十六話 おじさん、渋谷に挑む⑤
【安置】にて、レンジ達3人は休息を取るった後、【魔王】の迷宮攻略についての方針を決めていた。
「【魔王】の迷宮に行くという目標は達成出来ました。ですが、これから僕達はどうやってここを踏破するのか全く分かりません。そもそも、何をすれば踏破となるんですか?」
ミリアは部屋中にある本を読み漁るマーラに尋ねるとそれに対して、彼女はつまらなそうに答えた。
「【魔王】を殺す以外にここの迷宮踏破は出来ない。俺からしてみれば、休み終わったらとっとと外出て【魔王】を殺せばいいんだよ」
適当な返事にミリアは苛立ちを覚え、マーラに声を上げようとしたが、それを予見してか、レンジは彼女の肩をポンと軽く叩く。
「ミリア、落ち着こう。マーラが全部悪いけど、僕もこればかりは助言出来るからさ」
「はぁー、もう分かりました。師匠は何をすればいいのか算段がついているのですか?」
「そうだね。僕は一度、【魔王】の迷宮を踏破してる。だから、それを踏まえた上で攻略するなら、まずは、【魔王】の臣下、幹部達を倒すことが優先だ」
「なるほど? その理由は何ですか?」
ミリアは【魔王】を殺すだけで迷宮を踏破出来るのであれば、最速でそれを目指せば良いのでは? と考えていたからゆえ故に、その理由を尋ねる。
その疑問を解消すべく、レンジは出来るだけ丁寧な返答をした。
「【魔王】の迷宮は言ってしまえば、敵の腹の中。直ぐにでも部下を呼べるし、隙がない。今日だって、【安置】を探す前まで追いかけっこをさせられた。【魔王】と戦っている最中に、また、敵軍が来たらそっちにも目を向けなきゃ行けない。こういうのを防ぐために、【魔王】の幹部達をなるべく倒しておかなきゃダメなんだ」
「なるほど、たしかに敵は少なくした方が良いですね! 勉強になります」
本を読むマーラはレンジ達の会話を聞いてない素振りを取りながらも耳を立てており、かつて自身の臣下であった【四天王】を思い出した。
【侮蔑のフリード】、【簒奪のグリム】、【真実のダリア】、【破壊のクロス】。
自分を殺そうとした勇者達から選び抜いた最強の臣下であり、マーラにとってのお気に入りのおもちゃ。
【四天王】として、【魔王】の臣下として、立ち塞がった者達。
彼ら全員がレンジに殺された時、マーラは少しだけ悲しくなった。
それを思い出すとマーラは何故だか分からないが少しだけノスタルジックな感情が襲い掛かる。
(俺は意外とアイツらのことが好きだったんだな。ただのおもちゃと思っていたにも関わらず、俺と全力で打つかってくれたアイツらのことが。まぁ、だからと言って、俺はレンジを恨んでなんか全くいない。俺は俺を殺したことを恨んでいるのであって、アイツらの弔いなんて全く考えていない。はは! こう見ると、俺達はなんて孤独なんだろうな)
そんなことを考えていると、ミリアはマーラが読んでいた本を取り上げた。
「何すんだよ」
「師匠のおかげで方針も決まりましたし、あなたにも役に立って貰おうと」
「はぁー、生意気だな本当に。まぁ、良いよ。何が知りたいんだ? 知りたがりのミリアちゃんは」
悪態を吐きながらも答えてくれる意志をマーラは見せると、それにミリアは気にすることなく、ズカズカと入り込む様に質問した。
「今回来た【魔王】の幹部の名前と数を教えてください」
「あはは! たしかに、お前達は知りてえよなぁ~! 【第五獣魔王】の部下とかは。まぁ、俺は優しいから教えてやるよ。獣魔王の部下、お前達が言ってる幹部はたった1人だ」
「え?! 1人なの?! 僕、てっきりお前みたいに何人も部下がいるのかと思ってたよ」
レンジがそう言うと、マーラは小さい背丈でありながら胸を張って、嬉しそう口を開く。
