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元伝説の迷宮踏破者、今は過疎配信おじさん ――魔王が幼女に転生して来たので、再び迷宮の最深部へ  作者:
一章 おじさん、宿敵と再開する

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四十五話 おじさん、池袋に挑む⑥

 ミリアは自分の周りにいる【冒険者】達に襲い掛かる魔物を排除する。


 一瞬にして、魔物の首だけをピンポイントに狙いを定めて断つと直ぐに次へ次へと飛び跳ねる。


(今は、僕だけでも対処し切れてますけど、これ以上、増えたりでもしたら、流石に追い切れませんね)


 【冒険者】達に襲い掛かる魔物の数が徐々に増えており、対処に追われるのみで、中々に前に進めずにいた。


 【ユニークスキル】を用いた物ではなく、ただ【魔力】を得物に載せただけの逆手抜刀でありながら、ミリアの動きを阻める敵は居らず、勝負は対面する間もなく着く。


 その繰り返しを行い、ここで自分を足止めしておくことが敵の目的なのであろうとやんわりとミリアは感じた。


(さっきから【魔力感知スキル】を使用していますが、知らない【魔力】が突然ポップした後に、魔物が湧き出て来る。仕方ありませんね、これはあまり使いたくなかったのですが)


 ミリアは抜刀の構えを取ったまま、その場から動かなくなると【魔力感知】の【スキル】の範囲を一気に広げる。


 50メートル程、広げたところで先ほど感じた未知の【魔力】が再びその尻尾を見せた瞬間、彼女は静かに呟く。


瞬間転移(テレポート)


 その言葉と同時、ミリアの姿が消え、彼女の視界には未知の【魔力】を纏う主人を前にした。


「なっ!?」


 突然、目の前に現れたミリアに対して、それは思わず声を漏らすも容赦なく手に握る刀を抜刀する。


「無明一刀流、(ナガレ)


 逆手の抜刀は敵の首目掛けて放たれる。

 それに対して、すんでのところで避けるもミリアはすぐに切り替え、再び得物を鞘に納めた。


「いきなり切りつけるなんて野蛮な人間だ」


 そう口を開くのは緑の髪をボサボサと伸ばし、ギザギザとした歯を持った中性的な顔立ちの少年、【第四戯魔王マキナ】の筆頭配下、自らを【四刃(シジン)】と名乗っていたクローラーであった。


「コソコソと動き回ってる奴が敵な訳ないじゃないですか」


 ミリアは自身が野蛮と呼ばれたことに少しばかり、怒りを覚えており、クローラーを睨みつけた。


「私が動き回っていたのは演出のためですよ。私達はいずれ友好関係を結ぶのです。そのためのゲームを盛り上げるために、仕方なくやっていたのですが」


 そう言った瞬間に、ミリアは再びクローラーに剣を振るっており、彼はギリギリのところでそれを避けた。


「ちょ、あなた?! 流石に少しは人の話を」


「あなた、人ですか?」


 ミリアはクローラーへと向けた視線、それは敵意のみを出力したモノであり、彼はそれを前にして、ため息を吐いた。


「人であれ、友好的にしようとする生物をそう無下にするモノではないでしょう?」


「友好? 話になりませんね。僕と師匠を足止めしようとしてるのくらい分かってんですよ。そっちが何も喋らないなら、僕から先手を打ちます」


 ミリアはその瞬間、姿を消した。

 そして、クローラーの目の前に現れ、鞘から得物の刃を抜く。


「無明一刀流、(セイ)


 高速の抜刀に対して、クローラーは自身の腕を挟み、攻撃を防ぐもそれによって切り傷が生まれ、血が垂れた。


 血はポチャリポチャリとリズミカルに鳴り響く。


 同時に、ミリアは鞘に納めた得物を再び疾らせ、クローラーの腕を切り落とそうと動く。


 ミリアの思考に、敵対者への温情、油断、驕りなどは一切ない。


 ただ、ひたすらに敵対者を狩る、それこそが星空ミリアの起源(オリジン)であり、彼女がS級【冒険者】の中でも最強と評される理由である。


「無明一刀流、(ツガイ)


 クローラーの切り裂いた腕に目掛けて、剣を振るい、彼は何とか負傷を避けるためにギリギリのところで、体を逸らした。


 ただ、無明一刀流、(ツガイ)の本領はここから。


 一度の抜刀により、放たれる2度の斬撃。

 クローラーの左肩、それに切り傷を刻んだ。


(コイツ、話をするという思考がない。いや、あえて、する必要がないと割り切ってるのか。戦闘に関して敵対者に対して、ワザと空気を読まないようにしてる。読もうとすれば出来るはずのことをしない。ある意味、人じゃないだろうが、それは)


 一挙手一投足、全てをミリアは見ており、その敵対者との和解が不可能と漸く理解したクローラーは彼女から一気に距離を取った。


「お前のことを、()は人間と扱わない」


 クローラーの言葉に対して、ミリアは何の感情もなく、淡々と答えた。


「それで勝てるならすればいいじゃないですか」


「は、はぁ?! お前、自分が人間じゃないと言われてんだぞ?! 俺に! 魔族に!

