四十一話 おじさん、池袋に挑む②
【娯楽都市迷宮池袋】、レンジ達はその地に降り立つ。
そこは都市として、【池袋】という迷宮で街を興しており、入り口付近から既に【渋谷】とは違った活気を見せていた。
「これは凄いな! バザー? ってヤツか?!」
様々な出店が立ち並び、客を呼び止める声や、商品をデカデカ紹介する広告などなど、情報量溢れる光景が広がっている。
「はいはい、カーマ。そんなにお店に近寄らない。僕達の目的は観光じゃありません」
「オイ~! ミリア~! 離せよー! 俺、あの商品みたい~!」
出店の商品を見るために動き回るマーラをミリアが引き摺ると彼女はジタバタと足を動かし抵抗した。
そんなのお構いなしに、ミリアはマーラをレンジの元に引っ張り、彼らは迷宮の入り口付近へと歩き出す。
3人が迷宮の入り口を潜り、【池袋】へと挑もうと足を踏み入れるとレンジは自身の目の前に映る光景に驚愕することになる。
そこには溢れんばかりの人、人、人。
多くの【冒険者】達が既に【池袋】に集い、【ダンジョン配信】を開始していた。
「ミリア、これって」
「え、ええ、ちょっとこれは想定外ですね」
「もしかして、全員【招待状】を受けた人達、なのかな?」
「分かりません。ただ、少しこの人数は不味いことになりましたね」
レンジ達の読みよりもずっと早く、【魔王】の魔の手は伸びきっており、多くの人が集まっていた。
「あははは! いいなー! 人間が一杯じゃないか」
「楽しそうに言わないでください。あなたの言い方は獲物を見るそれですよ」
「そりゃそうだろ、俺からしたらお前らは獲物だしな。これだけ集まりゃ、【魔王】冥利に尽きるってもんよ」
マーラはそう言うと入り口付近で、魔物を狩る【冒険者】達を値踏みするように見つめ始める。
(10点、20点、40点、5点、15点、78点)
ひょいひょいと視線を向けながら、【冒険者】達を値踏みし行く最中、1人だけ別格の雰囲気を持った人間を目の当たりにする。
一瞬だけ、見えたのは金髪を一本に纏めた物のみで、その体も得物も何もわからない。
だが、それはマーラの目にハッキリと鮮明に記憶される。
(99点。ありゃ、レンジにすら並ぶぞ)
マーラが目を凝らした先、そこには既に人は居らず、彼女はただ、パチリと瞬きをするだけであった。
突然、呆然とするマーラを見て、空気が読めるのか、読めないのか分からない彼女に対して、ミリアはため息を溢す。
「はぁー、こうなったら分かり合えませんね、本当に」
「そりゃそうだよ、【魔王】だからね。ミリア、一つ、伝えておくけど、彼女とは必ず分かりあえない。それだけは分かっておいて」
レンジがいつもより語気を強めたことに、ミリアは少々驚くもすぐに切り替え、彼らに声を上げた。
「とりあえず、気を取り直して、僕達も【配信】を始めましょう。目立ちますが、ドローンを起動して」
ミリアがそう言った瞬間、【池袋】の迷宮の天井に突然、映像が映し出された。
「あーあー、諸君聴こえているだろうか」
そこに映るのは緑の髪をボサボサと伸ばし、ギザギザとした歯を持った中性的な顔立ちの少年であった。
彼は会場の視線が寄せられていることに気付くと嬉しそうに再び喋り始める。
「私の名前は、クローラー。【第四戯魔王マキナ】様の筆頭配下、【四刃】の一体だ。この度は、【招待状】を受けてくれ、そして、ここに来てくれたこと。【冒険者】諸君に感謝を告げたい」
クローラーと名乗る少年は頭を下げるとそれに対して、【池袋】の【冒険者】達から拍手が送られた。
(こういう時に、拍手するの本当によく分からんな。これも認知が歪んでんのか? あれは敵だぞ? レンジとミリアはしてないから、良いが緊張感の抜ける演出だこと)
マーラの考えとは裏腹にその拍手に対して、クローラーは嬉しそうに笑顔を見せる。
