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元伝説の迷宮踏破者、今は過疎配信おじさん ――魔王が幼女に転生して来たので、再び迷宮の最深部へ  作者:
一章 おじさん、宿敵と再開する

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三十一話 おじさん、第五獣魔王に挑む⑨

 【魔王】の奥の手、【(ボックス)】。

 それは【権能】を自らの具現化であり、最も濃縮された【魔力】の込められた箱。


 レンジはかつて、その存在をマーラ全盛の時代に見せつけられていた。


 【第六天魔王マーラ】が見せた【(ボックス)】、それはこの世全てを巻き込む災悪そのもの。


 空を濁らせ、世界を灰色に染め上げた光景をレンジは思い出すと、直ぐに【夜叉(ヤシャ)】を握りしめ、ケルヌンノスに向けて、攻撃を放とうとした。


 だが、それよりも速く、ケルヌンノスは【(ボックス)】を地面に落とす。


 レンジの目の前に落ちた【(ボックス)】より、出でる泥から生まれ落ちるのは、【権能】の最も濃い部分を請け負った11の魔獣。


 天井を破壊し、11の巨大な魔獣達が顕れるとそれらは全てが同時に、叫び声を上げた。


「「「「「「「「「「「ギャオォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!」」」」」」」」」」」


 耳を裂く様な叫び声が壊れた迷宮(ダンジョン)に鳴り響くと【権能】、絶対魔獣戦線(ティアマト・ライン)の最大解放を行うため、魔獣達の隊名をケルヌンノスは呟く。


獣壱の魔戦(エヌマ・エリシュ)


 A国の軍隊を撃ち倒した地獄、それが今、再びこの地に再現される。


 それを前にして、レンジは動じることなく、【夜叉(ヤシャ)】を握りしめ、逆手抜刀の型を構えた。


(まぁ、ここまでは予想通り。ここからが本番だな。気合い入れ直せ、レンジ。お前が一番知ってるだろう? 【魔王】の本番はこれからだ)


 ケルヌンノスへとレンジは視線を向けていたその時、【魔導】戦艦を喰らった口が異様に巨大な竜、凶竜(ウシュムガル)が、彼の真上から大きく口を開いて落下して来た。


「オイオイ!!!!?」


 流石に、予想していなかったのか、レンジはそれを避けようとケルヌンノスに背を向けて、走り出す。


 だが、そんなレンジに対して、他の魔獣達が飛び掛かり、彼が攻撃の範囲から外れまいと邪魔をして来た。


 襲い来る魔獣達は簡単に蹴散らせたが、上空より、レンジを喰らおうとする凶竜(ウシュムガル)が広げた口の範囲からは逃れることが出来ず、彼は竜の口に丸呑みにされてしまった。


(やっぱり、品のねえ【権能】だな、ケルヌンノス。巨大な魔獣を出しての物量攻撃。ベオウルフが居なけりゃ自分がいた《《世界》》ですら征服できなかった訳だ。レンジ~、そんなヤツに喰われた真似はしてないでとっとと出てこいよ)


 一瞬にして形成を逆転されてしまったレンジの姿を見て、これくらいなら彼は問題ないとタカを括っていたマーラは自身の身を隠しながら、その光景を眺めていた。


 レンジを丸呑みしたのか凶竜(ウシュムガル)は口を広げ、雄叫びを上げた瞬間、その首から黒き雷が走った。


 凶竜(ウシュムガル)の首が突如、断たれるとその断面からレンジは傷一つ無く、姿を現す。


 そらを目の当たりにしま他の魔獣達は仲間がやられたことに激昂し、彼に向かって一斉に動き出した。


(1体1体はたしかにデカくて早いだけ。でも、それが11体も揃えば、十分すぎる戦力になる。捌き切れるか? 1人で)


 レンジですらも一斉にこの数を相手するのはどうなるか分からないと感じたその時、巨大な魔獣達が現れた影響で破壊された天井から一つの光が舞い降りる。


「【ユニークスキル】、【光導拾弍式抜刀術ゾディアック・ブレイドアーツ】、On The Stage!」


 蒼き閃光は星の瞬きと共にその地に現れるたのは、星空ミリア。


 背後に立つレンジに目を向けず、走り来る魔獣達に対して、ミリアは怒りの一撃をお見舞いした。


「【光導拾弍式抜刀術ゾディアック・ブレイドアーツ】、山羊(カプリコーン)


