二十四話 おじさん、第五獣魔王に挑む②
「我が名は、【第五獣魔王ケルヌンノス】。私は、お前達、人類に宣戦布告する。これより3日後、全ての迷宮に私が生み出した魔物達を解き放つ。それらは迷宮と言う名の檻を破壊し、お前達が住まう世界を喰らい尽くす。幸福を享受できるのは残り3日。悔いのない、終末を遅れ」
両側に角を生やし、真紅の眼と真っ白な髪を長く伸ばした獣達の女王、【第五獣魔王ケルヌンノス】がそう言い切ると同時にカメラが破壊される音共に動画が終了する。
とある【冒険者】が迷宮探索中に襲われると行方不明となる。それが配信に使っていたカメラ型ドローンから、突如として現れたケルヌンノスは人類への宣戦布告を行い、その動画は物凄い勢いで拡散された。
「てな訳で、残り2日後に人類は滅びる」
病室の中で、マーラが見せた動画に流石のレンジも唖然とした。
レンジが寝ていた3日の間に世界は揺れ動いており、その事実を受け入れるまでに時間がかかった。
「ど、どうしよう?! まー、いや!? カーマ!? このままだとあのケルヌンノスってのに全部、壊されるのか?!」
「落ち着けよ~、レンジ。たしかに、現状は最悪の状況だ。だけど、それだけ相手もなりふり構ってられないってことでもある。逆を突こうぜ。今ならアイツを殺せる筈だ」
マーラは不敵に微笑むと、彼女はスマホを操作し、その画面をレンジへと見せた。
そこには【魔王】の宣戦布告に対して、WAAの対策として、S級【冒険者】2名の派遣を決定したとされ記載があった。
「コイツらに乗じて俺達は【魔王】を狩る」
マーラの作戦は謂わば漁夫の利の作戦であり、レンジはそれを聞いて怪訝な表情を浮かべる。
「いや、僕達が出る幕なんてないと思う。S級【冒険者】が2人も派遣される。そこに僕が行ったところで足を引っ張るだけだ」
「オイオイ、オイオイオイオイ、レンジ。それは無しだ。俺達は【魔王】を殺すんだろう? 今、降りるのは無しだろ」
「降りる降りないじゃない。僕が【魔王】を殺そうとすれば、ミリアが危険な目に遭う。なら、僕は」
「ちなみに、派遣されるS級【冒険者】はアルベールとミリアだぞ」
「…は?」
マーラの握るスマホを取り上げ、その画面をスクロールさせるとそこには星空ミリアとアルベール・ペンドラゴンとの書き記されていた。
「何で? いや、何で? ミリアは、脚を切られて、僕と同じなんじゃ?」
「さっき言ったろ。ミリアはお前より早く目を覚ましたって」
「いや、だとしても、歩けるなんてそんな」
「今の回復魔法なら、そんくらい他愛無いらしいぜ。一応、心配して見に行ったけど、ピンピンしてた」
ミリアの状況を伝えられ、レンジは呆気に取られているもそれに追い打ちをかけるようにマーラは口を開く。
「レンジ、お前が【魔王】殺しを止めても、ミリアがそれに巻き込まれる保証はない。だが! だが、お前が殺せば、どうだ? ミリアを巻き込むよりも早く、【魔王】を殺せば、アイツの負担を減らせるんじゃないか?」
マーラが微笑みは、天真爛漫であったが、それ以上に邪悪で、悪辣な物で満ちており、レンジを試しているかのようであった。
「…」
レンジはその沈黙の後、とある覚悟を決めた。ミリアを、可愛い唯一の愛弟子を守るために、かつて【魔王】を殺したあの頃を取り戻し、修羅となることを。
「レンジ~、黙ってるだけじゃ分からないぞ」
マーラは煽る様にそういうと、レンジは彼女を睨みながら、声を上げた。
「マーラ、僕はお前をまた、必ず殺す」
「そうかそうか、それは結構。そのためには他の【魔王】から体を奪い返さないとなぁ」
「僕は、お前に協力する。だから、お前も僕に協力しろ。ミリアを危険な目に遭わせない。それが僕からの条件だ」
レンジは先ほどまでの戦意の失った表情とは打って変わって、別にのようになっており、マーラはそれを見て悦びの表情を見せた。
「ああ、レンジ。これは【契約】だ。俺達は一連托生。お前は俺を殺すまで、俺はお前を殺すまで、そこまで仲良くしよう、俺の英雄」
マーラはレンジの前に左手を出すと彼はそれを左手で握手し返す。
「よし! 【契約】成立だ。それじゃあ、早速動き出そうと言いたいところだが、お前、ベオウルフとの戦闘で武器壊しただろ」
マーラの言葉にハッとなり、ベッド近くに置かれていた自分の愛刀を手に取る。
それを鞘から抜くと刀の刃が溶けていた。
「はぁー、これどうするかな」
レンジの得物は、もう10年近く使っており、手によく馴染んでいた物。
逆手の抜刀という異形の剣術である無明一刀流を成立させるには、自分の握る獲物への理解が大切である。得物を長く使い続ければ使い続けるほど、その刃渡りや間合いれの理解が深まり、それらの要因が重なり合いあうことで、完璧な形での逆手抜刀を可能としており、レンジにとって今、使い続けた、この刀こそが最適解であった。
「んだよ、他に刀なんて幾らでもあるだろ」
「いや、そういう訳には行かないんだよ。無明一刀流はお前が思ってるよりも繊細なんだ。残り1日で他の刀を出来る限る馴染ませるってなると間に合うかな?」
レンジが頭を悩ませているとベッドの近くに置いてあった彼のスマホが点滅し、震え始めた。
「レンジ、電話鳴ってるぞ」
「今はそれどころじゃ」
「お前が昨日くらいから何回も鳴ってるから出ておいたらどうだ?」
「それを先に言ってくれよ、全く」
スマホの画面を見て、数え切れないほどの不在着信履歴を目にする。
「甘乃目マウラ? えーと、誰だ。クソ、歳のせいで人の名前が思い出せない。えーと、あ! マウラさんって、【Parabellum】の!?」
レンジは人の名前が出てこなかったがなんとか思い出し、スマホの不在着信の履歴からマウラへと連絡をした。
「こんにちは! マウラさん、その、電話何回もかけてもらっちゃってごめんなさい。ちょっと取り込んでて。おーい、マウラさん? えーと? マウラさん?」
レンジはマウラと連絡が着くと挨拶をしたが、何故か、反応がなく、それが心配になった。
「レンジ、か。ようやく、出たな。まぁ、いい。出来た、から、店に来い」
「ん? え? 何が出来たんですか?」
レンジは突然、自分が店に呼ばれたことに驚き、戸惑いを見せる。
彼は完全に忘れていた。
マウラが自分の刀を作ると言っていたことを。
だが、マウラはそんなことは気にしていなかった。
レンジに魅せられた刺激から生み出した自分史上最高の一品を一刻も早く、彼に届けたくなっていた。
「お前、専用の【武器】、だ。あれ、から、寝ずにつくっ、たから、もうげん、かい。すこし、ねる」
スマホが地面に落ち、ゴンという無機質な音が鳴り響く。
「マウラさん?! マウラさん?!」
レンジがマウラを呼ぶ声が彼女の画面から【Parabellum】の店内に鳴り響く。
それに応えるものは居らず、レンジのスマホからは彼女の寝息が聞こえてきた。
「と、とりあえず、【Parabellum】に行こうか。マウラさんが心配だ」
レンジはそう言うと病室にあった自分の服を着て、WAA【東響】本部内にある【Parabellum】へとマーラと共に足を運ぶのであった。
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