四十七話 おじさん、池袋に挑む⑧
アルレッキーノとの戦闘により、奥に進むための入り口を塞がれてしまったレンジは、何処か開いてる入り口がないかを探そうと迷宮内を飛び回っていた。
既に、【四望遊戯】開始から1時間30分が経過しており、レンジは少し焦った。
(都市型の迷宮は広いって聞くけど、これじゃまるで、昔の【池袋】と同じくらい広いや)
かつて【池袋】と呼ばれた土地、それは【何でも揃う便利な都会】でありながら、【サブカルチャーの聖地】と評された場所。
それが今では、【サブカルチャーの聖地】という物だけが1人歩きしている様であり、【ダンジョン配信】というサブカルの聖地であった。
(あれだけあった魔物の気配が一気に消えた。全体的に何が起きてるかわからないけど、とりあえず、地下に進むための入り口を見つけないとね)
そんなことを考えていると、1つ地下に通じていそうな入り口を見つけた。
「あそこから下に向かおう」
レンジは空中移動をやめ、その場に降り立つと辺りを見回しながら移動を始める。入り口からは暗闇が広がっており、先が見えなくなっていた。
(完全に遅れを取ったけど、まだ間に合うはず。いや、合わないと困る)
レンジが暗闇に足を踏み入れたその時、彼の背後に気配があることに気付き、その方向を向きながら、得物に手を置く。
背後の人物は急いで手を挙げるとそこには先ほど離れ離れにされていたミリアの姿があった。
「やっぱり! 師匠! ようやくお会いできました!」
ミリアは天真爛漫な笑顔をレンジに見せ、彼はそれを前にして、警戒の糸が解けたのか、得物の柄から手を離した。
「ミリア! よかった! 怪我はない?」
「勿論です。それこそ師匠の方はお怪我ありませんか?」
「大丈夫だよ。はぁー、よかった~。ミリアと合流できて」
安堵からか、レンジは一息吐くと、彼らは今まであった情報を交えながら暗闇へと進んでいった。
カメラ型ドローンに付属しているライトで前を照らしながら、暗闇の中を2人は進むも、彼らは1つの違和感に気付いた。
「ミリア、魔物が出てこないね」
「そうですね。【魔力感知】を使っても見つかりません。まるで、ここにはいないみたいに静かです」
2人の足音と喋り声、それだけが暗闇に響き渡る。
レンジはこういった暗闇が苦手であった。
理由は過去にマーラの部下である、【真実のダリア】との戦闘によって仲間を暗闇の中で失ったからである。
そこから黒は別に気にしないが、夜の静まり返った空間に広がる暗闇に、今でも苦手意識を覚えている。
それだからか、普段はあまりこういう場面で話をかけないのだが、ミリアに積極的に喋りかけていた。
「よく考えれば、ミリアは色んな【スキル】を使うよね。あれはどうやって選んだんだい?」
「ん? レベルを上げた際に、得られた【スキル】のことを言ってるんですか? もしかして、師匠は【スキル】について、何も知りませんね?」
ミリアのレンジへの質問が応答より、詰問に変わる。
「え、あ、うん。全然、知らないかも」
「はぁー、なら、今、余裕があるウチに教えておきます。レベル上げによる【スキル】取得、あれは不便なので、基本、当てにされません。今は、【スキルカード】という物に、【スキル】を刻んでおくんです。【スキルカード】をお店で買って、それを入れ替える形で、【スキル】の取得を行います。基本的に誰でも自由に選択出来ますよ」
レンジはそれを聞き、目を丸くした。
「ええ?! つ、つまり、好きなスキルを好きなだけ選んで、使えるってことかい?!」
「あ、いや、好きなだけではありません。4~8つです。レベルに応じて、取得出来る数が決まります。僕は8つと、【ユニークスキル】を1つを取得しております」
「な、なるほど? となると、ミリアはその【スキル】の入れ替えを行って【スキル】を入れてるのか。それじゃあ、皆、噛み合わせが良い【スキル】に出来ているのか。勉強不足だったな」
レンジは自分が今、何の【スキル】を持っているのか気になったのか、立ち止まった。
「じゃあ、ミリア、僕の【スキル】は何を入れ替えれば良いか一緒に確認してくれないかい?」
「良いですよ、【魔力感知】で敵は居ませんし、少し、休みも兼ねて見せてもらいます」
ミリアの言葉に甘えて、レンジは自身のパラメータを確認するために声を上げた。
「ステータス」
その声に呼応して、視界に四角いホログラムが表示されるとレンジとミリアはステータスを見始めた。
――――――――――――――――
【名前】肋屋レンジ
【レベル】90次のレベルまでの経験値「115060060」
『HP』5000
『MP』300
『腕力』3060
『耐久』2570
『敏捷』4500
『器用』1000
『知力』300
『精神』550
【PP】0
【スキル】強化VII、強化VII、強化VII、強化VII、対魔力VII
【ユニークスキル】無明一刀流、鷹の眼
――――――――――――――――
「どうかな?」
レンジはミリアの反応を確認しようと声をかけるも、彼女はその歪としか言いようがないステータスに唖然とした。
「どうかなも、何も、どうやって【特化】をしたんですか?!」
「え、ええ?! 僕の【スキル】そんなに変かな?!」
「変どころか、現状、VIIまでの【特化】は作れても1~2つが限界です。同じスキルは重ねがけは可能ですが、それでも2、じゃないと身体が保つはずないんですよ。それを4つ?! 師匠、ハッキリ言いますけど、あなたはとんでもなく貴重なサンプルとして保護されるべき存在ですよ?!」
ミリアは捲し立てるようにそう言うと、レンジは目をグルグルと回しながら困惑した。
【スキル】は、【特化】と言う能力の向上を行える。それはレベルが上がった際に取得した【スキル】が重なった場合のみに自動的に【特化】されるが、レンジは28回も強化の【スキル】を重ねたと言うこと。
「待って待って、ミリア。僕が【魔王】を殺した時代ってまだ、迷宮探索黎明期なんだ。今みたいに色んな【スキル】が無くて、偶々重なったんだよ!?」
「なるほど。とはならないんですよ、師匠。25年前、【魔王】が君臨して、その5年後に、師匠が【魔王】を殺しました。その5年の間に、師匠は強化、対魔力だけで戦って来たって事ですよ?! 師匠は僕が思ってるよりも、やっぱり手が届かない。こうして横に立っていることすら恥ずかしく感じてしまいます」
少しばかり、しょんぼりとするミリアにレンジはどうフォローすれば良いのか分からずアタフタとした。
そんなレンジを見て、少しだけミリアは微笑み、再び口を開く。
「まぁ、それでも僕は師匠の横に勝手に立ちますよ。どんなことがあっても!」
ミリアにそう言われ、レンジは少しだけ内心ホッとしたのか、ふとあることに気がついた。
それは暗闇の中の苦手意識が何故か、納まっていたこと。
(ミリアが横にいてくれたからかな)
そんなことを考え、レンジとミリアは再び歩みを再開する。
この後、目に映るであろう異常があるとも知らずに。
感想、レビューいつもありがとうございます!
嬉しくて狂喜乱舞です!
続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!
評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます!




