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はじまりはじまり

 都市棲怪としせいかい  

  主に都市部において発生・定着する未分類怪異の総称。


  これらは特定の土地や建造物に強く依存し、人々の感情ーー特に後悔、執着、怒り、虚無といった行き場を失った精神的残滓を媒体として形成される。


  発生後、一定期間外部からの干渉を受けない場合、都市棲怪は環境に適応し、建物や設備の一部として擬態・定着する傾向がある。そのため、視認が困難である個体も多い。


 都市棲怪は一個体ごとの性質差が大きく、明確な分類は未だ確立されていない。 しかし総じて、人間になんらかの影響を及ぼすことは共通しており、放置した場合、精神的・物理的被害が発生する例が報告されている。


 なお、都市棲会が自然消滅することは稀であり、多くは封鎖・隔離、消去措置が必要とされる。


 現在、公式な記録に残される例は少なく、その存在は都市伝説や噂話として扱われることがほとんどである。






  大学には、ほとんど行っていない。

 行かなきゃいけない理由も、行かなかったらどうなるのかも分かっていた。

 それでも何かから逃れるように行くのを避け続けた。


 気づけば昼夜が逆転して、友達と騒ぐか、1人で街をぶらつくかの二択みたいな生活になっていた。


 その日も特に意味はなく、スマホの地図をぼーっと眺めていた。地図の一部に不自然な空白があった。周りにはたくさんの建物や飲食店があるのに、そこだけぽっかりと穴が空いているようだった。まるで意図的に消し去られたようだ。


「あそこかな」


 駅から少し離れた場所に、不自然なくらいに背の高いビルが固まっている一角がある。フェンスは壊れ、注意書きは色褪せ、すっかり廃墟と化していた。


 かつてそこは、夜でも灯りが消えない場所だったらしい。好景気の波に乗って、人々は我先にとビルを建て、工場を建て、この一角を次の経済の中心地だと信じた。

 けれど景気が一気に冷え、全てが終わった。計画は途中で止まり、企業は次々に撤退、建物だけが置き去りにされた。

 壊すほどの価値もなく、使うほどの価値もなく、ただただ残された。

 今では、その場所を覚えている人はほとんどいない。危険だとも、近づくなともわざわざ言われない。それでも誰も行こうとする者はいなかった。


 

 だから俺は、ちょっとした好奇心で、その廃墟の中に足を踏み入れた。


 

 

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