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元伝説の迷宮踏破者、今は過疎配信おじさん ――魔王が幼女に転生して来たので、再び迷宮の最深部へ  作者:
一章 おじさん、宿敵と再開する

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四十六話 おじさん、池袋に挑む⑦

「あはは!!!! お前、面白いなぁ! カーマ!」


「そっちこそ! ノリが良いじゃねえの!

夜!」


 マーラが出会ったS級【冒険者】夜島夜(ヤジマ・ヨル)、彼にコンタクトを取った結果、意気投合することとなる。


 夜はたった1人で、他の【冒険者】達を前に進ませ、この場に押し寄せて来ていた魔物の処理に当たっていた。


 そんなところに突如として、黒髪の悪魔は夜に近づくと彼は最初は警戒していたが、会話を交える中で、とあることに気付く。


 コイツとウマが合う、と。

 S級【冒険者】夜島夜(ヤジマ・ヨル)、彼は強さとビジュアルと自分を上げて、視聴者を魅了するという、端的に性格が悪いが何故か見てしまうという【配信】スタイルであった。


 カーマもそれと似た所があり、【魔王】討伐戦【配信】時には始まりは煽り、それでいて自分の見せ場しっかりと見せるとスタイルであったため、その後は早かった。


 一瞬にして、打ち解け、仲良くなると夜とマーラは魔物が出てこなくなったのを確認し、彼らも一緒に前に進もうということになった。


「【魔力感知スキル】で確認したけど、魔物は残ってないらしいわ。そろそろ、俺達も進むか! カーマ!」


「おう! いいね! レンジお兄ちゃんよりもノリが良くて助かるぜ! 夜!」


「レンジお兄ちゃん、あー! 【魔王】殺しの【配信者】か!」


 夜は両眼をパッチリと開き、何かレンジについて思う所があるのかニコニコと嬉しそうな表情を浮かべた。


「なんだよ、夜はレンジのこと知ってるのか?」


「知ってるも何も、俺はあの人のこと、評価してるんだぜ? 【魔王】殺し。俺もやりたかったんだかな、先を越された。だが、あの【配信】は格別だった。肋屋レンジ、あんな人間がいるなんてな! だから、今回は俺が! って思って、TXに【魔王】から招待状が来た時は嬉しくて、すぐに来ちまったわ」


