


「無明一刀流、(イカズチ)


 黒い雷と同時に轟く雷鳴が【池袋】の地に鳴り響く。


 黒雷の持つ切断の特性に対して、ショヴァンは何も気に留めず、大雑把な一振りを打つけるもそんな一撃ですら、レンジの高速の逆手抜刀に真っ向から切り合った。


 それどころか、【魔力】を載せた一太刀に対して、力のみで、勝り、レンジを遥か100メートル先にあって遊園地の遊具の一つまで吹き飛ばす。


 空中にある【魔力】の層に【夜叉(ヤシャ)】の刃を何とか突き立て、速度を抑えたが、それでも叩きつけられるのは変わらず、背中からメリーゴーランドの屋根に叩きつけられた。


(痛いな。背中に【魔力】を集めておかなかったらこの後、動けなくなったかもしれない。良かった、コレと戦うのが僕であって。ミリアだったらどうなっていたか。いや、それは彼女に失礼か。それでも今、アイツと僕がやれていることを幸福に思いたい。あんな怪物とやり合おうなんて考える、イかれ野郎、僕だけで十分だ)


 レンジは稼働するメリーゴーランドの屋根の上で立ち上がり、ショヴァンの方へと視線を向ける。


 その瞬間、彼は信じられないものを目撃した。


 空を腕と足を獣のように動かしながら、こちらへと迫る鹿の怪物、それが吹き飛ばしたレンジの下へと迫り来る。


「化物かよ!?」


 レンジの叫び声を無視して、彼の立つメリーゴーランドの屋根にショヴァンは突撃すると巨大な音と共にその遊具を簡単に破壊する。


 レンジはその突進を避けるも一瞬にして足場を失い、メリーゴーランドの外側の地面に着地した。


 屋根が破壊されても尚、グルグルと回るメリーゴーランドの乗車物。


 ショヴァンは屋根を破壊し、そこに現れたことで、メリーゴーランドの中、グルグルと回る馬達に打つからない位置に立ちながら、背中に背負っていた盾と戦斧を握りしめた。


 外に立つレンジの位置、ショヴァンは既にその位置を感知しており、彼の溢れ出る殺気を前にして、受けて立たんと立ち塞がる。


 一方、レンジは今、自分が持つ最高速の斬撃をぶつけようと大きく息を吸った。


 メリーゴーランドの陽気な音楽が流れながら、1人と1体の間にあるのは沈黙。


 グルグル能天気に回る乗車物の間から、彼らは無意識の内に、視線を合わせた。


 それは偶然にも乗車物の動物の位置が全て平行になった瞬間、レンジは【夜叉(ヤシャ)】を抜くと同時に自ら死地へと踏み込む。


「無明一刀流、火雷(ホノイカズチ)


 無明一刀流、火雷(ホノイカズチ)、それは範囲攻撃に特化した無明一刀流、轟雷(ゴウライ)とは別のベクトルに特化された音を斬る抜刀術。


 メリーゴーランドの中にいた、ショヴァンの首を狙って放つ最速の一撃、その刃の軌跡は一直線に走っており、メリーゴーランドの乗車物の全ての首を断ち切った。


 全ての首が同じ速度で地面に落ち、ゴロンゴロンと音を立てる。そんな中、ショヴァンは自身の握る盾の一部が切り裂かれ、首に生まれた切り傷に気付き、それを撫でた。


 数十年ぶりについた傷。

 あまりに久しく刻まれた切り跡に対して、ショヴァンは何故か、痛みや、怒りよりも喜びが優っていた。


(私の首を狙い、何十年ぶりに血を流させた。盾で防いでいたにも関わらず、切られた。この感覚、この高揚感。【勇者(アイツ)】ぶりに感じる、心が踊る興奮。名を聞かねばならない。この世界の【勇者】の名を)


 レンジはショヴァンの背後より、少し間を取った位置に立っており、そんな首を断つことが出来なかった彼から更に距離を取った。


(なんて、硬さ!? こんなの初めてだ。このままだと切り落とせていない。クソ、どうでる? この怪物、相手に)


 再びレンジは鞘を前にして構えを取ると、ショヴァンがどう出るか、どう仕掛けて来るかを様子を伺った。


「【魔王】殺し、よ。お前は名を何と言う」


 だが、そんなショヴァンがとった行動、それはレンジの予想から大きく外れたモノであった。


「え、あ、僕の名前が知りたいのかい?」


「ああ、名乗れ【魔王】殺しの【勇者】よ。私はお前の名を知りたい。お前の名を知らねば、今宵の戦いの墓碑銘に刻む英雄の名を分からない」


 ショヴァンの言葉に対して、レンジは調子を崩されたのか、構えを取ったままに彼に向けて、自身の名を告げた。


肋屋(アバラヤ)レンジ、【魔王】殺しなんて大層なもんじゃない。ただのしがない剣士だよ。なぁ、強者(ツワモノ)、アンタも僕に名前を教えて欲しい。僕も覚えておきたい。お前と言う怪物の名を」


 それを聞き入れたのか、ショヴァンは戦斧を振り回し、構えを変えるとレンジに自分という怪物をこの世界に刻むために叫んだ。


「そうか、レンジよ、怪物の名を聞く、酔狂なる英雄よ。我が名は、偏狂なる愛国者(ショヴァン)である! コレより始めるのは戦争だ。私とお前の個人がぶつかり合う、戦い、決戦である!」


 その言葉を終えるとと同時に、戦斧を地面に突き刺さし、ショヴァンは己の肉体に宿る【魔力】の起源、【権能】をレンジへと見せつける。


「戦慄せよ、鹿王の呪詛カース・オブ・ウェンディゴ


 ショヴァンの肉体に宿る【魔力】、それは幾十重に折り重なる1つとして同じものの無い呪い。


 其の怪物は、()()に在らず、其の怪物は、()であった。

 

 かつて、彼らの居た世界で人はとある戦士を生み出そうとした。


 どんな怪物をも打ち負かす化物、人の守護者を。


 その名は鹿の悪魔(ヴェンディゴ)計画。

 作られた人造の怪物、それこそがショヴァンであり、今は魔物の側に立つ、怪物。


 幾多の呪いを撒き散らし、レンジの方向へと目を向ける。


「肋屋レンジ、一撃で、死ぬなよ」


 手に握る戦斧には呪いが込められると、それをショヴァンはレンジへと放り投げた。


 勢いよく飛んで行く戦斧に対して、レンジは【夜叉(ヤシャ)】を構えながら、迎撃を始める。

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