 抜刀と共に放たれるのは無数の星の輝きにより、生まれた山羊を模した【魔力】の塊の大群。


 それらが魔獣に向けて放たれ、山羊は打つかる直前に自らの体を分解し、星の輝きとなるとケルヌンノスの自慢の軍隊全てに切り跡を刻んだ。


 その一撃は、予想以上に深い切り跡となっており、魔獣達は動きを鈍らせ、大きな隙を作るとミリアはその隙に、レンジへと背を向けたまま喋りかけた。


「何で、僕だけを置いて行ったんですか」


 その声は怒りに満ちており、レンジはそんなミリアの言葉に普段とは違い、落ち着いた声で答えた。


「ごめん。でも、僕はもうミリアを傷つけちゃ」


「そんなこと! 僕は何度も経験してます! それが理由で、師匠は僕を置いて行ったんですか?」


「…ああ、そうだよ。僕は、ミリアが傷ついて欲しくなかったから。ミリアが来るよりも速くここに来て、【魔王】を殺したかったんだ」


 レンジは嘘偽りなく事実を伝える。

 自分の弟子は立派で、強くて頼りになる。だからこそ、【魔王】討伐の一員として、WAAに選ばれた。


 だが、レンジはそんなミリアに傷ついて欲しくない、これ以上、危険な目に遭って欲しくない、そんな気持ちで、自らのエゴで彼女を突き離そうとした。


「あの時、僕は、師匠が僕の手を握ってくれた事が嬉しかったんですよ」


 ミリアの声を聞いても、レンジの覚悟は変わらない。彼女を突き放すために、自分の覚悟を知ってもらうために、冷たい言葉を立てようとする。


「…ごめん。それは今回で」


 レンジなミリアを突き放そうとしたその時、その言葉の流れを真っ二つに断ち切るために彼女は大きな声で宣言をした。


「なので! 僕はこれから勝手に師匠の手を掴みに行きます」


「…は? え?」


 予想外の台詞(セリフ)にレンジは思わず、言葉を忘れた。


 緊迫する状況の中でも、ミリアはレンジへとその真意を伝えるために、彼の方向に顔を向け、詰め寄るとその手を握り締めて、再び口を開く。


「僕は、たしかに弱いです。師匠にとって、僕はまだ、未熟な星空ミリアなのかも知れません。なので、僕は勝手に師匠の手を掴んで離しません」


「…」


「僕は師匠が【魔王】を殺すなら、勝手に一緒に戦います。横に立てなくても良い。背後から、全力で、貴方に追い付くために、その背を全力で追わせてもらいます」


 ミリアはそう言うとニッと笑顔を浮かべる。その眩い笑顔は普段とは違った星空モチーフの衣装と合わせた結果なのか、ミリアを少しだけ大人びて見せた。



(そうか。僕はミリアを、まだ、勝手に弟子の時のままだと思ってた。そうだよな。ミリアは立派にこの世界を生き抜いてきた1人の人間なんだ。そんな彼女を僕は…)


 レンジは彼女の言葉に動かされたのか、握られていた、その手を強く握り返すと大きく深呼吸をして、彼女に謝罪した。


「ごめん、ミリア。僕は君をまだ守るべき子どもだと思ってた。でも、君は僕が思っているよりもずっと強くて、ずっと立派だったんだね」


「別に、立派じゃないですよ。僕は師匠より弱いんで。それじゃあ、まぁ、敵さんも待っているので、そろそろ本番(ステージ)に戻りますか! 師匠!」


 ミリアがそう言い終えるとレンジも覚悟を決めたのか、彼らは2人同時に前を向く。


 そこには切り傷が再生した11の魔獣達が今にでも飛び掛かる寸前となっていたが、そんな彼らに対して、【魔王】はあえて、足を止めることを命じた。


 何故、ケルヌンノスは攻撃を止めたのか?

 それはレンジとミリアが話す姿を何故か、自分とベオウルフの関係を重ねてしまい、彼らの会話を聞き入ってしまったから。


 かつて、孤独の自分に手を差し伸べてくれた唯一の人間との会話を思い出してしまった故に、ケルヌンノスは彼らへの攻撃を少しの間、止めた。


「肋屋レンジ、お前にとって大切な人間なんだな?」


 ケルヌンノスはレンジに突如として、喋りかけると彼はそれに対して、背負っていた重荷が降りたのか、清々しい気持ちで返事をした。


「ああ、そうだよ! 僕の大切で、立派な弟子だ!」


 ケルヌンノスという【魔王】に対して、ミリアの存在が知られれば間違いなく、自分の弱点となってしまうこともあるとレンジは理解している。


 理解しているからこそ、ミリアの強さを信じて、レンジはその答えを出した。


 その答えを聞き、ケルヌンノスは怒りと憎しみだけを露わにしていた彼女の表情から一瞬だけ、柔らかくなる。だが、すぐにそれは切り替わり、彼らに向けて、自らの目的を宣言した。


「そうか。なら、お前達はまとめて殺してやる。1人ぼっちは、寂しいからな! 【第五獣魔王ケルヌンノス】! 人間よ! 私という絶望を振り払ってみろ!」


 【魔王】として、ケルヌンノスは否定する。

 未来を拒み、先を否定する。

 それこそが【魔王】の性質であり、ベオウルフへの手向の弔いであるため。


 【魔王】討伐戦、第二ラウンドのゴングがその言葉と共に鳴り響かせた。

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