三十九話 おじさん、注目を浴びる②
【魔王】討伐より、10日後。
レンジが自分の経営しているマンションに住み始めて、少しした頃。
ミリアは危惧していた。
マーラとレンジが2人で暮らしていることに。
(僕は確かに一室を準備しました。でも、結果として、カーマの監視役として師匠の一室、同じ場所に住んでいる。僕のマンションなのに。これは直談判すべきでは? というよりも、師匠も僕に連絡をすべきでは?! 遊びにくるべきでしょ! 僕が居るのに!)
そんなことを考え、ミリアはレンジの部屋の合鍵を使って、勝手に侵入した。
バーンという音共に扉が開かれるとそこにはPC画面で何かの文章を読む、レンジとそれにダル絡みするマーラの姿があった。
「師匠! 勝手に失礼します!」
ミリアが突然、現れたことでレンジはそちらに驚くと思わず声を上げた。
「え?! ミ、ミリア?! 何で部屋に?!」
「それは一旦置いておいて! 師匠! 何で、僕の家に遊びに来てくれないんですか!」
(一旦、置いておくには気になりすぎるだろ。勝手に部屋に入り込まれてるレンジのことを考えてあげろよ)
マーラはそんなことを考えるも面白いからいいかと彼らのやり取りを眺めることにした。
「え、ええ!? 僕が、ミリアのところに行くなんて、ほら、あんまりよろしくないというか」
「何故ですか」
ミリアは自分から勝手にレンジの手を掴みに行くと言い放った後から以前とは比べ物にならないほど、グイグイと彼へとアプローチが過激になっていた。
「え! な、なんでかって言うと、ほら、僕っていい歳したおじさんだし、ミリアみたいな若い子、しかも、女性の部屋に入るのはちょっと」
「そんな日和った考えでいられたんですね」
(日和った考えか? それ。そんにしても、ミリアはすごいパワフルだな。俺がレンジでも流石にこの引っ張り方は同情するよ)
それでもマーラは口を出さずにその様子を楽しげに眺めた。
「ひ、日和ってなんかないよ?! 僕は常識的なことを述べたまでで」
あまりにもミリアがグイグイと来るあまり、レンジは何故こうも自分が追い詰められているのか理解出来ず、目を泳がせる。
「あーもう、分かりました。良いですよ、そうやって師匠は僕の気持ちを理解してくれないんだ。それなら僕も僕で勝手にします。今日はここで夕飯を頂きます。拒否権はございません」
「そ、それなら全然良いけど、むしろ、僕も一室借りてる身としてはそれくらいの恩返しはさせてほしいな」
レンジの意外な返答にミリアは少し落ち着いたのか、大きく深呼吸をして、自分を落ち着けた。
「すみません、少々興奮してしまいました。申し訳ございません」
「いや、いいよ! 僕もミリアへの配慮が足りなかったから、ごめんね」
ドギマギとした雰囲気が漂う中、その空気に飽きたマーラはそれを突き破るために口を開く。
「それよりもよー、レンジ、お前、さっき来たDMの内容、ミリアに伝えなくていいのか?」
「そうだった! ミリア! これを見てくれないか?」
マーラに言われた言葉で、レンジは自分のTXアカウントに送られて来た、DMの内容をミリアに伝えるため、画面に映されたDMの内容を彼女に見せた。
【招待状 肋屋レンジ様、貴方を【第四戯魔王】の迷宮に誘います。送り主、【第四戯魔王マキナ】より】
そこには【魔王】からの迷宮への招待状であり、あまりにも骨董無形な内容にミリアはパチリパチリと瞼を動かすだけになっていた。
「これなんだけどさ、僕以外にも色んな人に送られてるらしい」
レンジはそう言うとTXのトレンドにある#招待状の情報をミリアへと見せる。
『悲報 【魔王】から招待状届く。これ自分だけじゃなくて色んな人に送られてるらしい』
『基本、誰ともDMしないのに急に通知きたからビックリして開いたら招待状とか言う意味不明なの届いてた。しかも、【魔王】って最近、殺された奴じゃないの? 名前が違うから、正直怖い』
『イタズラにしては、規模デカすぎて流石に本当っぽいな。誰だか知らんがマジでこういうのよせよ。今は、みんな敏感な時代なんだぞ?』
『ごめん、同級会には行けません。いま、招待状を受け取っています。この国に現れた迷宮を、私は踏破します。本当は、あの頃が恋しいけれど、でも……今はもう少しだけ、知らないふりをします。私の踏破する迷宮も、きっといつか、誰かの平和のためになるから』
その他にも様々な投稿が並ぶも、そのどれもが【魔王】からの招待状に関する物であり、ミリアはそれを確認次第、直ぐにマーラへと声をかけた。
「説明しなさい、カーマ。どうせ、貴方の元同僚でしょう。こういうことをする奴なんですか?」
「雑な振り方どうも、ミリアさん。結果だけ、伝えるなら、こんなことをする【魔王】じゃない、それが答えだ。だが、コイツが名乗ってる【第四戯魔王マキナ】ってのは本当だ」
マーラは腕を組み、プカプカと宙に浮きながらミリアの問いに答えるとそれに対して、レンジが反応を示した。
「【第四戯魔王マキナ】って確か、前いって奴だよな? えーと、なんだったっけ?」
「【第四戯魔王、支配のマキナ】、だ。【魔王】の中で最も合理主義で、最も機械的な【魔王】だ」
マーラの説明だけを聞くと、たしかに、招待状などを送るような【魔王】ではないとレンジとミリアは感じた。
「と、なれば、だ。俺達がやることは簡単。行くだろ? 【魔王】殺し!」
マーラがウキウキしながらそう言い放つも、レンジはそれに対して、渋る様な反応を見せる。
「オイオイ、どうしたんだよ、レンジ。なんでそんなに乗り気じゃないんだ?」
「そりゃだってな。今、僕達はちょっとした有名人だ。軽率に行動して、【魔王】の迷宮に人が集まったりしたら、どうするんだって話だ」
「それならば、僕がなんとか出来ますよ」
マーラとの会話にミリアは入り込むとレンジの心配に対しての、フォローを入れた。
「僕がWAAに報告すれば、立ち入り禁止に出来るはずです」
「な、なるほど、それなら行けるのかな?」
「よっし! なら、決まりだな! レンジ~、DMに来てるリンク開けよー」
マーラはレンジのPC画面を勝手に弄り、DMの下に届いていたリンクをクリックする。
「あ! オイ!? ウィルス入ってたらどうするんだよ?!」
「そんなん知らねえよー。大体、【魔王】がネットウィルスなんで使うか! ほら、見てみろ、なんか送られて来たぞ!」
マーラが勝手に開いたリンクは、マップの座標であり、そこはとある地域を指していた。
「ここは、何処だ?」
マーラは映された座標の位置を知らず、頭を傾げるとミリアはそれを見て、少しだけ顔を歪ませた。
「【池袋】、ですか。よりによって、なんでこんなところを」
【娯楽都市迷宮池袋】、そこはサブカル跋扈し、迷宮の中でも最も人気の高いとされている場所。
【第四戯魔王マキナ】が誘うのは、【冒険者】集う【池袋】。
そこを巡る、レンジ達の新たな戦いの幕を開けるのであった。
感想、レビューいつもありがとうございます!
嬉しくて狂喜乱舞です!
続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!
評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます!