「俺は強いからな。【魔王】としては歴が違う。ただ、アイツの臣下である【勇者王】は別格だがな」
【勇者王】、その聞き慣れない単語にミリアは眉を顰めた。
「何ですか? その【勇者王】というのは」
「【勇者王ベオウルフ】、獣魔王の従者であり、この俺ですら欲した勇者の名だよ」
***
【安置】での作戦会議が終わった直後、レンジ達はその扉をゆっくりと開けて、【魔王】の迷宮の廊下に足を踏み入れた。
ミリアは充電しておいたドローン型カメラを起動させ、彼らは全員で廊下に飛び出ると辺りを見渡した。
【勇者王ベオウルフ】、それを討伐し、玉座に居るはずであろう【魔王】を殺す。
それが現時点での作戦であり、レンジ達はベオウルフを探すために迷宮内を敵に見つからないように動き出す。
そんな中、レンジ、彼1人だけが、今から起きるであろうを未来を察知した。
廊下の天井、それが突然、ヒビ割れるとレンジは先に進もうとするミリアとマーラの服の襟を掴み、力一杯、引っ張り放り投げる。
「え?!」「なっ?!」
2人は驚きから声を漏らすもレンジはそんな彼女達に視線を向けず、崩れる天井の方より、放たれる殺気だけに眼を奪われた。
(何かいるな)
レンジは迷わず、腰に差していた刀を握りしめて、砂埃舞う方向から向けられた殺気に向かい、死地へと踏み込む。
「無明一刀流、鱗」
走り出すと同時に、刀を抜き、目にも止まらぬ速度にて、納刀する。
一度の抜刀にて放たれる物理を無視した5連の斬撃、対して殺気の主人は一切動じずに、両手に握りしめていた得物を振るうとそれらを撃ち落とした。
(鱗が防がれた。なら、もう一度、他の技で詰める)
間合いを詰めながら次の一手を放とうとするレンジに対して、それを敢えて潰そうと再び得物を振るう。
その動きに気付いたレンジは技を放つのをやめて、ただ刃をぶつけるとその瞬間に大きな風が起きた。
舞っていたはずの砂埃は、2人が生み出した風圧によって一瞬にして、吹き飛ばされると敵対者の姿が明らかとなる。
レンジへと殺気を向けているのは、少し焦げた茶色の肌と蒼い眼、両腕には巨大な両刃斧を携えた男。
黒い軍服に身を包むと両手には手袋をしており、その背には獅子の毛皮をマントの様に靡かせた。
それは現代と太古が混ざり合う異様な格好であり、男はその【魔王】の迷宮の中でも明らかに異質や存在をしていた。
「お前、強いね」
互いの刃が火花を散らす中、レンジは男に喋りかけた。
「お前こそ、よく練り上げられた良い闘気だ」
意外にも、男はレンジに言葉を返すとそれを通じて、2人は既に互いが互いを殺し合う仲であることを理解し、軽く口角を上げる。
「ま、いや、カーマ! あれは、あれは! 何なんですか?!」
突如として現れた一目すれば理解させられる圧倒的に強さの塊をした怪物の存在に対して、ミリアはその正体を知るためにマーラへと尋ねた。
マーラもまた、かつて対峙した時よりも遥かに強くなったそれを目の当たりにし、深呼吸をしながら、自分を落ち着けようとする。
「【勇者王】だ」
「え? は? あ、あれが?! あなたがさっき言ってたよりも遥かにバケモノじみてるあれが?!」
「あ、ああ。あれこそが俺が見た中で最も【魔王】に近い存在、【勇者王ベオウルフ】、本人だ」
【勇者王ベオウルフ】、彼を探すために、【安置】を飛び出した瞬間、その目当ての存在は彼らの目の前に姿を現した。
だが、それはマーラの想像を遥かに超えた怪物へと至っていた。
突如として始まる【勇者王】ベオウルフとの決闘。
レンジ達一行の運命は如何に?!
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