 嬉しそうに語りながら、夜とマーラは移動を始めるとそんな彼らの目の前に突如として、二つの影が現れた。


「おっと、カーマ、お喋りはここまでらしい」


 夜は目の前に現れた者をすぐに敵と判断したのか、彼は自身の()より、巨大な鎌を取り出した。


 それを前にして、ローブで顔を隠していた2つはその素顔を晒し、自分達が何者あるかを明かす。


 全く同じ顔のパーツをしながら、片方が赤い髪、もう片方が青い髪をした少年少女、双子の魔族が現れると彼らは深々とお辞儀をしながら、自身の名を口にした。


「「僕ら/私達は【第四戯魔王マキナ】直属護衛四刃(シジン)の2体、インナモラート/インナモラータ、以後、お見知りおきを」」


 全く同じ喋る速度、一人称と名だけが違う、一矢乱れぬ口調で名乗りを上げたインナモラートとインナモラータ。


 不思議と心地の良い独特なリズムで喋る彼らに対して、夜は同様に自己紹介を始めた。


「俺はS級【冒険者】夜島夜(ヤジマ・ヨル)。ガキども俺の前に立つなら容赦しないがどうする? 死にたくなけりゃ退け」


 既に戦闘態勢に入っていた夜は大鎌を2体に向けるも彼らはそれに対して、冷静に答える。


「「夜様/さん、僕ら/私達は戦う気はございません。僕ら/私達はあなたに交渉に来ました」」


 交渉という言葉を持ち出したインナモラートとインナモラータであったが、それに対して、マーラが口を挟んだ。


「交渉だぁ~? 夜、コイツらの話は聞かなくて良いぞ。どうせ、罠だ。とっとと殺そう」


「落ち着けよ、カーマ。話ってのは、聞くもんだぜ。それの方が面白いからな。交渉、交渉か。良いぜ、話だけは聞いてやるよ、俺の気が変わる前に話せ」


 夜に言われるがまま、インナモラートとインナモラータの2体は交渉内容を喋り始めた。


「「夜様/さん、あなたには、その横の女を殺して貰いたい」」


「あ?」


 真っ先に怒りを示したのは自身の殺害を要求されたマーラであり、彼女は今、直ぐにでも2体を切り刻もうと【我射髑髏(ガシャドクロ)】の柄を握りしめる。


「落ち着けよ、カーマ。話ってのは聞いてみるもんだぜ、それのが面白いからな。オイ、お前ら、俺がカーマを殺した場合に、何を差し渡す。教えてみろ」


 マーラの言葉を押し除け、夜はインナモラートとインナモラータに報酬について尋ね、彼らはそれに何の感情の機微もないまま答えた。


「「今回の【四望遊戯(シボウユウギ)】、その優勝者をあなたにし、【魔石】を全てお渡しします」」


「ほう、そりゃ良いな。何もせずに優勝か」


 夜はマーラへと獲物に対しての視線を向けた。


「オイ?! 夜?! マジかよ?! お前、裏切るのか?!」


 先程まで友好的な態度であった夜がいつの間にかマーラへと得物を向けており、その眼は狂気に満ちていた。


 双子の兄妹の魔族、インナモラートとインナモラータの【権能】、不義理な契りアンジャスティス・コントラートは既に発動している。


 対象に自分達の独特な波長の声を聞かせることで、相手の意識を少しだけ変更できる能力。


 マーラは【魔王】の潜在意識から、その【権能】を弾くために無意識のうちに耳に【魔力】を集中させ、それを防いでいた。


 夜の少し変更された意識は、交渉を受け入れること。


 それにより、夜はマーラへとその大鎌の刃を振り下ろそうとする。


風魔法VIウィンド・セクスタプル


 大鎌に宿すのは【スキル】によって生み出した風の刃、インナモラートとインナモラータはそれを目の当たりにしながら、マーラが殺される瞬間をマジマジと見ていた。


 2体の魔族は、死を見るのが好きであった。


 他者の死を見ながら悦に浸る。

 自分達の【権能】はその為にだけあると。


 マーラに一歩、二歩と近寄り、夜はその刃を彼女の首へと突き立てるために、容赦無く振るった。


 一つの首が宙に飛ぶ。

 首が、首だ。

 双子の魔族が求めた首が飛ぶと同時に違和感に気付く。


 その首は、()の首?

 可笑しい、可笑しい。


 その首は、自分のよく知ってる妹の首。


「は?」


 インナモラータの首、驚きも恐怖も無いままにシャットダウンされた肉体はガチャリと音を立てて、その場に崩れ落ちる。


「ぷっ」


「ふっ」


「「あははははははははは!!!!!!!!」」


 何が楽しいのか、何が可笑しいのか、分からないが気持ちの悪い笑い声が聞こえて来た。


 誰が落とした、誰のせいだ。

 呆然とするインナモラートは視線を前に向けた。


 そこに映るのは2人の悪魔。

 その笑いは残酷なまでに非情で、無情。

 容赦のない下卑た笑い。


「夜~、もうちょい手加減しろよ~! 危うく、殺しちまうところだったぜ」


「落ち着けよ、カーマ。俺は【獣化スキル】のせいで、音に敏感になってんだから、あんな【魔力】の混じった音なんて聞くわけないだろ~。そんにしても、楽しいなぁ! 敵を騙すのは」


 夜の耳に生えた金色の耳、それは【獣化】スキルによって生まれたキツネの耳であり、音に危険性がないのか等を判別できる便利な物であった。


 それを使って、夜は双子の魔族の【権能】である不義理な契りアンジャスティス・コントラートから、自身を守っており、その上で洗脳されたフリをした。


 それが最も簡単に彼らのウチの1体を殺せると踏んだから。


 そして、マーラもそれに気付き、その役割を演じることにした。


 結果、インナモラータ、妹の魔族を、兄であるインナモラートを残して、殺すことに成功する。


「「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ」」


 何故、彼らは片方だけを殺したのか。

 答えは簡単、そっちの方が面白いから。

 それを言葉を交わさずとも互いに理解しているマーラと夜。


 邪悪なまでのコンビに対して、インナモラートは怒りを剥き出ししながら、彼らに無謀な特攻を仕掛けた。


 インナモラートとインナモラータ、2体は2つで1体。【第四戯魔王】より承った【権能】の力を使い、2つの肉体を得ていた。


 そうしたのは孤独を癒すためであり、1体しか自分という個がないのが寂しかったから。


 その片割れが見るも無惨な姿になっており、インナモラートは怒りで冷静な判断を出来ずに無意味な特攻に挑んだ。


「良いな、お前。その判断が出来るのは魔族としては異質だぞ」


 マーラは姿を隠した【波旬】の刃に【権能】を載せ、それを地面に振り下ろす。


 一閃。


 地面に切り傷のみが生まれ、インナモラートは真っ二つにされ、地面に転げ落ちた。


 それを見て、夜は嬉しそうにマーラに向けて、手をかざした。


「良いね! カーマ! そんじゃ、先に進もうか!」


「おう! 行こうぜ! 夜!」


 2人の悪魔は互いに手を合わせて、パチンとハイタッチをし、迷宮(ダンジョン)の奥へと進むのであった。

感想、レビューいつもありがとうございます!

嬉しくて狂喜乱舞です!

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