三十六話 result①
【第五獣魔王ケルヌンノス】、肋屋レンジ、星空ミリア、アルベール・ペンドラゴンの3人によって、討たれた。
ミリアとアルベールが対峙していた獣壱の魔戦は主人を失ったことで、その肉体を維持出来ずに崩れ去る。
「師匠! やりましたか!」
ミリアは崩れ落ちる魔獣達をみて、レンジの勝利を確信して、急いで彼の元へと向かった。
一方、レンジは過集中状態より、ゆっくりと呼吸をしながら、普段の自分へと戻っていく。
(何とか、今回は倒れずに済んだのかな。それにしても、ケルヌンノス、強かった。【魔王】として、マーラに並ぶほど)
レンジはそんなことを考えながら、呼吸をしつつ、ふとした疑問が湧いた。
「何で、僕、マーラの【権能】が使えたんだ?」
そう呟いた時、その背後より、疑問の原因である少女がヌルリと姿を現した。
「俺と【契約】してるからな」
「はぁ? どういうことだ? まー、えーと、いや、カーマ」
カメラ型ドローンは未だに回っており、会話を拾っている可能性もあるため、カーマと呼んだ。
「俺はお前と勝手に【契約】した。俺が復活するまで、レンジは俺を殺せない。代わりに、俺はレンジに協力し、その力を存分に貸し与えるし、ミリアを危険な目に遭わせない」
「は、はぁ?! それ勝手に僕は【契約】させられてるのかい?! 一体、どうやって?!」
「お前が迷宮から帰って目を覚ました直後だ。思い返してみろ」
そう言われるとレンジは記憶を辿り、自分が目を覚ましたタイミングの会話を思い返した。
「ああ、レンジ。これは【契約】だ。俺達は一連托生。お前は俺を殺すまで、俺はお前を殺すまで、そこまで仲良くしよう、俺の英雄」
マーラの言葉をピンポイントで思い出すとレンジは思わずを声を上げた。
「あ、アレかよ?! じゃ、じゃあ、僕はお前を今は殺せないってことか?!」
「おう!!!! その通りだ!!!! まぁ、最初から俺達は俺を撒き餌にして、他の【魔王】を討つ筈だったろ」
「いや、それはそうだけど。僕は勝手に【契約】なんて物を結ばされてることに怒っているんだ」
レンジは勝手に結ぶされた【契約】に対して、抵抗しようとしたが、それに対してマーラはニヤニヤとしながら答えた。
「【契約】がなかったら、レンジ、お前は死んでたんだぞ?」
「それは…」
マーラの言葉に、レンジは口篭ってしまう。
確かに、マーラの【権能】を使用出来たからこそ、ケルヌンノスの生命よ、虚空に眠れを打ち破れた。
結果としては、マーラの【契約】のおかげとも言え、レンジはぐぬぬと口を噤む。
「まぁ、俺のおかげでもあるが、お前のおかげでもある。俺同等に【権能】を使いこなせなければ、ケルヌンノスを殺せない。それをお前はやってのけた。それ即ち、お前は俺と同等に【権能】を使いこなしたってことだ」
マーラは嬉しそうにニヤニヤとしながら、そういうとレンジの背後に横たわるケルヌンノスへと近付いた。
肉体が斜めから逆袈裟斬りにされており、死に絶えたケルヌンノスの死体にマーラは自らの腕を前にした。
(満足のいく結果だったか? ケルヌンノス。お前は俺を嫌ったが俺はお前をそんなに嫌ってなかったんだけどな)
そんなことを考えていると左足の一本が突然、ケルヌンノスの死体から浮かび上がり、マーラはそれを自分の手で握りしめた。
「俺の左脚か。そんじゃまあ、頂くか!」
マーラはレンジの目の前でその左脚を、自分よりも少し小さなくらいの肉塊を食べ始めた。
「ちょちょちょ!?! カーマ?!」
レンジはドローン型カメラを塞ぐも既にその姿をカメラが映してしまっていた。
「ふー! やっぱり、自分の肉は不味いわ。食えたもんじゃない」
いつの間にか自分の左脚を丸齧りし終えた、マーラは焦るレンジをみて、不思議そうにその姿を眺めた。
「あ? どうしたんだ? そんなに焦って」
「いや、自分の足だからってそれを食べる姿を映すのはちょっと」
「【魔王】の力でチョチョイと弄ってるから、俺が【魔王】ということに関しての情報は全部、隠匿される様にしてあるから大丈夫だぞ」
「そうか、【魔王】の力か。なら出来るか。仕方ない仕方ない」
レンジはマーラが見せる【魔王】の万能な力を見せる時には思考を停止して、そういう事が出来るとだけ理解するようにしていた。
そんなやりとりをしている中、レンジ達の元にミリアが現れた。
「師匠!!!! 流石ですね!!!!」
ミリアは嬉しそうに彼に近寄るも既に、その近くにいたマーラを見て、露骨に嫌そうな表情を見せた。
「おう!!!! ミリア、ご苦労だったな!」
「別に、あなたのためには戦ってません」
ニコニコとするマーラとは逆に師であるレンジと一緒に勝利を分かち合いたいのに邪魔者がいるせいでそれが出来ずに嫌な顔をするミリア。
そんな2人を前にして、レンジはようやくひと息をつけたのか、その場に座り込んだ。
「大丈夫ですか?! 師匠!?」
ミリアが急いでレンジの側に寄った。
「ああ、大丈夫だよ、ミリア。それにしてもよく、耐えてくれたね。アルベールにもお礼を言わないと」
「アイツならもう帰りましたよ」
「ええ?! そんなに急いで帰ったの?!」
アルベール・ペンドラゴン、彼は仕事を終えた途端にミリアに向けて、お辞儀をして、すぐに姿を消していた。
「ええ、アイツは昔からそういう奴なんです。でも、助かりました。彼が居てくれたおかげで、僕も苦戦せずにあの巨大な魔獣達に対応できましたから」
ミリアはそういうとレンジへと笑顔を向けた。その純粋な微笑みを前にして、レンジもまた、口角を少し上げると【魔王】殺しを再び成した実感が込み上げてきた。
その時、ケルヌンノスの肉体が光り始めた。
「何だ?! カーマ?! 何が起きてる!?」
レンジはマーラに尋ねるとそれに対して、彼女は嬉しそうに応えた。
「何が起きてる? そりゃあ、革命だよ」
「はぁ?! どういうことだよ?!」
「【魔王】を殺した報酬が今から人類に支払われる。かつて、俺がお前に殺された後、人類は浮遊【スキル】を手に入れた! 【魔王】を殺せば、人類は新たに進化の一歩を踏み出せる。それが俺達、【魔王】とこの世界の人間のゲームの報酬だ! 何が起きるか、何が齎せられるか! それは今からのお楽しみ! それじゃあ、行ってみよう!!!! 報酬! 開放!!!!」
マーラは意気揚々と喋る中、レンジとミリアは今から何が起ころうとしているのか理解出来ず、戸惑いの表情を浮かべる。
ケルヌンノスの死体が輝きは突如として、その場にいた全員を光で包み込むとそれは【地下都市迷宮渋谷】から、この世界全てを飲み込んだ。
【第五獣魔王、極刑なるケルヌンノス】、それが齎す人類への報酬とは?