「ありがとう。あたたかい拍手、私も嬉しい。それじゃあ、早速、本題に入ろうかな。今回、君達に【招待状】を送ったのは、提案があってからだ。我が【魔王】、【第四戯魔王マキナ】とその配下、【四刃】はこの地に住まう人々と友好的な関係を築きたい」
あまりにも突拍子のない言葉に、会場は一瞬にして静まり返るもそれを見越していたのか、クローラーは優しい表情を見せながら、再び口を開く。
「分かっている。私達、【魔王】が君達、いや、この世界でどんなことをしたのか、十分理解している。だが、私達は違う。【第四戯魔王マキナ】はこの世界で初めて【魔王】と人類の共存を願う」
クローラーがそう言うと突然、彼の背後にあった壁が開かれ、そこには大量の【魔石】が用意されていた。
それが映し出された瞬間、【池袋】は熱狂の渦に巻き込まれる。
「なんなあの量!」
「あれだけありゃ、一生安泰じゃないか!?」
「うお、すっご」
「ヤベェってヤベェって! あの量の【魔石】どうする気だよ!」
盛り上がる会場を更に温めようとクローラーは追い打ちをかける様に、煽る様に叫んだ。
「私達、【第四戯魔王マキナ】とその配下、【四刃】は君達と友好的な関係を結ぶために、ゲームを提案する! 名は【四望遊戯】! 内容はシンプル! この娯楽溢れある土地、【池袋】を踏破してもらうこと! もちろん、報酬もある! 報酬は! 私の背後にある【魔石】全てだ! 約1トン以上を準備した! これを持って、我々【第四戯魔王】は世界と友好関係を記したい!」
クローラーの言葉はその場のドローンによって、全世界に【配信】されると世界中の【冒険者】達の心に火をつけた。
『真実かよ【魔王】…!?』
『幻想じゃねえんだよな…!?』
『直ぐに、向かう!』
『みんな!! 【魔石】キメろォォ!!』
コメント欄も会場も全てで熱狂が起き、その中で、レンジ達だけが静かにその渦に流されず、冷静に事態を見極めていた。
「ミリア! 不味いことになってる!」
「そうですね。これは想定外すぎます」
2人のやり取りを横目に、マーラはクローラーが見せつけている【魔石】を眺めているとそこには【魔石】が持つ【魔力】とは違う【魔力】があることに気付いた。
「オイ、レンジ、ミリア姉ちゃん、あの【魔石】、爆弾だ」
「なっ?! それは本当ですか!? カーマ?!」
「大マジ、あの【魔力】には見覚えある。俺も昔、急にマキナから送られて来た花束が爆発した時があって、調べたところ【四刃】の中に爆発を操る【権能】を持つ魔族がいた。どうする? このゲームハナからコイツら全員爆散させる気だぞ、あの【魔王】は」
マーラの言葉に嘘はない。
レンジはそれを知っているからこそ、自分達の目標と今やるべきことの二つを瞬時に導き出した。
「このゲームは多分、止められない。だから、僕達が【四望遊戯】をクリアして、【魔石】を破壊し、【魔王】を殺す。全部、総取りするよ」
「ですね、この場で情報を出したと言って皆が信じる訳もないですから、ここは直ぐにゲームを終わらせるのが最優先で行きましょう」
レンジ達の方針が決まった直後、クローラーは不適な笑みを見せると混沌蠢くゲーム、【四望遊戯】の開始を宣言する。
「それでは【冒険者】の皆々様、【四望遊戯】を開始します。お楽しみください」
その言葉と同時に、【池袋】の迷宮の地面が崩れ始めと多くの【冒険者】を巻き込みながら、【第四戯魔王】の迷宮へと誘われる。
「ドローン起動! それじゃあ、開始します! はーい! 流星の皆! おはこんばんわ~! 星空ミリアの配信にようこそ~! 今日は話題の【池袋】に潜ります!」
ミリアの元気な挨拶と共に、レンジ達は地面の崩落による自由落下に身を任せ、【魔王】の迷宮へと挑む。
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