四話 魔王、S級冒険者と相対する①
【特集】
【今を駆けるS級冒険者! 星空ミリア特集!】
星空ミリアとは?
S級冒険者であり、つい先日、チャンネル登録者が200万人を突破した今を駆けるトップ配信者!
水色の髪を青空を思わせるようでありながら大きめの星の紋様が刻まれた眼を携えた剣術使いで、5人のS級冒険者の中でも最速でS級となった実力を兼ね備えています!
登録者100万人は最年少での到達で、無名の剣術をたった1人で最強との名高い地位まで押し上げたことはあまりにも有名です!
S級冒険者として様々な【スキル】を有しており、特に注目すべきは【ユニークスキル】の【光導拾弍式抜刀術】は必見!
それ以外にも様々な文字で星空ミリアが讃えられていながらも、その中でも一際、目立つ言葉があった。
S級冒険者としても随一の実力者、最強の称号に最も近い、と。
「単刀直入に聞きます。誰ですか、その女」
そう称された彼女が師であったレンジと復活した【魔王】マーラの目の前に現れ、殺気を向けていた。
「えーと? この子のことかい?」
レンジは何故、ミリアが怒っているのか理解出来ず、マーラを指差しで確認した。
「ひでぇな、お兄ちゃん。弟子に俺のこと喋ってなかったのかよ」
(え?! 待て待て、マーラ。何言ってるの?! お兄ちゃんって?! というか、コイツ、今、平然と嘘ついたよな?! つけないんじゃないじゃないか?!)
自分のことを兄と呼び出したマーラにレンジは困惑して、目を逸らす。一方、ミリアは兄という言葉を聞き、肩を震わした。
「兄、師匠の親族ですか? 何処の、何の、何方ですか? 教えて下さい」
ミリアは笑っていた。
その笑みには殺意が込められており、彼らの一挙手一投足全てを捉えていた。
「俺の名前は、肋屋カーマ。お兄ちゃんの腹違いの妹だよ」
マーラは自身をカーマと名乗り、レンジの妹を自称した。レンジは、今、この状況を乗り切るには、それに乗っかるしかないと判断する。
「そ、そうなんだよ! ミリア! 実は、うちの父親が亡くなったらしくて、僕に連絡の一つもくれなかったんだけど、この子が急に来て、伝えてくれたんだ!」
レンジの言葉、これには事実が紛れ込んでいる。
それはつい先日、本当の生みの親である父親が亡くなったと言うこと。
幼い自分を捨てた両親など、レンジにとって顔も覚えていない他人であったが、それをうまく使った嘘を、マーラにふと合わせてしまった。
(てか、何で僕、ミリアに嘘ついたんだ?! やましいことみたいじゃないか!?)
レンジは内心でそんなことを思いながら、ミリアの出方を伺う。
「そうなのですね、師匠。残念でしたね」
ミリアは張り付いた笑顔を一切変えず、そう言うとレンジは、その場を何とか乗り切ったと錯覚してしまった。
「そう、言ってもらえると、助かるよ」
「師匠、今の残念の意図は、僕に嘘をついたことへの「残念です」の意です。あんな動画見せられて、その嘘を僕が信じると思います?」
「へ?」
その瞬間、ミリアの表情から笑みは消えた。鞘を握りしめ、前にするとレンジ同様の抜刀の準備を整え、殺意を見せる。
それは正しく、レンジの剣術、【無明一刀流】の逆手抜刀の構えであり、ミリアは感情の全てをマーラに向ける。
「ミリアさん?!」
レンジが声を上げたと同時に、マーラの目の前に、ミリアが詰め寄り、彼女達の刀と剣の刃が打つかり合い、火花を散らした。
「あは! お前、殺意剥き出しでかかって来るとは、恐れ入ったな!」
マーラは【波旬】によって、ミリアの斬撃を防ぎながら、彼女を煽った。
その煽りに対して、ミリアは一切、興味を示さずに再び得物を鞘に納めると、すぐに構え直した。
「ミリアさん?! 待って待って!? ここは迷宮じゃないんだよ?! こんなところで戦ったら、垢BANされちゃうって!」
「ええ、そうですね。なので、場所を移します」
ミリアはレンジの言葉を聞いたのに抜刀の構えを解かず、再びマーラへ斬撃をぶつける。
マーラはその一撃を、受けると彼女の体が簡単に吹き飛ばされてしまった。