怪物に!? 俺はお前を否定したんだ。種としての枠組みから! それなのに何だそれは!」


 煽るために、貶すために放った言葉をミリアは否定せず、むしろ、受け入れた。それに何も動じず、ただ、淡白に答えられたことに、その言葉を放ったクローラーの方が冷静さを失いかける。


「だから、その言葉で僕の有利が変わるならそう言えばいい。ただ、僕はそれでお前に向けるものはない。敵は刻む。僕はそうすることしか出来ないから」


 その眼に光はない。

 生き物へと向ける視線ではなく、慈悲も慈愛も一切ない、宇宙(そら)に広がり続ける闇、そのモノ。


 星空ミリアが何故、最速でS級【冒険者】となれたのか?


 それは肋屋レンジの【魔王】殺しの剣術を持っているから。


 否。


 それは元より才能の塊であるから。


 否。


 それは視聴者に受けが良いから。


 否。


 それは意図して、自分を押し殺し、ただひたすらに敵対者を殺すことに特化出来るから。


 是である。


 それこそが星空ミリアが敵対者を殺害に導けるのであれば、自身の犠牲を伴う行動も気にしない。思考ロジックの根底であり、意図せぬうちに持ってしまった殺人者の才覚であった。


 WAA理事長 歌島徳茂(ウタシマトクシゲ)、【第一幻魔王、唯一なるゲーテ】のみが見抜いていた、飛び抜けて現代にそぐわない才能。


 カメラ越しの視聴者にそれが伝わる事はない。ただ鮮やかに敵を倒す姿だけが映る故に、彼女の認知はそう()()されている。


 それは敵対する者しか分からない。

 理解が及ばない化物、怪物、自分達がそう呼ばれるはずなのに、ミリアを前にして、魔族(かいぶつ)は恐怖で、声を上げた。


「お前、お前はイカれてる。良いよ、なら、俺がここで壊してやる。我が役名はクローラーに在らず! 与えられた役割は既に演じた。これより演じるのは【第四戯魔王マキナ】直属護衛四刃(シジン)の1体、ブリゲッラ! お前を殺す。その眼は、その視線を、俺に向けるな!」


 ブリゲッラと方向と共に、名乗る男、緑の魔族(かいぶつ)はその【権能】を用いて、ミリアを殺そうと奔る。


 ブリゲッラの【権能】、不思議な処刑人ワンダー・パニッシャー、その能力は、彼の腕から作り出せる黒い穴を通じて、空間と空間を繋ぎ合わせ、瞬間移動を可能とするモノ。


 それを使い、ブリゲッラはマキナによって操作された魔物を至る所に召喚させ、ミリアを足止めしていた。


 そして、今、それを使い、ミリアの背後より、()()1()()のブリゲッラ、いや、彼の影の様なモノが、彼女の体にナイフを突き立てようとする。


 ミリアという異常を前にして、ブリゲッラは怒りを見せつつ、冷静に彼女を処理することを決めていた。


 不思議な処刑人ワンダー・パニッシャーの黒い穴、それはミリアに見られており、そこから移動をする能力であることを彼女は見抜いているとブリゲッラは想定した。


 だからこそ、その能力を囮として、自身が仕える【魔王】より、承っている支配の【権能】の能力から生み出されたもう1つの力を用いる。


 それこそが影の操作であり、もう1体のブリゲッラの正体。


 初見殺しの必殺を、ミリアへとぶつける。


「お前、僕のことを舐めてるだろ」


 ただ、それがミリアであればの話。


「【ユニークスキル】、【光導拾弍式抜刀術ゾディアック・ブレイドアーツ】、On The Stage。(キャンサード)


 【光導拾弍式抜刀術ゾディアック・ブレイドアーツ】の防御の型の1つ、(キャンサード)。それは敵と味方を判別することで、間合いに入ったものを全自動(フルオート)で迎撃する抜刀術。


 その数が2人であろうが関係なく、ミリアの【魔力】によって生み出された蟹の鋏は、黎明刀・【龍真星(ノヴァ)】 によって星の輝きに変換され、2体のブリゲッラの体を容赦無く切り裂いた。


 驚くことも、理不尽を感じる間もなく、ブリゲッラは死に至る。あまりにも早い決着であるがミリアはそんな彼を見て、呟いた。


「僕に化物なんて、酷いことを言うね」


 無自覚の殺戮者、星空ミリアは自分の異常に気付いていない。

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