(ふむ? レンジより、遅い剣だと思っていたが、なるほどそう言うことか)
吹き飛ばされた先、その背後には先ほど自分が登ってきたはずの迷宮の穴があり、それを見て、ミリアの場所を移すと言う言葉の意味を理解した。
「ははっ! そう簡単に落とされてたまるか!」
マーラは【権能】を使い、穴に落とされる手前で、空に浮くとミリアへと視線を向ける。
ただ、その先に、彼女の姿は何処にもなかった。
「ほう、何処だ?」
漏れ出るほどの殺気を漂わせていたはずのミリアが突然、気配を完全に消したことに、マーラは少々の驚き、辺りを見渡す。
マーラの視線は周りだけに向けられており、主人によって全自動防御の命を受けていた【波旬】だけが、一瞬だけ、感じた殺気に気付き、その刃を空へと動かした。
「【波旬】? まさか」
そして、その動きに気付いた、マーラは、自身の視線を空へと向けると、上空より、ミリアが流星の様に落ちて来た。
蒼い光を纏いながら、落下し、叩き込もうとするのは
「無明一刀流、流」
自由落下させると同時に、【魔力】を全身に込めて放たれるのは威力に特化させた必殺の抜刀術。
上空から真っ直ぐに捉えた獲物へと直進し、【波旬】はそれを防ごうとミリアの放つ斬撃に刃を打つけ合う。
迷宮の穴に、マーラとミリアの2人は落下するとレンジはたった1人、その場に残された、唖然としていた。
「どうなってるの?! この状況?! と言うよりも、止めないと行けないよね?! これ?!」
レンジがそんな叫びを上げる一方で、ミリアとマーラは迷宮の穴の中へと、落下していた。
マーラが下で、ミリアが上、下敷きなれば間違いなく、その衝撃で圧死する。
急転直下する中、この状況でマーラはミリアに喋りかけた。
「あはは! お前さん、狂れてるな!」
「殺す」
殺意のみを向けるミリアに対して、マーラは少しつまらないと感じた。だからなのか、彼女から、それ以外の感情を引き出すために、遊び感覚でミリアにとある問いかけをする。
「なぁ、ミリアお姉ちゃん! 質問あんだけど!」
「殺す」
「ミリアお姉ちゃんってさ! お兄ちゃんのこと、好き?」
「……」
その言葉を聞いた途端、殺意以外の感情をミリアは露わにする。
最初に訪れたのは、顔を真っ赤に染め上げ、図星であったことを示す様な羞恥の表情。
そして、それをすぐに切り替え見せたのは怒り。
最後に至ったのは怒りであった。
ミリアは憤怒した。
自分を惑わそうとして来る、悪魔、自分が横に立つはずの師匠の横に平然と立ち並ぶ女狐に。
「…が」
「え? 何々、聞こえなーい!」
迷宮の地面まで残り、数メートル。
「羽虫、が」
「口、悪いね!」
最後の言葉を聞いた瞬間、マーラは【権能】を使い、ミリアとの撃ち合いを止めると、上下を一瞬にして逆転させた。
ミリアが下敷きになる様にあえて、マーラはギリギリで空に浮くと地面へと叩きつけた彼女へ、視線を送る。
「さてさて、ミリアお姉ちゃんは無事かな~?」
第六天魔王としての力はある程度失えど、その実力に変化なし。
マーラの興味は、今はミリアという人間が見せた激情に向いており、彼女が示した視線、感情、それら全てが自分にとっては最高の贄であった。
"ドゴン"と鈍い音が鳴り響き、小さい迷宮の地面が揺れ、砂埃が舞う中、鋭い眼光がマーラの背筋を凍らせた。
(ほう、また、殺気の飛ばし方が変わったな。あはは!!!! 良いなぁ! もっと魅せてくれ! 星空ミリアァ!!!!)
マーラの思いに応えようとはしていないが、それでも星空ミリアはこの瞬間瞬間のやり取りの中で、とある結論に辿り着いていた。
それは目の前に浮く、カーマを名乗る羽虫を、切り落とさねばならないと。
構えは普段同様の逆手抜刀。
ただ、構えを取ると同時に、ミリアは己が全てを持ってレンジという唯一無二の師に纏わりつく、悪を切り裂くために叫んだ。
「最初から全力。【ユニークスキル】、【光導拾弍式抜刀術】、On The Stage!」
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